さんじゅうに
私は、再び戦場に戻された。
だけど、次はきちんと魔法が使えたので右手に描いてあったフライを消して、風の魔法に切り替えた。
目の前の敵は、よく見れば「なぜ、こんなところに子供が?」という顔をしていた。とっさに、殺されると思ってのは間違いだったようだ。
パッと立ち上がり、味方の陣地に走り出した。
魔法で風をおこし、飛ぶように一気に駆け抜ける。
館の門の内側に飛び込むと、パパがいた。
どうやら指揮をしているようである。
私には、全く気づいていないので走って近寄った。
「お父様っ」
私の呼び掛けに、こちらを見る父親は、目をごしごしと擦っていた。
その後、現実だと気づいたのか、アゴか外れそうなぐらい口を開けてコチラを見返した。
「とりあえず、味方を全員呼び戻して」
パパにお願いすると、最初は渋い顔をされたけど、なんとか承諾してもらった。どうせ不利だから、ヤケクソだったか。私の可能性にかけたり……は、ないか。元々、籠城するしかなかったのだろう。
味方が全員門の内側に収まったところからは私の出番だ。
撤退か、と勢いづいた敵をはるか遠くに吹き飛ばす。
いつの間にか、私の周りは味方の兵でいっぱいだ。
みんなが守ろうとしてくれているのを感じる。
で、申し訳ないけど前が見えにくいのですが。不思議と安心感はあるけど。
「お父様、見えないからダッコ」
そう言うと、笑ってパパが抱っこしてくれた。
魔法は、周りの人達が相殺してくれている。
このまま持ちこたえていれば、後は自然と終息に近づいていくだろう。
それにしても、初級魔法だからか疲れない。
半日が過ぎると、敵は足掻くのを止めた。
二日目で、どこかへ移動しようとしたのを風で阻止。敵が動こうとする方向に深いクレーターを作った。
夜は、何か起きたら起こしてもらい、風でまた吹き飛ばす。
三日目になると、さすがに静かになったけど、なにか剣呑な雰囲気が伝わってきた。
夜にまた、襲撃があった。昼間、仮眠して起きていたので風でお帰り頂いた。正直言うと、恐くて寝られなかったのである。
四日目には、なぜだか人が減った。
五日目に、解散にしたようで誰もいなくなった。
それを見て「よし、帰ろうか」なんて安心出来る性格ではない。
服に魔方陣を描いて、片手で魔力を流し込みながら飛ぶ。
すると、狙ったように魔法が飛んできた。
慌てて、下に降りて強めの魔力で吹き飛ばす。もう、闘う理由がないので止めにしてほしい。人が空中を舞っていた。
帰れたのは、結局十日後だった。




