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剣と魔法の物語  作者: 神楽風月
婚活編
64/97

第63話 小五郎との決闘

「こあいの、いっぱいだよぅ……」

 レンがいきなり壊れた。

 小鹿のように足を震わせ、立っているのも辛いのか、正装として着せられているマントにしがみつく。

(こっちの声は聞こえてない……)

 予想してしかるべきだったか? いや、ショックで強制ログアウトを受けなかっただけ成長したと褒めるべきか。

「詰んだ」

「なるほど、詰みでござったか」

 例えるならこっちは金銀王以外が落ちていて、相手は全駒揃っている状態での将棋……ああ、相手から奪ったものが使えないならチェスか? でもチェスはよく知らねぇんだよな……こっちはキングとナイトとクイーンのみか? よく分からないけど。

 まぁ、最善手は下がればいい。そうすれば少なくともポーンは手に入る、あとはルーク? も手に入る。

 だから、下がればいいが……下がらせてくれるかどうか。

 仮に下がらせてくれたとして、こいつ等が攻め込んで来れば混乱必死か……。

「確かに詰みでござろう。仮に下がったとして、“お客様”がいる。まぁ拙者としてはその“お客様”に戦いの醍醐味を味わって欲しいと切に願ってござる」

「さすがにその容姿じゃ大混乱だろ……」

 ゾンビの再現度は伊達じゃない、が、ちょっと年齢制限のある映画に出てくる特殊メイク程度、とも言える。

 いつの間にか天候は、あつらえたように曇天となっている。でもそれだけであって、決してお化け屋敷のような雰囲気じゃない。しかも相手は攻めてくるわけでもなく、ただ棒立ちになって並んでいるだけ……だからこそ、レンがこの程度で済んでいる。

(動き始めたら失神するかもなぁ)

 近場で豊富な食材の宝庫であり、かつ軍曹がよく訓練で利用する地下墓地だ。俺はこいつらに慣れている。が、レンはあの一件以来教会には一人で近づこうとしない。必ず、人がいるか誰かに付き添ってもらって、かつ昼間にしか顔を出さない。

 実に面倒だ。足手まとい以外の何者でもない。

「それに、許容はできないな。サブマスターとして」

「これはGMのサプライズにござるよ? 身の程もわきまえずスライムやドラゴンを倒そうなどと企画を持ち込むなれば……まぁゾンビ程度が一番よかろうとGMの判断にござる」

 そしてコイツは、それに乗っかった、というわけか。

 竜殺し(ドラゴンスレイヤー)は近接戦闘における最強の称号ならば、“辻斬り小五郎”とまで言わしめる対人プレイヤーしては、戦いたいという思いを押さえることは出来ないんだろう。

「それに拙者、混乱させぬ腹案がござる」

「腹案? それは聞いてみたいな」

 とにかく時間を稼ぐ。そうすればアスールも、おそらくゲリュオーンに乗り込んでいるだろうタロスも――

「――言い忘れてござったが、タロス殿は既に死んでござる。アスール殿は時計を奪うに留めたが、さて、ここにたどり着けるかどうか……」

 証拠とばかりに取り出したのは、二つの懐中時計。

 四角いものはタロスのものかどうかは知らないが――アスールの好きな青色に染められた丸い時計は、俺がよく見たものだった。

「まぁ、こうやってのんびりと話せるのもそのおかげでござる」

 “辻斬り小五郎”。その名に恥じぬ通り、妙な方向へ頭が回るやつだった。

 多対一となればまず逃げる。逃げたかと思えば、忍者のように思わぬ場所から各個撃破していく。たとえ囲まれようと、逃げることはあっても負けることはまずなかった。

 そして指揮官能力――正面からぶつかって勝てないと見れば、当然の如く策を練る。近藤がコイツを切れずに左遷しかできなかった理由の一つであり、近藤が時々レンへ「策をひねり出せ」などと言う理由だ。

 弱点らしい弱点といえば、動物型や幻獣型のMOBには強いとは言えないことだけ。

 このゲームをやる前は格闘ゲームのヘビーユーザーであったことも理由になっているのだろうが、駆け引きが上手く、相手が人型であるならまず負けたことなどない。

 それが“辻斬り小五郎”、対人型(・・)特化プレイヤー。

「まぁ話は単純にござるよ?」

 ゲリュオーンに積んでいた俺の武器と、レンの魔導書が入ったかばんがゾンビたちによって運ばれてくる。

「よく言うでござろう? 踊る阿呆に見る阿呆……つまり踊ればいい(・・・・・)

 その二つを、ヤツは無造作に掴むと――俺達の足元へと放り投げた。

「子、曰く。()くして(これ)に能くせざるを示す。(もち)いて之に用いざるを示す。近くして之に遠きを示す。遠くして之に近きを示す――要するに反対の事を信じさせればいい」

