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剣と魔法の物語  作者: 神楽風月
デスゲーム編
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第16話 軍師の覚醒

 そしてとうとう、右膝が破壊される。戦闘駆動によって熱を持った関節部に対しての執拗な≪ファイアーボール≫での集中砲火は容易に私のロボットの膝を溶かした。解けた鉄同士が結合してしまえば無限軌道にエネルギーを伝えることもできない。

 片足が完全に封殺され、折られてしまえばいくらジャイロ効果が働いているとしても、立っていることは難しい。そのままどすんと倒れこんでしまった。

(さすがに限界はあったか)

 両腕が落ちたとき、露出した肩部シャフトを見た彼らが「あれはゴーレムではない」と気付いた後の反応は早かった。

 この世界でゴーレムを用いず純粋にロボットを作成している人間、つまり私ががいるという話ならば、新人以外ならば必ず聞いたことがあるだろう。だが実践投入はこれが初めてであった。別の街にいれば姿形を知らなくても無理はない。

 今更にして、ロボットに限らず二足歩行型MOBでの足狙いという基本的過ぎる戦術を取ったのはそこに理由があると考えられる。

 多少のダメージを無視して強引に突撃する巨体を避けながら一定箇所を狙わなければならない作戦より≪エアロハンマー≫で動きを封殺するほうがよほど安全だからだ。

 ロボットだったからこそ効かなかった作戦、ロボットゆえに有効であった作戦。その程度の違いしかない。私は拡声器の機能をカットすると、時計を取り出した。

 コール先はもちろん、マスター。

「私だ」

『ってぇ! 今まで何してたのよ!?』

「ロボが破壊された」

『はぁあああ!? ちょ、大丈夫なの!?』

「時間の問題だろう」

 コール先の主はギャーギャーと、怒っているような、心配しているような、そんなわめき声がするが、私はそれを無視した。

「十レベル級鎧つきが三体、これはプレイヤーごとキルした。大盾歩兵二十名と魔法隊十二名、残念ながら数は減らせなかった。私の突撃を回避できることから、PKスキルは高くないと思われる。魔法隊からは一レベル級≪ファイアーボール≫および、十レベルから十二レベル級≪エアロハンマー≫を確認している。そして後方に一名、≪ストレングスアップ≫を使ったことから、おそらくはバッファーだ」

 目の前で魔法使いたちが≪ファイアーアロー≫を断続的に詠唱しだす。装甲に穴を開け、コクピットという箱につめたまま殺すつもりらしい。

「……追加情報だ、五レベル級≪ファイアーアロー≫を使う。≪フレイムアロー≫では無いところを見ると、威力重視のようだ。延焼バッドステータスを受ける確立は低いだろう」

 ファイア系もフレイム系も延焼という継続ダメージを受けるバッドステータスを誘発する魔法であり似たようなものではあるが、威力はファイア系、状態異常蓄積力はフレイム系と分かれている。

『……自慢の筋力で逃げ出せたりしない?』

「狙い撃ちされるだろう」

 しかしこのままやられているのも性に合わない。最後の切り札を使う決意をして、暴発防止のために付けられたカバー付きのボタンを、カバーごと叩き割って押し込んだ。

「切り札を使用した。以降外を確認することはできない」

 フライホイールエンジンに付きまとう制御面での最大の問題点――それは破壊された場合の、大量のエネルギーが蓄積されたフライホイールが及ぼす被害だ。

「何人かキルできればいいが」

 私の言った切り札。それはこの鉄の塊とも言えるロボットを動かしている原動力、フライホイールを射出し暴走させるというもの。

「それは神のみぞ知る、というもので」

 頭部に埋め込まれている鉄柱が、ロボのバイザーを突き破って解き放つ音が響く――私に届いたのは数名が悲鳴を上げる声だった。

「今の私には確認する手段がない」

 数名死んだという報告が上がっている声が聞こえた。具体的な数字は、聞き取れなかった。

「あとは任せた」

『はぁ!? ちょ、タロ――っ!』

 ――懐中時計のカバーを閉じた。


「――タロスは死んだわ」

 アリスが悲しそうな声を上げて、タヌキの懐中時計のカバーを閉じた。

「独断専行するからだ、バカめが」

「ちょっと! それ酷くない!?」

「味方に被害を与えて突撃、返り討ちにあう、無様な話だ」

「人が死んでるんだよ!?」

 それはゲーム的にだけれども――これほどリアルな世界だからこそ、簡単に感情移入してしまう。このイベントは特に、生死感が強く出てしまう気がする。

 どうしてこんなイベントを企画したんだろう……私にはまったく理解できない。

「落ち着いてください、アスールさん。……タロスさんは何か言ってませんでしたかねぇ?」

「相手の人数、分かった構成……最期に、任せた、って」

「それでは、任されましょうじゃありませんか」

 いつもやさしそうなお父さんの目が、ぎらぎらとしている。顔は笑っているのに、すごく、怖かった。

「策はあるのか?」

「マスター、タロスさんが教えてくれた人数は?」

「十レベル級鎧つきゴーレム三体、これは呼んだ本人自体を潰したみたいだから、いないと思う。あとは大盾を持った歩兵が二十人、魔法使いが十二人、バッファーが一人。魔法は≪ファイアーボール≫一レベル、≪ファイアアロー≫五レベル、≪エアロハンマー≫十レベルから十二レベル……最後の切り札を使って人数を減らそうとしたみたいだけど、どうなったかわかんない」

「最後の切り札といえば、フライホイールキャノンですね」

 そういえばお父さんと最初にあったとき、タロスさんと一緒にいたな……その攻撃の全容を知っているみたいだった。

「フライホイール自体がこちらに飛んできていないということは、こちらに向けて射出されていないか、道を外れて飛んでいったのか、山肌にめり込んだのか……ドラゴンも一撃というキャッチコピーですけど、まぁ、実際に使用されたのはこれが初めてですね」

「だが、当たらなければ無意味だ」

 暗殺ギルドのマスターさんの言うことはもっともだろうけれど……それを今言う必要って、あるのかな?

