第52話 プランB
「第一回合同ギルド会議ー」
クソ幼女がいつものように、毎回変わらぬ第一回目の――今回は正しいか――ギルド会議の開会宣言をする。
……俺ひとりだけ、牢屋に鎖で繋がれながらというのは、初めての経験だが。
[to be Previous scene...Side Len]
「――はい。ドラゴンを倒してお姫様を取り返せー、没!」
「なぜですか!」
「今週分はもう絶滅したし」
「絶滅ぅ!?」
「事前調査が足りないな。このゲームには生態系が――待て、巨人の肩に乗ろうと企画したバカは誰だ。没」
「巨人もダメなんですか!」
「スライム、没」
「スライムすら!?」
「ほうきに乗って空を飛ぼう――クロウ、できる?」
「熟練の腕が必要であるな。そもブリュンヒルデ選手も似たような方法で大ジャンプをしているが、あれは相当の練習を積む必要がある。特に着地、下手をすれば死ぬ」
「じゃ、色々ヤバいってことで没」
「「ええっ!?」」
「お城での舞踏会――は、帝都に連絡を入れないと分からん。保留だ」
「せめてそれだけは通してください!」
ばんっ、とテーブルを叩くように手をついての抗議。
でも反応は変わらない。
「帝都の王宮は実世界で言う国会議事堂と同じだぞ? 入れなくはない、が、そこで何かをするとなれば事前の連絡が必要だ。よって保留しかない」
「そこをなんとか!」
「第一この街から王宮まで、馬車を使って三十分はかかるぞ?」
「魔法でひとっとびじゃないんですか!?」
「そんな便利な魔法などない」
「車もですか?」
「車か――おい、そっちのギルドの技術屋、何か作ってないのか?」
「戦車ならあるじゃん、人力の」
「人力戦車!?」
「あと、自動車は材料を回してもらってもワンオフものになるだろうから四日は見てもらわないと。人数によってはもう少し時間が短縮できそうだけど、たぶん受けないね。それにいつインするか分からないし――ガランはタロスのリアル知ってない?」
「何やってるか謎」
「そっかー」
そういえばランディはほとんどのギルドメンバーが何をやっているかを知っている唯一の人だから、これは本当に誰も知らないだろうな。
ログインしている時間からすると、なんとなく海外にいるような気がするんだけれど。
「ヤツでも無理なら、鍛冶ギルドでも無理だろうな」
「車も飛行機も魔法もないのか……!」
「魔法はあるけど移動用の魔法がないね。走るか人力、タロスの作るものは微妙だなー……だれか連絡取ってみて?」
「私が引き受けますよ、ファーザー?」
「ルシーお願い」
「では一旦失礼します」
ルシーが部屋の外へと出て行く。
「小五郎、お前は帝都の詰め所に連絡を取れ。王宮の、せめてエントランスぐらいは使えるかどうかだ」
「心得申した」
「我も行こう。帝王とは旧知の仲であるからして」
「ありがたい」
クロウがすっと立ち上がる――恋人のように抱き合うアリスとランディが近藤さんの視界に入る。
窓を背にした位置に座っているためよく分からないけれど、ギラリ、と輝いた気がした……いや、絶対に輝いた。ものすごく嬉しそうな顔をしている気がする。
「魔王を倒そう? 魔王じゃないけど、似たようなヤツの、冥府の王までいくのにスライムと戦ったり危険な罠を潜り抜けたり、リアルゾンビを見て失神しない可能性がある以上はこれも没、と」
「ああ、どんどん没になっていく……」
「せめて飛行船での遊覧はできませんか!?」
「ウチのタロスはそういうの興味ないから作ってないかな」
「我々のほうで作ろうとしたが、水素ガスを使うハメになった。よって無理と答えよう。ヒンデンブルグ号の悲劇を味わいたいのならば別だがな」
「じゃ、代わりに海というのは!?」
「海まで二時間、没」
「じゃぁ何ができるんですか!!」
「「事前調査と準備が足りない、ほぼ不可能だ!」」
営業二人ががっくりと肩を落とす。
「――そういえば、そもそも向こうから来る人数も、どういう状態であるかも知らないんですが。せめてそれを聞ければ何ができるかが考えられますよ? 予定開始時間は午後一時、今は午前十一時、とりあえず企画書は捨てましょう」
「あなたはいい人ですね……!」
「お名前は?」
「コックのガランティーヌです。長いのでガランでも、ランディでも、お好きなように」
「ではガーラさんと」
まるで女の子のような愛称になったな……。
「人数はひとまず五十人ですね、男女含めて」
「半々ですか?」
「ではありませんね、男性のほうが若干多いです。五人ほど」
「なぜですか?」
「壁の花になる女性が少なくなるからですよ」
男の人はどうでもいいのかな?
