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剣と魔法の物語  作者: 神楽風月
村おこし編
22/97

第21話 新しい村ができました

新章突入!

応援よろしくお願いします。

 武器職人、防具職人、アクセサリー職人……生産職を上げていけば枚挙にいとまが無い。そういった職人たちに必ずといっていいほど付きまとう問題がある。

 生産性である。

 このゲームは「システムアシストこそあれど一つ一つ手作りするのが基本であり、しかしそれでは生産量に必ずと言っていいほど限りが出てくる」のだ。

 スキルジェムを懐中時計にフルセットすれば、とりあえず生産速度は上昇する。だが結局、その法則は乱れることは無い。

 そも、武器に耐久力が存在し壊れやすかったり、「街」として運営(かみさま)の加護を得るに至らない「村」では、武器防具職人の生産量がそのまま「街」に発展するか否かの分水嶺となると言っても過言ではない。

 ――まぁ、世の中にはマスケット銃につけたダガー一本でドラゴン十匹を同時に狩猟する化物がいるのもまた確かではあるが。

 それほどの実力者が必ず「村」に存在することはありうるだろうか? いや、無い。それどころか職人のなり手が少なく、一人で村人全員の武器防具を揃えなければならないことだってある。そこで行商人から購入するという選択肢が出てくる。彼らから大量に武器や防具を買えばいい。

 だが、これが高い。

 行商人としても危険を冒してまで「街」に発展するかも分からない「村」程度に、通常の値段で売るのは正直言って大きく損をする可能性がある。現実と同じ、投資していても回収できなければ金をどぶに捨てるようなものだからだ。

 そんなわけで、最終的に求められるのは「生産性の向上」だ。


「――というわけで、この仕事はお前らが一番適任だと考えている」

 浅葱色をしたダンダラ模様のレザーコート。背中には「誠」の一字。厳しい顔をしていて、とにかく体格がいい……彼は暗殺ギルド「ミブウルフ」のギルドマスター、近藤勇さん。口調から言って、未だにちょっとウチのギルドのことナメてる気がするなぁ……。

「私たち『アリス・イン・ネバーランド』はそのような高圧的なプレイヤー様の依頼は承っておりません……さ、巣へお帰り?」

 最近はお姉ちゃんが図書館に根を張っちゃって動かないから、お姉ちゃん大好きな私は図書館をギルドへの依頼の窓口にしてる……まぁ、指名されるほど有名なギルドじゃないけど、お姉ちゃんから本を読んでもらったりして結構幸せな毎日なの。

 ――それをぶち壊してくるんだから、もちろん私はあんまり機嫌が良くない。さっさとお帰り願いたいです。

「どうしてもか?」

「どうしてもだね」

「……ここでお前らに天誅を加えることも出来るぞ?」

 腰には配備されたばかりの新商品「鬼包丁」が差してある、この街ではまだ売り出してない。ウチがこの街に引きこもらざるをえなくなっていた理由を持ってるサブマス――悪名高き「史上最悪の暗殺者(りょうりにん)」ガランが使っていたものは試作品だったみたいで、商品版はほんのちょっと日本刀に近い反りになってた。

「きゃー、暗殺ギルドこわーい……で、図書館は公共の場なんだけど? そんな場所を女子供の血で汚して楽しい?」

「楽しくは無い、仕事だ」

「あ、そう」

 正直に言って、この人嫌いだし、面倒くさい。ドラゴン愛護団体の事件で持ちきりになった今、ガランの汚名もすっかりなりを潜めて動きやすくなってきているし「あの極悪人も従わざるをえなかった」って事実(たてまえ)のおかげで、誰に憚ることなく拠点を変える選択肢も出てきた。

 そこに降って湧いたかのようにこのギルマスの提案。なんか裏があるんじゃないかなって思わない? お目付け役もなしに、大手を振って別の町へ行く。正規の報酬が出る。

 ――っていうか、さっきから黙ってるバカガランとクロウ、いい加減何か言ったらどうなのよ。ギルド全体の話だから呼び出したって言うのに聞いてるだけとか……。

 あ、お姉ちゃんは別にそのまま本を読んでて構わないけどね!

