第72話 ウソは言っていない
――その街にたどり着く。
ここは東の街。この街に入ったプレイヤー達はこの戦争に勝てるよう縁起よく“日出ずる街”とも呼んでおり、逆に敵対する相手が住む場所は西の街は“日落ちる街”と呼ぶ慣習がある。
なぜ街の名前が東と西なのか、と聞かれれば相撲の『にぃし~』や『ひがぁし~』のようなものらしい。ここを作った人間が古いからだ。
どちらも似たような外観を持ち、中世ヨーロッパ風の町並みで――問題はどちらにも武器屋や防具屋、雑貨屋や教会のような施設は存在しない。
その上、周りは帝都には及ばないがそれなりに高い塀に囲まれている。四十メートルぐらいの高さだ。ルール上、<ステップ>や<ハイジャンプ>スキルで飛び込んでこれない程度にしてある。
町並みは中世ヨーロッパ風で平屋が多い、街の中央には主戦場になりうる大きな広場と、近くには三階建てのちょっとした城砦。
こうなると正確には城砦とでも呼んだほうがいいだろうし、正しくは街ではなく村だが……まぁ、これも慣習なわけだ。
そしてほとんどの施設がないのは、死に戻っての戦線復帰を防ぐため、と言えば分かりやすいか。ひっきりなしに人の往来があるというのに一般人が居つかないというのは、おそらく運営の計らいだろう。
普段はあまり仕事しないくせに、こういうときだけ空気が読めているというか……まぁいい。こないだは一応、仕事はしたみたいだしな。
「――よし。じゃぁお前ら、ここで休んでろ」
俺以外の総勢十三名に、今回の上層部らから割り当てられた、ちょっと大き目の家で休息を取るように指示しておく。
「俺は、ちょっと報告しにいってくる」
[to be next scene...]
――今、幼女たちの間では銀髪ツインテが流行っているらしい。同じような髪型にした奴が二人ほどいる。上層部の作戦会議中にお邪魔した俺はそう思った。
「失礼、傭兵のロブだ」
「……本物のようですね」
<鑑定>スキルか、それとも<ウソ発見>スキルか。どちらにせよ、銀髪ツインテ二人のうち、死んだ魚のような目をした幼女が口を開く。
「<ロブスター>、でしたか」
「そう、ギルマスのロブだ」
こんな冗談みたいなギルド名でも、名前を覚えてもらうにはとても効果的だ――ま、考案したのは俺じゃないし、半ば遊び半分で付けたものだったんだけど。
「遅かったですね。予定した時間よりも一時間近く遅れてしまっていますが?」
……口の悪い幼女だな。
「ギリギリまで粘って、相手側の戦力を確かめて来るのが俺らの仕事なんだろ? 軍師さんよ?」
死んだ魚のような目が、一瞬だけ、嫉妬に駆られる女のような目になった。
――あの軍師には黙っていたけど、このゲームでも一応軍師というか、そういうものに憧れるというか、いないわけじゃない。
確かに作戦は重要だ。強い敵になればなるほど、効率よく始末するにはどうするかを考える必要がある。その方向性は、タイムアタックをしているギルド<TA’s>が特に顕著だ。
が、通常はスキルを使って突撃したり砲撃したり暗殺したりと、そちらのほうがよっぽど効率的だからこそ、なり手がいないというか、あまり重要視されていないだけだ。
実際、局所的な場面では頭のいい脳筋が作戦を考える。そしてこういった戦争でも、突撃してぶつかり合ったほうが爽快だからこそ軍師という存在はますますいらなくなる。
(夢追い人がまた一人、ってところだよな)
率直な感想を言うなら、この幼女はそういう部類になる。よくは知らないがそれなりに長い経歴を持ち、一度挫折したんだろうが……しかしここに来て、ある一人のプレイヤーに、閣下が軍師の称号を与えた。
それがすべての始まりと言ってもいい。
この程度で反乱を起こすのはバカらしいが――だがどうしようもない気持ちをぶつけるためには、やはり閣下に戦いを挑むのが一番だったのだ。
(くっだらねぇ理由だよな)
