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剣と魔法の物語  作者: 神楽風月
デスゲーム編
12/97

第11話 嵐の前に……

 ――翌日。

 ランディの好意により、彼の店に泊まる事ができた。ひとまず通常のログアウトが出来たことに感謝しよう。

 まぁ、ログアウトのためにベッドにもぐりこんだのはいいものの、アスールと同衾するとは思わなかったけれどね。女の子同士なのに変な緊張をしてしまったよ……軽く修学旅行のノリになってしまって、少し恥ずかしい話をしたり、しなかったり……楽しかったといえば楽しかったかな。

 さて……軽く宿題をこなしてから、ログインすることにしよう。


「おっはよー! でも起きるの遅いぞー?」

 午前九時、遅い時間ではないと思う。だが、アスールは今日も元気がいい。これが若さか……いや、待て、私はまだ高校生だ。まだまだこんな枯れた感想を言うべき歳だろうか? いや、ない!

「ちょっと宿題をこなしてきたんだ」

「うへぇ、真面目~。もうYouメガネかけちゃいなYo!」

「ゲーム内でまでメガネはかけたくないよ、さすがに。やはり裸眼は素晴らしいよ」

「私は断然メガネっ娘派だ。白衣付きならなおよし。ロボットについて語れるのならば即座にプロポーズしてしまう自信がある」

 お世辞にも女性に向けるようなセリフではない事を口走りながら、会話に割り込んでくるのはタロスさん――よし、メガネはかけないようにしよう。

「ああ、タロスさん、おはようございます」

 当たり障り無く、先ほどの言葉はできるだけ無視して、挨拶だけはしておこう。礼儀は重要だと教えられたからね。

「おはよう」

 居間にいるのは私を含めて、この三人。

「他の人は?」

「ガレンさんは今、朝ごはんの用意してるよ。リーダーはちょっと出かけるところがあるって、ちょっと前に出てった。お父さんと中二は寝坊(ログアウト中)だね」

「では時間もあるしロボット工学基礎概論を――」

「ロボフェチー、女の子にそりゃないぜー? もっとスウィーツな話を持ってきてよー」

「ではスイーツ作成ロボに必要な技術と力学について――」

「よし、黙れ」

 ぴしゃりと言い放つアスールは、満面の笑みを浮かべている。が、これ以上言ったら殺すぞと、背筋が凍ってしまいそうなほどの寒気――怒りをぶつけられたことは何度もあるが、おそらくこれこそが本来の殺気というものなんだろうな。そんな雰囲気を周囲に発している。

「中高生には難しかったか」

 単純に興味が無いだけだよ……という言葉は胸にしまっておこう。


 ランディから、今朝はバターロールとスクランブルエッグ、そして牛乳だと紹介された。あんなもの(ゾンビ肉のステーキ)を食べさせられて以来、私はちゃんと料理名を聞くことにしている。

 朝食を食べた後にまたゲーム内で朝食を食べる、よく考えてみれば、食べすぎではないだろうか? 味覚や嗅覚はきちんと反応するので、おいしそうなのは分かるし、きっと美味しいだろうし、残すのも作った人に申し訳ないから食べるけども。

「食いながらでいいんだけど、今後の方針について。昨日の会議で決まったことを話していくぞ?」

 そういえば、ランディ、アリス、クロウの三人だけで、店のほうで会議をしていたな……あまり戦闘になるような話でなければいいんだけれど。

「まず現状の確認。戦力としては昨日集まったとおり俺、アリス、クロウ、アスール、お父さん、レン、そしてタロスだ」

「……ちょっと待ってくれ」

「一レベルの≪ファイアーボール≫でも十分主力になりうる」

 ぴしゃりと言い放つ。反論は許さない、といった感じだった。いや、そもそも彼は私たちギルドのサブマスター、今はその役職に徹しているのだろう。

「同コスト同DPS、チュートリアルでも言った言葉だ」

 確かに聞いた言葉だ。だけど、あまり認めたくはないな……私はこの世界に戦うためにきたんじゃない、本を読むために来たのだから。

「レンの本来の目的は分かってる。だが金が足りない。つまり今回はその目的を果たすための仕事だ、そう割り切れ」

「……わかったよ」

「アスール……は、大体知ってるからいい」

「言われれば変えるけど?」

「急に変えられててもこっちが戸惑うんだよ」

「あー、変えてない変えてない。≪ブリザード≫一レベルと≪リジェネレイション≫が五レベル、≪マナ増強≫七十二レベル。装備は布製、武器はサーベル、いつもどおり!」

 聞いたことも無いようなスキルばかりだ。まぁ、私にとってはほとんどのスキルがそうなんだけれども。

「いつも通りか」

「凍える谷か……少し勘を取り戻す必要が出るな」

「使いやすいからね。でもただの敵なら≪リジェネレイション≫かけて突っ込んだほうが早いかな~」

 とりあえず、彼女は魔法を使う剣士であることが分かった。魔法の効果は……ゲームをやっていれば推測できたんだろうけど、あいにくとこれが人生での初ゲームだから、分からない。

「タロスは?」

「筋力極振りだ」

 確か……自分の武器や防具が壊れてしまうほど、だったか。まさかこの目でそんな使いづらそうな構成をしている人を見るとは思わなかった。

 まぁ、野生の変態は何を考えているか分からないから、理解できないんだろうけど。

「……まぁ、平常運転だな」

「いまだに巨大な鎧というレッテルが貼られているのは大変不服ではあるがね」

 巨大な鎧、って……サイズにもよるだろうけど、手足が末端まで届かないと思うんだけれどな。長いマジックハンドに、ものすごいシークレットブーツ的な感じなのだろうか?

