第77話 英雄神
「電撃戦、今でも研究されている分野ではありますが、要するに高機動部隊を高度な連絡網によって機械的な組織として運用し一点突破するという戦闘教義――なのですが」
「が?」
「ゲームで行おうとすると、つまるところ、全軍突撃となんら変わりありません」
非常に遺憾ながら、この作戦において後方の司令部の活躍はほぼないと言っても過言ではないでしょう。なぜならば、指揮系統のほとんどを前線指揮官へ委任し、全戦力を前線に投入。然る後に敵前線をこじ開け脆弱点を作成、数百マイル後方の司令部を叩くというものなのですから。
「要するに、前線に立つ騎士が司令官を兼ねていた頃に行っていた突撃戦とさして変わらないのです」
実際に効率よく運用されたのは第一次大戦初期のドイツ国防軍だとされています。
「つまり、ここを引き際にする、ということか」
ガランティーヌさんが、妥当かもな、と呟くのを私は聞き逃しませんでした。
「いいえ、引き際にはしません。正しくは、引き際にするかもしれない、という選択肢も視野に入れての作戦行動ですが」
リアルの電撃戦に関しては、ゲーム上なんら意味はありません。
「ですが、私は元々軍師を目指していた人間です。その程度の研究や改良ぐらい、やっていて当然だとは思いませんか?」
まぁ、改良というほどの改良ではないのが悲しいところですが……、
「単純に言えば、電撃戦とは名ばかりの、機動力を利用した単なるヒット&アウェイです。繰り返し行って、手足をもぎ取りにかかりましょう」
「手足をもぐ、とは?」
「単純じゃないですか」
彼女の手足とは、つまるところ補給部隊とあの面倒なトラップ群――となれば?
「そう、作戦はすごく単純です。一つは補給部隊を叩くことですね。ただし、殺さずに」
「殺さずに、であるか」
「そう、街で長い休暇を取ってもらいます」
補給部隊を全て殺してしまうのは、ルール違反ではありませんが、マナー違反にはなります。
なので、殺さず街で長い休暇を満喫してもらうことにするのです。
「人数がいるからこそ取れる作戦ですね。主要路さえ押さえておけば、魔物の餌食になってくれることも望めますから」
そして人数が多いからこそ取れる作戦でもありますね。交代要員をいくらでも用意できるのですから。
「主要路を監視しておくのは数名で十分でしょう」
そこにいる、というだけでプレッシャーはかかるものです。
「ここには小五郎さんを割り振ります」
「なぜ拙者を?」
「ついさっき襲ったじゃないですか、そのままフットワークが軽い印象を与えておきましょう。騎兵よりも機動力の高いダーククロウさんの空挺部隊はまだ温存です」
「ならばしかたあるまい」
「私は直接敵軍本体を削りに行きます。ガランティーヌさんたちにも来て欲しいところですが……温存ですね」
敵軍師にはアリスさんやガランティーヌさんがこちらにいる、というだけで動揺を誘えそうですから、会戦時まで温存しておきたいところです。
「ということはー……今回もアタシ達は留守番かー。らっくちーん!」
あなたは暴走する危険性があるのでここに軟禁しているだけなのですけどね。
「で、本体を削るってどうするつもりだ?」
「単純に、ゴーレム部隊で一部のトラップを一掃します。あのスモークの中で、トラップを仕掛けていい気になっているよですが……」
そのトラップのせいで自分たちの逃げ道を封じられる、なんて……なんと皮肉な話でしょうね?
[to be next scene Side Len...]
敵襲、という報を聞いた。
どういう状況だい? と聞き返した。
ほんの三十センチほど掘った穴に次々とはまっていく、大勢の集団のようです、と返された。
「――じゃ、全部ゴーレムだね、矢を射掛けるまでもないよ」
北門のトラップは特に凝っていない、石兵八陣作成のために掘ったところをを放っておいただけの、ほぼ三十センチほどの穴だらけだ。そして意外かと思われるだろうけれど、これは騎馬隊の突撃を防ぐとてもとても簡単な罠になる。
なぜか?
馬は足を骨折すれば命に関わることは素人でも知っていることだけれども、最大の理由は馬だから、だ。
鹿が絶壁の崖を下りていくところから着想を得たとされる、源九朗義経が行った「鵯越の逆落とし」――実に有名だね?
