にじゅうさん
人が少なく見えるのは、やはり戦争が行われているからか。
「オヤジ……じゃなかった。親方はいますか?」
王都に帰って、まず行ったのは工房だ。
オヤジとは、もう三年もの付き合いになる。見た目は、中年にしか見えないが白髪が混じっているため、もしかしたら工房に居るかもしれない。
「はいはい。少し待ってくださいね。何せ、忙しいもので……」
オヤジの奥さんは、ふっくらとした穏やかな雰囲気の持ち主で、見たままの性格をしている。
ゆっくりと部屋の奥へ戻っていった。
どうやら、彼はお年寄りに該当するようだ。オヤジに、今度オジーチャンと言ってみようか………………いや、辞めとこう。案外、怒られそうな気がする。
男でも、女でも、年はデリケートな問題だったりするし。
しばらく待つと、オヤジはいつもよりもゲッソリとして歩いてきた。今から頼むことを思うと、背筋が寒くなる。
「お願いがあるのですけど」
「なんだ? 武器か」
よほど機嫌が悪いのか、彼の顔は凶悪犯のようだ。
「いえ、戦場まで連れて行ってほしいのです」
私は、家人を工房の外で待たせている。
「あ? バカ言うんじゃねぇよ」
オヤジは、冗談を聞いたと思ったのか呆れたような顔をした。
「いえ、冗談ではないのです」
それを、聞いた彼は心なしか、気まずげな表情をして言った。
「生徒が戦場に出たそうだな。友達でもいたのか?」
それを聞いた瞬間、空気が冷たく氷ついたような錯覚を起こした。
その中で、頭は冷静に分析を始めている。
貴族は、手柄を立てるために大勢が出兵しただろう。もしかしたら、非戦闘員のテアーも場合によっては行ったのかもしれない。
「連れて行ってくれたら、儲けになる話を持ってきます! いやなら、他へ持っていきます! 早く決断してくださいっ!」
私は、オヤジを睨み付けた。
「おいおい、脅す気か?」
「そうですよ! 間に合わなかったら、世界を半壊させます」
「はああぁぁあ!? ばか野郎! 無茶なこと言ってんじゃねぇ!」
「出来ますよ! 両親も友達も全てを失うぐらいなら、世界と心中します!」
私の顔を見て、親方は何かを悟ったように深いため息をはいた。
信じてない。……あれは、だだをこねる子供を見る目だ。
「仕方ねぇな。近くまでなら、付いて行ってやるけど料金はお前持ちだぞ」
本当に、嫌々、彼はそう言った。




