第69話 初心者レンの受難
遅くなりました……!
あの婚活イベント騒動が終わってからというものの、街は……いや、ゲームは少しばかり慌しくなっていた――なんてことには、ほとんどならなかった。
実際のところ、リアルでもニュースで取り上げられたのはたったの数日。本当に電撃的に終わった話題であったし、ゲームでもあまり気にされるまでは至っていない。
まぁGMがあんな性格だし、このゲームの住人たちもそういう気質なんだろう。類は友を呼ぶ、というわけではないのだろうけどね。
そして私も気にすることはないだろう――真っ黒な部分をちょっと見ただけで気分が悪くなるんだ。それに首を突っ込むなんて、馬鹿げている。
でも話は他の街にも既に広まっているのは当然として、そこからさらに色々と囁かれていることは事実だ。
曰く、強引にねじ込んできた企業はあそこだけではなかった。そこで運営は、一番酷い企業を選び、それをダシに全て断り……最終的には牽制のための生贄に使った。
――私が話を統合する限り、実際に問題を起こしたのはあのお客様たちだった。
そして決して結婚相談所側に非はない……わけでもないね。止めようとはしていたけれど、もっと効果的な止め方だってあったはずだ。
暴言を、やんわりと嗜めることだって必要だと思う。
「悪いのは誰か?」
でも「痴漢行為をする登録者がいるような結婚相談所には登録したくない」という言葉がネット上で飛び交ったり、ランディが大の大人五十人を説教している姿や、私が帝都で営業と言い争っている目撃談などもあったり……とりあえず会社として大変なのは間違いないだろう。
「さすがにそんなことは、もうどうでもいいけれど……」
さすがにリアルの新聞やテレビのニュースからの情報はあれ以来ほとんどない。けれど、ランディの店で読む新聞や、街中で聞く噂話には「運営の陰謀だ」「あんまり褒められたことじゃない」「ゲームでぐらいリアルを忘れたい」「ああいうのは別サーバーでやれ」……。
否定的であれ肯定的であれ、文句であれ、どのことに対しても最後に上るのは「運営、ようやく仕事したな!」だった。
「……結局、あれは陰謀だったのかな? それとも、単純にどう転んでもいいように準備をしていた?」
「俺が知るか」
「アリスも同じようなことを言っていたよ」
そしてそのときのアリスも、今のランディみたいに目を逸らしていたよ。
あとね、
「っつーか毎度の事だけれど、表の掛札が読めないのか、お前は」
話題をすぐに変えようともしたかな。
――藪をつついて蛇を出すようなことはしたくないけれど、私と二人きりのときぐらいは、知っているなら話してくれたっていいじゃないか、とも思う。
「Closs。この場合は、閉店中、という意味だね」
「そうだな、閉店中ってことだ……しかも最近、ちゃんと読めるように若干大きくしたり、書体を変えてみたりしてるんだぜ?」
確かに、前は少しお洒落な感じに崩していたけれど、今回は若干のお洒落さは残しつつ、確実にClossと読めるように書かれていた。
少し大きい気もしていたし、これは話題の一つに使えるかもしれないな、と思っていたのだけれど……参ったな、先に言われてしまったよ。
「じゃぁ、せめてちょっとだけ貢献しようかな……マスター、コーヒーを一つ」
「ここは喫茶店じゃねぇよ」
「インスタントでもいいよ。コーヒーの味なんてあまり拘らないタチでね」
「インスタントもねぇよ」
そう、この世界には、実はインスタントコーヒーなんてものはない。化学的加工をしたものを用意するのは、実に容易ではない……。
(うん、ちょっとランディの影響を受けすぎたかもしれないね)
ともかく、一番の原因は「スキルで時間を短縮することができる」ということかな。豆を煎るにしろ、≪料理≫スキルないし≪システマティック≫ジェムによるゲーム的処理のせいだ。
――インスタントのようにお湯を注ぐだけ、とまではいかないけれども。
「それじゃぁ、ちょっとおしゃべりしようよ」
「見ての通り、仕込みが忙しいんだけどな?」
