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剣と魔法の物語  作者: 神楽風月
ファフニール編
93/97

第88話 犯人はヤツ?

「――さて、警察内の不始末によって起きた事件はどこに被害届を出せばよかったのか」

 それを現職警察官の前で言うか。

 そんな事をふと思う。

「現場から離れて久しいですからねぇ、私は。今はそういったところのゆるい駐在所で家族ともども仲良くやってますし……公安だったような?」

「現職警察官がそれでいいのかい!?」

「別に構いませんよ? ノンキャリですし、階級もさして高くありません。一応、巡査部長ではありますが」

「部長なのか! すげぇな!」

「いえ、巡査部というのは存在しませんよ? 階級の名前です。下から数えて三番目ですね」

「そうなのか?」

「ええ、でも部長だとか主任だとか、そういう呼ばれ方はしますね」

 ちなみに巡査、巡査長、巡査部長の順だ。

 そして巡査長はいわゆる名誉職――巡査部長への辞令がまだ下りていなかったり、単純に勤勉で指導力のある巡査を長年勤めていた警察官に与えられる階級――になるので、実質的には下から二番目ぐらいになる。

 ちなみに巡査部長の一つ上は警部補。ノンキャリアで警部補になれたら凄まじく優秀な人間と言ってもいいだろうね。ノンキャリアでは基本的にこの近辺が限界だとか。

 理由は、おおむねこのあたりで定年退職の時期になってしまうから、だ。

「まぁ、巡査と部長の数はほとんど同じになってきていると聞きますしね。私はどこにでも居る一般人ですよ」

 それでも巡査部長ともなれば、警察庁及び警視庁、道府県警察本部の係員。警察署の主任。機動隊、高速道路交通警察隊、機動捜査隊の分隊長。中隊伝令長。交番や駐在所の所長などと、警察という組織の中では中核になっているらしい。

 ――それをただの一般人というお父さんの感覚は、ちょっとばかりおかしい気もするね。

「ま、そんな私の身の上話はさておき。どうですか、タロスくん? 使えそうなものはありますか?」

「むしろジャンクヤードと化したこここそ、私にとって宝の山だが?」

 名もない試作型から始まったあのゲリュオーンシリーズが全てバラバラに解体されている様をみて、彼はそういった評価を下す。

「まぁ……今すぐ、というのは難しい話だ」

「それは残念です」

 時間は少しばかり前後する――暗殺ギルドに隣接するように存在する敷地、私達はタロスの工房にやってきていた。



    [to be Previous scene...]



「――で、だ。軍師」

「私は軍師じゃない」

 このセリフを言うのも久しぶりだな。

「帝王閣下から直接称号を貰ってか?」

「……返上したいから、身近なところからコツコツとやっているんだよ」

 プロパガンタ、風評被害……そういうものは実に巨大な影響を及ぼす。私が李儒さんの身柄を預かることになってしまった理由から、その強い力を利用すればいい、そう考えるようになった。

 だから、まずは小さなところからコツコツとこうやって根気よく否定しつづけないといけない――

「まぁ、本人が照れ隠しで言っていることです。いちいち取り合っていては面倒くさいですよ?」

 ――陰険孔明(李儒さん)の妨害があったとしても、だ!

「そうか……まぁ、ともかくだ。この馬鹿の作った兵器で起こってしまったこの事件、どうにかして穏便に(・・・)収束させるための策をひねり出せ、軍師」

「だから、私は、軍師じゃ、ない」

 そういえば初めて私のことを軍師とか呼んだのはこの近藤さんだったような……そうか、自治組織団体を自称する暗殺ギルドのトップが諸悪の根源だったのか。

 そう考えると、いつだかクロウが言っていた司法ギルド――というか弁護士ギルドの設立が待ち遠しい。早く出来て欲しいな。

「と、言うかね? まず情報が足りない」

「――確かに、そうですね。現状分かっているのは、ファフニール計画そのもののこと、だけですから」

 李儒さんが相槌を打つ。

「そう、今分かっているのはファフニール計画のことのみ(・・)なんだよ、近藤さん。言わなくても分かると思うけど、とにかく情報には鮮度があるんだ。しかも足が早い、一分前の情報すら信用できなくなるくらいにね? そしてそんな情報をほとんど与えられていない私には分からないことだらけだ……なのに、どう捻りだせっていうのさ?」

