第36話 無名の竜殺し
俺の悲鳴というか、魂からの叫びが狼を遠ざけたって考えておこう。あの後、結果として何に襲われることもなかったんだから。
『動物は本来、意外と好奇心が旺盛だからね。人に慣れているなら特に。鈴を鳴らして熊避けとしていることが多いけれど、逆におびき出してしまう可能性がある。今回は人にあまり慣れていなかったのかな?』
腰の懐中時計からレンの声が聞こえる。責めるような声じゃない……と信じたい。アイツはどこか感情の抑揚が少ないからなぁ。
「俺のせいで何かに襲われたらもうごめんなさいとしか言えねぇけどな」
『バカガランのせいで作戦失敗したら土下座ものだよ、まったく!』
「ならば赤フン一枚、中央公園のど真ん中で、だな」
「やめてくださいよ軍曹……」
シャレにならん、割とマジで、社会的に。
「たるんだ体であるなら再訓練はもっと厳しくするつもりだった」
「あっぶねー!?」
あ、自分の名誉のために言っとくけど、料理って意外と体力使うから俺意外と筋肉質なんだよね。
学校じゃキロ単位の小麦袋とか砂糖袋とか、普通に担いで階段上らにゃならんし。
「とりあえず汚名返上しないと俺の明日の筋肉が死ぬな……」
「アタシも……」
このVR機器のシステム上、拘束具がわりの寝袋に入っていても結構動く。筋肉の動きは制御できねぇからな……だから肉体的にも精神的にも疲れるゲームなんだぜ? これ。
つーか「戦闘ばっかりしてたら腹筋六つに割れてた」とかよく聞く話だぜ……!
「汚名返上したところで、再訓練は免除しないがな」
「マジっすか!?」
「あ、アタシ女だから厳しくして欲しくないなー、なんて……アハハハ」
「安心しろ、アスール。自分は男女平等だ。差別など戦争の温床になるからな」
「マジでー!?」
――自衛隊って地獄の部隊か何かか?
「ともあれ、おしゃべりはおしまいだ……村らしきものが見えてきたぞ」
『そうか……そこまで来ればほぼ安全だろうね』
軍曹を先頭にして、見えてきた村にはほとんどが木で出来ていた。村の前にはエルフの狩人が二人、見張りだろうか。
少し警戒しているように、ショートボウに矢だけはつがえている。
「エルフの民よ! 我たちは漂流者である! 我らが同胞の危機と聞きつけ参上した!」
大声で、どこか演技がかったように自身の懐中時計を天高く掲げる。漂流者の証明となる、時の精霊の加護を受けたソレが銀色に輝いた。
「……中二くせー」
アスールの言うことはもっともだな、見ている俺も恥ずかしいわ……そういやコイツ俺よりひとつ年上だったよな?
「恥ずかしがっている場合ではなかろう?」
「効果はあったようだ。弓を引いてくれている」
『……危機に陥っているように聞こえるんだけれど?』
「ちゃんと矢ぁ外したから大丈夫」
『……矢が飛んで来たわけじゃないんだね?』
「弓と矢で例えるからダメなんだよ、ここは矛先を収めたって言わないとー」
中学生に諭された。なんか複雑だなおい。
『ああ、よかった』
「自分も、暴動の鎮圧は望むところではない。スタングレネードも催涙ガスもないからな。せめて投網だけでもあればいいんだが……それもないとなれば面倒なだけだ」
「面倒ですむのかー……」
『とにかく、戦闘にならないんだったら村に入ってくれ。情報の収集と、竜殺しとの意思疎通や作戦会議を図らないとならないからね』
「了解した」
『森の外に逃げてきても大丈夫だよ。暗殺ギルドが協力してくれるそうだから』
「よくやったクソ幼女」
『うっさいバカガラン』
「朋友よ、早く行かないか? 軍曹殿たちは既に村へ入っていったぞ?」
「っと、そうだな」
腐葉土の多い獣道のように踏み固められたわだちに沿って、俺たちは隠れ里の中へ向かうことにした。
[to be next scene...]
