表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法の物語  作者: 神楽風月
デスゲーム編
3/97

第2話 就職活動をしよう

 中の人がAIであるキャラクターをNPCと言うらしい。初めて知った――それはともかく。目下の問題はNPCが数人いると言うことだ。

「最初に渡されるジェムとか、装備が若干違います。右から近接、遠距離、魔法、生産ですね」

「あまり戦いたくないし、生産かな?」

「モノによっては初期投資がかかりますね。自分、本業はコックなんですが、戦闘系技能がない場合は食材を市場で仕入れる必要があるので」

「つまり戦闘系のジェムは必須?」

「いいえ。ここはゲームの世界ですが、リアルの技術も生かせます。柔道や剣道、空手をやっている人はスキルジェムなしで戦うことだって出来ますよ」

「じゃぁ戦闘系ジェムの意味は?」

「純粋に、システム側からのアシストですね。剣を使って斬るにしても技術がないと。刃で切ろうとしても、技術がないばっかりに剣の横っ腹で叩いてしまう、なんてままあります。ヘタするとそのまま剣がぽっきり折れますしね。それを防ぐためのスキルジェムです。あとはまぁ、攻撃力も若干伸びるので、必要ない人でもわざわざ装備していることもありますよ?」

「柔道とか、剣道とか……苦手な分野ばっかりだ。私にとって悪意あるシステムにしか感じないな」

「そういう人のためのスキルジェムです。体がアシストの動きに慣れれば、外してもその通りに動けるので一種の職業訓練になりますよ。たまに警察やスポーツ選手が技術練習のためにやってきますし」

「じゃぁランディさんも?」

「ええ、料理の練習のためですね。まさに手取り足取り、といった感覚ですよ。まぁ、リアルだと身体能力はがっくりと落ちるので、練習のつもりでやるなら身体能力を下げるジェムを併用しないといけませんが」

「下げる系統もあるのか……」

「ジェム数は広辞苑並みですからね」

 技術方面なら現実世界でも有効だということについて、私はVRを少々侮っていたようだ。私は、現実に限りなく近づけている理由の一端が見えてきた気がする。

 それが、良いことか悪いことかはさて置くとして、だが。

「あ、戦闘時の設定はどうなってますか? デフォルトだとZ指定を軽くオーバーするので」

「……は?」

「明言は避けますが――普通に吐く人がいます」

「分かった、変更する」

「設定は時計から行います」

 言われたとおりに懐中時計を取り出して、カバーを開く。カバー裏面にメニューウィンドウを開くボタンのような彫刻が彫られていて、それに軽く触れると、設定ウィンドウが開かれた。

 このあたり、VRだと思わせるな。少し感動だ。

「ウィンドウは他人から見えないので注意してください。コレはなにかと指をさされて聞かれても困りますので」

「わかったよ」

 設定ウィンドウをじっくり見ながら、コード指定を見つけた。せっかくだからある程度はリアルに、ということでR15指定に変更する。

 少しぐらいグロいのにはある程度耐性があるから大丈夫だろう。

「――さて、設定も変更し終えたけど。こう、お金がすぐに溜まる職業って何かな?」

「システムアシストなしで、かつ身一つで戦う、ですね」

「君は私に死ねというのかい!?」

「そもそも武器、防具は消耗品ですから。ちなみに、それを知らずに攻撃力を求めて筋力ジェムをフルセットした人が攻撃した瞬間、武器防具が筋力に負けて壊れてしまった例がありますので注意してください」

「私はそういうマッチョなキャラは目指していないよ……もっと楽にお金が稼げるものはないのかい?」

「そうですね、ある人はコード指定をR18以上、ハラスメント防止機能をOFFに設定して、春を売るお仕事に――あの、実際にそういう人がいるという例を挙げただけですから睨まないでください。需要があるということには間違いがないんですから」

「嫌なところでリアルだね本当に!」

「まぁ、運営が言うには『障害者にもリアルを感じて欲しい!』とかなんとか……まぁ、婚姻関係になった人たちのためにあるようなものですね、本来の用途は」

「ふーん」

「……冷たい目で見ないでください。俺のせいじゃないんですよ?」

 まぁ、身近なところに植物状態の従妹がいる私としては、そういった感情を持ってもそれが実行できない……それの代用としてのゲームと言う意味では、決して悪いことではないのだろうとは、思う、思うが、あまり納得したくない。

