第41話 軍師のピンチ
新章開始、応援よろしくお願いします!
たったの一週間だった。夏休みが始まって、おおよそすぐに始めたVRMMOゲーム≪剣と魔法の物語≫。
突然デスゲームイベントをなんとかこなして、つかの間の平穏を味わって、裏側が真っ黒っぽい変な依頼を受けてしまった――普通、ただの初心者がこんな大変な事態に巻き込まれることなんてないはずだったのに。
不運が続いたとも思える激動の一週間だった。
(まぁ、おかげで自分の書斎が持てたわけだけれども)
万事塞翁が馬。禍福はあざなえる縄の如し。言い回しは色々あるけれど、幸運にも私は大金を手に入れることができた。
それはちょっとしたアパートを借りられて、家具をそろえられて、大好きな本を購入できるほどだ。
初心者が手に入れるには分不相応すぎるぐらいの額だね。
(さすがに版権問題があるものは無理だったんだけれど……)
それでも、作家志望の人が頑張って書いたものや、そういう編集者を立ち上げたりと、なかなか買う本には困ることがない。
ゲーム内通貨で出せるということもあってか、VR機器さえどうにかなればあとは現実でのお金はそれほどかからないというのもメリットなんだろうね。
他にもアイドル志望の人も活動しているし、実際の駆け出しアイドルたちがゲーム内で活躍したり、著名な芸人が現実じゃできないようなエンターテイメントを行ったりと刺激的だ。
現実よりも厳しい面は確かにあるだろう、でも、これほど長く愛されるのはそこに夢を掴むチャンスがあるからに他ならないんだと思う。
今でこそ私は本の虫として生きているけれど――社会にでたらどうなるんだろう?
そんな事を考えさせられてしまうときもあったりするけれど、今は、今しかできないことをやる。
私は本を買って、読み続けるんだ。
「……よし」
ヘッドギアを被ると、私はいつも使っている寝袋――そういえばこれって洗えるのかな――に体をうずめて、異世界の私に意識を移した。
[Welcome to the "Story of the Sword and Sorcery"...]
あれから一週間ぐらい経った。私は今日も普段どおり、家から真っ直ぐに銀行へと向かう。
お金を下ろしてから本を買って、ランディの店でご飯を食べて、そしてみんなの話をBGMにしながらゆったりと本を読む……それがこの一週間の、異世界にいる私の生活ルーチンだった。
最近、各出版社ギルドから出される新刊案内が書かれたチラシをランディの店に直接送ってもらっているので、最近の書店めぐりは個人出版を探すか第一種障害者用の参考書などを選ぶぐらいしかしていない。
チラシについて彼はちょっと怒っていたけれど……私の部屋は寝て起きてアリスに勉強を教えるだけの場所になってきてしまっているし、どうやらランディ自身もそういうこと自体には慣れてしまっているようだった。
――アリス、ギルドホームを作る野望はどうしたんだい?
(まぁ、長いことギルドを続けているみたいだし、あとは土地が問題なんじゃないのかなと思うんだけれど……)
お金があっても土地がなければどうしようもない。
あまり街の外側だと買い物の便が悪いし、うっかりMOBが襲ってくるかもしれないからしょうがないといえばしょうがないか。
(まぁ、なるようになるんだろうね)
そして私は銀行員にお願いしてお金を引き落とし、なんとなく預金通帳を見て――絶句した。
[to be next scene...]