 俺が剣を拾い、見た目を統一するためだけの邪魔な剣と盾を捨てたのを見ると、小五郎は日本刀を腰の帯へと差した。

「なんだよ、それ」

「――孫子の兵法だ」

 いままで腑抜けになっていたレンが目をぎゅっとつぶりながら、ようやく復帰した――足腰はまだ震えているが。

「さすが軍師のレン殿。孫子を論じることが出来るとは」

「こっちも驚きだよ。猪武者だと思っていたけれど」

「……格好いいところ悪いけど、掴まり立ちはそろそろやめてくれ。戦うのに邪魔だし、なにより小五郎はここで潰しておきたい」

「う、うるさいな!」

 レンはまだマントにしがみついている。正直に言うと、首が絞まっている気さえする。そろそろマントのほうがちぎれるかもしれない。なんか変な音立ててるし。

「なんでござるか、その可愛い生き物」

「一応、軍師」

「不本意ながらね……!」

 変な音を聞いてか、レンはマントから俺の右腕にしがみつく。

「邪魔だからな!?」

 利き腕が封じられた、これじゃ剣が振れない……いや別に振れないってわけじゃないし、そういう技ももちろん練習はしているけどさ。

「いいじゃないか! 怖いし! 見たら絶対失神するね! 声が上がってないだけまだマシだ!」

「アホかっ!」

「いやぁ、うらやましいでござる。ガランティーヌ殿、現役女子校生の胸の感触はどうでござろう? やわっこいでござるか? ぷるんぷるんでござるか?」

「うっせぇっ!」

「……そんな安い挑発に、私とランディが引っかかるとでも?」

 口調だけはかっこいい。それは認めよう……だがその小鹿のように震える及び腰はどうにかならんのか?

 あと、ぶっちゃけその『安い挑発』に引っかかってたけどな、俺。

「これは今の私が支払える、正統なランディへの報酬だ」

「支払うなよ!」

「なるほど」

「納得してんじゃねぇよ!?」

 っつーか、踊るとか孫子とかよく分からんことばっか言いやがって……! 俺だけ置いてけぼりじゃねぇか。

 変な報酬まで支払われてるし……!

(ランディ、逃げられるかい?)

「逃げる算段でござるか? まぁ別に逃げようと拙者の獲物は竜殺し(ドラゴンスレイヤー)のみ。拙者のここでの仕事は、戦えなければちょっとだけ言い含めるだけでござる」

「……ふっ、筒抜けか」

「こんな至近距離でこっそり相談すりゃそら逃げるか戦うかのどっちかだろ!?」

 れんは だめなこ になった!

 もう やだ ここ。

 おうち かえりたい。

 おれ の いっすんさき は まっくらに なった!

「……はぁああああ」

 なんだか、俺まで頭が変になった気分だ……さっきもおかしな考えが浮かんだし。

「ため息は、幸せが逃げるよ?」

「もう幸せなんて残ってねぇから関係ねぇよ」

「いや、今幸せにござろう? 現役女子校生の――」

「うし、小五郎。この依頼が終わったら存分にぶっ殺す!」

「おお! さらに戦ってよいとはなかなか太っ腹にござる!」

 ダメだコイツ、話が通じねぇ……コイツが一番嫌がる罰を考えねぇと。

 まぁ、とりあえず。

「コマンド、にげる。でいいのか?」

「コマンド?」

 レンは目をつぶりながら、わけがわからないといったふうに首をかしげた。

「ふっふっふ……しかし回りこんでみせるでござる!」

「どういう意味だい?」

「あとでちゃんと教えてやるわ!」

 用心に用心は重ねておくもんだな……腰の後ろに、マントで隠すようにして装備していたベルトポーチに手を伸ばす。

 取り出すのは、あの裏側が真っ黒だったオーク戦のときに使わなかったバフ料理――を、飴細工で宝石のようにコーティングしなおしたヤツだ。皮の賞味期限がヤバかったからな。

 加工はめんどくさいけど臭いは完全にシャットアウトできるし、なにより皮がすぐダメになる饅頭バージョンより長持ちする――ちなみに硬くなった皮部分は責任をもって俺が美味しく頂いた。

