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剣と魔法の物語  作者: 神楽風月
初心者脱却編
88/97

Extra 解せないタロスさん

 火力、風力、水力、地熱、原子力――わりと知られていないかもしれないが、波力(はりょく)というものもある。それぞれ使うエネルギーは違うものであるが、結果として電気を生み出す装置……人、それを発電機と呼ぶ。

「ものすごく大雑把に言えば、昔流行ったミニ四駆というものがあるだろう? 作ったのは、タミヤ模型だったか……まぁ君たちの世代でも流行っているかどうかは知らんから、この際どうでもいい。アレに使われているモーターは電気で駆動する。だがモーターとは基本的に可逆式――要するに、人力でもなんでもいい、駆動させてやれば電気が発生する。発電機の基本は全て、そのモーターをいかに効率よく回転させられるか、にかかっていると言っても過言ではない」

 大震災以降、ラジオなどに手動発電機が搭載されたものがよく売り出されるようになった。要するにモーターを手動で回して発電し、蓄電する。そういうシステムを入れただけである。

「正確には違うところもあるから、誤解を解くためにもう少し詳しく話したいところであるが……」

 正確には違う、というのは特に太陽光発電のことを指している。太陽光発電はp型とn型の半導体を用い、発光ダイオードとは逆の手順によって電気を作り出す。

 だがしかし、

「しかしどうやら私は話が長いらしい」

 という理由により、今回の話とは一切関係がない太陽光発電については、誠に遺憾ながら割愛することにしている。

「なのでこの際このまま話を進めさせてもらうが、このモーターに使われている原理こそ磁場内において電流が流れる導体に力が発生する現象、ローレンツ力の力の向きの関係を端的に表したものこそが、ジョン・フレミングによって考案されたフレミングの左手の法則となる」

 きちんと説明できない、これほど遺憾なことはない。

 私は誤解を招くような言い方をしつつフレミングの左手の法則を身近なもので実に端的に表現する。

 ――おそらく、私にしてはよく頑張ったほうではないだろうか? そもそも私は小学生にモノの道理を教える教師という職についていないのだから。

 私はロボットというものに魂を魅かれる、給料を貰う代わりにその会社の利益となるよう労働するごくごく一般的な人間――つまりはただのサラリーマンなのだから。

 業種として説明するのであれば、ただのサラリーマン、というところに語弊を覚える人間もいるだろう……この論法で言うのであれば、教師だろうとも総理大臣だろうともサラリーマンなのだから。

「つまり、フレミングの左手の法則は君たちふたりが身近に使っている電気などに深く密接するものだ」

 現実社会ならば考えられない、仮想世界であるからこそ通用する荒業……盆などに合わせて店を休業させた我らがサブマスターは、それによって生まれた余暇でもって自らのロリコン疑惑が深まることも恐れずに現役中学生と数日間、泊りがけの旅行へと出た。

 ――私はその間、店に居候させているヘルフリートとキリヤ両名の、勉強の面倒をみるという依頼を受けた。

 曰く、お前が一番無茶をしない、という理由でだ。

(こんなことをやるくらいならば、新型の図面を引きたい……)

 だがしかし、これをきっかけにこの二人を我が魂の道(ロボット愛)に共感させ、共に切磋琢磨する同士であり好敵手となる可能性も考慮するのであれば、一概に悪いとは言えないのもまた事実。

 ――そう考えるのであれば、これは未来への投資だ。元々身内には報酬など求めないギルドであるが、しかしこれならば逆に報酬を支払ってでも受けるべきかもしれない。

 そう思ったのは事実である。

「分かったか?」

「なるほど、わかんねーぞ!?」

「つーか話なげーよ」

「……解せん」

 何がダメだったのだ。

 これほど端的で分かりやすく、身近なものを例えとして引き合いに出し、かつ短い説明が考えつかない。

「ふむ……説明は実に回りくどいが、されど深く考える必要などないぞ? 左手をこう、銃を突きつけるようにして、だ……中指から『電! 磁! 力!』と叫ぶように覚えるがよい。指の向きが力の方向である!」