 近藤さんは「む……」と小さく唸り声を上げる。気付かなかった、という訳でもないだろうに。

「だが、軍師ならば一を聞いて十を」

「知るか馬鹿」

 ――っと。想定の範囲外の言葉に対して、思わず口が悪くなってしまったね。

 次はもうすこしオブラートに包んで罵倒しよう。

「まぁまぁ……確かにレンさんは知らされて飛んできただけですし、私達もほぼそのような状況ですからね。タロスくんの作ったもののスペックは大まかに把握できはしましたが、今度は相手の目星をつける、そして対策を考える。当然ですよね」

 さすが現役警察官のお父さん、よく分かっているよね。

「まぁ、事後処理で今後発生しないようにするにはどうすればいいか、まで考えなければならないのですが……そこはまだ時期尚早というものでしょうかね?」

「そうですね」

 そして李儒さんがお父さんに呼応するように肯定する……結果として李儒さんの面倒を見なきゃならなくなったけれども、いい人材を手に入れられて幸運だったようだ。

 人聞きが悪いかもしれないけれど、

(いい買い物だった)

 思わずそんな言葉が頭に浮かんで、頬が緩む。

「――で、軍師(レン)さん。いつも無表情で空気になろうとしてもそうは問屋が卸しませんよ? 所詮は無理な話ですし」

 そこに李儒さんの冷たい言葉のナイフが私に向けられる……頬が緩んでしまったことには気づかれなかったけれども、なんか複雑だな。

「これでも私は、結構感情が顔に出やすいと巷で評判――」

「というプロパガンタですね、分かります」

 ――ではないけれど、両親から「顔に出やすい」って言われているのは本当なのにな?

「まぁ、軍師のポーカーフェイスは今に始まったことではあるまい。今は対策を立てることこそが肝心である!」

「たまに笑うけどな、ねーちゃん」

「大概ヤベェこと考えてるときだよなー」

「まーなー」

 身内全員がセメントだ……なにがどうして、こうなったんだろう?

「まず、どうしてこの事件が発覚したのか。というのが疑問なんだよね。正直なところ、技術はスキルでどうこうなるだろうし……それこそ設計図の写しだけで十分だと思うんだけど」

「名もない試作機から、今までのゲリュオーンシリーズすべてが分解されていた。いいか? 解体ではなく、分解だ」

「……壊されているのではなくて、パーツごとにされていた、ということ?」

「そうだな。大雑把に見て腕や足が外されている状態だ。内部までは、まぁ、見てみないことには分からんが」

「それ、誰でもできる?」

「誰でもできるか、との質問は大変遺憾に思う」

 それもそうか。

 タロス、ロボットを普及させようと躍起になっていたものね。

「できるんですか? できないんですか?」

 もっとも、この場で唯一そんなことを知らない李儒さんは苛立ったように問いかける――まぁ、知らなくとも察することはできると思うんだけどね。タロスの偏執的なロボット愛とか、普段の言動とか……李儒さん自身も色々言われたみたいだし。

「例えば、ここに自動車があるとしよう。これをボルトの一つ残らず分解するのに大なり小なり技術が必要なのは当然だが、最も重要なのは知識だ」

 ――そして、一瞬だけ溜めるように深く息を吸う。

「そもそも私はロボットアニメなどでよく出てくるロボット専門の技術者、特に整備担当が嫌いだ。当然、専門知識が必要な箇所は当然あるだろうし、完全新規で製造するならば当たり前のようにその専門知識が必要になる。だが、科学技術というものは理屈と理論と方法と過程が同じであれば誰でも再現可能な結果を導き出すものだ。つまり整備程度で技術者が必要であるという事自体、それはまだまだ発達すべき余地がある技術である証左ではないかと」

