にじゅうはち
フライは、モノを動かす魔法だ。
私は、この数ヵ月……目に見えない物は動かせるのか実験をした。
頭の中で、モノを動かすイメージをするときのように、通常のフライと同じように動かせたのだ。
圧縮された空気は目に見えないけど、数キロにわたるすべてを飲み込み驚くべきパワーを発揮する。私自身、あまり苦労することなく、成果が発揮されたので驚きだった。
いま、目の前に広がる光景は悪夢に相応しいだろう。
だけど、私は冷静にそれを見ることが出来て、これが異状なことにも気づいている。
数キロに渡る全てが、一瞬にして消えて……遠くに大きな塊が見えた。
はるか上空のそれは、しばらく空中に停止して、バラバラになって落ちてきたのだ。
ブラックホールは目に見えないけど、その死体を見れば一目瞭然だ。
千切れたソレが山を作り、鎧と重なって音を立て、土煙が舞い上がる。地面には、巨大なクレーターが出来上がっていた。
軍のはるか後方で起きた事態に、戦場が静まり返った。
次いで、ざわめきが起こり……後方の隠れられる場所に、魔法が降ってくるのを感じた。
私は、接近戦には無力なので、それだけが救いだ。
弓は届かないので、苦肉の策だろう。
「フライ」
攻撃の有効範囲の敵を削るために、もう一度魔法を放つ。
塊が落ちる。
「フライ」
今度は、場所を異動しながら、残骸に隠れながら放つ。
あちらも、がむしゃらに魔法を打ってきた。
背後で、地面が凍る。
敵が分散して、館から離れた。
周囲に隠れるつもりなのだろう。松明が散らばっていく。
満月なのが救いだ。
おかげで、自分の攻撃範囲がわかった。はるか上空で、試し打ちをしたときはよくわからなかったからだ。
散らばる敵と、燃える森。
呪文を唱え、真空状態を作り火を消す。空気を異動させればいいだけだ。
ゆっくりと、館に近づいて行く。
残骸に隠れながら、木に隠れながらたから、体が汚れている。鉄の匂いが強い。
まだ、まだだ。
吐き気をこらえ、頬を叩く。
館まで、無事にたどり着き、向こうを守りながら魔法を放つのだ。
敵は、松明を処分したのか、どこにいるのか把握できない。
手を強く握りしめる。
大丈夫、敵は散らばった。
後方の大部分を失って逃げたのだ、と自分に言い聞かせた。
館がだいぶ近づいてきた頃、建物の方で声がした。
気合いを入れるような力強い咆哮だ。
沢山の声が混ざりあい、外に向かって響き渡る。
私は、不安に襲われた。
「ダメぇぇー!!」