 そして私の端的で分かりやすい説明をかなり大雑把に改変し、発言する男がいる。

 我がギルドのナンバーツー、ゲーム第二陣という最古参の一人、ダーククロウだ。

「叫ぶ必要がまったくわっかんねー!」

「これがウチのナンバーツーなんだよな? すげぇ不安だぜ兄貴……」

 ……実に不思議なことだが、この店は常連、というよりギルドメンバーが勝手に住宅エリアに入り込み、勝手に茶を入れ、勝手に茶菓子を頬張るのだ。

「……確か、表には『Closs』の掛札および臨時休業の張り紙、そして鍵がかかっていたはずだが?」

 実に不思議な事もあるものだ。

(オレ)朋友(とも)との信頼関係の賜物である!」

「家主にはこの二人と私以外は追い返せと言い含められているのだが?」

「なに、いつもの事である!」

 我らがギルドのナンバーツーは腕を組んでふんぞり返る。私はヘルフリートとキリヤに意見を求めるよう視線を送った。

「ん、いつもの事だな!」

「兄貴が『お前ら表の掛札が読めねーのか!』って言うまでがいつものコントだぜ?」

 お前ら、ということはダーククロウ以外にもこうやって勝手に入ってくる人間がいるということか。

「……コントならば仕方がないな」

 社会人としては重大な問題だが。

「つーかクロウってさ、今日はデートとか言ってたよーに俺様は記憶しているんだけど?」

「ふっ……実は、だ。重大な問題が発生したがためにここにやってきた」

 思春期特有の病気を患っているようなロールプレイをしているダーククロウは、実に不思議なことに、いつものように大げさなポーズを取ることもなく、寒そうにカタカタと震える両手を湯のみから伝わる温かさで和らげるように、包み込む。

「…………ブリュン、教会で結婚式の申し込みを始めようとしてん。その時の目ぇ、なんか怖いんよ? 恐ろしゅうなって、逃げてきたわ」

「うっわ、なんだよそれ! 最低だぜ!」

「キリヤ! お前はソレを背中に硬い筒状の物体が突きつけられていても言えるのか!?」

「……結婚って人生の墓場っつーもんなー」

「ま、まぁ俺様もカンオケにカタアシをブチまけるのだけは勘弁だな……」

「ぶちまける、ちゃう、つっこむ、な? けど正しいっちゅーか、あれは片足などと生易しいものじゃあらんわ……なんちゅーかアカン臭がするっちゅーかな……?」

 なるほど……相手はいわゆる、今流行とされているヤンデレだった、ということか。

「この街に不慣れでよかったわ……あとは構成が≪PK≫フルスロットだったのも。機動力さえなくなればブリュンもただの人やし」

「だがしかし、コールぐらいは飛んで来るのではないのか?」

「とりあえずジューンブライドが云々言って誤魔化してん……来年の六月が恐ろしいわ……」

「ふむ……まるでデュラハンの予言を聞いたような心境、と言うべきだろう」

 ダーククロウと図らずとも恋仲となったブリュンヒルデ。超人野球では野手であり、その機動力を生かした幅広い防御可能領域を持つ、らしい。

 そして彼女はイギリスに住んでいる人間、らしい。

 らしい、としているのは、全てダーククロウからの受け売りであり、私自身がはっきりと聞き出した情報ではないからだ。

「とんだ妖精(フェアリー)に見初められたものだ」

「なんつーか……タロスさんにしては珍しく言い回しチャラくね?」

 年下にさんづけされることにむず痒さを感じながら、

「別にチャラチャラとした言い方ではない。事実、デュラハンは元々妖精だからな」

「「「はぁ!?」」」

 三人の声が私の耳を直撃する。

 ――実にうるさい。

「ねーちゃんだ! ねーちゃんを呼べぇ!」

「今日は自動人形(オートマタ)の稼動実験を行っているらしい。邪魔をしてはいけない」

 不思議エネルギーで動くロボットもまた心躍るものがあるが……しかしロボット自体が戦うというのはどうだろう? 共にロボットに乗り込み、意思あるロボットとなるか……せめてオペレータか、FCS(火器管制装置)となるべきではなかろうか?

