に~
まだ赤ちゃんです。
なんといっても赤ん坊というモノは、出来ることが少ない。
だから、目の前の女のひとが私の服を脱がせているのは必要だからで、決して恥ずかしいことじゃない。
恥ずかしくなんか……ない、わけない! 恥ずかしい! びっくりするほど恥ずかしい!
もう25なんだよ! なんのバツゲームだ!
……思わず取り乱してしまったけど、現実の私は情けなくなるほど無力である。
自分より若い母親が一生懸命わたしの下半身を探っている。
「おぎゃーーーーーーーーーー!!(羞恥で死ねるぅぅーーーーーー)」
ジタバタと暴れる足をとり、ただ無心に柔らかい布でごしごしと擦り、さらにキレイな布をあてがう母上。
心なしかぐったりしているようだけど、私も泣きながら心中穏やかではない。
「もう終わりましたよ~」
「あぶ~(死んだ)」
こうして、オムツ替えにもガリガリと精神が削られている。無心になる日も近いだろうけど、今は無理だ。
ちなみにママは美人。
白い肌に赤い髪、グラマラスな体をしている。だから、わたしも可愛くなれると信じてるけど、正直どうかわからない。
ママの腕の中で、彼女の顔を眺めているといつも言われるのだ。
「パパにそっくりで可愛いっ!」
そのまま、ぎゅうぎゅうに抱きつぶされる。
「うぶぶぶ(パパ似は勘弁)」
我がお父上は、いっちゃ悪いがハゲてて、太ってて、目なんかないんじゃないか、と思うぐらい小さい。それをママは、つぶらで可愛い瞳と称す。別に嫌いじゃないけど、可愛くはないと思うんだ……。
将来は化粧でカバーして可愛い系になれたら嬉しい。高望みはしていない。
とりあえず、今は赤ちゃんのふりを頑張ろうと思う。
たまに「夜泣きもなくて助かるわ」とか、「あんまり笑ってくれなくて困っちゃう」とか……まあ、セーフだろうと信じてる。
我が家は、伯爵家らしいけどママが直接世話をしているし、気をつけなければいけない。
手足が動くようになったら、魔法の訓練でもして自分の身を守れるようにしよう。戦争中だし。
あと、優しくて金持ち旦那を捕まえられればいうことはないのだけど……独身のままという可能性もある。それに、金銭の余裕は心の平穏のために必要と、冷めた心で考えた。
前世と足してアラサーだから、シビアにもなる。なんせ恋愛経験もゼロなのだ。
もしものときのために、手に職をつけるのは当然だと思う。
とりあえず、金持ちに生まれたのでこれからガンガン学んでいこう。