でも馬ではほとんど成立しない。なぜなら鹿は奇蹄目、崖などを飛び降りるのに適した蹄のつくりをしているのに対して、馬は平地を走るのに適した偶蹄目。
そう、馬は悪路にまったく向いていない。
おそらく何人も、そして何匹も落馬し犠牲になったんだろう……それでも奇襲を成功させてしまったからこそ源九朗義経という人間は恐ろしい武人であり、軍略家なんだよね。
『え、あの、ですが――』
時計越しに北門を守る射手長の、戸惑いの声が聞こえてくる。
「ゴーレムで罠を調べよう、という作戦なんだろうね。そしてあわよくば、罠の無力化」
ほかの門に反応はない、のであれば、私達を袋のネズミにしてしまおうという魂胆だろう。
――いや、そうじゃないね。
きっとこれは囮だ。
スモークを焚く前は反対側の南門にも罠はほとんど設置していないということは、相手もよく知っているハズだ。
だからこのゴーレム部隊は、初心者ばかりのこちらを恐慌状態に陥れての、反対方向へ逃げ出させようとさせているんだろう。一種の「啄木鳥戦法」になる。
「あれは気にするほどのものじゃない。分かったね?」
『ですが――」
「分かったね?」
『りょ、了解しました』
そのままパタン、と時計を閉じる。やれやれ……ゴーレムは怖いけど、見えないものを操作するものほど難しいものはないのだから、まったく怖くないのにね。
トラップにかかり放題、それでいて、起き上がるという命令を下せないから転んだまま。乗り越えようにも、前のゴーレムが邪魔で通れない。
機動力を奪う、ということは、つまりはこういうことだ。
「――さて、思ったよりも動きが早いね。驚きだよ」
「ねーちゃん全然驚いてねーよね!?」
「驚いているさ」
ヘルフリートくんも、大概酷いことを言うなぁ。
こんなに顔に出やすいタチなのに。
「それに、この時期に相手の砦を落とそう、だなんて考えてなんていないさ。大方、こちらの罠を無力化して、最終局面では突撃しか出来なくさせよう、って魂胆なんだろうさ」
そうでなくても、後ろに逃げれば本隊がいるはずだ。いや、私なら必ず設置するね。
逃げてしまえば、きっと私と閣下は生け捕りにされて、最終日に公開処刑という形での幕切れを狙っているんだろう――当初の目的どおりに、ね。
「でも、罠の位置を記録されるのも面白くない話だよね? こっちはさんざん、輜重部隊を叩かれ続けている、というのに」
彼らに対して襲い掛かってきたのは、風貌や言動からして小五郎をリーダーとした部隊のようだ。
さらに言うなら、小五郎は荷物と武器や装備を破壊した後はただ追い回して、街に押し込めるだけという本人らしからぬ戦い方をしている。小五郎なら、真っ先に斬り殺してもおかしくはないのにね?
実に不可解で、そして実に分かりやすい作戦じゃないか。
ルール違反じゃないけれど、殺すのはさすがにマナーに反する。あたりの理由なんだろうね、戦力を限りなく分断させるための作戦としか考えられない……いや、もしかしたら私の想像もつかない壮大な計略なのかもしれないね……ふふっ。
まぁ、わざわざ逃がしてくれると言うのであれば、逃げてあげようじゃないかと言うことで――もう面倒くさいから、襲われていない輜重部隊も、荷物を捨てさせて、街に非難させてしまったよ。
――もちろん、きちんと毒を持たせてだけれども。
「あの輜重部隊の中に、こっちの切り札になりそうなベテランプレイヤーがいたらどうするつもりなんだろう……本当に、一体どう落とし前をつけてくれるんだろうねぇ?」
「ねーちゃん、顔、顔!」
「女がやっちゃいけない顔になってっぞ!?」
「っと、それはまずいね。慎み深い女性を演じておかないと、男をコロッと騙せなくなる」
まぁ、冗談だけれども、
「レンちゃんはそんな事をやっておったのか……!」
どうして本気にする人がいるんだろうね?