 ――要するに勇者系ロボットが私の理想だ。リアルロボット系もまた、いいものだが。

(そういえば、あの男のアプローチは参考になったが……同時に私の美学に反したな)

 それはエンジンの代わりに自動人形(オートマタ)を動力源とするロボット。人力、と言い換えてもいい……量産型ゲリュオーンの改良型を作るさいに、私の同士の一人であるその男がそのシステムを組み込んだらどうだと言い放ったのだ。

 あの時の、同士に裏切られたという感覚は未だに忘れられない。また同時に、ゲリュオーンの予備動力源を人力エンジンにせざるを得なかった悔しさもだ。

 この場合は古臭く、あな口惜しや、とでも言うべきか?

「とにかく、その程度の説明ならば可能だ。そも、そういった知識に関して言うならば私の本業ではない。が、ゲン担ぎにそういった名称をつける、コードネームとして使用する、というのは私達の業界では実にありふれたことだからな」

「ロボットのおっさんが解説の役に立つだと!?」

「確かに中年にさしかかるころだからあながち間違いではない、が、おっさんと言われるようなたるんだ体ではない。おじさんと訂正してもらおう」

「アッハイ」

「つーかそれでいいのかよタロスさん……」

「いい、のであろうな」

「おじさんなら許容する、という話であるだけだ」

「違いがわかんねぇ……ってーか、オレ、タロスさんってもーすこしその……ガッチガチの固い頭してるんだろうなって思ってたぜ……」

 遠まわしに、バカにされている、というのは分かる。

 が、所詮は子供の戯言だ。私の精神年齢はそれほど幼くない……もっとも、あの男の発案に対して怒り狂ったことはあったが。

「考えてもみればタロスもゲリュオーンも名前の出自は神話であるな……その手には詳しい、というのは当然であるか」

 持ち直したクロウが顎に手をあて、納得したように頷いた。

「が、しかしそれとこれとは話が別である。軍師へチャットを開こう」

「よし、表にでろクソ野郎。グラインダーブラストか四十四ミリ対人バルカン、嫌なほうを選ばせてやる」

 もう一度言うが――私の精神年齢は決して低くない。

 私を怒らせるヤツが悪いのだ。



    [to be next scene...]



