第38話 本物の竜殺し
『遠いが、空気がかなり淀んでいるな』
軍曹のつぶやきが時計越しに聞こえてきた。
『どれくらいの数になるかその力でわからないかな?』
『さすがに人数までは絞れん。密集されている事はわかるが』
密集って……かなり重要じゃね? それ。
『と、なれば……広く分布しているわけではなく、やはり陣を強いていると見て間違いないのであるか?』
『自分はそう考える。あと、淀んでいるところが周囲にいくつかある……奇襲に気をつけろ。木々は絶対に傷をつけるな』
『いや、奇襲は軍曹に全部任せよう』
レンの一言に、俺の後ろで小さなどよめきが走る。
「何おしゃべりしてんだよお前ら!」
チッ、聞こえたか。
「不安なんですよ。妹はダイエットの資金ゲットするために俺の荷物持ちのアルバイトさせてるだけなんですから」
ちなみに、こういうプレイヤーからの荷物持ちの依頼は意外と多い。
ゲームといえば、どうしても某有名ゲームの影響が根強く残る。
特に親からVR機器買ってもらった裕福層の子供、彼らは「スライムなら倒せる!」とか「お金落とすから倒してくる!」と言っては返り討ちにあってストリートチルドレン化するんだよ。ちなみに人型MOB以外はお金は落とさない。まぁ当然だな。
なおこのゲームのスライムは待ち伏せする上に物理攻撃がまったく効かない、あげく近接攻撃するとカウンターで絡め取って溶かして食うというえげつない攻撃方法を持つ。
上位プレイヤーすら危うい「運営変なところで仕事すんな」と呼ばれるMOBだ。
で、そんな彼らに救いの手を差し伸べようと登場するのがネトゲ特有の「ド親切な」一般プレイヤーたちである。
彼らは自分のポケットマネーから、荷物運びやちょっとした買出しを酒場に依頼する。
あとはストリートチルドレンを見かけたら「とりあえず酒場行こう、な?」って声をかけて自分の依頼を受けてもらうという運動をしている……んだけどこれを断る子供が意外と多い。仕事って言葉が嫌いらしい。
子供らは自分が勇者だとか考えているようで、ついこないだも他人の家を勝手に漁ろうとして暗殺ギルドに連れられていったそうな。
――ちなみにこれ、俺の知らんうちの出来事だったりする。
ま、そんな背景があるわけで。
俺は純粋なゲーマーの兄。アスールはダイエット目的でゲームを始めて、俺の荷物持ちアルバイトをしている妹……という設定は結構普通だ。
「チッ。あんま俺の集中力切らせるようなことすんじゃねぇよ、守ってやってんだから……!」
「どうもすみませんね」
別に竜殺しの称号なんてどうでもいいけど、こう態度の悪いやつに合わせるのはイライラするな……!
『――ガランティーヌ、よくやってくれた』
それが俺の仕事ですから。顔も隠しているしね。適材適所ってヤツですよ。
『しかし軍師、なぜ自分に一任する?』
『理由は簡単だよ。こちらにいる竜殺しとして紹介されたのは軍曹、あなたただ一人だ。そろそろ力の温存は解禁だよ』
『なるほど、了解した』
『ランディは、悪いが我慢してくれ。適当にやり過ごすこと。手を出したら駄目だ』
チッ、やっぱそうだよな……どっかでコイツの化けの皮はがしてやりてぇなぁ。
『ガラン、絶対にキレちゃだめだからね?』
わーってるっての。
『近づいてきたぞ……そろそろヤツの耳にも入るだろう』
あー、そうですか。じゃぁ適当に逃げますか。
「――何かが近づいてくる、邪魔すんじゃねぇぞお前ら」
「お願いしますね! ジョージさん」
その言葉を言うや否や、ざざざざっと草木を踏み荒らすような音を響かせて四方八方から通常のオークが、
「ブモォオオオオオ!」
豚のような声を上げて飛び出してくる。
数は――六匹か。完全に囲まれたか。
「チッ! ≪ステップ≫! ≪ステップ≫! ≪ステップ≫!」
小刻みに≪ステップ≫を繰り返して、まずはこのパーティ唯一の紅一点、アスールに迫るオークめがけて駆け出していく。
――つーか、そんな短い≪ステップ≫使うんだったら、硬直ほとんどないんだし、一度使ったあとは普通に走ったほうがかえって速いっつーの。
「きゃー! お兄ちゃん! 助けてー!」
んでノリノリでこっちに飛んで来るのがアスール。もうアレだな、この男を騙して遊んでると思ったほうが気が楽だな。
「大丈夫かー……≪ステップ≫ー」
俺は迫真の演技でアスールを抱きとめると、後ろから片手斧を振り下ろさんと飛び掛ってきたオークの足元をすり抜けるような軌道で≪ステップ≫した。
『……ランディ、もう少し演技は上手にできないのかな?』
『やる気が感じられないぞー! バカガランー!』
えっ!? 俺迫真の演技だったよね!?
