第90話 接触
先週は投稿できず誠に申し訳ありませんでした。
「……別に、≪ブラスターレイ≫班と隠密班を分けてもいいんじゃないか?」
冷戦気味の舌戦に、とうとう近藤さんが割って入る。
「詠唱時間がかかるわけでもなし、隠密班は陽動を必須としているわけで……そもそも隠密班がそれほど人数を必要とするわけではないだろう?」
そうやって普通に考えられるのなら、別に私に「策をひねり出せ」とか言う必要はないんじゃないかな? なんて思ったんだけれども……今回は言わないでおこうか。
「あなたに考える頭があったとは思いもしませんでした」
だって李儒さんは全方位喧嘩外交だもの。
私が口出しする必要なんてどこにもない、せいぜいで諌める程度だ――そんなことする義理も理由も無いけどね?
「これでも長く自治組織団体のトップを張ってはいない」
じゃぁその脳筋思考をどうにかして欲しいところだよ。
「はて、暗殺ギルドでは?」
「我々は自治組織団体だ!」
新撰組にあった鉄の掟だとか血の掟みたいなものが存在する団体が自治組織団体なわけがないと思うんだよね。
まったく、何を思って導入したのやら。周りから見ればそれこそ暗殺ギルドじゃないか。
「それで、割り振る人数はどうなるんだい?」
「そうですね……こちら側には、軍曹とお父さんは必須かと」
「うちの主力二人じゃないか……」
お父さんのほうは正確なスキル振りは分からないけれど、お父さんは現役警察官だ。それなりに素手でも強いとは考えられる。
軍曹は、言わずもがなといったところかな? 以前のスキル振りから変わっていないのであれば、≪召喚時間延長≫した≪サモンバイコーン≫だ。しかも移動手段程度にしか考えていない。
「それ以外の戦力はそちらでも構いません」
「それでも、李儒さんのほうが戦力過剰だと思うよ?」
タロスの戦い方は力任せで、そして本人は技術者だ。過剰な≪筋力≫スキルはそれだけで小手先の技術云々を全てねじ伏せることができるけれども、それだけだ。
正直、GMが絡んでくるとなると……ほぼ同じか、それ以上の筋力を持つあのパイソンGMに、いや、パイソンGMにすら負けてしまう可能性すらある。
クロウとブリュンヒルデさんは魔導騎士だから、機動力には期待できる。ただ、相手がどれだけ照準を合わせる速度が速いかにもよるし……燃料切れで勝てる可能性は無くはないけれど、どれだけ持つかも分からない以上は期待しないほうが得策だ。となると二人の持つ「大技」がどこまで通じるかどうかにかかっているけれど……勝率は五割を切ると見積もっておいたほうがいいかな?
ヘルフリートくんとキリヤちゃんは……残念だけど、荷が勝ちすぎている。期待できないどころか、申し訳ないけれど足を引っ張る可能性があるね。
そして私の魔法は……正直言って、火力過多だ。そして真っ先に狙われる対象でもあるし、対策される対象でもあるから、私こそ足を引っ張るだろうね。
(とりあえず、≪グラビティ≫は多めにしたほうがいいね、通用するか分からないけれど……破壊力で言うなら≪エクスプロージョン≫か……≪ツイスター≫で持ち上げられる? 分からない……そうなると最悪の場合、≪アースクウェイク≫でもろとも、か)
≪グラビティ≫はデバフ系に分類されるから、妨害はされにくい。だからできるだけこれで決めたいところなんだけれど……タロスなら絶対それに対抗する程度の強度設計はしているだろう。
となると、ある意味で対策不可の≪アースクウェイク≫は完全な切り札だ。付近の街もろとも犠牲にする可能性が高すぎるから、気軽に使えないけれども。
「ねーちゃんが怖い事考え始めたみたいだぜ?」
「俺様たち、逃げたほうがいいかもな……」
「――ダメだよ? 人手は多いほうがいいからね」
どんなものにも使い道がある……ひどい言い草だけど、二人については最悪バフ全開にして囮として使うつもりなんだから。
というか、勇者様が逃げてどうするんだろうね?
「やはりレンさんほどになると、敵前逃亡は銃殺刑ですか?」
「君は容赦なく斬首しそうだね? 泣いて馬蜀を斬るんだっけ?」
この戦いが終わったら、李儒さんの口、縫えないかなぁ……?