「冗談に決まっているじゃないか。心外だね」
コロッと騙して楽しんでいるのは……ランディぐらいなものだしね。
――ああ、そういえばこうなったきっかけもランディになるんだった。戻ったら散々持て遊んでやろうかな。
例えばそうだな……アスールも混ぜればドロドロとした三角関係のような感じにして、それでいてアスールの敵意が私に向かないように立ち回って……いや、ここはロリコン投獄ルートのほうが楽だし楽しめるかもしれないね。そっちなら協力者はいくらでもいるのだから。
「まぁ、それはさておき」
とらぬタヌキの何とやら。今は戦況の確認といこう。
「まず私達の戦力はほぼ半分近く削られてしまっている」
「輜重部隊が軒並み押さえ込まれてしまったからの……」
「それは私の落ち度だ。もっと大部隊での運用を心がければ、少しは被害も減らせたかもしれないしね」
――でもある意味では成功とも言えるのだけれど。
「でも輜重部隊には非常事態用のプランを実行させるように通達しておいたし、まぁ、想定の範囲内かな」
「落ち度って言っときながら、そこ想定内ってなんかおかしくね?」
「シッ! 黙っとけヘルフリート。ねーちゃんから消されるぞ……!」
子供は時々失礼だな。
「そして、機動力を奪うだけのトラップ群がメインの北門が襲われている状態だ」
「まぁ、四方は地雷を埋めてしまったしの……」
そう、何も仕掛けていないだろう、という慢心を叩き折るためだけに北以外はかなり危険なトラップ群を仕掛けさせてもらったんだよね。
まぁ地雷の火種交換もあるから、きちんとした規則性があるんだけれども。
「話を戻すよ? 今は戦力半減、そして比較的安全な北門を強行偵察されているような状態だ」
「なんかもう詰んでいっているような気がして成らないんだぜ……!」
「まぁ、そうそう簡単に降りるつもりはない……ので、そろそろ迎撃のために一人ぐらい向かわせようと思うんだ」
「たった一人!?」
「死んで来いって言ってるようなもんじゃねーか!」
「カミカゼとは……とうとう儂の出番というわけじゃな?」
「いや、率先して出てくれるという人は既に見つけているから閣下の出番じゃないよ?」
「えっ……?」
「もう準備して、向かっているところじゃないかな?」
本人も「ようやく勝てるのか!」って、喜んでいたしね。
――彼には私達の勝利のための尊い礎となってもらおうか。
[to be next scene Side Python...]
がしゃり、がしゃりと金属音が鳴り響く。
俺は……鎧は好きではない。
が、勝てるのであれば、それもまたやむなし……というか、コレを着ないと霧の中を誘導してもらえないしな。それに、せっかくの魔剣を没収されてしまう……。
「開門! 開門!」
レン……俺と小五郎のゴールデンタッグを打ち破った軍師よ。俺を勝たせてくれるのであれば、その策に乗ってやろうではないか。
がしゃり、がしゃりと鎧を打ち鳴らす。
「閉門、閉門!」
たとえ鉄砲弾であろうとも。
この命。
この魂。
全力をもって対人戦の中で燃え尽きさせてくれよう!
「パイソン、出る!」
『いちいち大声はいいから、さっさと出てくれ』
「ちょ、男の浪漫じゃないか! 出撃時の口上とか!」
『女だから分からないよ。あと、たぶん迷うだろうから、≪ソナー≫持ちの北門射手長に案内してもらってくれ。罠の位置も、彼がよく知っているしね』
「くそう!」
『ちなみにオッズは、十分以内に落ちるが一.一倍、十分以上持ってから落ちるが三.七倍、大穴の生き残るが九――』
「もういいわっ!」
胴元は誰だ!?
つーか、軍師かっ!?
『そうかい? じゃぁ健闘を祈るよ。ああ、それと』
「なんだ?」
生きて帰って来い、とかか? ……ふっ、アレだけツンデレ発言しておきながら。俺もなかなか人気者だな。
『できる限り十分以内に死んでくれると、私の懐が大変暖まって――』
「君は俺になんか恨みでもあんの!?」
『――それはもう、たくさん』
「ちくしょう! パイソン、出るぞ! 通信終了!」
パタン、と時計を閉じる。
そしてすぐさま時計を開き、射手長の男にコールを開始する。
「パイソン! 出る! 案内を頼む!」
『うおぅ!? ちょ、びっくりした……なにも怒鳴らなくたっていいじゃないですか。耳がキーンってなりましたよ! キーンって!』
「……別に耳に当てる必要はないからね?」
『あ、そうなんですか』
「うん、たまに居るんだけどね。これは携帯じゃなくて、トランシーバーみたいなものだから」
『分かりました、ありがとうございます』
なんだろう、この程度の感謝の言葉だけで、なんだかちょっとホロリときたよ……。
『あ、私は絶対生き残るに賭けているので、頑張ってくださいね!』
ヤベェ、なにこのいい人。
マジで泣きそうだ。
「うん、頑張る……この戦いが終わったら酒でも――」
『死亡フラグなんでやめてください、結構な額かけてるんで』
「あっ、ハイ」
別の意味で泣きそうだ。
『では案内ですけど――とりあえず直進で間違いないです。常に≪ソナー≫であなたの鎧の金属音は捕らえてますから』
「わかった」
そうして俺の、孤独な行軍が始ま――!