「――なるほど、なるほど。料理(バフ)でござるか」

料理(バフ)?」

「だから後で説明してやるよ!」

「全力で相手に出来ぬ者など相手にしてもつまらぬ……が、拙者としても逃がすつもりもなし。見事回りこんで見せよう」

 鍔に親指を乗せて、いつでも抜刀できるぞと示威行為を行う。

 アイツが想像しているのは、おそらく敏捷特化バフだろうが――

「お生憎様、こいつは切り札なんでね」

 口に放り込んで噛み砕く。

 飴コーティングの弱点――味のない饅頭の皮で強烈な料理(バフ)の味を誤魔化せないどころか、甘い味と料理(バフ)の味が不協和音を奏でるのを口の中で実感しつつ、しかもそのむせるような味をした中身をこぼさないよう一口で食べなければならないという苦行を乗り越えて……ごくり、と飲み込んだ。

「い――」

 くぞ、そう聞こえた気がした。が、そんなものはもう聞こえない。

「俺が、アスールの兄弟子だって事を忘れてたんじゃねぇか?」

 そして俺のセリフも聞こえないだろう――目の前には、白い世界が広がっている。



    [to be next scene Side Kogorou...]



「――やられたっ!」

 料理(バフ)――正確には≪料理≫スキルを三十秒間だけ別の一部スキルへと変更する料理――甘く見すぎていた。

 この世界では、最強職というのはありもしない幻想でござるが、特化職と汎用職は実にそれに近いものがござる。そして、その両方を併せ持つ職こそある意味では最強に近い。

 例えば、軍師レン殿は特化でありながら汎用職でござる。

 ≪解読≫フルスロットによる、魔導書(グリモア)型魔術師。魔法が弾数制になってしまうこと以外、実に多彩な魔法を使い分けることが出来る。

 ≪料理≫フルスロットは主にフィジカルな点において作用するのでござるが、同時に厄介な特性も所持してござる。

「≪ブリザード≫、十レベル級……!?」

 それはMPの消費なしに特定の魔法が即時発動するのでござる。主に知られているのは≪リジェネレイション≫および≪ブリザード≫。

 ≪リジェネレイション≫は納得できよう、が、たかが料理でなぜ≪ブリザード≫が発動するかと問われても困る。

 料理(バフ)によって強化された体からオーラが発生する、そのオーラがたまたま≪ブリザード≫と同じ効果だった。などという、もっともらしい屁理屈すらある。

 拙者はこの実に単純明快な屁理屈は好きでござるが――実際に受けてみるまでそのことが頭の中からすっかりと抜け落ちてしまっていた。

(まさか本当に使われるとは……)

 ≪ブリザード≫をネタスキルや趣味スキルと揶揄するものもいるが、効果は見ての通り……動かなかったゾンビたちはまさに格好の獲物、圧雪に包まれ凍結の異常状態を受けてござる。

 それでいてオブジェクトたる門は積雪により封鎖され――足元には膝まで積もった雪が残っている。高レベルであれば≪PK≫スキルなしに、雪の中へ埋もれさせ、殺す事も可能――伊達に水属性固有魔法として君臨してはいない。

「くそっ!」

 足を引き抜いて、雪の上へと立つ。これが柔らかい雪ならば底なし沼がごとく沈むが、≪ブリザード≫で作られるのは圧縮された雪、乗ったところで問題などない。

竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の称号に似つかわしくない技を使う……!」

 油断せず、料理(バフ)を食べる前に斬り捨てておけば勝てたものを、拙者はそれを許してしまった。

 いくら視界が悪くとも、それは向こうも同じ。されど、≪ブリザード≫範囲内では方向感覚が狂う、逃げに徹されればこのような結果にもなるというもの。

 が、救いもある。

「――教会の方角でござるか」

 オーラという屁理屈のとおり、三十秒間、決して破棄できぬようになっている。

 それゆえ、逃亡先は容易に伝わる。動いていなければ自分も雪の牢獄へ閉じ込められる可能性も考えるならば、動き続けなければならない……であれば、さっさと元凶を封印しに向かうのはいい手でござろう。

「城は雪に封印され厄介……道すがらゾンビ衆を凍らせ、最後は自分ごと墓地の入り口を封じるつもりでござろう」

 アスール殿程度の≪ブリザード≫であったならば、凍る前にアスール殿をゾンビの大群にて圧殺することもできた。

 が、十レベル級にもなればそれが通用しない。通常のMPならば七秒弱で効果が切れるそれが、三十秒間――むしろ圧殺する前に逃げおおせられる。

 実に厄介な切り札でござった……!