『私の職業は学生なんだけれども、どうしてまるで私がその道の学者のような扱いをされなければならないんだい?』

 セリフこそ怒っているようにもとれるが、しかし口調はいつも通り理性的(クール)だ。私には、セリフと顔が合っていない様がありありと想像できる。

 もっとも、彼女は表情筋に障害があるのかと疑いたくなるほど無表情だ。つまり私の想像では、写真の口元だけを動かしているようなイメージなのだが。

「すまない。しかしタロスが……」

『さっきも聞いたよ。私は兵器開発をやった事がないけれど』

「「「ダウト」」」

 三人の声がまたハモる。

 ――要するに、何らかの兵器を開発した、ということか。

「地雷を作ったであろう?」

「ニンジャのロケラン作ったしな!」

「あぶねぇ花火とつくっといてそりゃねーぜ? ねーちゃん」

『私は過去にあったものを再現したり、ちょっとだけ手を加えただけだよ。しかもそれは本の知識、それだけさ』

 本の知識だけで兵器の開発や改良を施したということか。実に将来有望なことじゃないか。これでは、ますます惚れ直してしまう。

「……その話、あとで聞かせてもらいたい」

『うん、タロスはちょっと黙ってくれないかな? きっとろくでもない感想を抱いているだろうし』

「なぜ分かった。というか、ろくでもない感想ではない。私たちの業界では最上級の褒め言葉だ」

『それ、その業界だけだよね?』

 ――解せん。

『で……本題に入ろうか。私も、自動人形(オートマタ)のテスト項目がまだ半分も消化されていない状態なんだ。早くテストを再開したいしね――さて、なんだったかな?』

「デュラハンである!」

「ロボットのおじさんがヨーセーだとか言ってたからホントかどうか聞きてぇ!」

『うん、元々は妖精だね。アイルランドの』

「マジかよ!」

「デュラハンといえば、首なしの騎士であるからして……妖精ではなくアンデットと思うのだが?」

 確かに、パブリックイメージとしてはそうだろう。

『そうなったのは近代創作作品から、だね。イギリスのブリタニカ百科事典によると、妖精というのは民話や中世の騎士物語に登場する神秘的存在の事を指すんだ。かなり強引な物言いになるけれども、神秘的な存在はすべからく妖精と呼んでも構わない』

「なるほど、アンデッドも妖精であったか……!」

『いや、違うよ?』

 無慈悲にも、ダーククロウの言葉を即座に否定する。

『妖精には狭義と広義があってね。狭義なもので言うと、ケルト民族が「魔法の力を使う神秘的存在」を呼ぶ単語として使っていたものなんだ。死者が生き返るとか、死体が動くというのとはまた違うんだ。広義の妖精はパブリックイメージ通りだね』

「リッ」

『リッチ、もしくはリッチーは「人間が魔法の力でアンデッド化したもの」を指すからね? そもそも存在の成り立ちからして違うし、リッチという名称はテーブルトークRPGのダンジョン&ドラゴンズのオリジナルさ。だから昔は、いとうせいこう氏の「ノーライフキング」にちなんでノーライフキングという名称で代用することが多い……んだけれども、あまりにも有名になりすぎたせいだろうね。今ではドラキュラとヴァンパイアみたいな関係だよ』

 ドラキュラは個体名であり、種族名はヴァンパイアが正確な用法であるが、ドラキュラが有名すぎて「ドラキュラ≒ヴァンパイア」と呼ぶような風潮がある。

 おそらくはそのことを言っているのであろう。

 ――そして素晴らしい割り込み(インターセプト)の手腕だ。関心するほかない。

『とりあえず、元々はケルト民族の文化だった、ということを頭の片隅にでも置いておいて欲しい。これから話すことには関係ないんだけれども』

「ねーのかよっ!」

『ないね――さて、そもそもなぜデュラハンが今のような存在になったのか、という話なんだけれど……これはアーサー王伝説の、緑の騎士だね』

「エクスカリバーのかっ!」

「エクスカリパーとかなっ!」

「エクス(ちから)リバー、というのもあるぞ?」

『ヘルフリートくん以外の二人、そういうジョーク系はどうでもいいから話を続けていいかな?』

「「アッハイ」」

 スルーすればいいだけなのに、付き合いのいい話だな。

『とにかく……ヘルフリートくんの言ったとおり、そのエクスカリバーで有名なイングランドのアーサー・ペンドラゴンだ。ほんの少し脱線するけど、エクスカリバーの異称はエクスキャリバー、エスカリボール、エクスカリボール、カリバーン、キャリバーン、コールブランド、カリブルヌス、カレトヴルッフ、カレドヴールッハなどだね。ほとんどが言語の違いや読み方の違い、表記揺れになる』

「エクスカリパーとかそんなレベルじゃなかったわー……」

「いや、しかし逆に考えよ……言語や読み方の違い、表記揺れによっては我やキリヤの言ったものが存在すると……!」

「そっか! 頭いいなっ!」

 どこが、だ。

『Ex! ca! li! bur! 英語の発音通りに発音すると、君たち二人が言ったものにはどうやったって、ならないからね?』

 やたら流暢な発音、特にLとRの発音が実に素晴らしい。きっと、海外でも通用するだろうな。

 あと、エクス(ちから)リバーなら、日本語訳にした際にそう読んでしまう可能性もゼロではないだろうとは思うのだが……まぁ、野暮なだけか。

 ――そうするとスペルは「Extra Power returns Sword」か? 軍刀なら「Extra Power returns saber」と訳するほうがいいかもしれないな。