「それと、男性のほうが多いほうがちやほやされている感覚を女性に提供できます。本気で結婚を考えている男性でないと、失礼じゃないですか」
「補足でご説明させていただくと、女性は参加費無料、男性から会員費を頂いております。養っていくのに必要な経済力があるかどうかをこちらで判断するためですね」
じゃぁ、そのぶん男の人は精力的になる可能性が高いかもしれない。
――なるほど、そういう仕組みになっているんだね、結婚相談所って。
「……人数が多すぎますね」
「多い、ですか?」
「馬車の御者をできる人間は少なくないですが、一頭引きでも二頭引きでも馬車に乗れる人数は多くて五名程度ですから。まず十人の御者を用意する必要がでますね。この調子だと」
「……みなさんでギリギリ、といったところですか」
「そして人数が多くなると山賊が襲ってくる可能性も無きにしも非ずといったところですか」
「山賊がいるんですか!?」
「それがNPCかプレイヤーかは分かりませんが。プレイヤーだった場合守りきる自信はありませんよ? リアル過ぎて心臓がバクバクしたと言っていましたけれど、殺される感覚っていうのもリアルですからね。護衛を雇う必要が」
「ちなみに、何名ほどですか?」
「プレイヤーほど狡猾なものもいませんからね。相手が十人しかいなかったとして、電撃戦をされ、目の前で殺されては参加者も怯えるでしょう? 一台につき三名ほどが妥当かと」
「三十名か。こちらは構成員を出せないぞ?」
「募集をかけたとして、この大所帯だと敬遠されるね」
「お金稼ぎのチャンスなのに?」
「範囲攻撃魔法に巻き込まれる可能性が高くなる可能性を考えるなら、臨時で五名から六名が最大。それ以上はギルドの仕事だな」
「軍曹がいればいいんだけれどなぁ……」
「弟子ならなんとかできないか?」
「守りながらはハードルが高すぎる。軍曹も、自分ひとりだとせいぜいで二十人までだって言ってたし」
それは相手が?
それとも守る人数が?
……後者っぽいなぁ。
「――私が吹き飛ばそうか? ≪エクスプロージョン≫はダメだとしても、≪ツイスター≫なら範囲もそんなに広くないし」
「墜死体を見せ付ける作業に入るのか?」
「……≪ブリザード≫も≪テンペスト≫も≪PK≫がないと状態異常にならないからなぁ、無意味か」
「軍師は何もするな」
本当に、強すぎるのも問題だなぁ。
「ともあれ、少なくとも目の前で人殺しのシーンを見せることにはなりそうではあるな」
「それはさすがにやめてくださいよ!?」
「……まぁ、とりあえず装備をお聞きしても?」
「デフォルトだとか」
「あ、無理」
「ドレスを買う金にもならんな」
「どこからお金を捻出するつもりなの?」
「えっ?」
「ゲームですから、お金なんて湯水の如く出るんじゃ?」
ああ、ダメだ、認識の差が広すぎる。
というか、運営、せめて支度金ぐらいは用意していってよ……。
「認識の差がありすぎるな」
「ひとまずこっちだけで話し合ってよろしいですか? ほんの三十分ほど。プランも提示させていただきますので」
「え、それはちょっと……」
「さすがにノウハウもない方の意見はあまりにも無理があると思いますが」
「私たちからしてみれば、そっちがもう少し余裕をもって企画を持ってきてくれないとどうしようもなかったんだけどね。まぁ上司の無茶振りだって納得してあげるけどさ」
「一度実世界に戻り、運営および上司に報告したほうがいいな。改めて言っておくが、上司には企業間の話ではなく国家間の話になると伝えろ」
「は、はい。分かりました」
「それは、必ず」
「アバターはここに残るでしょうから、私はここで待機させていただきます」
「頼んだ、沖田」
「はい」
……あれ?