「あと六十八レベル」

 切り札という宣言からして、おそらくはセブンスエイト――八レベル級一つに十レベル級を七つという汎用中の汎用構成にござろう。

 それは≪料理≫スキルと残飯料理(メシマズ)を耐え抜く気概を持った者にのみ許されたスキル構成で、通常は絶対に不可能。似たようなことはできても、平均化するには必ず邪魔な数字や足りない数字が出てしまうのだ。

 数をそこまで絞るとしても、組み合わせ自体は多すぎる。雲を掴むような話よりも、まずは現状の確認でござろう。

(約三十センチの圧雪……)

 もし仮に空気を多分に含んでいようと、これは約三十センチの氷によって封印されているようなものでござる。また力技で容易に状態異常を解除できるということは、屋根や壁に張り付いた氷がひとかたまりとなって襲ってくる可能性もありうる。

 いや、ほぼ壁に張り付くような状態であればそのほうが自然というもの。故に正面は完全に封印されてしまったというべきでござろう。

 正面がダメなら、裏手からの潜入も考えられる……しかし、それでは策の前提が崩れてしまう。ややもすれば拙者以外そのまま倒される可能性すらある。

(ゾンビはもうダメでござろう)

 ゾンビたちは完全に凍り付いてござる。解けるのを待てば時間がかかり、かといって砕けばゾンビたちが死ぬ。

「してやられたものでござるな」

 竜殺し(ドラゴンスレイヤー)との対決を夢想し、正面で待機していたのが失策だった。それを前提として正面から堂々と攻め込む策を立てたのも二つ目の失策か。

 そう、この策の要は正面から堂々と、だった。

 見た目が恐ろしくても、例えばコミカルに踊りつつ入ってくれば、“お客様”はそれがイベント用に用意されたモノであると誤認してしまう。版権が許すならばマイケルジャクソンのスリラーを歌いながら踊ってもいい。

 そうなればさしものシスターも、近衛兵や暗殺ギルドも手出しはできぬ。仮にも依頼を受けた人間の一人なのだ、迂闊に手を出すより利用すべきでござる。

 そしてジルコニアGMにも、そうなるように誘導するよういい含めておいた……その前提条件が完全に崩されたのだ。

「よくもやってくれたな! 竜殺し(ドラゴンスレイヤー)!」

 吠えて、拙者は邪魔なゾンビどもの血を妖刀に吸わせながら追跡を開始した。



    [to be next scene Side Len...]



「なるほど! 一昔前のRPGゲームのことだったんだね!」

 ごうごうとうるさい≪ブリザード≫の中、ランディという異性からお姫様抱っこされるという貴重な経験を味わいながら、雪と風の音に負けないよう声を張り上げる。

「コマンド、というのも、回り込まれた、というのも! 実に面白い言い回しだ!」

「喋ってると舌噛むぞ!」

 今のランディは、複数効果のあるひとつの料理(バフ)によって筋力と敏捷を上昇させているらしい。それでいて、十メートル先も見えないようなこの猛吹雪の中を、迷いなく突き進んでいる。

 人間は普通、右か左、どちらかに傾いて進むことになる。それなのに真っ直ぐ進めてしまう理由は修正しながら歩いているためだ。同じ景色の続く森で同じ道をぐるぐると回って遭難しまうのはそれができないからだ。

 だけれど、ランディはちょっとした工夫をしている。工夫と言ってもそれほどすごい工夫じゃない。むしろ工夫と言えるものじゃない。

『右にずれています、三十度』

「右にずれているそうだよ! 三十度ほど!」

 私の時計は今、暗殺ギルドのチャットと繋がっている。ちなみに相手は沖田さんだ。

 つまりは、私は外側から情報を得て、その情報をランディに伝える。ランディは方向を修正しつつ走る。

 そう、工夫とも言えないね。報告、連絡、相談。集団行動において、とても重要なことだ。ランディがそれを考えないわけがない。

 ランディは手が離せないから私にその役割を託した、それだけの話さ。

「というか! ≪料理≫スキルは! 実に面白いことができるんだね!」

「ゲームじゃけっこうありふれた話だけどな!」

 料理を食べればステータスが一時的にパワーアップする。というのはゲームでは実にありふれた話らしい。たぶん、薬膳料理から派生してきた概念だろう。

『≪料理≫スキルは単体で完結する汎用性の高いスキルですからね』

「なるほど」

 ≪解読≫スキルは≪筆記≫スキルでのスクロール作成が必要だけれども、≪料理≫スキルは自分で作ればいい。当然の話だね。

 その分、制限は多そうだ――あとでたくさん教えてもらおう。

「だから! 舌噛むぞ!」

「ゲームだから! 噛んでも痛くないさ!」

「そういう! 問題じゃ! ない!」

『右、行き過ぎです。左へ四十五度』

「左! 四十五度!」

「はいよ」

『教会、範囲内に入りました。ご武運を!』

「ありがとう――教会! 範囲内!」

「あいよ!」

 雪を撒き散らしながら、私を抱きかかえながら、屋根の上を大ジャンプ。筋力が上昇しているせいか、普通のジャンプよりも遠く跳んでいる気がする。

 ざす、という、氷を砕くような着地。

 雪の上だから滑るんじゃないかなとも思ったけれど、雪に足を埋め込んで突き進むというちょっと強引な方法だったおかげで、滑るなんてことは起きなかった。

『そこにいれば地下墓地も範囲内に収まります』

「うん、わかった」

『うまく≪ブリザード≫で封印してください。ゾンビたちの雪像が壁になってくれているおかげで、こっちにも余裕ができています。私達はこのままゴーレムで圧殺を続けますがよろしいですか?』