 再翻訳すると「余分な力を返す剣」になるが……いや、あながち間違いではないかもしれんな、エクスカリバーの鞘は持ち主を治癒する力があると言われているらしいのだから。

 まぁ、無駄な話だな。

『で、緑の騎士の大まかなあらすじだけど、アーサー王以下円卓の騎士が勢ぞろいしているところに完全武装で乗り込んだ衣服をはじめ髪から皮膚、さらには跨る馬まですべて緑色の騎士が――』

「ちょっと何を言っているかわかんねーぜ!」

 ごもっとも、と言うほかあるまい。

『作者に言ってくれ。あとアーサー王伝説と言ってはいるけれど、戦うのは円卓の騎士の一人であるガウェインだ』

「部下に押し付けるとかすげぇなアーサー王!」

『いや、元々ガウェインの度量を試すための罠であって、幻覚どかそういう類のものだったらしいんだけれど……ともあれ、ガウェインに自分の首を大鉈でかき斬ってみろと挑発して、それでもし自分が無事だったら、それに相応する挑戦を受けろとガウェインにもちかけた。そこでガウェインは言われるとおり、緑の騎士の首を一振りで斬り落とすんだけれど、首から血を吹き出す緑の騎士は全く動じずおもむろに自分の首を拾い上げてね、「一年後、緑の礼拝堂で待っている。そこでお前に仕返しの一撃をくれてやる」と猛々しく言い残し、首を小脇に抱えて走り去るんだ』

「指さして帰ってったとかそんなレベルじゃねーぞ!?」

「つーかガウェインパねぇ!!」

 一応知っている話ではあるが、改めて他人の口から聞くと「それはないだろう……」という感想しか思い浮かばない。

『騎士同士の、命がけの決闘みたいなものだしね。当時ほど騎士の命が重くて、軽い世界はないと思う』

「矛盾した話であるな」

『まぁそこから転じて、騎士が最初から切り落とされた首を抱えていて、指名した相手を殺す、という話に変わって言ったんだろうね』

「で、一年後のガウェインって息してんの?」

『さっき言ったとおり、ガウェインの度量を試すための罠だからね。ちなみに、ガウェインは再会した緑の騎士に抵抗することなく首を晒しているよ。すごい度胸としか言いようがないね』

「ガウェインこえぇええええ!?」

 この部分だけ聞くと、鬱病患者が躁状態になったときに「首が落ちても数分は生きてるって本当だろうか……?」とか考えて、試しにやってくれ、と言っているようにしか感じない。

 自分が死ぬとかそういう発想に至れず、好奇心のみで行動する――鬱病患者の厄介なところだな。あの患者達は「ここから飛び降りたらどうなるんだろう?」と「高いところから落ちたら死ぬ」がイコールで繋がらないのだから。

『さて、緑の騎士はイングランドの物語だけれども……本来のデュラハンはアイルランドの民話伝承だ。そちらでは、近いうちに死者が出るという家の前に首なしの馬か、その馬が四頭で牽く棺桶を乗せた馬車で乗り付ける、首を抱えた妖精だ。死を予言するだけの存在だね』

「ふむ……微妙にミックスされているのであるな」

『ちなみに女性だそうだ』

「俺様、女騎士はアリだと思うぜ! なんかかっこいいし!」

『騎士の姿はしていないけどね……あとは、同じく死を予言するバンジーという妖精と一緒に現れることもある。こちらは泣くのが一般的だね。熟睡していても飛び起きてしまうぐらいの声で』

「はた迷惑なっ!」

 今なら迷惑防止条例だったか、それで訴えることもできるだろうな。

 どちらがやってきても。

『バンジーは泣く人数が多ければ多いほど、徳が高かったり、位が高い人が死ぬ。そういう予言をするんだ。ちなみに、彼女達は死ぬ人の服を、死ぬ前に洗うという風習もある。死神に見えるかもしれないけれども、やってることは単なる予言なんだよね』

 まぁ普通そうは思えないだろうが……。

『バンジーがデュラハンと違うのは、バンジーは家系の守護者なんだ。赤ん坊を見ていてくれたり、チェスの駒の動かし方を教えてくれたり』

「もーちょい、その……マジでそれで守護してるつもりなのか?」

『つもりなんだろうね。もちろん、ほかにもやっていることはあるんだろうけど……ああ、そうそう。あと緑の意味を教えないと』

 ――緑の意味?