「長い、四十字以内で話してくれ」

 私が止めに入るまでがワンブレス。ちょっと変なスイッチを押しちゃったらしいことを後悔しつつ、私は頭痛を抑えるよう額に手をやった。

「……仕様書を読めば素人でも大体なんとかなる」

 四十字もかからない、一言で終わることをなぜ長々と話すんだろうね、タロスって。一度スイッチが入るといつも――と言うほど長い付き合いじゃないけれど――こうだ。

 あと、どうでもいいけど分業は作業効率や責任問題にも関わるからどのみち技術者は必要だと私は思う。じゃないと航空旅客機とかの整備班に資格が要らないとかそういう話になっちゃうし。

「で、次の質問だけど」

「分かっている、みなまで言うな……そもそも私自身、分解して保管しておく、などというスクランブルに対応できない行為を行うつもりは毛頭ない。分解整備をやるならば、必ず一機は残しておく」

 まぁ、分解できるかどうかの質問の後にする質問と言えば、タロスが勝手に答えてくれた質問とか、そういうのしか考えつかないよね。

「そのせいでうちの敷地が相当侵食されているがな」

 察するに、近藤さんに多大な迷惑を掛けているらしい。

「つまりその説明書を読めば誰でも分解することが可能ではありますが、少なくとも多少の技術は必要だということですか?」

「技術など飾りだ。足りない技術をフォローするための技術も存在するし、合わせて開発を進めていたものもある」

 なんだか技術という言葉がゲシュタルト崩壊してきた……ヘルフリートくんとキリヤちゃんは既にちんぷんかんぷんらしく、部屋の中を見回したり、窓の外を見つめたりしている。授業中の小学生か、なんてツッコミを入れたいけれど……二人とも小学生なんだよねぇ。

「まぁ、要するに自家栽培したジャガイモを剥くのが苦手な人のためにジャガイモ専用のピーラーも並行して作っている、という認識でいいのかな?」

 例え話を言った時、授業に集中してくれない小学生に授業を受けさせようと必死で面白い授業を考えようとする小学校の先生が脳裏に浮かんだ。

 ――なんで私、こんなことしなきゃならないんだろうね?

「そう、プラモデルを作るさいの小道具と一緒だということだ」

 ――なんでたとえを別のにするのかな?

「どっちでもいいです。要するに、時間さえあれば誰でも出来た、ということなんですよね? ……なんでその程度の事だけのためにこんなに時間を使わなければならないんでしょう? そう考える私は異端ですか?」

「いや、李儒ねーちゃんの言うことは正しいと思うぜ?」

「俺様はさっさと何すればいいか教えてくれないかな、って思ってる。ジチョーチャーシューってヤツだってもう少し早く終わると思う」

「いえ、これが意外と……まぁ事情聴取は法的な拘束時間などの関係もあって、思うほど時間を取れませんからね。だから昔は本当に乱暴な先輩が居まして……と、今は関係ない話ですね、失礼しました」

 お父さんはまるで空気を入れ替えるように、ははっ、と申し訳なさそうに笑う。

「私のどうでもいい話で軍曹さんの機嫌を損ねたくないですし、今分かっていることをとりあえず列挙してみましょうか」

「別に自分は機嫌を損ねはせん。いつの時代も、会議を躍らせるのはトップの業だからな」

 まるで自分は会議に関係ありません、みたいな言い方だなぁ……いや、事ここに至って、上からの命令を淡々とこなすと決めたのかもしれない。

 ――それでも、少なくとも口は挟んで欲しいとは思うけどね。

「じゃぁ、軍曹さんの寛大な意見も聞けましたし、少しリラックスして進めましょう。今分かっていることは、侵入されたこと、タロスくんのロボットが分解されていたということ。以上については、タロスくんは普段はそんなことしないから、侵入されたことが分かった。ということですね?」