「お願いするよ――小五郎に注意してね。チャットを切るよ」

『難しい話ですが、頑張ってみましょう。それではご武運を』

 私はパタンと時計のカバーを閉じた。

「ランディ! 上手く逃げられて! よかったね!」

「追って来るだろうがな!」

「理解してるさ!」

 この効果は三十秒、圧倒的に足が速くなったランディでも、もちろんここに到着するまで持つわけがなかった。その時々に、追加の料理(バフ)を食べさせてあげることになったけれど、それは実に貴重な体験だった。

 初体験って、ちょっとドキドキするね。吊り橋効果で好きになってしまわないよう注意しないと、アスールに申し訳ないかな?

「下ろすぞ!」

「滑らないかな!?」

「しばらく掴まっとけ! 雪が積もれば足場ができる!」

「分かった!」

 ランディからゆっくりと屋根の上に下ろされる。

 私は雪というものにあまりなじみがないから、この斜面になった教会の屋根からいつ滑り落ちていってしまうのか、ちょっと怖くて、ドキドキする。

 ――ゾンビほどじゃないけれどね。

「GMはどうしているのかな!?」

「うっかり死んでる可能性が高い!!」

「それはそれで困るんだけど!?」

 あと数十秒、叫びながらの会話だ――雪がじわじわと積もってきている。

「ねぇ!」

「なんだ!?」

「これ、生き埋めにならないかな!?」

「……移動するぞ!」

「今の間はなんだい!?」

「気にするな!」

 私を抱き上げようと手を伸ばす。その後ろにはいつのまにか小五郎が飛び込んできていて――!

「そっ首頂戴いたすぞ! 竜殺し(ドラゴンスレイヤー)!」

 柄に手を掛け、既に鯉口を切っていた。叫んでも間に合わない――魔導書を開きながら取り出す。

「≪グラビティ≫!」

 複数種類ある属性固有のうちの、ほぼ唯一とも言える単体魔法。闇属性、≪バインド≫の上位互換を唱え、

「レン!」

 同時にランディが覆いかぶさるように私を押し倒す。そのせいで狙いが十字架にずれてしまい、それがぐしゃりと潰れるように圧壊する。

「ちっ、予想通り≪リジェネレイション≫もござったか!」

 言葉通りなら、ランディは斬られたらしい。

 予想通りランディを狙っている。

 いや、行動からすれば私を狙った攻撃から、庇ってくれたのかもしれない。

 ――どちらにせよ、ダメージを受けた。その事実は変わりなかった。

「≪筋力≫≪敏捷≫≪ブリザード≫≪リジェネレイション≫……そして切った感触から≪切断耐性≫! その切り札、あと三つで丸裸にござる!」

「チッ!」

 また、私を抱えて跳ぶ。

 ≪ブリザード≫で地下墓地を封印しなければならないのに、まだ五秒程度しか経っていない。

 そしてランディの強化時間も、あと十秒も残っていなかった。

「甘いわっ!」

 小五郎はがなり散らして――一瞬で目の前へと先回りする。

「なんっ……!」

 今度こそランディの首を狙った、横薙ぎの抜刀。

 刃は確実にランディの首を捕らえ――薄皮一枚といったところか、斬られたけれど、完全に切り落とされない。≪リジェネレイション≫の効果が、その首の傷を逆再生するみたいに、回復させていく。