「まぁ、お金稼ぎは面倒くさいんです。中の人がいるからこそ、思惑が絡んだりして、そして最終的にそれが商売として成り立っていくんですから」

「ゲームで人生の世知辛さを学ぶなんてね……ははっ」

「というわけで、一番簡単で、単純な方法は戦うことです。動物系から肉を剥ぎ取ったり、山菜を摘んだり」

「ダメもとで聞くけど、畜産はできないのかい? もしくは農耕とか」

「畜産も農耕もスキルジェムがありますね。そして収穫できるのは最速でも次のメンテナンス時です。まぁ、スキルなしで行うことは出来ますが……」

「リアルでそれを本業にしている人間でなければ難しい、ということかい?」

「そうですね」

 そういうところはもう少しゲーム的にしてもいいだろう! という言葉を私は飲んだ。

「まぁ、畜産も農耕も土地が必要ですし、もっと言えば野生の動物や、食うに困ったプレイヤーが狙ってくるので、人を雇って護衛してもらうとかしないと」

「食うに困ったプレイヤーって……」

「このゲームはおなかが減ったり、喉が渇いたりするんですよ。ゲーム的には腹の虫が鳴ったり、ツバを飲み込むような音で知らせてくれるだけでリアルになんの影響も与えませんが。餓死とか脱水症状での死亡例があります。死亡と言っても別に苦しい思いをすることはありません。ただ、死んだら登録されたポイントまで戻るだけです。もちろん、死亡した場合ペナルティがあります。財布や時計と、時計にセットしたスキルジェム、装備品をロストです。最悪なのは時計のロストですね。身体能力が激減するうえに、スキルジェムもロストですよ。そうなったら時計屋とスキルジェム屋で買いなおす必要があります。時計はかなり高いですから、すごい痛手になります」

「死ぬとほとんどの財産が無くなる、という認識でいいのかい?」

「ええ。そうやってどんどん弱体化していくので、プレイヤー自身に実力が無い場合、最終的に食うにこまったプレイヤーが田畑で盗みを働く……という流れです」

「……君は、私を守ってくれるよね?」

「リーダーの命令なので守りはしますよ? まぁ必要以上には協力しませんが」

「私の代わりに戦ってくれないのかい!?」

「護身術程度は嗜まないと、いざと言うとき大変じゃないですか。何も出来ない状態だと、この世界で待ってるのは浮浪者か売春婦ですよ?」

「世知辛いね!?」

「それに俺、寄生とか嫌いなんですよ」

「寄生?」

「ヒモ、とも言いますね。ゲームスラングですよ」

「ふむ、なるほど。わかった。私は女で君は男、ちょうどいいから養ってくれないか? 料理なら自信がある。ギブアンドテイクの関係だろう?」

「他人を養うつもりはありませんし、その余裕も少ないです。それに、おそらく俺のほうが料理スキルは上ですよ? そもそも俺、プロになるために料理の勉強してるんですから。ゲームでも、リアルでも」

 ぐうの音もでない、とはこのことか。私は歯噛みする。くそっ、色仕掛けでもダメだったか!

「……近接と遠距離と魔法で、それぞれのメリットとデメリットを教えてくれないか?」

「素直で大変助かります」


 まったく、どんだけ食い下がるんだこの女は……最後なんてほとんど上から目線だったし。

 まぁ、素直に戦えるようになると言ってくれたのは悪いことじゃない。PK(プレイヤーキル)スキルジェムをフルセットすれば、安全圏であるはずの街中ですらPKできるのだから、戦えなければ、少なくとも逃げ足だけはなんとかしないとお話にならない。PKについてはまぁ、不安を煽るだけだろうから黙っておこう。

「じゃぁ、一つずつ説明していきますよ」

「よろしく頼む」

 ……この上から目線っぽいっつーか、委員長っぽい物言いはなんとかならんのか?