――目の前から消えるようにいなくなったせいか、オークは腐葉土で滑りやすい足場もあってか着地に失敗、思い切り頭から転んでしまう。
「≪ステップ≫! ≪ステップ≫!」
ジョージは走ったほうが速いというのに、ものすごい小刻みにステップを繰り返し、その勢いでオークの腹を槍で貫いた。
ばきっ!
「あっ」
「折れちゃったねー」
深く突き刺さったショートスピアが、飛びかかる勢いを殺しきれずに転んだオークの体重で、折れた音が響いた。
「だいじょうぶですかじょーじさん」
その出来事は、ものすごい棒読みの軍曹がダガーで二匹ほど首を跳ね飛ばしたのと同時であった。
『軍曹……さすがに演技は人外じゃなかったんだね』
レンが一言漏らす。アリスがけらけら笑い出す。
だが軍曹劇場は終わらない。。
「これでもじぶんもりゅうごろしのはしくれ、なんとかがんばってみましょう」
『あははは! 軍曹ぉ! おなかいたい! おなか痛いって! もーちょっと上手に演技してぇ!』
腹部に槍が突き刺されば致死ダメージを与えることが出来るだろうが、行動不能にする力、ストッピングパワーは圧倒的に足りない。
これは貫通属性――槍の弱点とも言える。だから、本来ならば頭部を狙うべきだったが、ジョージはそうしなかった。いや、出来なかったのかもしれない。
ドラゴン武器の性能だ、急所が外れていたとしてもおそらくHPはギリギリのところまで削られているだろう。
そのオークが死に物狂いの目をして立ち上がり、反撃を試みようとオークが片手斧を振りかぶり、
「チッ!」
盾を構えるジョージ。
「おたすけしましょうじょーじさん」
そこに軍曹のダガーが二閃。肩口から腕をすっぱりと切り落としつつ、首を跳ね飛ばした。
ぶしゃっ、ぶしゃっと噴水のようにオークの首や肩から血潮が飛び散る。
「うわっ!」
吹き出る血潮に驚いたか、ジョージが思わずカイトシールドで顔を覆った。
(ま、槍は返り血が上に出るようなことって少ないしなぁ)
むしろ自分に向かって噴き出してくるのだから、盾を真正面に構えていれば十分なのだ。
(切断属性に対しての知識が低いと見たほうがいいかもなぁ)
中堅から上級あたりにもたまにいる。こういった得意な武器以外の攻撃で吹き出る血に思わず驚くプレイヤーは。
むしろその系統の武器を極めようとしているからこそ、他の属性のダメージがどうなるかが分からないというのは彼らの弁である。
「うおー」
――力の抜けるセリフに反しすごく冷静な表情で、機械のように淡々と残りのオークを処理していく。
「とりやあー」
ちゃっかりクロウも≪ステップ≫で避けていたらしく、遠くで生暖かい目をしながら、
『師弟共に演技が下手であるなぁ』
などとつぶやく。
『あー、おなか痛かった! よし、後で二人とも演技指導だね!』
「余計なお世話だよ……」
「……そうだな」
最後に残った、俺の目のオークの眉間へダガーを突きたてた軍曹と俺が、ジョージには聞こえないような声で静かに呟いた。
[to be next scene...]