財政難という情報は帝都中、知らないヤツはいない。だからこそ、ギャンブルと称して上手いこと乗らせた。いい手腕じゃないか。ただ、あの軍師をどうやって戦争に引っ張り出したかは分からないが……まぁ、どうでもいい話だな。
「――まぁ、さっさと報告に移らせてもらうけど」
女の嫉妬や、修羅場ほど怖いもんはない。それを身をもって体験したことがあるからこそ、俺は話を進めることにした。
「敵軍の将は予定通り帝王閣下だな。とうとうボケたか隠そうとしてるのかは知らないけど、“遊び人のかっちゃん”なんて名乗っていやがる」
「……“軍師”のほうは?」
「参加するみたいだな」
「――そうですか」
親の仇をようやく合法的に叩き潰せるとでも思っているような、そんな暗い表情を浮かべる……マジ怖い。
「捕まえましたか?」
この質問はあの軍師の予測――いや、予定通りって感じだな。
「順を追って話そう」
まず、俺は閣下が愚かにもウチのギルドに所属する女プレイヤーをナンパしていた事が事の発端だったということを話す。
閣下が釣れるとは思ってもみなかったのか、彼女は一瞬だけ驚愕したような顔になる――が、すぐさま冷静を装う。
「予想外ですね」
「まったく予想外だった。一応、敵将だからな。もっと隠密行動を心がけると思ったが……ま、チャンスだから街中追いかけっこしてまで、なんとか捕まえた。遅れた理由の一つだな」
「朗報ですね。それで軍師はどうですか?」
「軍師か」
「うまく身柄は買えましたか?」
――ああ、なるほど。
どうやって引っ張りだしたか、と思ったが……そのへんは仕込み済みだった。ってわけか、胸糞悪いな。
俺らはそういうのを嫌っている。あの時は、いい話、ということで情報だと思っていたが……人間を買ってしまった事実にひどく嫌悪したもんだ。
まぁ、戦の習いだと言い聞かせてはいたが、
「そういう仕込みだったのか」
「黙っていて申し訳ありません。が、協力してくれないでしょう?」
「そうだな。金まで失った」
そして同時に、誇りにも傷がついた。
「ですが朗報をありがとうございます。軍師の値段も含め、後ほどお金を振り込みましょう」
ああ、胸糞悪い。
勝ち馬に乗るのはいいが、こういうのは嫌いだ。
軍師になりたがるのが少ないのは、こういうのが理由の一つでもあるんじゃないか?
「二人は今どこに?」
「ああ、逃がしちまった」
「……なんと?」
「逃がしちまった」
逃げられた、でもない。
逃がした、でもない。
逃がしてしまった、これがいい。
『日本語は実に曖昧で、それでいて便利だよね? 例えばそう……逃がしてしまった。この言葉一つに、二通りの意味が込められているように聞こえないかな?』
奮戦したが逃がしてしまった、とも取れる。
あえて逃がしてしまった、とも取れる。
『ただ、言うタイミングには気をつけるんだ。相手が勝手に勘違いするように……ね?』
――軍師って人種は、本当に悪魔みたいな奴らばっかりだな。
「……いつですか?」
「護送中に決まってるだろ。こっちは馬一頭失っちまったよ」
護送中に説き伏せられて、馬を一頭、閣下と軍師に預けた。だから俺らは馬一頭を失った……ウソは言っていない。
「裏切りましたか?」
「ここに居るのが何よりの証拠だ、そうだろ?」
ここに顔を出したから俺らは裏切ってなんかいない、なんて一言も言っていない――本当に頭が回る女だったな。
ああいうのが敵、っていうのは嫌なもんだ。なにか厄介なことを仕掛けてくる可能性が高い。
「何人か負傷させられた。装備も、少なからず壊された」
回復魔法があるし、ゲームだから痛みなんてほとんどない。だから真実味を出すために何人か負傷するよう、向こうの軍師に怪我や装備の破壊を強要させられた。
きちんと説明するなら、こうなる。
「死人は出てないから、条約的に参加資格がなくなるようなことになったヤツはいない。回復魔法がある分復帰は可能だ。けれども、後方支援に回らせてほしい」