スープを作っているらしい。さきほどから私に背を向けて、大きな鍋に入っているソレの変化を見逃さないようにじっと見つめている。
「なんとなく、やることがなくてね」
――現在、午前十時。
アリスは小五郎と一緒に、簡単なお勉強会だ。教師にはタロスを据えて、今は図書館で私の用意した宿題をこなしている。終わったら自由にしていい、と言っておいた。
クロウは言うだけ野暮なのかもしれないけれど、ブリュンヒルデ選手が遊びに来た、ということでデートだ。
社会人組は仕事……なんだけれども、そういえばなぜかタロスはログインしていたね。大概謎な人だ。本当に、時差がある海外からログインしているのかもしれない。
そしてアスールは無事に宿題を終えたから、部活に復帰した。あんなことがあったにも関わらず、ほとんど徹夜でさせられたんだとか。
まぁ、本人はちょっと満足そうだったから、いいけどね。
「酒場行けよ……また生活費がどうのって飛び込まれても困るんだよ」
「依頼主からの待機命令があってね」
最後に、私はこの通り初心者育成の途中経過を見に来たムギさんから、ヘルフリート君とキリヤちゃんを奪われていってしまった。
おなかは目立っていないけれど、激しい運動は避けるべきだと思うんだけどね……まぁ、軽い運動になると本人が言っているし、医者からも許可を貰っているから大丈夫だと思うけれども。
「ムギさん曰く、ランちゃんのお店で待ってて、だそうだよ?」
「……なんでランちゃんやめろって言ってるのにそう呼ばれるんだろうな?」
「さぁ?」
そうやってムキになっているところが可愛いとでも思われているんじゃないだろうか? と私は分析する。
「ともかく。私に限って言えば、迂闊に狩りなんか出られないよ」
もっと言えば、魔導書のページが減るのも避けたいところだ。
「確かにレンはスキル構成自体変えなきゃ、街が危険だしな……」
「ははっ、冗談が上手いね」
≪セット≫を使えば、ボルト系が非常に使いやすいからね。頭を一瞬で吹き飛ばしてしまえばいいんだ。
問題は、ネズミ程度じゃ赤字が出てしまう事かな? 私は戦うような訓練を受けていないからね。やるなら棍棒でも持って≪ストレングスアップ≫を使って筋力を上昇させた後、思い切り頭を潰してしまうくらいだろうけれど……たぶん武器が持たない。あと、捌いたことがないから、皮を剥ぎ取ることも難しい。
「まぁ、まだ初めて間もないからね」
なんだか密度が濃かったけれども、時間にしてみれば本当に一ヶ月経つか経たないか。そんな程度でしかない。夏休みももうすぐ終わるし、一人前になるまでにはもう少しかかるだろう。
――なんだか、周りの評価と実際の経験が噛み合わない、ちぐはぐな状態になってしまったね。
「……なぁレン」
「なんだい?」
「そろそろ、初心者、ってのを脱却しないか?」
[to be next scene...]
「ふははは~、よく来たな初心者よ~!」
精一杯の虚勢を張っている、という感じだ。ヘルムも含めた、とても禍々しい形をしたドラゴン製の複合竜鱗鎧のヘルムから聞こえてくる、くぐもったムギさんの声に、見た目とのギャップが発生しているせいか、非常に力が抜ける気がしてしまう。
「私は泣く子も黙る鬼教官のムギだ~!」
ふはは、こわかろ~。なんて言いながら、精一杯怖そうなポーズを取るけれども……正直まったく怖くない。
――その鎧は威厳のために着ているらしいけれど、口を開けばそれすら台無しにしてしまうんだね。
「依頼主に依頼するなんて、前代未聞じゃないかな? ランディ」
始まりの街の入り口から徒歩一分もかからないところ、街がすぐそこに見える距離にある大草原での一幕だ。「なんだいつもの事か」なんて周りの人たちも納得したような顔をする人もいれば、「マスター……!」なんて感じで頭を抱えている人もいる。
「依頼は依頼だし、そもそもコイツのは単なるおせっかいだ」
「ふははは~! タダより高い物はないぞ初心者よ~!」