エルフっつーからなんとなく木をくりぬいた家だとか、木の上に家が作られているとか想像していたけれど、なんつーか……普通の村だな。
森の中だから湿度が高いのか分からんけれど、小中高あたりで勉強するような高床式の家が多い。
「エルフって森の民じゃねぇのか……」
先に到着したた竜殺しが借りている家へと案内されているさなか、俺はポツリと漏らした。
『そういう認識はあながち間違ってはいないかもしれないね。北欧では自然の恵み、豊穣を司る妖精で、神に限りなく近いとされている。だから自分の神域を荒らされたら祟るんだ』
「なるほどなぁ」
「時の精霊の加護は便利そうですね」
隠れ里の入り口から案内してくれているエルフがにっこりと笑いながら、俺達の言語で話してくれている。
実は、これが一番意外だった。
「そのかわりいろいろと背負ってしまいますが……しかし言葉がお達者で」
『まぁ、高い知識を蓄えているからね。その中の一つに言語があってもおかしくはないね』
『でも言語のことを忘れてたって、うっかりしちゃってたねー……お姉ちゃんに全部任せすぎちゃったのかも』
街のエルフはバリッバリのエルフ語を話してくる。翻訳スキルが必要な理由だな。
「達者だなんてそんな。ちょっとの時間で勉強しただけですよ」
「ちょっとの時間でそれほどとは素晴らしい」
『エルフのちょっとは信用しないほうがいいよ。神に限りなく近かったこともあるせいか長命だ、時間の感覚は私たちとは大きく異なっていてもおかしくない』
「外にいるものはまだまだ幼い子供ですから勘違いされるのも当然でしょう。盟約を交わすために他言語を習得するのは我々にとっての必須事項なんですよ。ですから、知識を得させるために旅をさせているんです」
「なるほど」
っつーことは、外にいるエルフはみんな生意気なガキってことか……以前見かけたあのきれーな姉ちゃんが幼女扱いとか不思議な社会だな、おい。
『そろそろ他の竜殺しの話を聞いてくれないかな? クエストに関して竜殺しの所でするとしても、だ』
あー、忘れてた。
「ところで、昨日俺らよりも早く漂流者がやって来たハズなんだけど、どんな人ですかね?」
「え? ああつい先ほどいらした方ですね」
昨日が「つい先ほど」だってよ、時間の感覚が違いすぎだろう。時間については信用しないほうがいいな、マジで。
「皆様が来ることは時の精霊の加護によって知ったようでしたので、先に村長の家でお待ちいただいております。気持ちのいい人ですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
えーっと、森に入ってここにつくまで三十分ぐらいだったかな?
……三十分も待たされて、怒っちゃいねぇかな?
[to be next scene...]
「遅いっ!」
――やーっぱ怒るよなぁ。
っつーか装備が結構素晴らしいな。ドラゴンの鱗を使った複合金属鎧と、アレはドラゴンの牙を使ったショートスピアか。
となると、あの盾はドラゴンの骨を削りだして作ったカイトシールドだな。修理不可でもドラゴン装備の防御性能は折り紙付きだし。
これじゃぁ狼ごときにゃ傷一つつけられんな、余裕で森を抜けられるわ。
「一体いつまで俺を待たせる気だ! 午前中に来い午前中に! ドラゴンの血使って特攻しなきゃならなくなるじゃねぇか!」
「すみません。午前中はメンバーがリアルで忙しくて」
『お、会ったのかい? どういう人かな? 気持ちのいい人ってエルフは言ってたけれど、やっぱり頼りになりそうかい?』
レンにはこの会話聞こえてねぇから状況理解できねぇか……腕は確かかもしれないけれど、性格は最悪だわ。
アリスがフォローしてくれると助かるなぁ、向こうに会話飛ばしたら色々ありそうだし。
『おーい、聞こえているかーい?』
「優先順位は俺の手伝いが上だろう!」
あ、コイツ自分だけクエスト契約受けてやがる。
後でメンバー追加できない仕様なんだよなー、エルフからの報酬コイツが総取りしそうだなー。
「大体なんだそのやる気のない装備……舐めてんの?」
『――ああ、もしかして話を聞くのに集中してるのかい? すまない、悪かったよ。ちょっと黙ることにする』
しかも俺様ゲーマーで、生粋の純粋培養ヘビーゲーマーか。装備を見る限りじゃ性能や効率重視だし。
――軍曹がさり気なくアスールを背後に隠す。
女性プレイヤーって数は少なくないけど多くもないんだよな。注意しておくことに越したことはないよな。
いくらハラスメント機能最大にさせているとはいえ、な?
