にじゅうに
基本、臆病なのだ。
石橋を叩いて、安全確認をして、人が渡ってから、やっと安心する。そんな性格なのだ。
だから、乱用出来てもしなかった。
一週間は、馬車の中で寝泊まりをした。
家人は、家族みたいなものだ。私が落ち込んでいるのを、すぐに理解し「お嬢様、今のうちなら帰れますぞ」と、優しい言葉で誘惑する。
私は、思わず笑いながら『残念ながら、子供じゃないんだけどな』と思っていた。半分は真実である。
せまい馬車の中、気心の知れた人と自分だけの空間。
思わず、子供に戻りたいと思った。
どうやら、だいぶ弱っているらしい。
それを、察したのかは知らないけど家人が私の手をとった。
「大丈夫です。旦那様は、とても強い魔術師なのですぞ」
暖かい手に包まれて、決意が崩れそうになるのを、グッとこらえた。歯を強く噛み合わせる。
「はい。きっと大丈夫だから、最後まで協力してくださいね」
私は、笑みを作って言った。
「こうなれば最後までお供しますぞ」
強い眼差しに励まされて、密かにホッとした。
戦争は、やっぱり恐いなぁ~。
今回の戦争は、国力が同じぼどの隣国とである。なぜ、今の時期なのか、理由はあるのか、詳しいことはわからないのだ。
この国は鉱山が豊かで、向こうは農業に秀でている。
「なぜ、戦争になったのですか?」
今さらすぎる質問をしてみた。
「ずっと仲が悪かったのです。向こうは、鉱山こそないものの自然が豊かで、人も倍以上います。ですがね、我々には魔法があるのですから、負けたりはいたしませんぞ」
家人は、胸をはって答えた。
「人が少なければ、魔術師も少ないのではないでしょうか?」
考えてみれば、人口そのものが少ないと不利に思える。
私は、眉間にシワをよせた。嫌な想像がふくらむ。
「だからこその宝石です。魔力を増幅させ、威力をあげ、魔法で交戦してきたのです」
「長引けば戦いは厳しくなるはずですよね?」
数は、力だ。それは、間違いない。
彼は、微笑んで言った。
「そのときは、英雄が現れるのです」
私は、口をあけ笑うところなのか、子供らしく驚くべきなのか迷った。
「百五十年前にも、その前にも英雄は来ました。信じて神に祈るのです。必ず、きっと、現れます」
彼の笑みは崩れず、本当か、ウソか、区別がつかなかった。