とは言うものの……初心者支援ギルド<ホップ・ステップ・ジャンプ>。その実態は、初心者のためにほぼ無償でいろいろと教えてくれる非常におせっかいな集団なのだということは知っているし、知られている。
――道中、とても親切に教えてくれたんだよね。
「私達に出会ったが最後~、貴重な時間が最低三時間は奪われると思え~!」
「……時は金なり、かな?」
「そのとおりだ初心者よ~! 時給にして最低三時間分が私達に奪われるのだ、こわかろ~!」
いや、全然。
そんな言葉を言おうとして、飲み込んだ。
「ま~、それよりなにより、ランちゃんの頼みなら断れないかな~? って」
「だから、ランちゃん、言うな」
このやり取りも久しぶりだなぁ。
そんなに時間が経っていないはずなのに。
「っていうか、ヘルメットとっていいかな~? なんだかむしむしするの~……」
「好きにしろよ」
「わぁい!」
子供のように喜んで、ヘルムを外す。ちょっと前に見たことのある、可愛いというかふわふわしたような感じの……本当に三十路を超えているかどうか怪しい、そんな人妻の顔が出てきた。
「やっぱりランちゃんは優しいな~? ウチに戻って来てくれないかな~? 私のお手伝いしてくれるとすごく助かるんだけどな~?」
「断る」
「も~過ぎたことなんだけどねぇ……みんな気にしてないよ?」
「外面はな?」
前のギルドでなにかひと悶着あったらしい。
始まりの街の中では最近そうでもないけれど……ランディがいつも、外に出るときは顔を隠している理由の一つなのかもしれない。
「じゃぁ、レンは頼んだ。俺は店の準備で忙しいから」
「えっ?」
「え~?」
私とムギさんの声が重なる。
私は、きっと最後まで付き合ってくれるだろう、そう思っていたのに……なんだか、すごく、残念だな。
「つーか、な? 俺の本業、店なの。なんで指導員になったり、戦いに駆り出されなきゃならんのだよ」
もっともだ……なんて言ってあげたいけれど、近接職での最高の名誉として名高い称号である竜殺しを持っている時点で、しょうがないと思う。
「初めてくんたちのいい就職先になると思うんだけどな~? ……お店、いいところに出せるよ~? うちの財政だと」
「……断るっ!」
あ、結構揺れたみたいだ。
「絶対に店をやってる暇がねぇ! それと、もうギスギスするのは嫌だ!」
「ちぇ~」
対人関係は確かに嫌になるか。
「じゃ、これ以上ここにいるとまた勧誘され続けそうだから、さっさと帰る」
「ざんね~ん……」
私としても、本当に残念だ。
――それ以上引き止められるのを恐れてか、ランディはすぐにきびすを返して、さっさと走り去っていく。
「あっ……」
思わず声が漏れた。
引き止めたいと思ったけれど、さすがに、それは頼りすぎなのかもしれないから。
「ほほぅ?」
ムギさんの目が、きらり、と何か光った気がする。
「命短し恋せよ乙女、だよ~? 年上からの助言だね」
「……私は単なる障害物だよ?」
そう、アスールの障害物だ。
ランディに対して、特にそういった感情は持ち合わせていない。ただ、依存している自覚はあるのだけれど。
「む~、最近の若い子の考えが分からない~……」
「別に気にする必要はないと思いますが……」
確かに世代で考え方が変わるのは当然だろう。でも、私のはそういう思惑があるからこそそう見えるだけだ。
だから、本当に気にすることじゃない――まぁ、アスールもあまり言いふらされたくないだろうから、これ以上の事は黙っておくことにするんだけれども。
「……あっ、障害物か~!」
「それは旦那さんに申し訳ないと思わないのかい!?」
なにを、ぽん、と手を打って、さらりと、すごいことを言って、いるのだろう?
訳が、分からないよ?
「もちろん、夫も息子も、今おなかの中にいる子供も愛してるよ~? でもやっぱり、一人になりたいときとかってあるじゃない?」
「ああ、まぁ、確かに……」
家族、と言ってもやはり立ち入られたくない部分と言うものは存在すると思う。
例えば趣味とか――
「あとは、私と夫の趣味~。罵るのってちょっと興奮しちゃう~」
「――……」
このひと は なにを てれて いるの だろう?