「改めまして、暗殺ギルドから直接指名されたアリス・イン・ネバーランドの代表として来ました、サブマスのガランティーヌです」
「直接? 弱小が? 下請け組織じゃねぇの?」
「――ッ!」
わざわざ直接とか強調して言ってもダメか……どこが気持ちのいい人だエルフめ。
んでアスール、いい子だからすこーし落ち着けー? 口に出せないのがめちゃくちゃもどかしいな……あー、念話みたいな機能が時計に実装されねぇかなぁ、マジで。
正直言ってコイツよりお前のほうが強いから。俺だってお前とやったら正直勝率六割いけるかどうかって思えるぐらいだし。
――うらやましいねぇ、才能溢れるヤツって。
「お名前、聞いてもいいですか?」
「はぁ? 竜殺しつったら有名人だぞ有名人! お前どんだけ田舎者だよ?」
「マスターはともかく私は初心者なんですよ」
嘘だけどな。っつーか、正直竜殺しとはほぼ全員知ってるけど、お前ほど無名なヤツは知らんわ。
それに有名な竜殺しほどめちゃくちゃ礼儀正しいぜ? プレイヤーの作った装備やアイテムが自分の生死を分けるってこと骨身に染みてよく分かってるから。
あと、俺が言えた義理じゃねぇけどずっと顔隠してるような相手とかもどーでも……あ、俺? もちろん顔は隠してるよ? クロウは知ってるけど、うっかり主催者だったってことバレるといろいろ面倒だから。
何でって、そらギスギスしてくるからだよ。そのせいで何度かギルド転々とするハメになったし……運営何考えて企画したんだろうな?
まぁスポンサーかなにかの意向で対人戦を流行らそうとかしてたんだろうけどさ。一時期剣闘士の街でそんな噂聞いた事あるし。
それがいまだに残るってただの悪習じゃねぇかよ。
「それに広まるのは装備ではなく顔ですから。見ての通り少ない竜殺しが持ってるすごい装備だって分かりますけど、それじゃぁどなたか気付けませんし」
「チッ」
うっわー、目の前で舌打ちかよ。初心者応援ギルドじゃ絶対に怒られる対象だぞー? あそこのギルマスはガチで熱血教師だし……教員免許持ってるだけの塾講師だけどな!
「ジョージ、だ」
顎紐を外してヘルメットを取って見せる……あ、知らない顔だ。いやゲームのやつ全員知ってるわけじゃないけど。
黒髪だけど、たぶん面倒くさいから飛ばしたんだろうな。たまーにいるんだよ、生態系とか無視して戦うためだけにゲームやってるやつ。
汗で髪型がぐったりと変になってるけど、まぁそれでも普通のイケメン面っつーのか? まぁ大学生ぐらいの男だ。
意外だよなー、こう言うヤツはリアルで女遊びして、ゲームなんて見向きもしなさそうだけど――あ、逆に面倒がないからってゲームで女遊びって可能性もあるか。
そういうこともできるからな、このゲームは。
「こっちは見せてやったんだから、そっちも頭装備ぐらい外したらどうなんだよ」
「そうですね」
別にコイツから何言われようが気にすることじゃねぇしな。ためらう理由もないか……俺のヘルムは首の後ろにある紐を縛るタイプだから、ソレを解いた。
「改めて、ガランティーヌです。ガランとでも呼んでください」
「オタクくせぇ顔」
(普通の顔だよ! たぶんだけど!)
――突然だけどさぁ、PKスキルなしでもPKする方法っていくらかあるんだよ。
例えば窒息死。簡単に言うと首シメりゃいい。窒息の状態異常は外的要因のスリップダメージだからな、時間はかかるけど殺れる。
速攻で仕留めたいなら首の骨折ることだな。PKスキルが必要になるけど。
例えば毒殺。料理スキル三十一入ってるから、俺の作った料理って前提はあるけど、それに毒薬混ぜたら普通に三十一レベル級の猛毒料理になる。おおよそ二秒弱で殺せるな、これだと。
例えば圧殺。この辺はOPKに近い。まぁプレイヤーが上に乗っていけばいずれ潰れちまうっつー話なだけだけだ。
んで最後、思いっきり壁にぶつける。完全にOPKだな。要因がなんであれ速度をつけて地面や壁のオブジェクトにぶつかるとダメージが入る。閉所で≪ステップ≫が使いづらい理由のひとつだな。慣れれば壁に着地できるんだけど。
――でー、何が言いたいかっつーとだな?