「近接ですが。まぁ、文字通りです。柔道、剣道、空手に代表されるようなものですね。武器の種類としては剣、槍、斧、棍棒……まぁ現実にありえる武器はほぼ存在します。オリジナル武器を作成しているチャレンジャーな職人もいますね。デメリットはもう言わなくても分かるとおり、接近戦しか出来ません」

「分かりやすいね」

「遠距離ですが、弓、ボウガン、銃、投槍、投石などです。遠距離に攻撃できる魔法以外のものはここに分類されますね。近接とセットで取る人もいますが、チュートリアルではどれか一つなのでいまは置いておきましょう。弱点は接近されると攻撃タイミングを逸することがある、的が小さいと当てづらい、弾数に限りがある、コストがかかる、などですね」

「遠距離はデメリットが強いね」

「その分強力なんです。本人に技術があれば銃剣で遠近両用とかやってくれますが」

「そんな技術は無いよ」

「普通そうでしょうね。そして最後の魔法は、高火力、広範囲、射程も遠近揃って扱いやすいです。ただし、魔法の発動体として杖もしくはその効果のあるアイテムを装備していることが必要なことと、MPマナポイントが必要です」

「一気にファンタジーになったね。でも杖の装備とMPだけならデメリットは少ないかな」

「詠唱も必要ですよ? まぁ、魔法名の宣言をすれば、あとはオートですが。高レベルになるとMPの消費も多くなりますし、詠唱も長くなるので使いづらいです」

「ふぅん……詠唱時間はどれくらいなんだい?」

「基本はレベルと同じ秒数、といった感じです。なので、すべて同じ魔法をセットすると七十八秒ですね。あと、詠唱は任意で中断できます。そしてMPは発動時ではなく、詠唱している状態のときに減っていきます。詠唱よりも早くMPが枯渇すると強制中断ですね……まぁ最大の問題はMPを確認する術がないことですかね」

「使いづらいね!?」

「でもフルスロット状態の魔法一発分であることは判明しています。MP自体も自然と回復していきますから、弾数に関しては、あとは経験でなんとか」

 まぁ魔法の種類に関係なく、詠唱時間に応じてMPを消費するという仕様なのはちょっと疑問を覚えるよな。ゲームをやっていなくても、ファンタジー小説を読んでいるならなんとなく「魔法発動時にMP消費」と考えるだろうし。

 ただ、まぁ、MP消費に応じて威力の増加って仕様にしたせいか、純粋に詠唱を短縮するスキルジェムや、詠唱を伸ばすスキルジェム、詠唱をそのままに消費MPを増加させるスキルジェム、減少させるスキルジェムなどなど、この辺で調節する必要がある。

 このあたりは完全にプレイヤーの個性が出てくるところなんだよな~。

 ちなみにあのクソ幼女アリスことうちのリーダーは高速詠唱大火力構成だ。使える魔法は一つきり、それもたった三発しか連射できないものだけど、俺としては敵に回したくないタイプの一人だ。

「それでどれにしますか? ちなみにチュートリアルで貰えるスキルジェムは、近接だとショートソードとラウンドシールド、ソードスキルジェムとシールドスキルジェム。遠距離だと弓と矢が二十本、そしてアーチェリースキルジェム。魔法はファイアーボールスキルジェムと、魔法の発動体としての杖ですね」

 貰った上で売却し、別のスキルジェムを購入するのなら近接を選択するのが一番賢い選択だとも付け加えておく。

 どうせチュートリアルなんて弱い敵を一匹しとめるだけのもので、しかも途中ですっ飛ばせるから、だらだらとやってる必要は無いんだよな。迷惑さえかけなければ、試し撃ちとかやり放題だし。

「悩ましいね」

「何も考えなくていいのは近接ですよ。近づいて斬る。攻撃は盾でガードするだけですし。アシストが入るからほとんど反射的に行動すればいいだけです」

「そういうのは苦手なんだよね、私は」

「じゃ、遠距離は? 撃つ、逃げる、撃つ、でOK」

「お金がかかる!」

「……魔法使い一択じゃないですか?」

「……それもそうだね。デメリットが大きい気がするけど、それしかないね」

 デメリットを補って余りあるんだけどな、魔法使いって……そう思いながら、レンが魔法使い用のアイテムをNPCから貰うところを眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