ギルドを守るため、そして金じゃ買えないささやかな「いい噂」のため、あいつらに協力できるのはここまでだが――あんなおっかねぇヤツと真正面から戦っていられるか。
俺らは後方でぬくぬくと過ごさせてもらうぞ。
「……裏切りましたね?」
「期待は裏切ったな」
「それが分かっているのなら、なぜ逃がしたんですか?」
ウソはつかない。
真実も言わない。
これほど難しい仕事ってのは無かったな……。
「敵将の帝王閣下も乗せていた、ってのは言ったはずだが?」
――実に、実に認めたくない事実だが、帝王閣下は普通に強い。
本人は魔法が使えないどころか、横文字が使われているスキルのほとんどは使用不可だ。が、アイツは同時に戦中の人間だ。普通に徴兵され、人を殺すための訓練を受けたこともあるという。
自衛隊や警察官のプレイヤーは格闘技の訓練を受けている分ほとんどの例外を除いて素で強い。閣下はそれをより極端にしたようなプレイヤーに分類される。
まぁ……正直に言えばチートと叫びたくなるような強さじゃなくて、剣道かなにかの有段者レベルが本気で殺しに来る程度の実力でしかないけどな。
「あと、こっちは向こうを殺せない。ヘタに怪我をして、失血ダメージで死なれても困るだろ? 打ち所が悪くてクリティカルの即死も困るし」
あんな僻地で敵将が討たれたところで、それをどうすればいいという話だ。戦争は、敵将を暗殺しても終わりを見せないことが多々あることは周知の事実だ。
その上プレイヤーの死体は一分間しか残らないというゲームシステム上の問題。
このせいで、首を持っていって「殺しました」なんて証明はできない。証明になりそうな持ち物にしたって、オーダーメイドの<贋作>なんていくらでも作れる。
俺が言ったとおり、ヘタに攻撃して死んでしまっては元も子もない。確実に叩き潰すと戦力をかき集め、ヘタな勝ち方じゃあ確実に赤字の出るような戦況にしてしまったなんちゃって軍師ちゃんの作戦負けでもある。
なにより信用よりも一時の金を取る傭兵だったら、あの軍師に唆されたことだろう……ま、俺は信用を得るための「いい噂」のほうに釣られたわけだから、立場的には変わらないが。
「結論から言って、自分の命を盾に取られでもしたら俺らはどうしようもないんだよ。事実、『大人しく処刑されよう』みたいなことを言い放ったしな」
「それをどうにかするのが傭兵では?」
「向こうの軍師の言葉だけどな。勝てる戦いは必ず勝てるように、負ける戦いは五分五分に持っていくのが軍師の仕事らしいぞ?」
なんでもかんでも人任せという態度が気に食わなくて、俺は皮肉がてらにこの「軍師というものに憧れるガキ」へあの軍師の言葉を言ってやった。
「――この裏切り者! 街から出るな!」
まぁ当然だが、逆鱗に触れてしまったらしい。顔を真っ赤にしたそいつに怒鳴られたが――まぁ、あんなぶっとんだ女と戦わずに済むなら、これ以上の被害は出ないだろう。
「失敗したとはいえ、そっちの作戦をほとんど知らずに送り出されたんだ。金は払ってもらうぞ?」
「この守銭奴! どうせ金に釣られたんでしょう!?」
「あいにく俺らは金より信用を取るんでね」
俺たちへの「いい噂」が帝都に流れるとなれば、信用はうなぎのぼりだろう。一時の金より、よっぽど儲けさせてくれる。
だから、本当にウソは言っていない。
「どうせ<ウソ発見>スキル持ちでも準備してあるんだろ? 俺が一言たりともウソを言ったことがあったか?」
そう言うと、やはりガキ本人が持っていたらしい。
ぐぬぬと歯軋りしながら、こちらを睨みつける……自称軍師ちゃんにしてやったり。といったところか。
「さっさと消えなさい! この守銭奴め!」
「金請求した手前、あながち間違いじゃないかもな……じゃ、さっさとお暇させてもらうことにさせてもらおう」
非常に大人気ないことだが……やりこめたという達成感から、実にせいせいした気分でこの会議室を出ることが出来そうだった。
[to be next scene Side Len...]