「っていうか、ただのスキルジェム集めじゃん。普通にNPC経由で依頼でも出したらいいじゃん」

「そうだな、たかだか三十数個程度のスキルジェム集めだ。もっとも、メインは村を街にするよう手伝ってもらうことだがな」

 集めて来い、って言われているのはシステマティックスキルのジェムと、空っぽのレシピジェム。


 システマティックスキルって言うのは、簡単に言うと「ゲーム的に」「簡略化した行動で」物を作るスキルね。ただ必ず他のスキルと併用しなきゃいけないスキルで、その関係で絶対成功するわけじゃないってデメリットがある。

 そして空っぽのレシピジェムは、アイテムを作成したときにセットされているとそのアイテム専門のジェムに変化するちょっと変わりダネのスキル。

 例えば鍛冶スキルでダガーを作れば、その瞬間ダガーレシピジェムに変化する。鍛冶を外してダガーレシピジェムをフルセットすれば、ダガー専門の職人になれるわけ。もっとも、形状まで固定されるからオーダーメイドできる部分が存在しないけどね。

 メリットは専門職人だと生産性が上がるの。それに品質が安定するし、たまに性能が少し上昇することがあるね。

 あ、レシピジェムで作成しながら空っぽのレシピジェムに入れ続ければ、いつかは強い武器レシピが作れると思った? 残念、レシピジェムは単にコピーされるだけなの。うまい話はないね。

 だからこそブランド品製作者は実力でレシピジェム作成を繰り返しながら洗練させていくんだけど、今は関係ないね。だって今回はシステマティックスキルの併用だから。

 つまり今回の場合は、レシピジェムとシステマティックスキルを組み合わせると、一定確立とはいえ品質がほぼ一定で、生産速度がさらに大きく上昇するっていうシナジーを狙っているわけ。

 まぁ、この二つのスキルジェムは量産者かブランド品生産者、贋作者とかが大量に集めてるから、現状ではあまり市場に出回っていないかな。


「っていうかたかだか村じゃん」

 そう、たかだか村なのが問題。

「変な人たちが勝手に集まって出来た村とか嫌だし、そもそも報酬の支払い能力があるかどうかわかんないし、苦労してジェム集めしてた間に村壊滅とか目も当てらんない。あと利権関係のゴタゴタに巻き込まれるのも嫌」

 ドラゴンの街は、ドラゴン討伐のベースキャンプ兼鍛冶師たちが鉄を求めて集まったのがはじまり。ドラゴンの巣の奥にある宝石の原石って本当は誰のモノでもなかったりするんだよね、ただ街が発展してくれると色々便利だから、プレイヤー同士での暗黙の了解ってことで所有権があるだけ。快盗(・・)プレイとかやってる人もいるしね。

 帝国が大きく発展しているのは大陸の真ん中に陣取ったこともあるけれど、ドラゴンほどではないにしろ戦闘がたくさん起きるから仕事に困らないだけ。

 私たちの拠点になってるここは、まぁ、最初にここから始まるから。このゲームの世界観でいうと、私たちは神に導かれてやって来た力弱き異世界人(ドリフターズ)。神様は私たちを呼び出すので力を使い果たしちゃったから、この世界で神様の次に力のある時の精霊の加護を受けた時計から力を貰って、この魔物はびこる弱肉強食の世界を平和に導かなければならないっていう使命を背負わされちゃってる。

 チュートリアルで初期装備を与えてくれるのは、力を貸すように神託を受けた戦士や狩人、魔術師に職人なんだって。

 ――ま、ゲームをする上でまーったく関係のないお話だけどねっ!

 ともかく、「街」ができるのはそこが戦場のベースキャンプにふさわしい場所だったり、交通の便に良かったりするのが大きな理由なの。

 ギルドを上げて「街」を作る場合もあるけれど、たまーに変な考え持った人もいるしね……ウチのタロスみたいなのとか。

「支払い能力に関してはウチが連帯責任になるから安心してもらおう」

「暗殺ギルド監修とか、本格的に暗殺者(アサシン)でも養成するような隠れ里でも作る気か?」

 いいぞガランもっと言ってやれ! ヘタに引き受けるとずるずるってウチのギルドが暗殺ギルドに吸収合併されちゃいそうだし!

「隠れ里なら『村』程度で十分だし既に持っている。場所は教えられんがな」

「持ってるんだ!?」

(オレ)も噂だけは聞いたことがあるが……まさか実在するとは……!」

「自慢ね? 自慢なのね?」

 ええどうせこっちは総勢十名のギルドですよ! そんな隠れ里作るようなほどの人数を抱えてませんよ!

「自慢するようなことじゃない」

 ムカつくなぁ……!

「……ところで、その村を街にするための理由、手伝うメリットとデメリット、そもそもなんで私たちが適任なのかを詳しく話してくれないかな?」

 ここでお姉ちゃん登場! 本を読んでただけだと思ったら、ちゃんと話は聞いてたっぽい! さっすがウチの頭脳(ブレイン)

 難しそうな本――若きウェルなんとかの原本だって――をパタンと閉じて、メガネをくいっと持ち上げたっ!