「そうだ」

「では、なぜ設計図とパーツの一部が盗まれた、と?」

「パーツの予備も用意せずにロボットを作るなどと、急な故障に対応できなくなってしまうだろう? だから私は常に予備パーツを二つ用意する」

「それで?」

「何をどうされたか分からんような、分解されたパーツをそのまま使うのは危険だと判断し、予備パーツを使おうと倉庫を確認したときに気付いた。パーツ在庫が足りない、と」

「なぜ盗まれた、と?」

「意味がないからだ。言えば情報は公開するが、当然、契約に反しない程度の当たり障りのないものだけだ」

「内部犯行については?」

「私が技術者を育成するとき、口をすっぱくして言うことだが……人の命がかかっているものに対して真摯でないものは信用しない。そして信用しない者はそもそも工房に入れなどしない」

「疑ってなかった、と……」

 まるで警察官が事情聴取をしているみたいだ――いや、現役で警察官なんだけどね? お父さんは。

「近藤さんは、内部犯行についてはどう思います?」

「≪ウソ発見≫にかけた。ないと断言しよう」

「……あのスキルは、ウソさえ言わなければどうにでもなりますよ? 現に私、軍師(レン)さんから痛い目に合わされましたので」

「む、そうなのか?」

「痛い目にあわせたつもりはないんだけどな……まぁ、事実だけでも人はウソつきになれるんだ。≪ウソ発見≫スキルにかけるなら根掘り葉掘り聞くしかない、としか助言は出来ないかな?」

 例えば「佐藤さん」「来た」の二つを、「は」もしくは「が」で繋いで文章を作るとしよう。

 佐藤さん「が」来た……佐藤さんに限定した言葉に聞こえるね?

 佐藤さん「は」来た……他にも来る人がいた言葉に聞こえるね?

 含むところがあるとしても、どちらも「事実」だから「ウソは言っていない」んだ。

 そして日本語はこの「は」と「が」を省略しても通じてしまうような曖昧さもネックになって、省略してしまえば佐藤さんが来たこと以上の事実は伝わらない。

 ――≪ウソ発見≫スキルに頼りすぎると思わぬ見落としがある、という一例だね。

「まぁ、現状で内部犯行を疑っていたらキリがないよ。≪ウソ発見≫スキルを使っている人がウソをついている可能性もあるし」

「まるでウソツキ村みたいだなー……」

「まっ、俺様たちはこむづかしいことわっかんねーけど!」

「……えっ?」

「えっ?」

 どうやら二人の間に微妙な亀裂が入ったようだけど、それはまぁ、この際放っておくとして。

「こうなると、盗まれたことに対して気付いて欲しかった、という線が濃厚だと私は考えてしまうんだけど……どうだろう?」

「意味が分かりません。逃亡するなら少しでも時間を稼ぐために盗まれたことに対して気付かれないようにするのが普通でしょう? なぜ逆の事を?」

「本当に、本当に考えたくはないんだけど……濃厚すぎるから言うね?」

 ――これ、GMが犯人じゃないのかな?



    [to be Next scene...]



『GMならば……としか答えられぬ話でござるな。特にジルコニアGM、彼女はプレイヤーへのいたずら行為に関しての逸話が多くござるよ。本人はいたずら好きの妖精を気取っているので、役割(ロール)としては正しい話でござろう』

 ――ふと、問い合わせ(コールし)専門家(こごろう)の言葉が思い出される。

 おそらくはタロスの工房で、タロスの大切にしていたロボットが見るも無残に四肢をもがれていたことに由来するんだろう。

 タロスがジャンクヤードと揶揄したように、いたずらにしてはちょっと度が過ぎるんじゃないのかな、と思えるほどだったからだ。

 工房ではいろんな機材が散乱していて、ゴミ箱の中身、アイディアノートのようなもの、仕様書や設計図がばら撒かれている。ジャンクヤードというよりも、ここだけ局所的な地震があったみたいだった。