「なんと厄介な……水でも斬っているかのようだ……!」

 ≪切断耐性≫のおかげでもあるんだろう、なければ完全に首を切り落とされていたのかもしれないと、ランディの顔は焦っていて――ちょうど、料理(バフ)の効果が切れた。

 きりもみするように、背中からどすんと落ちる。硬い圧雪でも多少のクッションにはなった。ダメージらしき感覚は感じられない。

「小五郎! なんだそのスキルは!」

 魔法に限ってしまうが、私も移動系のスキルで、一瞬で移動するようなものは見たことも聞いたこともない。

「≪テレポート≫、新スキルにござるよ。いや、魔法か……まぁいい、どっちにせよ変わらぬこと。拙者は転移と呼んでいる」

 GMはこのスキルで釣ったのか! 文字通り≪テレポート≫であるなら実に厄介極まりない。攻撃するにしても、どこから来るかわかったものじゃないからだ。

 けれど、

「……スキルスロットの上限を、超えてないかな?」

 街中なら、≪PK≫フルスロットでなければならないはずだ。他のスキルを入れる余裕などない。

「なに、単純な話にござるよ」

 刀を鞘に納めると、彼は無詠唱(・・・)で目の前に降り立ち――抜刀攻撃。

「チッ!?」

 ≪PK≫スキルによる筋力ステータス低下のせいなんだろう。ランディの剣が、小五郎の刀を弾き返す。

 小五郎はそのまま後方へと瞬時に飛びのきながら、刀を鞘へと納めた。

「≪詠唱無視≫……!?」

 名前通りなら、詠唱しなくても魔法が使えるスキルなんだろう。何らかの代償はありそうだけれども、さらに厄介な事になった。

「どんな反則をしているんだい?」

「なに、今の拙者は時計が二つ(・・)、あるということだけでござるよ?」

 それがどういう意味か。分からないものはいないはずだ。

 このゲームの根幹から揺らぐ、そういう話なのだから。

「……テスターか」

 噂だけは聞いたことがあると、ランディは忌々しげに呟いた。

「テスター?」

「新スキル、新アイテム。それを文字通り試用するプレイヤーのことだ。そうやって噂ができて、実装されたときに他のプレイヤーが探す……噂の人物に直撃取材ってヤツだよ」

 メンテナンス明けごとに更新されたものを探すと聞いたことがあったけれど、なるほど、こういう噂を頼りに探していたのか。

「まぁ、GMの依頼を長いこと受けていれば……ときどきこういった面白きこともありうるという話にござる」

 GMは、とことん余計な事をやってくれるね。

「先ほどは油断した。地下墓地も、若干ながら封じられてしまっている。しかも街では、ゴーレムを利用した人海戦術……なるほど、此度の計略合戦、拙者の負けにござる」

「作戦は小五郎が考えた、と」

「で、ござるなぁ……まぁ、もっとも。さきの計略合戦で負けたとはいえ、まだこちらに、斬首戦術は残ってござる」

 つまりは、大将の首を取る、ということ。

「軍師レン殿と、作戦の上で邪魔になりうる竜殺し(ドラゴンスレイヤー)のガランティーヌ殿、近藤勇殿……そして、帝王閣下。その首を上げればまだ勝機は残ってござる」

「逆にこっちは、小五郎とGM二人、俄然有利なのはこちらだよね?」

「ふっ……自在に移動できる拙者から、逃げられるとでも?」

 なるほど、それが自信の源か。

 でも、条件はある程度想像がついた。

「レン、下がってろ」

「嫌だね」

「レン!」

「大丈夫さ、ランディがいればね?」

 ランディがいれば奇襲はどうにでもなる。

 私は、そう信じている。

「頼りにしているよ」

「……最期の話は済んだか? 手加減抜きで行くぞ!」

「ランディ、後ろ(・・)に注意して――!」

 私の宣言と同時だった。小五郎は、刀を鞘に納めたままふっと目の前から消える。

私の上(・・・)っ!」

 もちろん、後ろから来るとは思っていない(・・・・・・)。人の視野角は下方向に広くとも、上には狭いから死角になる。

 後ろと言ったのは、単純に誘導のためだ。

「――!?」

 驚きを隠せないような表情をしながらの抜刀、私の頭を真横に切り裂くような横薙ぎ。この読みあい、私の勝ちだ。

「後ろじゃねぇのかよ!」

 ランディの愚痴じみたセリフは分かる。でも悟られたくはなかったから、ちょっとあからさまに言うしかなかったし、想定内だったからこそ、私はすぐにしゃがんで避けることができた。

 そして噛み合う刃と刃――力不足である小五郎の刀を弾き、私の首は守られる。

「くそっ!」

 急いで鞘に納めようとする。それこそ私の狙い通り。

 私は小五郎の刀を対象にして、本日二度目のその魔法を詠唱した。

「≪グラビティ≫」


 巨大な≪影≫がゴーレムを鷲掴みにした「ひしゃげろ! 潰れろ! 砕け散れぇ!」――闇の精霊


 物語(フレーバーテキスト)の通り、ただの武器や防具ならひしゃげて潰れて砕け散る。布と革だけには効果がほとんどないけれど、それが防具なら体を締め付けてプレイヤーへ圧迫属性のスリップダメージを与える。さらには≪バインド≫と同じ効果までつく。