「戦えるんだったらなんで戦わないんだよ! ふざけんな! 俺のドラゴンスピアが折れちまったじゃねぇか!」
俺だけに、折れました。ってか……いかんいかん、軍曹のクセが移ってしまった。
『すまない、ジョージさんの腕は素晴らしく、私の出る幕はなかった』
「すまない、じょーじさんのうではすばらしく、じぶんのでるまくはなかった」
『あはははっ! だめだー! 棒読みだー! ひー、おなか痛いー!』
レンのカンペどおりでも駄目かー……。
「ナメたような口きいてんじゃねぇよ!」
がつん! と、手に残っているショートスピアの柄を投げつけ、軍曹に当てる。
『チッ、八つ当たりもはなはだしい』
『何をしたんだい、彼は?』
『折れた槍の柄を軍曹に当てた』
『どこまでマナーが悪いんだ!?』
『うっわー、命知らずー……』
俺もそう思うわ。
でもさすが現役軍じ――自衛隊だ、顔色一つ変えない。上官の理不尽な行動は飽きるほど受けた、ってところか?
「大変申し訳ない」
「チッ……で、どーすんだよ。戦えねぇよ? 俺」
「まぁまぁ、とりあえず折れた分は回収しておきましょう。槍の長さが半分になってしまいましたけど、添え木すればなんとか扱えるでしょう」
「じゃぁさっさと直せよ」
……チッ。
「とは言うものの、添え木に使えそうな木の枝はクエストを受けていない俺たちでは手に入れるのは難しいですね。少しでも木を傷つけたら矢が飛んで来るようですし」
「つかえねぇえええええ!」
クエストの人数が不安だから待ってたって言ってたクセになんで先にクエスト受注してやがるんだろうね?
それがなかったら今すぐにでも調達できるっつーの。
「とりあえずお前のサーベルをさっきの柄にでも括りつけろよ」
「俺のサーベルで槍を作るんですか?」
「それ以外何があるっつーんだよ。二本あんだから」
あー、使える場所があるかもって三尺八寸は予備含めて持ってきたんだったな。でも愛剣を使われたくねぇんだよな、コイツには。
ま、もっとも。使えるわけがないんだけどね。
『出来るのかい?』
「そんなまたまた、ご冗談を。計測ギルドは長い刀身を持った武器は無理だって言ってましたよ? 刃渡りがせいぜいで三十センチ程度までなら可能らしいんですけど……槍使いの常識をためそうだなんてお人が悪い」
「……チッ」
知らなかったな、こいつ。
「とりあえず折れたところに添え木でも当てましょうか」
俺はオークの体にうがたれた穴に、何のためらいもなく手を突っ込む。
「うっ……!」
ジョージは気持ち悪そうに眉をひそめた――こんなん鶏の骨や内臓引っこ抜くのとさして変わらんと思うんだけどな?
ずるり、と折れた槍を引き抜いて――よく見たら完全に刃の部分が砕けていることに気付く。
「壊れてんじゃねぇか! どうしてくれるんだよ!」
「あー、これは即席の槍しかなさそうですね……」
中で骨にでも当たったっぽいな、これ。
「とりあえず俺のダガーを使いましょう……どこか太い枝は落ちてないかな?」
「ここにあるぞー」
軍曹の棒読みにもだんだん慣れてきたな……さり気なく探してくれてたらしい。
湿ってはいるけれども手ごろな太さをもった二メートル程度のおおよそ真っ直ぐな木の枝を掲げている。
「ああ、よかった」
あとは冒険者道具の定番、ロープでぐるぐると巻きつけてっと……即席のショートスピア、完成っと。
ん~、重量的にショートスピアとDPSは変わらないはずだけど。柄が若干しなる感じだな。実際にやってみないとわからんけど、DPSは確実に落ちてるな。
ヘタすっとダガーよりも低くなりそうだ。
「とりあえずこちらを使ってください」
「くそっ! あとで弁償しろよ!?」
「大変申し訳ありませんでした」
決してイエスとは言ってやんねぇ。
「でもー、竜殺しならこの程度の逆境なんて簡単に跳ね返してくれますよねー!」
アスール、ナイスアシストだ。
「チッ……しゃぁねえなぁ」
お前なんかにウチの娘は絶対にやらん! お父さんの気分がちょっと分かったぞ俺!