ゲームだしこいつ一回殺してやったって文句は言われねんじゃね? って思うんだよ……後ろで軍曹とクロウが「やめろ」ってオーラ出してなければ殺ってたかもしれん。
「ところでクエストはどうなっているんですか?」
っつーか、俺の顔見て何の反応も無いってことはコイツ俺より後にきたヤツか。この様子だと初心者Wiki見て構成決めて攻略はソロあたりだろうな。もしくは他ギルドに一時的に雇われたか、ギルドでも腫れ物で孤立してるか。
だいたいこんなヤツがギルドに長いこといられるわけがねぇ。拾ってくれそうなのは……効率重視の「TA’s」か。
あー、でもコレはないわ。あそこもかなり礼儀正しいからな。じゃないとハブられて目的のMOBタイムアタックできなくなるから。
そーなると三ヶ月ぐらいになるかならないかぐらいか――いつでも毒殺できるわ、コレ。
確かに俺ら向けだわな。でも他の竜殺しでもいいじゃねぇかよ、こんなんあてがわなくて……時間的に合わなかったのか?
「ただのオークの群れだとよ。聞いてねぇの? 使えねぇ……」
(さすがウチの軍師だな、ここは予想通りか)
「んじゃさっさといくか」
「って、スキルとか作戦とかは?」
「お前ら使えなさそうだから俺だけでやるしかねぇだろ……」
「――ッ!?!?」
軍曹さすがッス! コレの視覚外でちゃんとアスール押さえててくれて助かるわー……。
「いやいや、有名なジョージさんのスキルなんですから、やっぱり参考にしたいじゃないですか。ほら、俺初心者ですし」
「……まぁ真似したところで同じ立ち回りができるとか思えねぇしな。ついでにそっちのスキルも言えよ?」
「そりゃぁもちろん」
――うっし、よく耐えた俺!
こんなヤツにへりくだって話あわせたくねぇケド、知らないよりはマシだろ。
「あーっと……ダメージカットが入る≪シールド≫五十。コレがメインだな、五十パーセントカットできるからドラゴンの直撃なんて痛くもねぇ」
フルスロだと七十八パーセントカットだから、切断属性メインの爪攻撃だけならフルプレート着てりゃ切断ダメージは無しになるけどな。
まぁそれでも盾の耐久力は削れるし衝撃ダメージは通るしで、結局ダメージ無しだなんてほとんどないんだけどな。
「んで≪ソナー≫二十。半径二十メートルの音が正確に拾えるから、これで攻撃が来た事を判断する高等テクだ。もちろん敵の襲撃にも備えられる」
軍曹は百メートル先からでも「空気が淀んでいるな……」とかわけのわからんこと言って≪隠密≫してるやつ見つけられるヤバい人ですがなにか?
「ダメージは≪リジェネレイション≫五で消す」
アスールがよく使う手ですね。でも回復総量で言うとMPの潤沢なアスールのほうが厄介なんだよな。
「ちゃんと突けりゃいいから≪ランス≫が二だ」
まぁシステムアシストは当然だろうな、クロウも入れてるし。なんつーか、コレも格闘技とかやらなそうだしな。
「最後に≪ステップ≫が一だ。スピアの攻撃力も上がるし避けるのにも使える」
人にもよるけど、それだとぶっちゃけ短すぎて逆に使いづらい。
――でもまぁ大体わかった。
最初に思ったとおり、コレ、ただのゲーマーだ。しかもあんまり動かない、筋肉痛とか嫌う防御特化型。
「あとは自分と相手はターン制だと意識することだな。カウンターなんてバカのすることだ」
ダウト。カウンターはバカのすることじゃなくて上級者のテクニックだ――正直言うと初心者ギルドにいたとき俺が教えてた内容に近いぞ?