いつも通り「Close」と掛札がされている彼の店に飛び込む。
「あ、もうしわけありま――って、どうしたよレン! そんな血相変えて!」
「軍師がそんな顔するの初めて見たんですけど!?」
ランディとアスールはいつものように装備の点検を行っていたようで、私が血相を買えて飛び込んできたことに驚いている様子だった。
「ランディ! 緊急事態だ!」
「――誰か殺られたか?」
恨みを買ったつもりはないけれども、不手際で恨まれてしまうことはよくある。
前回の村おこしのときのように。
「いや、誰もなにもされていない、ただ私が危ない状況なんだ!」
「……ストーカーか?」
「ちょーとリーダーに連絡てくるね、アタシ」
「ストーカーでもない!」
ランディの店は隠れ家的というか、悪く言えば立地が悪い。表通りから離れているから、身内や常連以外は来ないぐらいだ。
私は必死で走ったせいで、息を切らしてうまく話せない。
「とりあえず落ち着け。ここ安全だから」
「はい、まずはお水ね」
アスールから渡された水を、一気に飲み干す――正直に言うと、ゲームの中ではなくリアルの私のほうが息切れしているせいもあってか呼吸がなかなか整わない。
でも、心情的にはひとまず落ち着いた気がした。
「……何があったの?」
自分のほうが聞きやすいだろうと考えたのか、アスールが抱きしめるように私の肩をやさしく叩きながら、小さな声で聞いて来た。
「――お金が、ほとんどなかったんだ!」
「は?」
「少し、買い物をしすぎたらしい……家計簿もつけていたけれど、気がついたら本やスクロールの衝動買いをしてしまっていたんだ!」
私は熱弁する。
「とりあえず家賃は別口で取っておいてある、でも、このままじゃ餓死してしまう可能性が高いんだ!」
口に出してみれば、初めての事に動揺を隠せないでいる私がいた。だから、最初から私に色々と助言をくれたランディなら、なにか案があると思って、ここに来た。
「私は、どうすればいいんだい? ランディ……」
藁にもすがるような思いとはこのことか。自然と涙が溢れてくる。
ランディは――ため息を一つついて、私に優しく教え諭してくれた。
「とりあえず酒場いけ、な?」
「うん、働こうよ。少しは」
――考えてもみれば、当然の事だった。
そういえば日銭すら稼がずに本ばかり買っていたね、私……。
「はーい、それじゃあかいさーん、かいさーん!」
「んじゃ俺らちょっくら川蛇――ウナギ漁行ってくっから。酒場なら日雇いいくらでもあるぞ。依頼人との面接しだいだけどな」
「待って! 私を捨てないで!」
「ええい疑いもたれるようなセリフを吐くなっつーかすがりつくな! 近所迷惑だ!」
「そーだそーだ! すがり付いていいのはアタシだけだー!」
「その理屈もおかしいわっ! つーかいい加減はなせー!」
ランディは腕を突っ張って引き剥がそうとする。でも私は引き下がらない!
「ほとんど流されるままで、私は酒場で依頼なんて受けていないんだよ!? ここで君に捨てられてしまったら私はどうすればいいかわからない……!!」
「アリスに聞けや!」
「従姉としてそれだけは駄目なんだ……!」
うっかりすると、勉強を教えようとしても逃げられてしまう可能性がある。だから、アリスにだけは知られてはならない。
私がこんな情けないことをしていることだけは……!
「……軍師って意外とめんどくせー女だねー」
アスールが呆れたように呟いた。
[to be next scene Side Galantine...]
最初に断っておく!
俺は決して、普段表情のほとんど変わらないクールなレンが、上目遣いに潤んだ瞳で見上げたことと、ブレザー越しに感じるその豊満なる胸の誘惑に負けたわけではない!
――まぁ、さっぱり説得力がねぇよな。俺が言っても。
ともあれ、店を開けなければ俺だって生活に関わる。アスールにだって、この世界は福利厚生に関する法律とかそういうのがないわけだからその分上乗せするぐらいの給料渡してるつもりだしな。
なので、とりあえずアスールには川蛇を狩ってくるように頼んだ。
エルフの森とは別の森にある川に住んでいるし、蛇は弱いし、トラブルがあったとしても俺より生存能力が高い。本当にどうしようもない場合以外なら普通に帰ってくるだろう。
かなり渋られたが臨時ボーナスという意味でお小遣いをあげることと、今度上演される別の街のミュージカルのチケットを奢ること、それを条件に飲んでくれた。
あー、俺の小遣いが……たかだか一人分程度なのに結構するんだよなぁ、ああいうチケットって。アスールはまだ中学生だし、保護者としてついていってやらんとならんしなぁ……臨時休業の分どこで穴埋めしよう?