ということは、この依頼が終わったら五十人の中身のいないキャラクターがその場に残るってこと?
――さすがにないよね。
[to be Next scene...Side Galantine]
「――で、なんで俺は鎖に繋がれてるんだろうな?」
「何を突然言っているんだ、ようやく逮捕できたんだぞ? せめてこの会議が終わるまで拘留しなければならん。短い刑期じゃないか」
うっわ、近藤の野郎すっげぇいい笑顔してやがる。
「っつーか俺前科アリになるのかよ!」
「三度目の正直かと思えば、最初からだったとは。巧妙すぎて気付かなかったぞ? ちゃんと反省しておくといい」
「……おい、アリス。お前のカンペ役勤めてやったんだからせめてこっから出せ」
「いい経験じゃない、刑期が三十分って最短記録じゃないの? いっそ伝説を作ろうよ!」
「伝説は作りたくないが、いや、しかし戦力的にしょうがないからな。司法取引というものだ、いやはや、残念だな、実に」
コイツらいい笑顔しやがるなぁおい!?
「さて……性犯罪者はほうっておいて、始めたからには議長を勤め上げろ」
「おいっ! さり気に性犯罪者扱いするな!」
「はいはい、静粛に静粛にー」
クソ幼女が手を叩いて、強引に話を中断させる。
くっそ……コイツのメシにもいつか強化デスソース混ぜ込んでやる……!
「今回の議題は、五十人の脳みそメルヘンな婚活支援のプランでーす。営業さんたちには悪いけど、正直プランの立て方が甘すぎで使えませーん。運営はいつもの如く仕事しませーん。いい案が無いかをお聞きしたいでーす」
「マスター」
「はいルシー」
「タロスさんはいらっしゃるそうですよ?」
「朗報だな」
「私たちよりログインする時間が遅かったようで、店にいなかったから連絡もしなかったとのことです」
「タロスは個人主義だからな」
連絡をよこさないのはいつも通りだ。
「ねぇ性犯罪者ー、軍曹って当直だっけ?」
「当直だけど俺は性犯罪者じゃねぇよ! あとそろそろツケ払え!」
「――アリス? こうなったのは君がランディにカンペを頼んだせいなんだから、ランディはそろそろ解放しなさい」
「えー?」
「――≪バインド≫」
「ぐふっ!?」
ずどん、と近藤が思い切り地面に叩きつけられる。ってか早っ!?
抜く手も見せずに、一番の邪魔になる近藤を拘束。しかるのち、
「……次のページは、なんだと思う?」
何を使ったとしても、この建物は崩壊するだろうね――という、脅し。
いや、助けてくれるのは嬉しいけど、コイツの沸点今だにわかんねーな。
ルシーのクロスボウ早撃ちもなかなかのものだけれど、自分に対してじゃなかったから反応ができなかったみたいだし、もう詠唱体勢に移っているのだから間に合うことはないだろう。
対処できそうなのって軍曹ぐらい?
レンもだんだんと人外に近づいてきたなぁ……才能があるヤツはうらやましいね、まったく。
「――こ、近藤さん! あれは演技だったから! 無罪無罪!」
「し……しかたあるまい。釈放だ……釈放……」
「――あとでちゃんとごめんなさいするんだよ? 二人とも」
「は、はーい……」
「くそっ、せっかくのチャンスが……!」
「近藤さん?」
「りょ、了解した……!」
「私はこういう不誠実なことは嫌いなんだ」
ぱたん、と魔導書を閉じる。
「ちなみに、次のページは≪ロックウォール≫だよ。……まぁその次は≪アースクエイク≫だったけれど」
こ、こえええええ!?