まんざらでもなさそうに呟いたジョージを改めて先頭にして、行軍を開始する。
「……ちょろい」
――アスール、その顔絶対ヤツに見せるなよ?
[to be next scene...]
『空気の淀み方が強くなってきている。そろそろ敵陣に突入するだろう』
『彼奴のソナー範囲に入るであるか?』
『入るだろう、もう少しすればな』
なんとなく時計を確認する。一時間はかかったか。オーク以外はスルーしていけば半分の時間ですむような距離だった気がするな。
『お姉ちゃん、邪悪の王ってなんだろうね?』
『神話や伝承と同じようなものが出てくる気はしないな。伝説の武器や防具がないってランディから最初に聞いているし、伝承のものはそういった武器や防具が少なからず必要になるからね』
『じゃぁ、結局分からないってこと?』
『このゲームの世界の邪神の眷属、と言う可能性はあるかもね。もしくは、邪神崇拝者』
人型の可能性か……ここの運営ならやりかねん。
妙なところで仕事するからな、奴らは。
『大穴でプレイヤーかな』
『メリットないじゃん』
『どうだろう? 村さえ手に入れてしまえば、精強な軍を持つ自分だけの国が出来上がるよ? もちろん、維持のために街の襲撃を急ぐ必要があるけれどもね』
どっちにしろここで仕留めろ、っつーことね……。
「止まれ、お前ら……オークの軍勢が近くにいるぞ」
『ランディ、解禁ね』
――よっしゃあああ!
「オーク程度なら俺たちでも戦えますね」
『オークキングが主力だって可能性もあるから気をつけることだよ』
「俺の邪魔だけはするんじゃねぇぞ?」
『前線の指揮権はぜんぶ軍曹に任せるよ。私はもしものときのために、こっちの指揮をするから』
「分かってますって……軍曹」
「なんだ?」
「俺らギルドの指揮権、預ける」
「了解。指揮権を預かった」
「勝手なことすんじゃねぇぞ!?」
「邪魔はしませんよ」
邪魔になりそうなのはお前な気がするけどな。
「ジョージさんが突撃したら、後ろから続くことになると思いますしね」
「ならいいけどよ……」
がさがさと森の草木を掻き分けていく。
――狭いが木々が少し開けた場所に、オークの大群がいた。
「数多すぎだろっ!?」
「奥にいるのはオークキングっぽいですね」
ひのふの……。すげぇ、三十体はいるな。オークは五十体程度か。んで、奥に人型の黒い肌をしたやつ、アレが群れの指揮官か。
「……黒い肌のエルフがいる、ダークエルフであるな」
『おー! ダークエルフ!!』
「見たこともねぇやつだ、一旦戻らねぇと……!」
「いや、一人だけですし。エルフと同じなら魔法が主力でしょう。手に持っているのも杖ですしね。詠唱時間がある分、強制中断も可能ですよね? 竜殺しなら」
「……チッ! 足引っ張るんじゃねぇぞザコが!」
偽者のクセに竜殺しの称号を出せば結局戦わざるをえない。称号の名誉がそんなに大事か。
――いやまぁ大事なんだけどな。信用って意味では。
『あ、気をつけたほうがいいよ。デックアールヴだったらむしろドワーフに近いから』
『デックアールヴ?』
『北欧神話の妖精だよ、エルフの原型の一つだね。通常のエルフに当たるのがリョースアールヴだ。デックアールヴは地下や岩陰に住んで、鍛冶治金に優れている妖精と同一視されていることがある。その場合、同じ能力を持っていることがあるんだよ』
『ドワーフに近いってことかな? ってなると近接ファイター?』
『遠近両用のタイプかもしれないから気をつけることだね』
貴重な情報だな……接近しても魔術師と思って油断するなってことは重要だ。
「ガランティーヌ、線は見えるか?」
「見えないです」
「線? なんだよそのオタク臭ぇのは」
こいつ≪解体≫スキルも知らんのか……?
