にじゅうろく
国境は、実に攻めやすい仕上がりだ。
周りが海なら……、もしくは大きな川が欲しかった。
平地で、草もまばらな高野に関所がある。
木でも植えたらいいのに、遮る物が少ないので攻め放題である。
まあ、仕方がない。まだ、四年しかたっていなかったのだ、停戦していたから油断していたのかもしれない。もう、起こってしまった跡だし。
そこにある死体は少なかった。
他にあるのは、崩れた関所と血の跡だけである。
いったい、どこに逃げたのだろうか?
「じいなら、籠城するのにどこを使う?」
私は、先人の知恵を借りることにした。
「ここから近いと言えば、領主の館ですかな。あそこなら、門も石で出来ておりますぞ」
なるほど。辺境伯というモノか。国境の守りが緩いのに、自分の屋敷だけは補強済みというのは、なかなか良い根性である。
「まず、そこに行きましょうか。ダメなら、国境を越えます」
連れ去られたというのは考えにくいけど、捕虜にされたのなら、生きている確率は高いのではないだろうか。
そうではないのなら、撤退してどこかに籠城しているぐらいしか考えられない。
「おい! お前は、何を探しているんだ! もう、諦めろ! あの兵士の話を聞いただろうがっ、子供がどうこう出来るものじゃねぇ!」
オヤジは、先を読んだのか、いきなり牽制をかけてくる。
全く、説明が面倒くさい。
「では、館の近くまで来たら降ろしてください。私は、一人で行きますから」
その言葉が終わらないうちに、勢いよく拳が下ろされる。ガチンという音と共に、視界がチカチカと点滅した、
「お前というヤツは、本当にバカだな! 子供を置いて帰れるか!!」
正論である。
ただ、状況的に悠長にしてはいられない。
「分かりました! わかりましたよ! 言えばいいのでしょう? 洗いざらい、手短に説明します! 英雄は、私です! これでいいでしょう? いいですね? では、行きますよ! 時間がないのですから!」
私の焦る気持ちとは別に、オヤジが苦いものでも食べたような顔をした。
「お前なぁ。英雄の特長知ってるか?」
オヤジが呆れたように聞いてくる。
「知りませんけど、カタナを再現出来たじゃないですか!」
「英雄様は、髪も目も黒だろうが! 妄想も大概にしろ!」
「魔法が使えます!」
「全属性か? 違うだろうが!」
「知識があります!」
「それがどうした! 英雄様なんて、何百もの発明をしたんだぜ!! 」
らちが明かない。子供って不便だ。