 SFなのか原始的なのかハリボテなのか、判断に困るところだ……。


「ただいまー……あー、肩凝る~」

「凝るほど胸が無いようだけどな」

「……あんだって?」

「やんのか?」

「買うよ?」

「よし、(フィールド)出ろ」

「だぁああ! 二人ともやめなって!」

 顔を合わせるたびに続けられてる、リーダーとガランさんの何度目かの喧嘩を、いつも止めてる中二の代わりにアタシが割って入る。

 なんだかな~。毎回見るたびに、この二人実は……って嫌な想像しちゃうんだけど?

「で、リーダーはどこ行ってたの?」

「暗殺ギルド。トップと協定結んできた」

「うへぇ……ってことは、やっぱりウチらイベント参加派?」

「だってほら、さっさと終わらせないと。いつもの事だけど、運営からヒントも何も無い状態だよ? 放置してたら無差別でやっちゃおうって考えるのも出てくるし。ログインできないと私死んじゃう」

「シャレにならないからそんな事言わないでくれよ……」

「ごめんね、お姉ちゃん?」

 可愛く舌をだして、手を合わせる。ちっちゃいから、リーダーはこう言うしぐさが似合うなぁ。

「タロス。ギルドが『ウチの倉庫に預けてた木偶をさっさと引き取れ』だってさ」

「木偶ではないロボットだ! くそっ、ロマンと科学の発展について理解しない奴らめ!」

「倉庫代で三Mだってさ」

「私の大切なものを空いてる土地に放置しているだけのくせに……忌々しいっ……!」

「いってらっしゃーい」

 忌々しげにブツブツ言いながらメカフェチが出て行く――あ、なんかあの人いなくなるだけで気分いいわぁ。

 ついでに中二もどっか行ってくれるといいんだけど、まぁ高望みのしすぎかな?

「で、これはガランに」

 リーダーはパンパンに詰まったバックパックと、ガランさんがいつも使ってるようなサーベルを二振り、どすん、と床に置いた。

「ご注文のとおり、三尺八寸(サンパチ)だっけ? のほとんど真っ直ぐなサーベル。っていうかNPCの店に入るの久しぶりだったなー。なんであんなそっけないデザインのしか置いてないんだろうね? あ、一応質はいいのを選んできたから」

「質がいいやつについては素直に感謝しとくけど、量産品にわざわざ装飾してたら値段が跳ね上がるっつーの」

「それもそっか。で、バッグに入ってるのが頼まれてたレザーメイル一式だけど……サイズ合わせとかホントにナシで大丈夫なの?」

「ちゃんと注文してきたサイズ買ってきたんだったら大丈夫だ。量産品は量産品らしく、ちゃんと丈を合わせられるような構造になってるから」

「革で? 金属もついてるのに? へ~、フリーサイズってやつ? アタシは布しか着たことないから知らなかったわー」

「さっすが市販品って感じだね~、安っぽいっていうか……」

「リーダー、アタシのも市販品なんだけど……?」

「アスールちゃんじゃなくて、ガランの装備のほうね? アスールちゃんのはちゃんと可愛いし」

「いやぁ、えへへ……そう?」

 義理でも褒められると嬉しいなぁ――本命にも褒めて欲しかったりするんだけど。

「まぁ、とりあえずこれでツケ五十万分チャラね」

「バカが。せいぜい一万程度だ、金はどうせクロウの財布から出てんだからよ」

「せっこっ!?」

「待て、アリス。君はどれだけツケを貯めてるんだい?」

「え? えーっと……あはは、アリスわかんなーい♪」

「……少しは返したりはしてるけど、三百万ぐらいかな」

「アリス? ちょっとお姉ちゃんとお話しようか」

「ゴメンお姉ちゃん! ちゃんと返す、ちゃんと返すからぁ!」

「お姉ちゃん、アリスがゲームの中でとはいえ、こんなにお金にだらしないとは思わなかったよ!」

「――姉妹喧嘩は部屋でやってくれね? 俺は防具のサイズ合わせしなきゃならんから」

「わかった。ちょっとアリスを借りていくよ」

 言うが早いか、リーダーの片腕がレンさんにがっしりとつかまれて――うっわー、いくら小さいとはいえリーダーのこと片手で持ち上げてるよ……ゲームならではのプレイだなぁ。

「このバカガランー! 覚えてろー!」

 負け惜しみだけがこだまする、ってこういうことだね……ロボフェチ、鎧取りに行って居ないし……他の二人は起きてこないし……計らずともガランさんと二人きり、か。

 ――淡々とサイズを合わせながら、たぶん収納とかメンテとかの問題なんだろうけど、パーツごとにバラバラにしてある鎧を組み上げていく。

 すっごく手馴れてて、なんだか冒険者(アウトロー)っぽくてかっこいいなぁ……。

「……剣でも研いでたらどうだ? 砥石あるし」

「え? ああ! 大丈夫大丈夫! そりゃあもう、抜けば珠散る氷の刃、ってヤツ?」

「えっらい古い言い回し知ってんなぁ……時代劇でも今時言わないぐらいだぞ?」

「へへっ、文学少女ですから!」

「はいはい文学少女文学少女」

「あ、バカにしてる?」

「どうだろうな?」

 組み立てた鎧を一度着て、脱いで、微調整して、また着て――を繰り返すのを、アタシは見ている。

 なんていうか……シンプルなのって、飽きがこないよねー。

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