「――ボーっとして、何を考えているんだい?」
「店のこと」
「……なるほど」
なんで呆れられるんだろうね?
「とりあえず、すぐに終わりそうなものをいくつか受けたほうがいいのかな? こういうお使いみたいなものとか」
レンが、掲示板に張られたいくつかの依頼書を指してピックアップしていく。
それは大体前金ありの仕事で、前金とは別に渡されたお金でお使いをする、そして夜に参加するプレイヤーにその買ったものを渡すというとても簡単なお仕事だ。
「あー、ダメダメ。こういうのはお前じゃ取り合ってもらえん」
「なぜだい?」
「ストリートチルドレンの話したろ?」
「ああ、されたね」
「運営仕事しねぇから。こういう簡単な仕事はそいつら向けに出してるんだよ。見込みのあるヤツはそのままギルド入りとかな」
こういう簡単な仕事でも、誠実に対応する子供は誰だって守ってあげたくなるし、楽しませてあげたくなる。
たまに某有名ゲームから流れてきた自称勇者様はいくら説得してもしないし、トンズラしようとするガキもいるわけだから一種のふるいでもあるんだけどな。
「なるほど……一応プレイヤー同士で対策しているということなんだね」
「まぁな」
「じゃぁなんでストリートチルドレンの話なんかしたんだい?」
「仕事しねぇとそうなるぞって脅すのがメイン。あとは無謀に戦わないように教えておけば、一時間もすればそれなりには稼げるし」
「……じゃぁ適当に弱いMOBでも狩りにでもいけばいいような気がするんだけれど? 魔導書のページが減るのは嫌だけど」
「お前の火力じゃザコは≪ファイアーボール≫一発ですら消し炭しかねんし、そうなるとピンポイントで攻撃しなきゃならんから魔導書のページ多く使って大概赤字になるし」
あと、レンは魔導書が削れすぎると正気を失っていくし……。
「なるほど」
「やっぱ一発の火力がデカイから、アリスみたくドラゴンの頭でも吹き飛ばして来いよ。確実だぞ?」
「新聞で読んだけれど、競争率が高いらしいじゃないか」
「そうらしいな?」
ドラゴン愛護団体がいなくなったおかげか、竜殺しの称号目当てにわんさか近接職が集まっているらしい。
それ以外にも資金繰りのためにアリスのようなタイプの魔術師がぞくぞくと集まっているというのだ。
ドラゴンの街、特需発生でさぞかし賑わってるだろうな?
「まぁ、いずれ収まるだろうけど」
よほどマナーの悪いプレイヤーでもなければ、事情を知っている上での横殴りとかしないし……今頃は整理券とか挑戦権とかそういうたぐいを販売してんじゃねぇのかな。
あそこの住人けっこうしたたかだし。
「――お? ココならよさげだな」
俺は依頼人の名前を見て即決するように、一枚の依頼書を手に取った。
「どういう依頼なんだい?」
「そこまではまだ読んでねぇ。えーっと……依頼人はムギだな、ホップ・ステップ・ジャンプのムギ」
「誰だい?」
「初心者ギルドのギルマス。主に初心者にゲームのイロハを教えるおせっかいなプレイヤーが集まるところだな。俺も前所属してた」
「なるほど。だからランディは優しいんだね」
「別に優しくねぇよ」
流されやすいだけだし。
「そういえば、そのムギという人も竜殺しだったね」
「威厳のためだけに、周りからドラゴン装備着るように強いられてるヤツだけどな。実力はあるんだけど、いかんせん威厳がなさすぎるし。戦うときはいつも脱いでる」
「へぇ」
あんときも顔隠してたなぁ、俺。うっかりバレたのもアイツだったか……アイツ自身はいいやつなんだけどなぁ。
俺は別に悪いやつじゃないって言いたかったんだろうけど、無策でギルド内で広める脳みそお花畑だったのがなぁ。
「まぁアイツのことはいいか。期間と報酬が……あー? 日額三万ゴールドで期間不明の経費別ぅ?」
「突然怪しくなったね。それに、妙に高い気がするし」
「まぁリアル事情でどうなるか分からないっていう理由で、高くする代わりに期間不明にしている場合もあるしなぁ……ってまてーい!」
俺は依頼内容を見て思わずツッこんでしまう。
「どうしたんだい?」
「依頼内容が初心者二名の指導だ」
「ふぅん……うん?」
そうだよな。疑問に思うよな。
初心者指導が本業の初心者ギルドのマスターがこんなの出すなんて、お前らの本業はなんだと問い詰めたいわっ!