『あ、頭の中で変なナレーションとか入れないでくださいよ? マジで死なれると懐的に困るんで』
「お、おう……」
拝啓、ジルコニアGM様。
みんなの反応がセメントです。助けて。
(だって弱いんだもん)
(ですよね、わかります)
なんか通信きたし!? しかもGM回線で!!
(あ、ごめん、誤爆)
ちくしょう!
(おい新人までなに誤爆してんだ!)
(申し訳ありません)
(つーかGM回線で雑談はダメだろうが! 俺が上司に怒られる! GM全部に聞こえてるんだからな!?)
まったく……!
(……でも、八つ当たりは、ダメダヨ?)
「ちくしょう!」
『だから、頭の中でのナレーションはやめてくださいってあれほど』
「GMの連絡網が回ってきただけだっ!」
さすがに雑談を叱ってたとか言えん……!
『ならいいですけど……本当にしっかりしてくださいよ?』
「わかってるわかってる。前進だな?」
『はい、前進です』
よし、ならば前進制圧だ!
「一気に跳ぶぞ」
『はぁ?』
「≪パァアアンプアァアアアアップ≫!」
レベル制限のある中で俺のチョイスしたスキルの一つ、≪パンプアップ≫! これは筋力を七十八レベル上昇させるアーツだ。ちなみに十七レベルなので、十七秒しか持たないし、使用中はすべてのスタミナ消費が十七レベル上昇するのがネックだがな。
だがしかし! ほとんどアーツを使わない俺にとってはまったくもって無意味! ≪筋力≫スキルと合わせて、現在の俺のムキムキレベルは百七レベルも上昇中! 今、俺の筋肉は最高にキレてるぜ!
「さーらーに! ≪ストレングスアァアアアプ≫!」
三十レベル級≪ストレングスアップ≫。三十秒後にもう一度≪パンプアップ≫をかけ直せば、瞬間的な俺のムキムキレベルは――百三十七も上昇する! ひゅーぅ! 殴っただけで死亡するレベルだぜ! 俺が!
「いくぞ! 前進制圧! 一刀両断! 今! 俺は最高に――」
『いいから早く行けってつってんだろ』
「ハイ」
出鼻をくじかれた。
――まぁいい。
「しかし、よく見ておけ……これが、筋肉の可能性だ!」
地面につま先を目一杯食い込ませて、思い切り駆け出す。
≪ステップ≫なんぞ目じゃないぐらいの瞬間加速、世界が一瞬で後ろに流れていくさなか――唯一と言っていいほどの、点のような視界に移る、地面にひれ伏したゴーレムを発見する。
それを、一瞬で俺は切り裂いていく。
「ゴーレム排除!」
『はやっ!?』
「当然だ!」
剣を真っ直ぐ突き当てるだけで、容易くバラバラに砕いてくれる……! これがっ! 俺が勝つために編み出した秘剣「筋肉躍動す豪腕の刃」! ランスでやったほうがよっぽど効率的だとかそういうツッコミはナシだぜ子猫ちゃん!
――だけど≪ロックウォール≫だけは勘弁な!
「霧を抜けるぞ!」
『え、もう!?』
「とぉおおおおおぜんだぁあああ!」
飛び出しマッスル、急には止マッスれない。
その諺どおり、この秘剣は急制動が苦手だ。なにせ、着地するだけで死ぬ可能性があるからな!
しかぁああし! 魔剣を地面に突きたてて、減速すればその限りじゃない、その限りではないのだ!
剣を進行方向に真っ直ぐ、自分の真正面に突きたてて、目の前のあらゆる障害物を切り裂きながらのブレーキングを開始する! これは自分の後ろに突きたてたら、障害物が自分にぶつかった瞬間にご臨終するからだな! みんなも気をつけろよ!
「ちょ、なんか来――!」
マッスルの通り道にいた何人かのゴーレム使いをぶった斬り、それ以外にもいたプレイヤーらを切り裂きながらの中央突破に成功し、急制動が終了する。
しゅうしゅうと、摩擦によって熱を持った大剣は、このためにゲットしてきた頑丈さだけが取り得のクソ重い魔剣だ。
実際に使うやつを見て見たいと言わしめるこの魔剣を手足の如く扱えるのは、このマッシヴな俺以外にいようか? いやいまい!