「そうですね、それではとても最悪なパターンで考えてしまいましょう」

「最悪なパターンならば、全員が無傷で生存している状態だろう。怪我をしていたとして、≪ヒーリング≫やHPポーションがないわけではあるまい」

 それは確かに最悪だな……ここにいる数は、ギルドマスター近藤勇さんを筆頭とした暗殺ギルド三十八名。タロスさんとランディさんを抜いた私たちのギルド四名。

 こちらは四十二名、相手は三十三名。戦力はほぼ互角と言っていいだろう。

「ちなみにそっちの戦力はどうなってるの?」

「全員が十三レベル級≪フレイムアロー≫を使える。弾数は三発から四発だ」

「うーん……弾幕生成能力が低いですねこちらは。真っ向から挑めば≪ファイアーボール≫で足止めされつつ嬲り殺しになりますねぇ」

「PKスキルも十三レベルあるだけに、そのぶんHPも耐久力も低い。一気呵成に攻める必要があるぞ」

「アタシが特攻して魔法使いたちしとめちゃおうか?」

「十二人の弾幕をかいくぐれるような人間は軍曹ぐらいのものである」

「それもそっかー」

「ゴーレムはいると思う? お姉ちゃん」

「私にふるのかい!?」

「お姉ちゃん戦記ものの小説とかとか読んでるって言ってたし、参考になると思うんだ」

「と言っても、当たり前の事しか言えないぞ?」

 私は、出来る限りそういった小説の記憶を思い出しながら、今の状況に当てはまるものをピックアップする。

 左手は急な斜面、落ちたらただじゃすまない。右手は急な上り坂、柔らかい土質で上るのはほぼ不可能とも言える……典型的な「開いた隘路」といったところか。

「……まずゴーレムは打ち止めだろう。こんな狭い道だと巨大な生物は身動きが取り辛いかと思われるかもしれないけれど、逆だ。ただ道に沿って突撃するだけで、私たちは回避という選択肢を選べない。わざわざ奇襲を考えるよりは、真っ向からゴーレムをけしかけたほうが手っ取り早いね。鎧で防御力を上昇させられるならなおさらだ」

「こっちに同等の戦力があると考えて襲ってこない可能性もあるんじゃないか?」

「戦力を小出しにしてたら勝てないだろう? タロスさんが単身突撃した時点で、ああいうものはこちらに一体しかなかった、と思われているはずだ」

『お~……!』

 周囲から感嘆の声が上がるんだけど……え? 普通そう考えないかな? というより、私は言われたとおり小説で呼んだことのある知識を振り絞って考えただけなんだけど……。

「確かにゴーレムの鎧はオブジェクト扱いだ、狭いこの道でキルするなら、ただ歩くだけでいい……!」

「お姉ちゃん天才!」

 この程度で? ちょっとアリスが心配になってきたんだけど……。

「危険人物がいるギルドに策士が入るか、厄介になるな……まぁ今は見逃しておいてやる、だから次に相手の取る作戦はどうなる?」

 ……訂正しよう、暗殺ギルドのほうも心配になってきたよ。これがゲーム脳かい? いや、ヘタに実力があるから真正面から叩き潰す作戦で十分なのか。

 それはそれで問題だな……それはともかく。

「大盾をもった歩兵が多い、ということはつまり盾を前面に構えて前進するファランクス陣形で突撃してくる可能性があるんじゃないかな? 体格にもよるだろうけど、この道幅ならぎっちり並んで五人ぐらいかな、それが四列。後ろの人が盾で前の人を支えながら……あとは槍を突き出せば、私たちに避けるという選択肢が与えられない、押し出されてしまうだろうね」

「つまり……ああいう具合にか?」

 暗殺ギルドのマスターが私の後ろを指差した……ああ、振り向くのがなんか嫌だ。でも振り向かなきゃいけないんだろうね……現実と戦うのって辛いな。

「……ああ、そうだね。ちょうどあんな感じだ」

 私の予想通りの隊列で、予想通りに槍を突き出して、斜面側のプレイヤーが落ちないよう慎重に進軍してくるドラゴン愛護団体ご一行様を見た私は少しだけげんなりしてしまった。

「よし、軍師。お前は後方に下がって指示を出せ。あんな硬い隊列を崩すのは骨だ」

「えっ……?」

「はっはっは! 弟子が軍師となったか! これは愉快だ!」

「えっ……?」

「お姉ちゃん期待してる!」

「突撃ならアタシにまかせろー!」

「銃しか使えませんが、頼みますよ?」

「さぁ軍師よ、策を出せ。(オレ)の深遠なる魔法の知識でもって、それを為してやろうではないか!」

「あの、一ついいかい?」

 ――私は、軍師じゃ、ないんだよ?

 書き溜め分放出終了、また書き溜め作業に移ります。

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