にじゅうよん
国の中心、王都からは国境までは、約二週間もかかると聞いた。
私は、場所を知らないのでオヤジが指示をして、うちの家人に馬車を引いてもらう。
快適とは言えない旅の連続で、家人も疲れきっている。
何か、いい方法はないのか……。
悩んでいたら、オヤジが「何かしてねぇと、落ち着かねぇタチなんだ」と言い出した。気を使ってくれたのだろう。
強行軍で、急がせてしまったので人数の確保が追い付いてなったのだ。二人いる家人のうち、一人はお年寄りなので無理はさせられない。
もう一人はメイドで、私が幼少の頃からいる人だ。
オヤジとメイドが交代で馬車の運転をして、もう
一人のオジーチャン(家人)が私と車内にいる。
「あの、じいやって呼んでいいですか?」
前から、白いヒゲのご老体を密かにじいや、またはセバスチャンと呼んでいたのだけど、じいさん率が高いので呼びわけしたい。
「お嬢様にじいと呼ばれる日がこようとは……!」
「え? 」
ダメなのかと、諦めかけたとき、彼は驚く話をしてくれた。
「先代もじいと、お呼びしてくださいました。あなたのお父様もです」
え! じい、何年生きてるの!? 最低、五十年前からオジーチャンじゃないか?
不死身疑惑が脳内で繰り広げられる中、じいはサラリとこぼした。
「こう見えても、百年は生きておりますので」
いつもハキハキ、腰もしゃっきりと伸びている好好爺は正真正銘の生き字引だった。
うむ、人は見かけによらないんだな。と、自分を棚上げしたくなる。
無事に一週間が過ぎた頃、一人の騎士がこちらへ近づいて来るのが見えた。
瀕死の重症で、虫の息だった。
オヤジは、すごい勢いで馬車を急停止させたため、私とじいはぶっ飛んだ。シートベルトが欲しいと今思う。
知り合いなのか、オヤジが血相を変えて車体から飛び降りる。
私は、窓からそれを見ていた。
叫ぶ様子が深刻そうだった。
「くそっ!」
オヤジが大きな声をあげているので、内容は把握できた。
軍は壊滅的、生存者はいないだろうとのこと。そして、さらに悪い知らせがあるらしい。
私は、フラフラと馬車から降りた。
「なんだって?」
声をかけると、オヤジは憤怒の形相で静かに告げた。
「この国はおしまいだ」
私は待った。
兵士は、生きているのか、死んでいるのか、わからないほど静かで、呻き声ひとつ漏らさない。
「圧倒的な人数で、潰されたらしい」
オヤジはポツリと呟いた。




