第11話
ついに・・・ついに・・・
式場内にパイプオルガンの音が響くと同時に義父と腕を組んだ秋穂がバージンロードを歩いてくる。
顔を上げた秋穂とベール越しに目が合い、古賀は微笑んだ。
叔母が作ったウエディングドレスを身に纏った秋穂は古賀の想像以上に美しかった。
Aラインのオフホワイトのドレスは胸元と裾に細やかな刺繍が施され、シンプルで上品な美しさの中に叔母らしい遊び心が取り入れられ、秋穂をさらに引き立てていた。
そんな秋穂に見とれていると、叔母が得意げに微笑んでいるのが視界の端に入り苦笑する。
「必ず、幸せにします」
義父からシルクの手袋に包まれた秋穂の手を取ると同時に古賀は義父に向かい、小さな声でそう言った。
そして、その言葉に頷いた義父の腕から秋穂の手が自分の腕へと渡された。
緊張しているのだろう、重ねた秋穂の手のひらは少し震えていた。
その緊張をほぐすかのように組んだ腕とは反対の手で秋穂の手に触れる。
自分の意図に気づいた秋穂は古賀の顔を見て小さく微笑んだ。
秋穂に出会い古賀は始めての感情をたくさん知った。
何かに執着できるのだということも
他人を愛せるのだということも
何気ない日常を幸せだと感じることが出来るということも
秋穂に出会わなければ知りえなかっただろう。
彼女に出会う前の自分は、いつもどこか空虚だった。
それが当たり前で、おかしいのだということに気づいてはいたが気にも留めなかった。
けれど、自分の腕にそっと手を添えこれからの未来を共に歩んでくれる人物が古賀の世界に鮮やかな色をつけた。今まで決して満たされることの無かった古賀の心になくしたピースがはまるかのごとく、彼女と共にいると満たされるのだ。
牧師の声が静まり返った教会にこだまする。
「新郎、古賀祐一、あなたはこの女性と結婚し、夫婦になろうとしております。あなたは、健康な時も、そうでない時も、この人を愛し、この人を敬い、この人を慰め、この人を助け、その命の限り難く貞操を守ることを誓いますか」
「はい、誓います」
「新婦、深山秋穂、あなたはこの男性と結婚し、夫婦になろうとしております。あなたは、健康な時も、そうでない時も、この人を愛し、この人を敬い、この人を慰め、この人を助け、その命の限り難く貞操を守ることを誓いますか」
「はい、誓います」
震える声で秋穂がそう言った瞬間、体を駆け上がったのはあふれんばかりの幸福だった。
「指輪の交換を」
二人で選んだ結婚指輪はダイヤの嵌った細身でシンプルなデザインのものだ。細く繊細な秋穂の指にそれはよく映えており、古賀は満足する。
「では、誓いのキスを」
そっと、秋穂の顔を覆っているベールを上げると目じりに涙が溜まっていた。
それを指の腹で優しく拭うと、ゆっくり顔を近づける。
「幸せにするから」
囁いた言葉は思った以上に決意を含んだ声音になってしまった。
「はい」
泣き笑いのような顔でそう言った秋穂に誓いのキスをする。
これからの未来、君が幸福でありますように
その笑顔をずっと君の一番近くで見られますように
「愛してる」
「私も、愛してます」
互いの唇が静かに離れた瞬間、触れるか触れないかの距離のまま、互いに愛を交わした。
やっとここまできました!!!(小躍り)
長かった・・・
最初の予定はどこへやら・・・
一応、ここで完結とさせていただきます。(完結タグもうちますが、作者の気分によって更新するようなしないような・・・)
ここまでこんな作者を見捨てずに読んでくださった皆様!感謝感激です!!(涙)
初投稿のうえに作者の文才が乏しく、読みにくい点など多々あったと思いますが本当にありがとうございます。
読んでくださる方がいるというのはとても励みになります。
さて、現在、新たな作品【そして、晴れになる】を書き始めました。
現代、恋愛ものです。
曖昧な関係を維持し続ける二人の男女の話です。
不定期更新になると思いますが、こちらもよければ読んでくださると嬉しいです。