[to be Next scene Side Talos...]
宝の山だ、とは言ったものの……思ったよりも「使える」パーツが少ない。
いや、より正確に言えば私に使えないパーツなどないが……中身がいじられている可能性を考えれば、「今すぐ使える」パーツが少ない。
「悩ましいな」
動力はかなり繊細だ。内燃機関もそうだが、外燃機関――特に蒸気機関は内圧を高めなければ出力が落ちる。そのため爆発事故が多発した。
その爆発事故に心を痛めたロバート・スターリング牧師が作ったものがスターリングエンジンである。が、こちらも内部気圧を高め、できるだけ軽い気体を使わなければやはり出力が不足する。しかも軽い気体は分子構造が小さい、故に気体が抜けやすい。製作と整備が面倒なのだ。
――この時点で、蒸気機関とスターリングエンジンを使用した機体は既に「今すぐ使える」という条件から外れる。
かといって内燃機関で作成した機体はない……こんなことなら極秘裏にでも作っておくべきだった。
と、なれば――
「最後の武器は、勇気、というわけか」
いや、あれはそんなものではない。
もっと不愉快な何かだ。
それでも使わざるをえない、実に不愉快だ。
「封印を解くしか……ない、か……!」
陰鬱な気分を吹き飛ばすためわざわざ大仰に言ってみたが、実際は封印などされていない。倉庫の中に、解体保存しているだけだ。
できれば使いたくはなかった。あんな、ロボットもどき、など――……そう思いながら、私は倉庫の奥へと進む。宝の山を踏み越えて、私にとっての悪夢を封印している区画へと。
だからこそ、その再会は必然だったのだろう。
「……Dr.マミー」
その呟き声に反応するかのように、全身を包帯でぐるぐる巻きにして、サングラスを掛けた、トレンチコートと中折れ帽の男。
そんな透明人間の映画にでも出てきそうな奇抜な格好は、忘れたくても忘れられない――私の同志でありライバルが好む、いつものファッションだった。
「やぁ、タロス君。久しぶりだね、元気にしていたかな?」
芝居がかったその口調も、声も、しぐさも……何もかもが彼本人だと私に訴えかける。
「何の用だ?」
「見て分からないかね? ――お茶のお誘いだよ」
Dr.マミーは口元をも包帯で覆っている。そんなヤツがお茶のお誘いなどと、片腹痛い……いや、頭の悪い話だ。
「その尻をどけろ。私の子供たちをなんだと思っている」
「ただの兵器だろう?」
肩をすくめ、そして足を組みなおす。
「違う。その一機一機に、私の魂がこめられている。兵器ごときと一緒にするな」
「所詮平和利用されないのであれば、最初から兵器として作り戦争で扱うほうが、より洗礼されていく……などと言ったのはどこの誰、そしてどの口だったかな?」
確かに、そのようなことを言った覚えはある。
――だがソレとこれとは話が違う、違うのだ。
「所詮、貴様には分からん美学か」
「ああ、分からんね。確かに分からんよ。何が悲しくて、剣と魔法の世界で、魔法を使わない兵器を造るのか、ということも含めてだ」
確かに、ヤツの言い分も分かる。
私も一度は魔法を使った動力を試作した身なのだから、分があるのはDr.マミーのほうだ。
だがしかし、しかし、だ。
「それは科学の敗北というものだ」
気付いてしまったのだ、私は。
ロボットを愛するものとして、魔法を動力源にすること自体は構わない……だが科学者として、そして技術者として、それをしてしまえば、私は先人たちの築き上げてきた科学技術にドロを塗る行為なのだと!