ほおを あかくして みを よじっている。
わけが わからない。
「ま~豚野郎のお話は置いといて~……ランちゃんからはいっぱいい~っぱいお世話になったし、レンちゃんにはこれからもあの二人を引っ張っていってもらいたいな~、なんて思うわけなんだけど~……」
頬を赤くして、なにかを思い出したように、嬉しそうにしながら目を閉じていたムギさんが、ちらり、と私のほうを見る。
「……やることなすこと派手なのに、あまり狩りとかやったことないんだよね~?」
「え? ええまぁ……」
「生き物を殺すのって、やっぱり抵抗、ある~?」
「ゲームだから、と割り切れば……ただ、捌くのだけはダメだと思います」
「なんで~?」
「動物の肉なんて、捌いたことがありません」
「なるほど~……確かにそ~だよね~」
と、言うか。
「魚以外で捌くことを経験するのは、おそらく業者以外にいない、かと」
「もっともだ~」
「料理は、ランディがいるから、こちらではあまり経験したことはありません……が、一応魚ぐらいは三枚に下ろしたことはありますし、レシピどおりに作れば不味いものができるわけがないので、料理は得意と言うわけではありませんが、出来ます」
「お~! さすが女の子だね~! ……ちなみにいつ頃からできるようになったのかな~? おなかの子が女の子だったら、教えるタイミングがあるしね~?」
そういえばそんな事を言っていた気がするな。
私に――正確にはランディに――ヘルフリート君とキリヤちゃんを預けた理由は、妊娠したためだったのだから。
「さすがに、小学校の家庭科の授業で、ですね……三年か、四年ごろだったと思います、カレーを作りましたね、ご飯は炊飯器ですので、失敗する余地はありませんし、水っぽくなっても食べられますから」
なお、課外授業でのキャンプでもカレーを作った。というか、小学校ではほとんどカレーしか作った覚えがない。
――そういえばアスールは芋煮を作ったそうだ。地元の郷土料理だと言っていたから……いや、これ以上はやめておこう。わざわざリアルを探る理由なんてない。
「う~ん……娘と一緒に台所に立つのが夢だったのに、気の長い話になりそ~」
「ああ、憧れると聞きますね。母親になると」
知識でしか知らないから、あまり想像できたものじゃない――けれどもまぁ、高校生のうちから考えるようなことじゃないね。
恋人はともかく、結婚なんて。
「それじゃぁ動物系は仕方がないかな~? フーくんやキリちゃんはまだ子供だから、結構簡単に順応したみたいだけど、やっぱり精神が大人になってくるとなかなか難しいよね~」
「子供特有の、無邪気な残酷さ、というものですか」
「そ~だね~。私が子供の頃の男の子なんて、カエルのケツの穴に爆竹突っ込んで爆破したりして遊んでたしね~……今だと、そういうことをするとすぐ相談しにくる親もいたのよ~。ほら、私って元々、カウンセラーもやってたしね~」
「確かにそう聞いています」
「結婚したとき、職場をやめちゃったんだけど~……やっぱりそういう経験を持ってるって知られていると、相談されるのよね~」
「やはり、経験者がいるとなれば相談したくなるのが人の常ですからね。それが元々そういう仕事であったなら、なおさら」
「なるほど~! 私もよくおばあちゃんを頼ったことがあるのと一緒なのか~」
うんうん、と一人納得したようにひとしきりうなずいて、
「じゃ、難易度ベリーハードでいこ~!」
「――なんでこの流れでその話になるんだい!?」
本当に訳が分からない!