「できれば引き抜きたかったんじゃがな~」
西の街……というか城砦だね。私達の拠点だ。
その作戦室とも呼べるような場所で、私はようやく気を緩めることが出来た。
「そうだね、お金で釣られないのは非常に心強いよ。信用第一のギルドなら、これ以上“いい噂”を流せる相手もいないことだし、裏切る可能性は低かった……まぁ、だからこそ引き抜けなかった。でも逃がしてくれた上に馬一頭も融通してくれたんだ、それで満足しておかないとね。あとは信用が大事だって言っているギルドだし、裏切ったなんてことが分からないような形でお礼を渡しておけば万全だ」
もう拘束されていない手で嗜好品であるコーヒーをゆっくりと飲みながら、
「と、王手だよ」
閣下相手に将棋を指していた。
「あ、ちょ――待った!」
「……もう十回目だけれども?」
「泣きの一回! 泣きの一回じゃ!」
「三回目あたりからそのセリフが続けられているね」
「だーって負けたくないんじゃもん!」
「気持ちは分かるけれどもね……これ以上待ったがあったら、さすがの私も、盤面をひっくり返すことになるよ?」
「ぐぬぬ……!」
まぁ、あと数十通りの打ち筋はあるから、まだそういう脅しをかける場合じゃないのだけどね。
――閣下がチェスを知っていてくれたらな、そっちでも楽しめるんだけれども。
とりあえず、王手をかけた桂馬――が成った金を元の位置へと戻した。
そして、閣下から奪った歩を王将の前へと打ち込む。
「というわけで、もう一度王手」
「ちょ、待った待った!?」
「……もう盤面をひっくり返しても構わないよね?」
――飛車角金銀落ち。
今やっている将棋は、私達にとっての戦況の縮図でもある。これを埋めるためには、やはり奇襲や戦術が大切だ。すでに私達は飛車角金銀落ちの状態なのに穴熊なんて決め込んでいるような場合じゃない。
いや、穴熊でも別にいいのだけれど……その場合は将棋のルールを大きく逸脱してしまうようなことをしなきゃならないから出来ないわけで――とりあえず頑張った。
こっちの被害は甚大だけれども、なんとか相手を詰ませる直前にまで持っていけたのはなにより奇跡――と言うわけじゃない。
純粋に閣下が弱い。それだけだ。
「ぐぬぬ……!」
「まぁ、色々分かったこともあるし……息抜きは程ほどにしておこうか」
分かったことといえば、閣下は大局を見て動くことは苦手のようだ。敵陣に切り込む一番槍というか、そういう将に向いている。
ただし、玉砕精神さえなければ、の話だけれども。
「本格的な会戦は三日後、だったかな?」
「まぁ、あっちが奇襲を仕掛けてこようとしなければ、じゃが」
「輜重部隊はどうなっているのかな?」
「順調じゃな。ぞくぞくと集まっておる」
ゲームだから、食事が士気に関わるようなことはほとんどない。そういうのはリアルで取ればいいのだから。
だから重視される資材は武器弾薬になる。また、最悪食糧は不必要という意味でもある……だから、あまり叩いても旨みが少ない。
何よりも重要なのはスキルだ。
つまり、武器に頼らない戦いでもどうにかなってしまうのがこのゲームなのだ。それ専用のスキルで固めたという格闘ギルドがあると言うけれど、それだけで固めた傭兵ギルドがあってもおかしくない……という理屈だね。
「一箇所での大量発注とかしてないよね?」
「まぁ、その辺は指示どおり、と信じるしかあるまい。」
一箇所での大量発注をしたら、相手が放っているかもしれない密偵に感づかれる可能性があるからね。
――叩いても旨みは少ない、けれども、作戦に気付かれる可能性は高い。
「ちなみに、嗜好品もちゃんと用意してくれているのかな?」
「なぜ不必要なものまで購入するのかと、首をかしげていたぞ?」
「不必要なものなんてないよ。結果として、必要じゃなくなるものは出るだろうけれどね」
食糧は重要じゃない、と言いつつ私は多少なりとも嗜好品として購入してきてもらっているものがいくつかある。
こうすれば、大手ギルドの買出しにも見えるという理由もさることながら――まぁ、ちょっと考えていることもあるからね。