――だから私は、魔法による動力からすっぱりと手を引いたのだ。
もっとも、もう未練がないと言えば、ウソになってしまう話なのだが。
「まぁ、所詮は他人の研究……別に構わんがね? だがしかし、君はやりすぎたのだよ」
まるで悪役のように「フフ……ッ」と失笑を漏らす。
「やはりお前の仕業だったか……」
「さて、解体したのは確かに私の仕業だ。だが、この話を持ちかけたのはジルコニア嬢に他ならないがね?」
なるほどGMが絡んできているのは間違いがないようだ。
そして予想はほぼ正しく、手引きのほとんどはジルコニアGMというわけか。
「まぁ、君がやりすぎたように……私もやりすぎた、少々反省している。だからこそ、見ての通りお茶のお誘いに来たというわけなのだよ」
何が、お茶のお誘い、だ。
「要するに、仲間になれ、と言いに来ただけではないのか?」
「そんなストレートな言い方をするなど、恥ずかしくて、とてもとても……」
大仰に、そして演技臭く、わざわざ大きくかぶりを振ってみせる。
――このまま捕らえる、という選択肢も無くはない。が、どこでGMが目を光らせているかも分からない。
小五郎から、油断したところをバッサリと斬られたあのときを思い出しつつ、慎重に思考をめぐらす。
「……まぁ、私の要件はその通りなのだがね? さて、どうだろうか? 同志タロス君」
ヤツは包帯の巻かれた手を、差し出してくる。
「一緒に、また同じ夢を見ないかね?」
[to be Next scene Side Len...]
「話が少しばかりそれてしまったけれども、私はその案に承服できないな」
いや、それてしまったのは自分の思考のほうか。
「なぜですか? これ以上ない合理的な判断かと……それに、賛成したかのように色々と思案していたようですし」
「その折衷案で通すとして、一通り考えてみていただけさ」
シミュレーション……いや、どちらかと言えばイメージトレーニングに近いね。完全に戦力が分かっているわけじゃないんだ、実物を見るまで、実物と戦うまでは。
「まず私の魔法は確実に封じてくるだろうさ。それも分からない連中じゃない」
「ねーちゃんの魔法って毎回役立たずじゃね?」
「! ヘルフリート、消されるぞ!?」
……この程度で消し炭にするつもりなんてないんだけど、所詮は子供の言うことだから放っておこう。
私がどういうイメージなのか、後で二人にじっくりと聞かなきゃならないけれど。
「その対策のために人員を割かなければならない……抑止力としては実に効果的ですよね?」
「別に抑止力としての存在として考えるなら否定できないだろう。一つ目はそれでいいとして、第二の問題だ。ヘルフリートくんとキリヤちゃんでどこまでいけるか不明だ」
「ひでぇ!」
「オレら、すっげぇ強くなったんだぜ!」
「そうだとしても、だよ」
ブレスに見立てたメタルストームの前で、多少強くなった、それが一体どれほどの価値だろう?
「サイズを考えるなら、小回りが利かない可能性が高い。じゃぁ相手はそれをどう補う? 当然ながら随伴兵を用意してしかるべきだ。タロスから奪われたものであるなら、当然ながらゲリュオーンだろうさ」
鉄の塊に、どれほど攻撃が通用することだろう? スキルがあるという、現実にはないアドバンテージがあるからこそ問題はないのかもしれない。けれども、
「軍曹ほど、とまではいかなくてもいい。けれども、能力が保証されていない雑兵は囮どころかいいカモだ」
「……ゾウヒョウ、ってなんだ?」
「ザコって意味だろ」
「ひでぇやねーちゃん!?」
「その点に関して言うなら、むしろ私のほうこそ割り当ての優先順位が高いことになりますね? 隠密行動とはつまり、限りなく個人行動に近いものです。何が起きるが分からない、だから二人をこちらへ回していただきたいのです。そもそも、そちらにもきちんとしたベテランが二人も居るじゃないですか」
「私の魔法に対策がとられている場合、魔導騎士の二人の実力は半分以上封じられているようなものじゃないか。クロウもブリュンヒルデさんも魔法が使えないことになる」
「それでも戦えないことは無い、というのが魔導騎士たる所以です。伊達に中堅クラスだと証明する称号では――!」
ない、と続けようとした瞬間に響く爆発音。
より正確には、爆発音にも似た、石か何かのような硬い物体が粉々に粉砕されるような音が、ほぼ連続して二度、窓越しに響いてくる。
「何事だ!」
いの一番に立ち上がったのは、ほぼ空気化していた近藤さんだった。
[to be Next scene...]