人数が少なくなったとか? んなわきゃない。MMOゲームのプレイヤーは異常なぐらいおせっかいなヤツがいくらでもいる。
根底が単なる親切心だったり、何でも教えてやれるという優越感だったり、単に喋りたがりだったり……まぁ色々いるんだが。
初心者ギルドはかなり数がいたはずだ。別方面から支えていきたいって言って別ギルドに入ってる、隠れ初心者ギルド構成員ってヤツすらいる。
あのおっかねぇ暗殺ギルドと兼業もザラだ。
「……さて、軍師。考えられる理由は?」
「私は軍師じゃない。けど……人数不足か、もしくは問題児か」
「俺は後者に思える」
「私もだよ」
「受けるかどうかはお前次第だけど?」
「……背に腹は変えられないし、一応話だけでも聞いてみようと思う」
「そうか」
――そういやコイツも大概、おせっかいだよな。
[to be next scene Side Len...]
「わぁあああ、ランちゃんだー!」
垂れ目ぎみの、私よりは若干年下といったところだと思う。きれいと言うよりは可愛い、可愛いというよりはふわふわしているような顔をした女性が、ムギという女性だった。
「抱きつくなって言ってんだろうが! つーか痛いんだよ鎧がよぉ!」
「え~? 顔も体もどこもかしこも隠してるくせに?」
「革鎧は貫通に弱いんだよ! つーかマジ痛いからやめろっての!」
体こそ鉄とドラゴンの鱗を組み合わせた赤く禍々しいデザインにされた複合金属鎧で覆っているけれども、その中身はとてもじゃないけれども似合ってはいない。
「ぶ~」
ふわふわとした声で、アイヴォリーに近い色をしたウェーブがかったふわふわの髪を揺らしながら、ふわっと飛びつく。
――とにかく言動やしぐさがいちいちふわふわしているのだ。
(確かに、威厳のかけらもないなぁ)
「はぁあああ……自己紹介するぞ? コレ、ギルマスのムギな。こんな性格してっけど三十路越えの既婚者、子供は今幼稚園ぐらいになるんだったかな」
「息子は小学校に上がったよ~」
「マジか、おめでとう」
「だけど年齢の話はやめて~!」
彼女は耳を塞いで「あ~あ~」と聞こえないフリをする。
「現実から目をそらすな、聞け。こいつはウチのギルドの軍師。レンな」
「軍師は拝命した覚えがないけれど、レンです。よろしくお願いします」
「おかたくなくていいよ~? かたいの嫌いだし~」
本当に、威厳のかけらもない。
純粋な親切心の塊と思うべきかも知れないね、彼女の事は。
「レンの所持金がヤバいから依頼を受けようってことで来たんだ」
「あらら~、大きな買い物でもしちゃった?」
「ほ、本の衝動買いを、少々……」
「無駄にはならないけれど、計画的にしなくちゃだめよ~?」
「面目ない」
家計簿をつけていたつもりだったんだけれど、やはり私ではまだまだ“つもり”のレベルなんだろうね。
預金通帳を見て、今朝方気付いたんだから。
「つーか俺が進めていいもんかどうか分からんけど。この依頼は何よ?」
ランディはぺらぺらと依頼書を揺らす。
「本職が何やってんの?」
「いや~、私の担当の子なんだけどね~?」
「――問題児か」
なるほど、問題児はギルドマスター直々、ということなのか。
「可愛い子よ~?」
「私からもいいかな?」
「いいわよ~?」
「他のギルドメンバーに頼むという手はなかったのかい?」
ギルドマスター直々でなくなるとはいえ、問題児に対する何らかの対処法ぐらいはあるだろうに。
「それが誰も引き受けてくれなくて~。このままだと浮浪者確定かな~、ってところだったのよ~……依頼を出しても誰も受けてくれないしぃ……今日もダメだったらランちゃんに直接持っていくつもりだったんだけどね~?」
「ランちゃん言うな!」
依頼をだれも受けてくれなかったというのはきっと、彼女が有名だから、なんだろうね。そんな人が手塩にかけている問題児なら、それは確かに誰も引き受けたくない。
というか、誰も引き受けてくれないほどの問題児だと私の手に余るんだけれど?