「話せば受けてくれるのか?」

「内容次第では前向きに検討してアリスを説得してみよう」

 政治家とかが言ってるよね、暗に「お断りします」の意味で。でもお姉ちゃんは本当に前向きに検討して説得してくるから困るんだよなぁ……。

「別に悪い話じゃない。帝都から西北西の方角に進むと、オリンピアの街がある」

 主に野球場とかそういうのを集めた街で、オリンピックの語源から取ってる。ゲーム内だから一部スキルを解禁して行われてる野球やサッカーは『超人スポーツ』とか言われてて、アクロバティックで見ごたえあるからオススメだよ。大抵チケット取れないけど。

「そういえば今年のシルバーヴァルキリーズは思うように打線がふるわんな……応援に行きたいのだがチケットがなぁ……」

「前に野球ネタ禁止だっつったろうが」

「……話を進めるぞ? その近くに森があるのはわかるな?」

「私が知るわけないじゃないか」

「ああ……そういえば、お前ははじめてから一週間経つか経たないかだったな」

 そうそう、いつも同じ服や下着だと臭ってくるからいろいろ買い足してるんだよね。そのせいで、もう初心者だって思えないような状態だったりするんだよなぁ。

「既に初心者には見えない格好だから、思わず間違えた」

 最近はなぜか一般NPCで買える紺のブレザーとネクタイ、明るい色のサマーセーター、チェック柄のプリーツスカートにローファーっていう制服姿っぽいのをいくつも買ってる。理由は「異世界トリップ系なんだ、リアルっぽい格好のほうが面白いじゃないか」だって……本当にこの世界にトリップして来てるみたいだよお姉ちゃん……。

「デスゲームイベントのあとに、森でエルフが確認された」

「へぇ、エルフが」

「お姉ちゃん、たぶん分からないだろうけど。オリンピア近くの森には元々動物か魔物のMOBしか見つからなかったんだよ」

「アップデートか?」

「どこからか流れ着いた可能性もある。運営(かみ)の気まぐれというやつだな」

 アップデートされてもバグ修正以外の報告は公式HPに載らないんだよね、このゲーム。だから毎週のメンテナンス後はアップデートがないか探したりしてるギルドとかあるんだ。

「そこで彼らの集落の近くに「街」を作ろうという計画が持ち上がった。出来上がれば、史上初の森林の中にある街になる」

「へぇ、面白そうだね」

「しかも森の中には綺麗な湧き水があってな……荘厳な滝もある。川魚も住んでいるし、水遊びにはもってこいだ」

「うん、それで?」

「あとは安全な街中に水車小屋も作れるのではないかと考えている。鍛冶ギルドの総本山や、街では出来なかったメカニカルハンマーによる鍛造施設が作成可能になるかもしれない。少なくとも米や小麦の加工には使えるだろう。今までが手作業だったからな」

「それは素晴らしいね」

「そこで二名も竜殺し(ドラゴンスレイヤー)という素晴らしい戦力を保有しており、さらに機械工学に強いロボット狂いマッドサイエンティストのいる君たちに白羽の矢が立った。アレは良くも悪くも有名になったからな」

 ガランはともかく、軍曹は確かに頼もしいなぁ……タロスはイマイチ信用できないけど。

「メリットは、静かに自然の中で暮らしたいプレイヤーに安全な場所を提供できる点。川魚を安全に取れる点。エルフと友好関係になれば、今まで少なかったエルフ関係のクエストが発生する可能性がある点」

 エルフって街でもあんまり見かけないもんね~。たしか排他的なんだっけ? でも新しい土地か~……この街も手狭になってきたせいでギルドハウスとか作り辛いから、新しい街は欲しいとは思うんだけどねぇ……。

「デメリットは、街として認められなければ投資した分だけ損をする点。エルフと敵対関係になれば戦いは避けれない点……まぁ、天候による川の氾濫やMOBに襲われるなどもあわせれば、枚挙に暇がないな」

「川が氾濫するのか……治水学に詳しい人がいないなら、川を街中に作るのは少々反対ではあるね」

「そのあたりは現地の別ギルドとの話し合いだな」

「別ギルドいるんだ? 権利とかはどんな感じ?」

「少なくとも暗殺ギルドは単なる仲介だ。と、いうか……暗殺ギルド暗殺ギルドと呼ばれているが我々は本来自治組織団体だ!」

「PKスキル外してから出直してよ」

「難しいな。もうすこし平和になってくれればいいんだが」

「現実でも戦争をしている国はあるんだ。まだまだこの世界は貧しいところもあるようだし、そこは高望みというものだね」

「それは残念だな……それで、引き受けてはくれるか?」

「ふむ……」

 お姉ちゃんはちょっと考え込む。出来れば断って欲しいけど……

「アリス、これは引き受けてもいいと思う」

 ほらねー!?

「あとは私たちのギルドは決して暗殺ギルドの傘下ではない、ということをきちんと知らしめてくれないと、いつか名実共に吸収されるかもしれない。そこはきちんとしてほしい」

 おおっ!?

「妥当だな。ところで報酬だが……」

「相場がよく分からないよ、アリスと話を詰めてくれ。ただし、諸経費はそちらで落とさせてもらうよ」

 ――あのー、ギルドマスターは私なんですけどー?

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