「斥候はちゃんと本人が戻ってきている?」
「ふん、抜かりなどないわい」
「それならいいよ」
それよりも私の驚いたことは、
「……軍師って、他にもいたんだね」
という事実だ。
「まぁ、大概意味はなさないがの」
ゲーム上、ほとんどは頭のいい脳筋程度で十分なのだからしょうがない……まぁ、土壌が悪かったということだね。
それでも憧れるプレイヤーがいて、最近になり私が本格的に軍師という称号を与えられた――その腹いせで始まったのがこの戦争。
「本当に、厄介ごとしか、舞い込んで、こないね……!」
その事実を聞いた瞬間の、例えようのない苛立ちといったらなかったよ。
たぶん、事実はこうだ。
ムギさんは大手ギルドのギルドマスターだ。人となりは知られているだろうし、ああいう性質のギルドなら直接会ったことのあるプレイヤーも大勢いたことだろう。
それを利用して私をおびき出す。ランディも、おそらくムギさんに言われたからしょうがなくという側面もあったんだろうね。意外と断れないタイプっぽいし。
閣下のほうは、お金がないのなら、ここで一発ギャンブルでもどうでしょうかと持ちかける。このことについては渋るだろうけれど、私が出ると聞けば喜び勇んで出てくる可能性は高い。
――というか、閣下の場合は実際にそうだったらしい。
始まりの街にいたのも、私を迎えに来たという理由だったとか。わざわざ、皇太子の様な着替えと、白馬まで、用意して。
(ナンパなんて、していないで、さっさと、迎えにくれば、いいのにね?)
まぁ、ギリギリまでの時間稼ぎ、という名目があったと、言われたから、まぁ、許してやらないことも、ないけれども。
思わず、回れ右して、帰りたくなったことも、また、事実。
(相手の目的は、私を叩き潰すこと、それだけに終始するんだろうね)
結局、どれほどの戦力があるかは聞かせてもらえなかった。
けれども、完膚なきまで叩き潰せるほどには用意しているんだろうね。寡兵で大軍を落とすようなマネは、できなくはないけれどもリスクが大きい。
――そこで、私の立場を利用する。
寡兵で大軍をどうにかすることができないで何が軍師かと、そんな話に持っていくんだろう……想像なんだけれど。
あとは、大軍を用いてのアクロバティックな陣形で戦うというのもアリかな。それでうまく勝つことさえ出来れば才能ありと見られる。
「やっかいなのは小五郎かな……」
言いたくないけれど、アレは思ったよりも強い。作戦もきちんと練れる頭のいい脳筋という分類だ。今回は事情が事情だけに作戦立案はさせてもらえないだろうけれども、その戦闘能力の高さはお墨付きだ。なにせ統制の取れた帝都軍に囲まれてなお五分で戦っていたのだから。
新人を大勢かかえているこちらでは、作戦もなしでは彼単騎で木の葉を蹴散らすように倒されていくだろう。
「……“ウィリアム・テルに気をつけろ。奴はお前の頭を狙っているぞ”」
「なんじゃい、それ?」
「こっちで初心者の皮をかぶったベテランを、本気にさせるための合言葉だって言われたよ。使う相手を間違えたら、本気を出してくれないらしい」
「片っ端から言うのは無理というわけか」
「まぁ、そうだろうね」
小五郎に対抗するためには、是非にも欲しいところだけれど――さて、こちらの最大戦力をどうやって探そうかな。
「とりあえずは、面接ぐらいはしておこうか。まだ余裕があるうちにね」
本格的な会戦まであと三日。
このままだと負ける公算は高いし、どうせ負けるだろうけれど……まぁ、徹底して嫌がらせさせてもらうための仕込には十分だろうね。
「物資の次は、部隊の編成かの」
「そういうことだね。徹底して、将が足りない。私と閣下だけというのは、いささか問題がありすぎる」
そしてあわよくば、そのベテランの化けの皮をひん剥きたいところだね。
とある白馬の暴れん坊皇太子スタイルに、なりたかった……!
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