コイツ自分が攻撃されないように防御体制整えてから回避不可な攻撃ぶっ放すつもりだったあー!?
「軍師よ、なぜ入れてある……?」
「核兵器による武力行使も必要かなと思ってね。数発入れてあるんだ。各属性固有魔法を」
歩く核ミサイルじゃねぇか!
しかも枚数分からんのがこえぇっ!
「あと、私は軍師じゃないよ?」
「わかった、わかったから……そろそろ拘束を解いてくれないか……?」
「ああ、忘れていたよ。≪詠唱解除≫」
いや、あの目は忘れていなかったな。
すっげぇ蔑んだ目してたし。
めっちゃ怒ってたし。
「……そちらの軍師は、無表情で何を考えているかわからんな」
「うん……」
「……」
あれ? 俺だけなのか? 分かるのって。
とりあえず、近藤の手によって牢屋の扉が開かれる。手錠も、外された。
「冤罪でよかったな……」
「――近藤さん?」
「……なんでもない!」
とりあえず怒らせちゃいけないというか、コイツだけは敵に回しちゃいけないな。自分を巻き込むことになんのためらいもねーし。
「さて、ムダに時間を使ったね」
「本当にな……」
恐怖政治っぽい空気だ。
「な、なー? ぶっちゃけ、予算が五万ゴールドって何ができんの?」
「オレですらネズミで一時間ちょい頑張ればそれだけ稼げる額っぽいんだけど……」
装備の維持費や宿代、食費を切り詰めればキリヤは四万ほど稼げる。ヘルフリートは攻撃力過多で稼ぎはそれより落ちるだろう。
あと補足するなら、初期装備の初心者はさらに落ちる。基本的にもたもたするからな。それでも一時間分の稼ぎとしては、手取りで一万ぐらいか。
実際問題、攻撃全てが衝撃属性かつ火力が必要分しかない、それでいて運動神経がいいキリヤだからこそできる芸当だな。
「既製品のドレスが一着買えるな」
「正しくは、おつりが二百ゴールド出るぞ」
「ヨンキュッパ!?」
「お金の価値を上げられないかな?」
「プレイヤー全員に金を燃やすか鋳潰せってこと?」
「ギルド名義のお金にするとか」
「反映するのはメンテナンス後であるぞ?」
「第一、ログインしていない人間もいる。ギルドに所属していないものもいる」
「そもそも、時間がかかるぞー? じわじわ上がるから」
「そうかい」
「補足するなら、ギルド名義にしてお金の価値を上げようと試みたことがありますが、デフレにするにはまた別の条件が必要のようですね」
「やはり燃やすか鋳潰すしかないと考えられているのでござるよ」
「いやらしいね、ほんと」
レンが言うことも分からんでもないけれど、まぁプレイヤー全員がそう考えた時期はあったって話だな。
「五十人全員の初期金額でできる金額ってな、たかが知れてるっつー話だな」
「――スキルジェムと装備を売った場合、どうなるんだっけ?」
「一番高い近接で、一万円程度になるな」
「五十五万もあればどうだろう?」
「馬車一台でもそれなりのお金がかかりますから、少々難しいのでは?」
「借りる場合、馬が一頭千ゴールドで、馬車が五千ゴールドぐらいだな。……まさか服まで自腹になるとかなぁ……運営マジ仕事しろっつーの」
「確かに仕事して欲しいところだねここは……とりあえず馬を借りないで、ゴーレムを使う手はどうだろう? 巨人の肩に乗る、というアイディアもあったことだし」
名案と言えなくもない。
が、それはこの世界に慣れているヤツに限った話だ。
「ゴーレムは誰が召喚する? ゴーレム自体は、パワーはあるが遅いぞ? ≪召喚時間延長≫を使い、かつ高レベル召喚により歩幅を広げ速度を上げればいい話だが。乗り心地は最悪だし、墜死の可能性がある。そもそもそれに回す人材はどこからひねり出す?」
「私たちってところだよねー……でもそうすると普段どおり戦えなくて弱体化しちゃう可能性がねー?」
「狙われたらひとたまりもないな」
俺も普段どおりの武器じゃなきゃどうしようもねえからな。ダガーを使わざるをえなかったときが一番それを実感した。