初心者が死なないための基本中の基本じゃねぇか……そういやドラゴンで動き方試したことあったなぁ。初心者ギルドのマスターも竜殺しだったし。
「へ~、なるほど。ジョージさんの構成は≪シールド≫五十、≪ソナー≫二十、≪リジェネレイション≫五、≪ランス≫二、≪ステップ≫一。カウンターはバカのすること。ためになりますねー」
復唱して、裏方に回ってるやつらに情報を回してやる。
「で、お前らのは? 正直使えなさそうだけど」
「ああ、俺らのはですね――」
アスール、狙われないといいんだけど……とりあえず俺は一人ずつ紹介しながらスキル構成を述べていく。
――いちいち鼻で笑うわアスールに目の色変えるわ、ガチでめんどくせぇ。
つーかアスールは中学生だっつうの。デカいのは認めるけど胸じろじろ見てんじゃねぇよ。ウチの娘にトラウマできたら出るとこ出てやるぞこの野郎。
「はぁ、つっかえねぇ奴らだなぁ……」
「もうしわけないです」
あー、この依頼終わったら本格的に暗殺者にでもなるかなー? とりあえずコレだけはシメておきてぇ……。
「とりあえず竜殺しって誰?」
「軍曹ですね」
俺のことは伏せておこう。面倒だし、面倒だし、面倒だから。
「この人、現役自衛官なんですよ」
「ゲームとリアルは別もんだろ? コイツ、偶然たまたま竜殺しになっただけじゃね?」
……よし、こんなヤツと一緒にした近藤のヤツも後で毒殺すっか。
「どうせ使えないんだから、俺が前にでて戦う。お前ら後ろでちゃんとサポートしろよ? どうせ使えねぇんだから」
大切な事みたいに二度も言いやがった。
確かに前線で戦ってるヤツは偉いだろうけど、後ろで支援してる奴が働かなかったら身動き一つ取れねぇんだ。お前らの命は俺ら後方支援役が握ってんのをもう一度理解させてやろうか……!?
「んじゃさっさと行くぞクソども……あー、こんな依頼受けるんじゃなかったな、マジで」
あからさまにため息をついて、ヘルムを被りながら小屋を出て行く――バタン、と音を立てたところで、アスールが手袋をドアへ投げつけた。
「ムッカつくー! なんなの? バカなの? ああいう風にしてないと死ぬの!?」
「最近の竜殺しの質も落ちたな」
「俺まで落ちたみたいに言わないでくださいよ」
「あんなふうに増長するなら、竜殺しの称号なぞいらんな」
『――第一回ギルド会議を開催する!』
『ちなみに発言権があるのはバカガランとアスール以外ねー?』
『今の話の流れからおおまかに推測するけど……相手は我が強すぎるみたいだね。命令系統を勝手に乱すだろう。実力があろうとも、彼は無能な働き者タイプだ』
「アタシ発言したーい! つーか斬り殺したい! っていうか胸ばっかジロジロ見やがって! アタシはもう予約済みだい!」
予約済みか――ちょっと雇い主として聞いておきたいところだな。
住むところはともかくとして、無理に青春する時間を奪うつもりなんてねぇし……っつーか相手が変な男だったらお父さんに報告しなきゃならんしな。
もちろん、シメる、っつー方向で。
『そうやってアスールはすぐ感情的になるから、発言権をとりあげたんだ……決して、参加したら、駄目だからね?』
「くそっ! なんて時代だっ!」
「俺だって言いたいことは色々あるけどな。まぁ俺はアレの接待で忙しくなりそうだしな」
「朋友の分まで我が発言しよう」
「自分もあまり参加はしない。どうせヤツは一人先行して、大群に挑むことになるだろうからな。フォローで忙しくなりそうだ」
『というか、森での戦闘で木を傷つけても大丈夫か確認できなかったな……』
「大丈夫なのはクエスト受注者オンリーだと思うぞ。アレ、自分だけさっさと受けてるから、俺らは注意しておくことに越したことはない――と、んじゃ見失わないように頑張るとすっかねー?」
「二人は自分に任せろ、安心して戦え。竜殺しになったお前の成長、確認させてもらおう。強行軍ではイマイチだったが、追い詰められないと駄目な弟子かもしれんしな」
「俺も守って欲しいや、アレから」
「アレは無理だ。時間さえもらえれば立派な殺人機械にすることならなんとかできると思うんだが……」
軍曹、やっぱりあなた自衛官じゃなくて軍人……いやそれより軍曹のブートキャンプでもアレの性格矯正ってそんな自信なさそうに言うくらい難しいの?
ねぇ、ちょっと、マジ嫌なんだけど……?
『頑張ってくれよ? 私は君たちごと魔法でなぎ払いたくないからね』
「「「「『いざとなったら殺って!』」」」」
――普段は恐ろしいレンの魔導書が、これほど頼もしく感じたことはなかった。