「……ふ」
俺は大地からなんら苦もなく剣を引き抜き、はるか後方で唖然茫然とする西軍のやつらに突きつけた。
「見たか! 西軍の兵どもよ! 我こそはパイソン! 勝利を呼ぶ無敵の神だ!」
――決まったっ!
「えっ……無敵……?」
「俺が無敵だと言ったら無敵なんだよ!」
『いや、オッズを見れば勝率が悪いことぐらい……』
「ねぇ君、俺が勝って生き残るほうに賭けたよね!? 賭けたんだよねぇ!?」
『分の悪い賭けほど楽しいものってないじゃないですか。それがゲームならなおさら』
「ちくしょう!」
誰も俺の真の実力に気付いてくれていない!
なぜだっ!?
「くそっ……ならば真の実力を見せ付けるしかないようだな……!」
そろそろ≪パンプアップ≫の効果が切れたころだ。
そして、もう少ししたら≪ストレングスアップ≫が発動する頃だ。
そしたら思い切り叩き伏せてやる!
「真の力って……毎度毎度、筋力任せに叩きつけるだけの……?」
「うるさいわっ!」
「あっと、≪サモンゴーレム≫≪サモンゴーレム≫……」
「くそっ! 舐めくさりやがって……! いいだろう、今度こそ本当に見せてやる。真の筋力の恐ろしさをなぁ!」
――≪ストレングスアップ≫発動確認。上昇筋力レベル、三十。カウント、六十。
「≪パンプアァアアアップ≫!」
――≪パンプアップ≫発動確認。上昇筋力レベル、七十八。カウント、十七。
≪PK≫スキル発動中……低下筋力レベル、一。
≪筋力≫スキル発動中……上昇筋力レベル、三十。
合計上昇筋力レベル――百三十七!
「さぁ、付き合ってもらおうか……」
みしり、みしりと金属鎧が悲鳴を上げる。少しでも動けば――おそらくは粉々に砕け散ってしまうだろう。
「げっ、また筋肉かよ……!?」
「はいはい≪ロックウォー――」
ほんのちょっと地面を蹴るだけで、ばぁん、と金属鎧がはじけ飛び――俺は完全に羽化する。
拘束されていた筋肉が躍動し、一瞬でその術者の近くまで俺を運ぶ。俺はそのまま、ソイツの首筋に剣を軽く当てるだけで、永遠にその身体とオサラバさせてやった。
これぞゲームだからこそ実現せし超常現象を利用した秘剣、「時空超越す剛力の刃」!
「≪ロックウォール≫なんぞつかってんじゃねぇ……!」
返す返すも、あの恐――屈辱が思い出される。
「アレはめちゃくちゃ痛いんだよ!」
システム上痛くない、だが、めちゃくちゃ痛かったんだ!
特に心が!
「あ、あのGMが……強いっ!?」
「元から強いわっ!」
もとより世界運営に携わってきた神様が、摩訶不思議現象を利用した戦いにおいて負けるわけが無かろう!
『あっ、敗因は自爆が多いって聞いたことが――』
「うるせぇ黙れ! 結構トラウマなんだよソレ! 特に≪ロックウォール≫とか≪ロックウォール≫とか!」
チャットの茶々入れで隙が出来ている間に、
「くっ……! 油断するな! アレはいつものパイソンじゃねぇ! ≪大禁呪の魔女≫の加護を受けてやがる!」
「ねぇよんなもん!」
敵は陣形を組みなおす。
盾持ちを前面に押し出して、魔法使いを後方に下げた防御主体の陣形か……なるほど、在りし日のゲームを思い出すな……だが、
「その程度で勝てると思っていたら大間違いだ」
俺は剣を肩に担ぎなおして、鎧の下に着ていた革ツナギもをぎちぎちと言わせ、俺が子供の頃に憧れていた在りし日の英雄のごとく、宣言する。
「さぁ、筋肉を楽しみな……!」
『台無しですよ!?』
ここでよく思い出していただきたい。パイソンGMは、GMという名前の神様であったということを……!
ちなみにGM権限は一切使用しておりません。ガチ強いです、フィジカル面だけは。
誤字脱字、ご意見ご感想お待ちしております。