防具ですら思うような動きができなくなることだってある。
「軍師、他になにか案はないのであるか?」
「私にばかり振らないでくれよ……まだ何がどれくらいの値段で売っているかわからないんだから……あとは、馬の代わりにタロスの作るものに期待するしかないけれど」
「二足歩行ロボフェチのアレが作ってるのっていったら……」
「……前はI型だから、次はⅡ型かな? もしくは専用機。とりあえずゲリュオーンのバージョンアップをしてるんじゃないかな、確実に。普通の乗り物を造って欲しいって言ってあるはずなのにね?」
「個人主義であるからして、なぁ?」
正直タロスは当てにならねぇってことだな。
「あとは……報酬を当てにしてこちらがお金を一時的に立て替えるとか?」
「それだけは無い」
「どうしてだい?」
結局のところレンの指導係は俺なわけだから、ここは俺が説明するしかないな。
今朝そういう宣言したし、近藤は面倒くさそうな顔をするし、小五郎は諫言や護衛以外は上の指示なしには何もしない武士道の塊みたいなヤツだし。
「これはあくまで依頼だからだ」
「失敗したら、支払われないということかい?」
「プレイヤー相手でも一般人相手でも、依頼主が失敗扱いにしたらそれに従うっつーのが鉄則だからな」
ただ、そういうゴネ得っつーのを避けるためにプレイヤーは酒場を間に噛ませたりする。
これはなんでもかんでも失敗扱いにする依頼主に対して酒場の敵愾心が高まっていく仕組みになっているからだ。
一定以上の高さになると、依頼を出すために酒場への寄付が必要になる。
さらに高くなれば、酒場自体が依頼の仲立ちを断る。そのうえブラックリストということで、依頼主の名前と顔が張り出される。
これをはがしてもらうために罰金を酒場に支払うわけだが、これが高い。
後は個人かギルドへの直接依頼しか残らないが、ブラックリストに乗ってるやつは引き受けない。
最終的にギルドへ直接依頼を持ちかけることになるわけだが――まぁ大抵は誰も引き受けないから、暗殺ギルドが引き受けて、別のギルドに振り分ける形になる。
もちろんそこでゴネようものなら文字通り殺される。最悪、剣闘士の街送りだ。
「――まぁ何が言いたいかっつーと、信用のない相手に対しては決して自分の金を使わない、ってことだな。ヤクザな商売だろ?」
「確かに、ヤクザな商売だね」
「アカウントは一人一個しか作れん。このゲーム自体、そういうつくりになっている。殺すよりはさっさと奴隷にしてやったほうが早い」
「ど、ドレイてやっぱあんだ……?」
「こっちの世界じゃ囚人って意味だし、ちゃんと人権も守ってもらえるぞ。守らんとリアルの団体がガチでうるせーから」
「な、なるほどなー……」
「それじゃあ私たちのお金は使えないから、結果として最大でも五十五万か……」
「――そういえば帝都のほうはどうした、小五郎」
「此度は認知度を買うという意味で『無料で存分に使うが良い』と帝王より言伝を預かってござる。勅も出すとのことでござった。給仕などの協力は惜しまないそうでござる」
「我のおかげであるな、直接帝王と交渉できたのは」
「帝王がどういう人か知らないけれど、勅なんて出せるような偉い人と直接話せたのかい? すごいね」
「クロウは第二陣最古参プレイヤーで、言動以外は常識人だからな。たまに人脈がおかしいんだよ」
「ランディも十分おかしいと思うな、伯爵と知り合いだとか」
「で、あるな」
「俺は流しで料理人やってた時代があるからだ」
元主催者ってバレると、ギスギスしてくるからな。対人関係が。
「今はそんなことはどうでもいい。使える駒が増えた、と言える」
「問題は移動だな」
「そうだね……ちょっとタロスにコールしてみるよ。もしかしたら何か使えそうなものを作っているかもしれないしね」
「淡い期待だろうけどなー」