「それにしても、まぁ……現場は保存しておいて欲しかったんですが」

「身内の悪質ないたずらだと思ったのだ。こういう手合いは無視したほうがいい。イジメも、ゲーム感覚だと聞くからな」

 一応、これでもある程度は片付けた後らしい。人の片付け方は様々だし、きっと大切なものから先にかき集めたんだろう。

「イジメのリーダーは主に家庭内で不満を抱えている人物である場合が多く、イジメに参加している人間の多くは自分がイジメの対象にならないようイジメグループに属しているだけという場合が多いと聞きます。ゲーム感覚とはまた違うかと」

「レンの弟子」

「弟子じゃありません。李儒です」

「不満があるからこそゲームで解消する、違うか?」

「あなた阿呆ですか? 専門家でもない私が、そこまで知るわけないじゃないですか……レンさんじゃあるまいし」

「私は専門家じゃない」

 ちょっと人より多く本を読んでいるだけのごく普通の、ありふれた女子校生だ――なんて言ったらきっと周りから「ダウト」だとか「ウソだ」だとかそう言われるだろうし、黙っておこう。

「でもレンさんなら知っていてもおかしくない気がしますね。元々クロウの弟子だったんでしょう?」

「あの時は弟子になった覚えもなかったんだけどねっ!」

 というか、一ヶ月近く前の話じゃないか。

 きっと私がどれだけ成長したとかそういうことを楽しげに話したんだろうね。だってブリュンヒルデさんの目の色が若干ながら嫉妬に染まっているもの!

 思わずクロウを見る。

 サッと目をそらされた。

「クロウってさ、身内にすごく甘いよね?」

「そうなんですか?」

「子煩悩になりそうだな、と思う程度には」

 それを言うと、ランディも子煩悩になりそうだ。

「へぇ、そうなんですか!」

「もう結婚しちゃえば?」

「Oh! そう思います?」

「思うよ?」

 たったこれだけのやり取りで、あからさまに顔を青くするクロウ。

「クロウもそう思うよね?」

 そこにあえて話題を振ってみる。

 追撃とも言うけど。

「ま、まだ責任取れるだけの能力ないし? やから、まずは来年の六月まで頑張ってみよかな、と思ってんよ?」

「クロウって素敵ですねっ!」

「あ、あんま褒めんといてくれ……!」

 私は、クロウが存分に戸惑う様を見て、少しだけ溜飲を下げた。

 今できる復讐……これが私の精一杯。そういうわけじゃないんだけれども、たった一言で人を傷つけることが可能って、ちょっとすごいことだよね。

 人はそれだけ言葉が発達して、ほかの動物よりも強いコミュニケーションを取ることができるってことなんだもの。

 ――まぁ、そんな素敵な言葉について思いを馳せている場合じゃないんだよね。

「本職の目から見て、どう思う? お父さん」

「現場検証はほぼ鑑識の役目ですからねぇ。私は立会いなどはしたことがあるものの、鑑識の知識なんてほとんどありませんのでなんとも言いがたいことですが……まぁ、勘に近い感想なんですが」

「いいよ、続けて」

「空き巣の素人が乱暴に物色したような、帰ってくるかも、という恐怖に怯えながら必死に目的のものを探している……というものを再現しようとしている芸術家肌の犯人像が浮かびますね」

 なるほど、と思わず頷いた。

 目的のものを最小限の動きでこなし、さっと撤退する。そういうプロではなくて、何事にも美しさを求めるタイプか。まぁ、そういうタイプじゃないとわざわざロボットを分解はしないだろうけどね。

「GMってろくなことしねーな!」

「まだGMが犯人って決まったわけじゃないよ、ヘルフリートくん?」

「そうですねぇ、決め付けるのはよくありません。たとえ誤認逮捕をしても、警察は頭を下げられませんので」

「なんで?」

「下っ端の私にはよく分からないことですけど、信用はもとより、一度舐められると交通課や少年課が苦労してしまうらしいんですよ。まともに取り合ってもらえないどころか、からかわれて仕事に支障をきたしたり……」