「ランちゃんその手の扱いが上手だったから~。でもランちゃんの知り合いなら安心して任せられるかも~?」
「言っとくけどこいつも初心者だぞ?」
「うっそだ~♪」
そういえば前に、私の格好をしている人は大抵がコスプレイヤーかベテランだと言っていたような……。
「始めてから二週間です」
「でもランちゃんいるし大丈夫だよ~?」
「だからランちゃん言うな!」
恥ずかしいのか、さっきから声が震えているね。
今度、私も使ってみようかな? からかいがてらに。
「そもそもムギさんはなぜこうした依頼を出すように?」
「私がおめでたなの~! おビール様が飲めなくなっちゃった♪」
「二人目こしらえたんかい!」
「女の子だよ~♪」
「……おめでと」
「おめでとうございます」
ランディがすごい複雑な表情をしている……。
「ときどきインはするけど激しいことはできないからね~。今はまだ大丈夫だけれど、いずれインもできなくなっちゃうし~」
「あああの子供がどうのこうのとちょくちょく問題児を押し付けられた悪夢が蘇る……!」
なるほど、そんな事があったんだ。複雑な表情にもなるね。
「というか、高齢出産ですよね? 大丈夫ですか?」
「年の事は~言わないで~!」
ふわふわした声で、耳を塞いで聞こえないようにしている。でも、三十過ぎは医療が発達している今でも危険が伴うんだけれど……ちょっと不安だな。
見た目からは到底信じられないけれど。
「金はどーすんの?」
「とりあえずイサみんにお願いしてあるの~。あとは一応他のメンバーにも話してあるから報酬の未払いは心配しなくて良いよ~?」
「イサみん?」
「近藤勇だよ……暗殺ギルドの」
知り合いだったのか……でも竜殺し同士なら交流があってもおかしくはないか。
でもあのいかつい顔で「イサみん」はどうなんだろう?
「とりあえずイサみんに私の名前と依頼内容を話せば大丈夫よ~? 責任放棄されても困っちゃうからね~」
「暗殺ギルドがやってくる、ってか」
「うん~」
当然だけど、抜け目がないなぁ。
けれど、まぁ、
「人助けだと思って、受けてみますよ」
「ほんとぉ!? やった~! 二週間前から出してたのがようやく決まった~! ランちゃんいるしあんし~ん!」
「ああ俺店続けられっかな~……?」
ランディは優しいからね。私が言わなくても手伝ってくれそうだ。
「何ができるわけじゃないけれど、手伝いはするよ」
「ランちゃんの分も出せるから安心していいよ~? 教えてばっかりだとあんまり使わなくなっちゃうから、お金だけは有り余っちゃっうんだ~」
「長期で休んだら常連が離れていくんだよ! ウチ、一人だけど雇ってるヤツいるし!」
「あら~、大変ね~?」
地に足が着いているのかよくわからない口調で、困ったように頬に手を当てた。
「それじゃぁイサみんには私から話しておくから、一応連名で署名してね~?」
「話、聞いてたか、おい」
「聞いてたからこそよ~? 諸経費込みってあるじゃない~。ランちゃんはレンちゃんの諸経費ってこと~」
「俺は備品かい!」
「まぁ、その……ごめん、私につきあわせてしまって」
「じゃぁせめて店手伝って……割と切実に……」
レザーヘルムに覆われた頭を抱えながら、ランディは静かに呟いた。
本の衝動買いとか、ジャケ買いとか、よくやりません?