 そこにも意味があるのか、知らなかったな。

『妖精にとって緑は「命の再生」と「永遠」を意味する。そして赤は「破壊」や「死」だ。緑の騎士が妖精だと言うのであれば、本当に殺す気はなかった、とも取れるね』

「ほほう……?」

『だから妖精は緑か赤の服を好んで着ている、とされているね。ちなみに妖精の色ということで、緑色の服を女性が着るのは避けられているんだ。自分の子供が妖精の子供と取り替えられるチェンジリングとか、そういう伝承もあるし』

「……と、いうことはだ。中世の世界観のゲームでよく見かける、緑色の服を着る女性は」

『恐ろしく空気が読めていないとか、本当に妖精か……まぁ色々と考えられるね』

 面白い話だ。

 これは現代にも通用するだろう――そう、たとえば、

「片耳ピアス、もしくはレインボーカラーと同じ、ということか」

 今更説明するまでもないだろうが、ジェンダーフリー、要するにゲイなどの同性愛者が掲げる旗の色のようなものだ。

 片耳ピアスも同じような意味だが、「右耳は守られる人」で「左耳は守る人」を指し示す。性別的な意味合いであるなら、男は「左は勇気と誇りの象徴。右はゲイの印」であり、女は「左はレズの印。右は優しさと成人女性の証」だそうだ。

 まぁファッションとして取り入れているだけという場合もある、本物たちはこういったさり気ないアクセサリーやしぐさ、服装、髪型、髭の剃り具合などを手がかりに、慎重に腹の探りあいを行うのだそうだ。

 ――まるで推理小説の世界だな、と漏らしたらレンに怒られてしまうかもしれんから、言わないが。

『まぁ、そういうことだね』

「レン、タロスよ……子供の居る前でそれはないと思うぞ?」

『おっと、すまない……こちらの配慮が足りなかったね』

「ん? ダメなのか?」

「いや、私が思うに、別に隠すようなことではないと思うが?」

 結局のところ、個人の趣味なのだ。

「あとで調べてみるぜ!」

『……責任は取らないよ?』

「そういう調べものについては、そもそも個人の責任の範疇だと私は思う。そして私は、偏見を持っていてはロボットなど作れんとも考えている……そもそも二足歩行は浪漫であり人類の技術の粋を集めた芸術品だ、日本刀と同じようにな。故に、足なんて飾り、という名言もあったようだが、その二本の足、二本の腕、五本の指――人間と同一の姿をしている、それこそが重要なのだと私は声を高らかにして言いたい」

「言ってる意味は分かるけど分かんねーよ、ロボットのおじさん」

「オレまったく分かんねー」

 まぁキリヤのように、女の子に分かるとは思っていないから想定どおりの回答ではある。が、ヘルフリートの分かるのに分からないとはどういう了見だと聞きたいところだ。

「同意はするが、残念ながら我の好きなのは多脚型でな……特にケンタウロス型が良い。ケイローンなどと言う名前ならばなおの事心躍るな」

 そしてダーククロウ……妥協できるという意味では一番の私の理解者ではあるが……ここは私の信念を曲げてでも多脚型ロボット作成――彼の好きなものにちなみ、ケイローン計画と名付け、発動するか……!?

『はいはい、どうでもいいよ、私は……じゃ、実験に戻っていいかな?』

 だが問題は、頭のいいはずの、私の一番の狙いであるはずのレンからどうでもいい発言……これが私の心に大ダメージを与えてくる。

「むぅ……」

 なぜ私の意見に同意してくれる者が少ない……男に生まれたならば魂で理解できように。今日一番の解せん話だ。

 タロスさんは愉快だな(棒)。

 本編とはあんまり関係のないお話でした。



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