「ダメでも、彼の作るものはちょっとしたイベントになるさ。ロボットに乗ってもらうとか、ね?」
「アレをアイツ以外が動かせるかが問題だな……っと」
俺の時計が鳴る――コール音だ。
りんりんりんりん、と断続的に鐘の音が響く。
「こっちにもなんか来たな、ちょっとここで電話させてくれ、移動めんどくさい」
「早くしないと一時に間に合わないから、移動してる暇もないと思うけどね……私もちょっと失礼するよ?」
「小声でな? こっちもなるべく話し合って、案は出してみるが……」
「わかった」
「うぃ」
俺は時計のカバーをぱかっと開く。メニューボタンから、コール受信を選択。
「俺だけど――」
『ガランさぁああああん! 宿題教えてぇええええ!』
――アスールか。
「っつーか、おい、まだ十一時を過ぎたぐらいだぞ? 部活はどうした?」
『宿題終わってないって言ったらさー、先生から追い出されちゃったー♪』
「可愛く言ってもムダだからな?」
『はい、重々承知しております……』
まぁ、こっちとしても参加者が増えるのは助かるな。
「みんな。アスールが来た」
『え? なんの話ー?』
「おう! それは心強いことであるな!」
「二番弟子か……軍曹がいないのは残念であったが、一番弟子の前に一つ手合わせ願いたいところでござるな……!」
そういやこの浪人、暗殺ギルドで犯罪者容赦なく切り捨てるヤバい辻斬り野郎っつーか、根っからの対人好きだったわ。
――ギルドでも辻斬り小五郎とまで呼ばれてたやつだったんだよなぁ。
「おい浪人、そういうのは依頼が全部終わってからだからな?」
「浪人というなああああ!?」
『えー? 浪人来てんの? うげー、マジでタイミングわるー……』
あまりの容赦のなさに、当時治安の悪かった剣闘士の街に飛ばされたんだよな。結果としてすげぇ治安が良くなったけど。
そのせいで仕事が暇になったからって剣闘士プレイするとかどんなアホだ。だから大学受験に落ちるんだっつーの。
しかも軍曹にボロ負けしたからウチに入るとか何考えてんだ……あ、対人のことだけか。
っつーかその時の近藤のホッとした顔といったら……!
「――それはさておき、宿題は夜にでも手伝ってやる。今ちょっと妙に嫌な依頼が入ってるから、それ手伝え。今日は臨時休業だ」
『おっけー! ガランさん今どこ?』
「暗殺ギルドの地下牢前」
『……マジで?』
「マジだよ……あ、パンツルックのダークスーツと黒いネクタイ、白いYシャツで来いよ」
『……本当に何があったのさー、ガランさーん』
「マフィアごっこ。サーベルOKだからな?」
『はーい、それじゃ急いで向かうよー?』
「んじゃ、また後でな」
『また後でー!』
ぷつ、とコールを切った。
「アスール合流」
「受験勉強の息抜きに来たら、軍曹がいないとはいえ、なんという僥倖……フフフ、早くも我が妖刀が血を吸いたがっているようでござる……!」
「――おい近藤、コレどうにかしろ」
「この世界に決闘罪はないからな、罰せられん」
「お前らが消したんだろうが!」
それでも傷害罪はあるんだよな、なぜか。
「――タロスもこっちに向かうそうだよ。服は買うように言ってある」
レンが、パタンと懐中時計のカバーを閉じた。
「お姉ちゃんもだいぶ染まってきたね!」
「染まらざるを得なくなった、と言うべきかもね。自衛のためだって理由があるなら、私もそうするさ。郷に入りては郷に従え、と言うしね」
「朱に交われば赤くなる、が正しい気がするけどな」
「ランディの言うとおりかもね。私は染められてしまったのかもしれないよ、ランディに」
「青少年保護条例で逮捕が……」
「近藤さん?」
「……おい暗殺者、ちゃんと手綱を握っておけ」
「制御不能のじゃじゃ馬でなー?」
適当に、そんなことをのたまってやった。
書き溜め分投下終了。
誤字脱字、ご意見ご感想お待ちしております。