直径にしておおよそ三メートルぐらいだろうか? 丸く大きく、そして無残にも砕け散っている石造りの塀と、そこへ向かってタロスが立ちすくんでいる。
暗殺ギルド敷地内にあるタロスの工房の壁も大穴が空けられている。いかにも力ずくで砕きました、とでも言うような――
「すまない。つい、カッとなって殺ってしまった」
静かに語るタロスの右腕が、ない。
ただそこから、ぽたぽたと失血している。
「何があったいんだい!?」
しかし、ここで尋常でないことがあったことは見て取れた。
「Dr.マミーが……堂々と乗り込んできた」
「なんだって! それは本当かい!?」
壁の破壊状況から見るに、内側から外側にかけての破片の飛び散りが激しい。つまりは室内に堂々と現れた、そういうことなんだろう。
「確か、≪筋力≫フルスロットでしたね? それで壁を二枚抜き……さすがにもう生きてはいないでしょうが、なぜ、という疑問も同時に浮かびますね」
李儒さんの言うとおり――いや、おそらく李儒さんもおおよその目星はついているだろう。それどころか、察しのいい人ならばおおよその見当がついている。
「勧誘、ですか……」
真っ先に口火を切ったのは、お父さん。
「タロスくんは、ファフニール計画の発案者ですからねぇ。それに対して分からないことなんてないでしょうに。向こうに行かれたら厄介なことになっていたのは明白、実によかったですね……被害は別にして」
スカウトするなら優秀なほどいい。
しかもその相手がプロジェクトの主任なら、さらに有効だろう――厄介な事にならなくて、本当によかった。
「ああ、被害は別にして、その点に関しては助かったとしか言いようがないよ」
「右腕の欠損ということは……サクリブロウか?」
「なんだい、それは?」
「サクリファイス・ブロウ……サクリブロウ、サクブロ、あるいはロケットパンチとも省略されるれっきとした攻撃手段の一つですね。命中した瞬間にダメージを受けるのなら、その部分を取り外してしまえばいい、というとんでもない発想の転換から来た、スキルでもなんでもない、ただのテクニックの一つです」
そういえば、ランディも言っていたね。自分の攻撃の反動で死ぬことがある、って。
なるほど、痛みという概念の薄いゲームだからこそできる、とんでもない技だ。
「うわ~……コレが、ですか? 初めて見ました。黒い羊はどこにでもいるんですね」
その傷跡を見たブリュンヒルデさんは、痛々しそうな表情をしてそんな事を言うと、気を紛らわすようにクロウの腕に抱きつく。
――ちなみに「黒い羊はどこにでもいる」というのはイギリスの諺だ、意味は「変わり者はどこにでもいる」というものだね。
「なお、≪PK≫スキルが入っていない場合はオブジェクトなどで強引に切断ないしは引き千切るわけですから、下手をすると自爆する可能性のあるテクニックですね。高い見極め技術が必要になります」
李儒さんの説明はまるで、タロスは実力や技術的に問題などない、というアピールを私にでもしているかのようだった。
「科学を馬鹿にしたようなことをいうものだからな、ついカッとなってしまって……断るついでに全力で殴り飛ばした。死体がどこに飛んで言ったかは知らんが、向こうであることは確かだろう」
そう言って右手を――いや、右腕が肩のところから無くなってしまったことを思い出したように、左手で指差す。
「ふむ……部下に探させる。装備は?」
「トレンチコートに中折れ帽。全身を包帯で巻いて、サングラスを掛けた……ああ、映画の透明人間のような格好をしているといえば分かりやすいか?」
なるほど、ドクターマミー、文字通りミイラ男ということか。
「…………話には聞いていたが、ずいぶんと変わり者だな?」
「私と違って、リアルだとヤツはそれなりに名前の通った有名人だからな……包帯は外してやるな」
「善処しよう」
タロス系統の有名人となれば、だいぶ数が絞れそうな気がしないでもないけど……まぁいいか。
「タロスくん、一撃でしたか?」
「死に戻り前提だったんだろう。避ける素振りすらなかったな……ああ、レン」
「なんだい?」
「相手にGMが居るのは確定だ。ジルコニアGMの名前も出したし、そしてこんなところに入ってこれたからのだからな」
「なるほど、朗報だね」
ただの一度だけなら幸運だっただけかもしれない。でも、防衛戦を張った二度までもここに来たということは確定で間違いないだろう。