「え~? だって動物を倒せないってなると、いきなりハードだよ~? 討伐系だって、証明部位に耳とか鼻とか、あとは心臓とか必要だし……」
「い、イージーやノーマルは?」
「ノーマルはネズミ狩りかなぁ……イージーは釣りだね~」
「釣りがいいです」
「ダメ~。レンちゃん、もう十分強いもの。初心者の競合相手をむやみに増やすのは良くないの。一人当たりの取り分も減っちゃうし」
なるほど、つまり魚も取り尽せばいなくなる……生態系というシステムのせいか。
「あとは、趣味で釣りをしている人専用の場所で魚を持ち帰る不届きな人たちもいなくもないからね~。あんまり増えたら大問題なのよ~……」
「難しい問題ですね」
漁業組合とかありそうだ。
というか、絶対あるね。
「農業は時間的にも土地的にも難しいから~……まぁいつも通りのお仕事をやってもらって、成功したらもう初心者じゃないってところかなぁ?」
「いつも通り……?」
それはつまり、初めてのログインでドラゴン愛護団体を相手にした時のような事をやったり、裏側が真っ黒なあの村おこしの依頼で起きたオークの群れを相手したり、ついこないだみたいにGMの帝都襲撃をどうにかしたり……。
とにかく、大きな戦いをしろ、ということだろうか?
「今度ね~、ギルド間の大規模な戦争があるのよ~。公式イベントじゃないけれど、そういう楽しみ方をしているプレイヤー達もいるんだけれど……」
「はぁ」
「私達のギルドは断ってたんだけどね~? 初心者の中には、そういうこともやってみたい、っていう人がいるわけで~……」
「……既に嫌な予感しかしませんが?」
「嫌な予感だなんてそんな~……単なる軍師役だよ?」
「ほらやっぱり!」
私はどうしてこういうことにしか縁がないんだろう?
その日のお金を稼ぐ以外では、本当にこういったことしか舞い込んでこない。
オカルトはあまり信じないタイプだけれど、呪われているんだろうか?
「そろそろお迎えが着てもいい頃なんだけどな~……」
「ああ……ここにつれてきたのは迎えを待つためですか……!」
街中の酒場ではない、ということは大きな馬車か何かだろう。きっと遠くへ連れて行かれるんだろうね。
頭の中にドナドナが流れてくるような気さえするよ。
「というか、ギルドのメンバーでない人が参加しても――」
「傭兵を雇うのは自由なのよね」
「――フリーダムだね!?」
ギルド対抗戦なのに外部からやってくる人もいるのか。
つまり、傭兵団のようなことをやっているギルドもあるということだろう。
「じ、じゃぁヘルフリート君とキリヤちゃんの仕事については――」
「あ、フーくんもキリちゃんも参加組~」
「――神は死んだっ!」
「でも三日ぐらいしたら蘇るみたいだよ~? イエス様とか」
「そういう意味じゃないんですよムギさん!」
ああ、頭が痛い。
これから見ず知らずの人たちを統率する必要が……あ、いや、まだ抜け道はある!
「そういえばヤマタノオロ」
「クレーターを作られても困るんだよね~……周りの人が」
「あ、はい。その節はどうもすみません」
非常に心苦しい話だった。
「私から見たら、レンちゃんは別にもう初心者じゃないと思うんだけどね~? 色々やってきたし、フーくんとキリちゃんと一緒に、ランちゃんからいろいろと教えてもらったみたいだし……」
それはつまり、私は甘えていた、と言うことだろうか?
ただ日が浅いだけで、自分は初心者だと言っていたから?
「ランちゃんからも言われたよ~? 自信をつけさせてやれ、だってさ~」
ランディは、私が初心者だと言うたびに、そう思っていたんだね……本当に申し訳ないよ。
「あと、負け戦も味わわせてやれ、とも~」
「――酷いじゃないかランディ!」
もうここにはいない、彼へと文句を言ってやる。
話を推理すると、ギルド対抗戦に挑むムギさんのギルドメンバーは、ほとんど初心者と呼べるような人たちばかりなのだろう。
いや、そうでなくても、相手が非常に強い相手なのかもしれない。
どっちにしろ、負けて自信がつくわけないじゃないか。
それとも、アレなのかな?
試合に負けて、勝負に勝つようなことをやれ、とでも言外に言っているのかな?
「……私の味方は? 相手は?」
「着いてからのお楽しみだね~? ……っていうか、馬車遅い~!」
ぷんすか、という言葉がとてもよく似合う顔をして、がちゃがちゃと鎧を打ち鳴らしながら腰に手を当てて怒る。
――私も怒りたい気分だな。もっと平和に、本を読んで生活していたかったのに。
誤字脱字、ご意見ご感想お待ちしております。