「へー」

「……と、上から説明されました」

「って上からかよっ!?」

 でも結構重要なことではあると思う。

「まぁ、そんな話はさておきまして……仮にGMでないとしたら、タロスくん、誰かほかに心当たりはありますか?」

 多分お父さんが本当に聞きたいのは、「仮にGMでないとしたら」ではなくて「GMに協力しているプレイヤー」に近いんじゃないのかな、なんて思う。

 ――いや、だったら少し配慮して「GMに唆されてしまったプレイヤー」って言うか。お父さんの性格的には。

「ふむ……数名、同士がいる」

こんなの(・・・・)に数名もいるんですか!?」

「――レンの弟子。貴様とは今度決着をつけねばならんようだ」

「李儒です、弟子じゃありません」

「……なぁ、李儒のねーちゃん? オレですら言うの我慢してたんだから、少しくらい我慢したらどーよ……あとタロスさん、所詮は子供の言うことだぜ?」

「子供は黙っててもらおうか」

「子供には分からないでしょうね」

「……ハァ」

 その三人の中では一番精神年齢が高いであろう、一番年下のキリヤちゃんがほんの少し肩を落としながら、呆れたようにため息をついた。

「ねーちゃん、パース」

「結局私なのか……」

 はなはだ不本意だよ……これが終わったら私、しがらみ全部忘れられるように、一人で温泉旅行にでも出かけよう。

 ――あ、いや。アスールの障害になる、という目的もあったね。断られる前提でランディでも誘おう。何もしないとそれはそれで怠慢だしね。

 私の計算上、ランディならきっと「これ以上休むと店がヤバい!」と言って断ってくれる。九分九厘間違いない。

「じゃぁ、改めて聞こう。不毛な争いは見ていて疲れる……心当たりは?」

 そんな取らぬタヌキのなんとやら、頭でそろばんを弾きながら、タロスに問いかけた。

「最も有力なのは、私のライバルである――」

「あっ、一人でも自分を含めれば数名でしたね。すみません」

「李儒さん、茶々を入れないでくれないかな?」

「――ともかく、好敵手(ライバル)である」

「なんで言い換えたんですかね? かっこいいからですか?」

「……ヘルフリートくん、キリヤちゃん。ちょっと李儒さん外に連れてって」

「「え~……」」

 面倒くさそうな声を上げるものの、二人は李儒さんの両脇を固めた。

「あっ、こら、何をするんですかっ!」

「ねーちゃんの命令だしな」

「離しなさいっ!」

「やだ、ねーちゃん怖い。俺様悪くない」

 離せ、離さない、なんてことを言い合いながら、李儒さんは小学生二人に両腕を引っ張られていく。

 ――ああ、いちいち突っかかるのが面倒くさいのがようやくいなくなった。

 というか、惚れているわけでもあるまいし、なんで突っかかるのかな? 精神的に成熟してるような感じなのに、今更思春期の子供じみたことをやるなんて考え辛い。

(未だに根に持ってるのかな、リボルバーの件)

 断られた理由も断った理由も私には理解できないけれど……これでようやく質問に移れる。

「で、心当たりの、その……ライバルって?」

「……浪漫もなにもかもが台無しだが、まぁいい」

 タロスは少しだけ間をおいて、あえて溜めるようなしぐさをする――ちょっとだけ李儒さんの気持ちがわかった気がした。

「奴の名は――ドクター! マミー!」

 これはウザい。

「私の友人であり……そして、この世界有数の、ロボット工学の権威だった男だった……それが、なぜ……!」

 なんで歌劇風でお伝えされなきゃならないんだろう?

「――……気は済んだかい?」

「ああ」

 さらっと答えてくれるタロスを見て、李儒さんがつっかかるのも無理はないなぁ、と思った。

 たぶんタロスさんはこの小説で最も有力な「萌えキャラ」ではないか、と最近思います。


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