 でもそれは全体の効果時間から言うとHPを半分ぐらい削る程度だ。≪テレポート≫で逃げられて、回復するチャンスを与えてしまう恐れがある。

 だから、戦えないようにするために剣を壊す。

「ちぃいいいいい!」

 けれど、小五郎の日本刀は壊れなかった。ただ≪バインド≫でもかかったかのように自重が増す程度……ちょっと予想外の出来事だ。

「な、め、る、なぁ!」

 日本刀の重さは平均して約三キロらしい。なら、現在の重量にして二百キロ超になるそれを、醜くも地面にはいずって鞘に納めた。みしみしと鞘が今にも壊れそうな音を立てる。

 ――その予想外の出来事のおかげで、確信する(・・・・)

「ランディ、追撃! 時計を破壊して!」

「出来るかっ!」

 ランディの言うことも当然だ。目に見える場所ならともかく、時計はどこに装備されているか分からない。とりあえず全身をくまなく切り刻んで、服の下からぽろっと落ちることを願うしかない。

 だけど、そんな暇もなく小五郎の姿が消える――本当にここまで、予想した通りの動きをしてくれる。

 あとは賭け。

「≪ロックウォール≫」

 私のすぐ後ろから、雪の層を突き破って分厚い石の壁が出現する。石畳に使われていたモノたちも一緒に舞い上がってしまったけれど、これはあとで閣下にごめんなさいするしかない。

「そっ首置いて逝けぇ――えええええ!?」

 背後から、殺気と驚愕と、≪グラビティ≫の効果がかかった刀のせいでぱきんと鞘が割れる音。

「私の勝ちだね」

 ≪ロックウォール≫の中に埋め込まれ、鞘が割れて砕けて抜き身になった日本刀の柄に手を掛けたまま、動けなくなってしまった小五郎へ振り返る。

「……なるほど、石の中にいる、というのがこういう状態なんだね。どんな風に処理されるか不安だったけど、やっぱり『ゲームのお約束』は守られるみたいだ」

 彼は横向きになっていた。

 刀は≪グラビティ≫の効果で重量が増している状態だから、抜くには下に振り下ろすような体勢にならなきゃダメだ。だからそんな状態になってしまったんだろう。

「ああ、これぞまさしく『いしのなかにいる!』だな」

 ランディは、茶化すように言いながらも警戒は解かない。いつ≪テレポート≫するか分かったものじゃないからだろう。

「な、なぜ分かった?」

「……まず、ランチェスターの法則って知ってるかな? ざっくり言うと、戦力差が同等なら相手の戦力を削るために集中攻撃する、っていう、戦闘の数理モデルなんだけど」

「知らん……」

「まぁ無自覚でやっていた可能性もあるけどね」

 今までの作戦自体が彼のもので知らないというのなら、無自覚にやっていたんだろう。

「次、心理学のお話。無意識での判断なら、人は基本的に弱い相手をターゲットにする」

 この時点で、私がかなりの高確率で狙われることは予想できる。

「最後。ランディに追撃させて、隙を作った。戦力差が覆ってきたからこそ、逃げるという選択肢がなくなって斬首戦術に切り替えていたよね? だから私は、倒しやすい私に奇襲を仕掛けるよう思考の誘導をした」

 そして刀への≪グラビティ≫効果。これで左右からでは有効な抜刀攻撃ができない。だから抜刀ができるよう、体勢を崩した状態で≪テレポート≫するしかなかった。

「ランディに追撃させなければ、そのまま逃げただろうね? でも追撃させたからこそチャンスだと感じた……けどやっぱりランディは邪魔だったんだよ、また庇われる可能性があったから」

 ランディによってまた庇われる可能性が高いけれども確実に戦力を削りたい、だからランディには絶対に庇えない私の真後ろに≪テレポート≫するしかなかった。

「以上の理由から、私の真後ろに出てくるだろう、と予想ができた。これで証明になるかな?」

「よくも、まぁ、頭がまわるな」

 そんなあからさまに呆れなくてもいいじゃないか、ランディ……ちょっと拗ねちゃうよ?

「拗ねるなよ」

 顔に出ちゃったか。

「あとは、ここに来るまでちょっと面白い話を聞いたからね。運営のことだ、もしかしたらできるかも――と思ったら予想通りさ」

 コマンドとは何かと聞いたときの雑談じみた話だった。

 チャットをしながらランディに聞いたものだから、当時の笑い話から関係のない話まで、チャットの向こうにいた沖田さんがぺらぺらと喋ってくれた。

 もちろん、ランディは必要最低限の事しか教えてくれなかった上に、ずっと「舌を噛むから黙ってろ!」としか言ってくれなかったけれどね。

 ……やっぱりちょっと拗ねちゃおうかな?