「とりあえず、自分で作った怪我のダメージが大きすぎていつ死ぬか分からん……一度死んでから、戻ってくる。装備は頼んだ」
「ああ、分かったよ……自殺は子供達の居ないところで頼むよ?」
「それぐらいの配慮はする」
何を当たり前の事を、とでも言いたげに、タロスは飛び上がる。
≪筋力≫スキルフルスロットだからできる、大跳躍。自分の工房の屋根に上るとそのまま遠くへと飛び上がって――消えた。
「……レンさん」
「なんだい?」
「私は、タロスさんを作戦に組み込むことは反対します」
裏切りを危惧して、だろうね。確かに相手は死に戻り前提、だから演技かもしれないという疑惑が出てくる。
(……スカウトに失敗しても、こうなることぐらいは予測してしかるべきだろうね、相手も)
リアルで考えるなら命を賭した離間の計だけれども、これはゲームなんだ。なまじ生き返ることができるのであれば、鉄砲玉になることすら躊躇する必要なんて無い。
実に命の扱いが軽い世界だよ。
「ひとまずは軟禁でしょう。GMが絡んでくるなら、監視も数名つけないといけません」
「李儒のねーちゃん、タロスのおじさんが裏切ってるとか考えてんの?」
「それが何か?」
「いや、ねーって」
ああ、確かに無いだろう。どういう会話が交わされたか分からないから断言は出来ないけれども、タロスの性格から言って――
(ロボット同士で戦う絶好の機会だ! なんて心の底で思っていたって不思議じゃないんだよねぇ……悲しいことに)
仲間としての付き合いは短いけれど、タロスはそういう性格だ。だから裏切る要因があるといえば、ロボットを広めるとかそういう意味合いになるんだろうけれど……使い勝手はどうしたってゴーレムのほうが上だ。その上ロボットは消耗品、はっきり言って、どれだけ頑張っても主流になるとは言い難い。
よくて「大きい子供のおもちゃ」程度に収まるだろう。
でも――
「では、裏切っていない、という証明をしてください」
――全方位喧嘩外交の李儒さんは納得しないよね。
それに言っていることは「悪魔の証明」だ。無い、ということを無いと証明するのは不可能なのに……ヘルフリートくんみたいな子供に対して、なんて大人げないんだろう?
まぁ中学生だからしょうがないか。
「李儒さん、それはさすがに言いすぎですよ?」
お父さんがそれを嗜める。
でも、意味の無いことだ。
「軍師というのは物事を常に利害で考えなければいけません。きちんとした計略でなければ、兵のむやみやたらと死なせることにもなりますし、死兵ならばもはや自殺幇助となんら変わりありません……そうは思いませんか、レンさん?」
「否定はできないね」
でも、完璧主義すぎて頭が硬い、といわざるを得ないのも確かだ。そんな事を言っていたら、周りに誰も味方が居なくなる。
――なぜそういう結論になるのかを、ちゃんと理解してくれる人が現れなければ。
「レンさんまで……タロスくんがかわいそうじゃないですか!」
「否定はできない。それだけだよ、お父さん……警察だって、立てこもった犯人を捕まえるためだけに、殉職者や死傷者が出るような無謀な突撃は止めるだろう?」
「それはそうですが……」
不服そうに苦い顔をする。
「だから私も、軍師って呼ばれるのは嫌いなんだ、冷血漢っぽくてね。何が楽しくて、全部が全部利害で計算しなきゃならないんだか……」
「その発言は聞き捨てなりません」
「単なる認識の相違じゃないか。聞き流して建設的なことを話し合ったほうが益がある……軍師ならそれぐらい分かるよね?」
聞き分けの無い子供に無理やり言うことを聞かせるみたいで嫌だけど、あえてそういう言い方をしてやった。
「あとは班の割り振りだけど、軍曹とお父さんをそっちに任せる。GMの名前が出てきたなら、いよいよ面倒な事になってきたからね。少ない人数でやりくりするしかない」
そして、人選については譲歩する。
まぁ、初歩的な交渉術だね。これをふいにしたら、それこそ面倒な事になるよ、という意味合いも含んでいるから脅しとも言えるけど。
「……わかりました、いいでしょう」
言いたいことはあるだろうけれど、口を封じるにはこうする方法しか私には思いつかなかった。
――だから軍師って呼ばれるのは嫌なんだよ。
「じゃぁ、本格的に作戦を立てて、さっさと解決してしまおう。兵は拙速を尊ぶ、とも言うしね」
これが終わったら絶対、当分働かないぞ――そう強く思いながら、会議室へと戻ることにした。
タロスさん実は実力派説。
誤字脱字、ご意見ご感想お待ちしております。