「俺の≪解体≫スキルですよ。スキルレベル以下なら、線に沿って攻撃すれば致命的攻撃を与えられるってヤツです」
あとは現在HPの割合がスキルレベル以下になっても線が見えるけどな。弱点は鱗や鎧で覆われていると見えないってことだけど……まぁ見る限り鎧も鱗も持ってるやつはいないしな。
「火力バカってことか、頭悪いなお前。だからそんな鎧しか着てねぇんだ。金属鎧着て来い、金属鎧」
「高いので」
「ま、竜殺しで金持ちの俺とお前らみたいな貧乏人を比べるのが悪かったな」
――かちんっ。
「レン、武器の使い方を教えろ」
「はぁ? 何言って――」
俺は帯剣していた三尺八寸をがしゃんと地面に置いた。
『ちょ、ガラン!? キレちゃ駄目、キレちゃ駄目だって!!』
キレてねぇよ。俺すっげぇ冷静だよ。俺キレさせるってのはすっげぇことだよ。俺がキレてたらコイツの首切り落としてたわ。
「ジョージはデスゲームん時に竜殺しになったんだってな? じゃぁさっさとその実力見せてもらおうかよ、ええ?」
『ランディ、落ち着くんだ!』
「明らかに年上の同じ竜殺しの軍曹にすらタメ口なんだ、さぞかし竜殺しってすげぇんだろうな? ウチのメンバーにも色目使うような竜殺し様よぉ?」
午前中に買った武器を右手で持つ。
「お、おい……何勝手にやってんだよ……!」
全長は七十センチ程度。刃渡りにすればダガーと同じサイズだが、片刃。刀身はカッターの形状に近い。
レンはスクラマサクスとか言っていたな、そういや。
「軍曹、手近なところから処理してください。クロウ、かく乱。アスール、暴れろ。んでジョージ――俺と特攻な?」
「はぁ!? ふざけんじゃねぇよ!」
――その声に反応したか、オークらがこちらを一斉ににらみつけた。
「うわぁあああああ!?」
「あーあ、退けなくなったわ」
「朋友よ! 少し落ち着くがいい!」
「すっげぇ落ち着いてるよ、ああ、マジすっげぇ落ち着いてる……レン、コレはダガーと同じように使えばいいのか?」
『……はぁ』
レンがため息をひとつ。
『君が竜殺しになったときと同じような感覚で扱えばいい。それの名前の意味は、“傷つけるナイフ”だ』
「そうか」
俺は“ダガー”の握り方から“包丁”の握り方へとシフトさせる。
(なるほど、しっくり来るな。こりゃぁいいわ)
空いた左手で、恐慌状態になったジョージの腕を強引に引っ張り上げる。
「おい……やめろ……やめろって……!」
「さぁ料理の時間だ!」
「やめろガランティーヌ!」
「≪ステップ≫」
「うわぁあああ!?」
悲鳴がうるさいコレを、≪ステップ≫の勢いを利用して敵陣のど真ん中に放り投げた。
「本物の竜殺しってぇのがどんなのか見せて貰おうじゃねぇかよ! ええ!? 俺はじみーに料理してっからよぉおおお!」
俺はいたって冷静に、たまたま近くにいた豚の腹を縦にかっさばき、そこに手を突っ込んではらわたを引き抜いてやった。
「まずは豚の丸焼きが基本だよなぁ!! ついでに腸詰めでも作るかぁ!? おい竜殺し! お前は風干鶏って知ってっかぁああ!?」
鶏を生きたまま毛を毟り内蔵を抜いて作るっつう難しい料理なんだぜ? 生きたまま調理するから暴れまくって、すげぇ血が巡るもんで野性味が強くなるんだとよ。
あー、でも冷静になって考えてみたらそれを豚で作るっつーのはちょっとアレンジが過ぎるか? やっぱレシピを守るって重要だよなぁ?
でも作り始めたしなー。途中で止めたら中途半端になっちまうか。
うん、初志貫徹って重要だよな!
『……みんな、ランディの暴走のフォローをお願い』
レン、なんだか声に元気がねぇな……。
コレはなにがなんでも美味いメシ作ってやるか――さいわい、食材は目の前にたっぷりあるんだし。
美味くてあったかいメシは人間の生きる活力だしな!