「拗ねる余裕があるなら警戒しろよ、また≪テレポート≫されたら厄介だろうが」

「多分無理だよ? だって、鞘は壊したし(・・・・・・)

「はぁ?」

 ランディこそ、気の抜けた返事をしていいのかなぁ……地下墓地の封印はまだ甘いっていうのに。

 今はまだゾンビが出てきてないからいいけどね。

「ほら。だって彼、明らかに納刀しすぎじゃないか」

「え?」

「え?」

 ……なんでそこで疑問に思うのかな?

「コイツ、林崎夢想流って流派の、結構な実力者だぞ?」

「ごめん全然知らない」

「……居合いの元祖でござる。拙者、居合神社にて演舞も行ったことがあるし、巻き藁も竹の束も何度も斬った経験がござる」

「へぇ、そうなんだ?」

 あとで調べてみよう。そういう歴史はちょっと面白そうだし、今回みたいに何が糧になるか分からない。

「でもそれはともかくとして、抜刀したまま戦ったほうが強いよね? 常識的に考えれば」

「……だな」

「まぁ、確かに、そうで、ござるが……」

「≪グラビティ≫効果中、抜き身で≪テレポート≫できるのであればそうしたほうが手っ取り早い。なのにわざわざ納刀した。真後ろに≪テレポート≫してそのまま剣を振り下ろせばいいだけなのにね?」

 ずっと不自然すぎるくらい、抜刀に拘りすぎていたんだ。そして剣が壊れないという予想外の出来事のおかげで、確信した。

「あの、先入観とか、そういうので、判断してくれなかったのでござるか? 知っているかは存ぜぬが、≪居合い斬り≫というアーツもござろう?」

「でも小五郎、あのとき帝都軍を鎧ごと真っ二つにしてたよね? 使う必要を感じないよ」

「……いや、無理だ」

「どうしてだい?」

「コイツの日本刀は普通だったはずだ、だから魔剣でもない限り……」

「じゃぁ魔剣だったんだね。私の≪グラビティ≫で壊れなかったし」

「……それもそうか」

 あれは本当に予想外の出来事だった。発動体になりそうなものは剣と鞘のみで、鞘を発動体にするなんて聞いたことがないからだ。

 私が聞いたことがないだけで、実際はありうるのかもしれないけれど。

「≪テレポート≫の条件は、おそらく武装していないことなんじゃないのかな?」

 石の中にいる小五郎は、鞘が破壊されたせいで抜き身の剣を持っている状態だ。ここまでぺらぺらと喋って隙だらけにしているのに、逃げようともしない。

「くっ……軍師の二つ名は伊達ではなかったようでござるな。良くぞ見破ってくれた。そしてハメてくれたな、レン殿」

「まぁ確かに。自分でもびっくりするくらいハマってくれたけれどね――そして自白をありがとう、これでちょっと安心だ」

 実際に本人から聞くまで信用ならないからこそ、自白してくれるようにわざわざぺらぺらと喋る必要があったわけだ。だからこそ「おそらく」という不確定な言葉を使わざるを得なかったんだ。

「ぐっ……!」

「じゃ、次は私の鬱憤晴らしだ」

 私はかばんから「レンの魔導書・風の章」を取り出す。

「≪セット≫――≪トルネード≫、≪天空より来たりし大気の旋律よ≫、≪トルネード≫」

「お、おい、レン?」

「≪バインド≫」

 頭の中で積み木を積み上げるようにイメージしながら詠唱する。蒼白い炎が魔導書のページを焼いて、灰へと変えていく。

「あ、あの、レン、殿?」

「ちょっと、使いすぎじゃね?」

「そうだかな? 使いすぎかな?」

 でもここで全部の鬱憤晴らしをするには、それこそ魔導書十冊は必要だ。これでも押さえているほうなんだよね――残りは帰ってからだ。

 あとは地下墓地を封印するために、「レンの魔導書・水の章」を取り出して、≪セット≫の効果時間が切れないうちに≪ブリザード≫を追加詠唱する。

「じゃ、行こうかランディ。次はGMだ」

「……お前は鬼か」

 ランディは、小五郎を憐れむような目で見た――でも、そんな事をする必要ってあるのかな? コレ(・・)に。

「鬼じゃないよ。でも、私がやろうとしていることを理解してくれるなんて本当に嬉しいよ。さすがはランディだ、そういうところ、大好きだよ?」

「あの、拙者、理解が及ばないのでござるが……」

 ……なんて頭の回転が悪いんだ。それとも、あえて理解しようとしていないのかな?

「これはギルドからの、最初のペナルティだ。最速で(・・・)落ちろ(・・・)浪人生(・・・)

 新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


 今回もまた一話ばかりの更新に……変わりと言ってはなんですが、ちょっとだけ長めですが……なかなかままならんものですね。創作活動とは。


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