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紫陽花  作者: 蓮実紫苑
永遠を君に
15/23

第4話


前回の続き

「君は館川のお嬢さんだね。いったい何を言われたかは知らないが勘違いも甚だしい。だいたい私は二日前に籍を入れたんだ。そこにいる彼女と」


そういって予想通りこちらに手を伸ばしてくる男にうんざりする。

恨みがましい視線を向けるがそんなものはものともせず、古賀は秋穂の手をとる。

しかも、互いの指にはまったお揃いのリングが見えるように。

ほんとやめてくれよ。むしろ場所を考えてくれ。

あれか、仕返しか。

しばらくは結婚したこと会社には黙ってましょう、なんて言ったから根に持ってるんだな。

じゃなきゃ会社のメインエントランスなんて最も人の集まるところで結婚発表なんてしないだろ。

この迷惑女のせいで私が被害をこうむっている。

うう、女性方の視線が痛い・・・


「そんな、そんなはずありませんわ。お父様は確かに結婚させてやるとおっしゃってくださったもの。だいたい、そんな女なんかでは祐一さんとつり合いがとれるわけありませんわ」


館川・・・館川・・・と頭をひねる。

あぁ、確か古賀の遠戚にそんな名前の会社があったな、と思い出す。

けれど、資金繰りに首が回らない状態のはず。


古賀からもいくらかお金を借りていたように記憶している。そんな状態でよくここに来れたな。

まぁ、もっともそんなことになっているなどこの女は知らないのだろうけれど。

などと思っていると真横から冷気が漂ってきた。

恐る恐る横を見ると笑顔の祐一さんがそこにはいた。もう本当に怖かった。

纏ってる空気が尋常じゃあない。

怒ってるわ・・・


絶対零度、まさに魔王だってはだしで逃げ出してしまうのでは?というオーラを古賀は体中から出している。


「こんな女ねぇ。君がこんな女呼ばわりしているのが私の、古賀祐一の妻だと認識しているのかな。そしてそれがどんなことかを。これだから頭の悪い女は嫌いなんだ」

「祐一さん?」

「大体、君に名を許したことなど無いのに気安く呼ばないでくれないか、気分が悪い」


辛辣にも限度があるだろと思ったが言わなかった。

自分のために古賀が怒ってくれているのだと思うとむしろ何もいえなかった。

そして、それがうれしいと思ってしまっているから・・・


「もっとも、秋穂がいなくても君が私の候補に挙がることなど無いだろうがな」

「えっ」

「知らないようなのでお伝えしておきますが。あなたのお父様、つまり館川の会長は古賀に借金があります」

「娘を古賀にやってつながりを持ちたいのだろうが、そんなことが分からないなどと思われていようとは。正直古賀を馬鹿にしているとしか思えないな。分別がないのはどっちだか」


もはやここまでくると、先ほどまでの勢いはどこへやら、女性は蒼白になり震えだしていた。


「これ以上、私と妻の周りをうろつくようならそれ相応の覚悟をしてもらおう」

「・・・」


そう言うと視線で合図を出したのだろう、警備員がやってきて力をなくした女性を会社の外へと連れ出した。


「・・・」

「・・・」

「やりすぎです」


視線で会話をする二人に秋穂はそう言った。


「やりすぎ?身の程と言うものを教えただけだ」

「いや、それ以上のことしてたでしょ」

「俺の大事なものをこんな女呼ばわりしたんだ、ただで済むはずが無いだろ」


言われた言葉は嬉しいが、なんだかひどく物騒に聞こえるのは何故なのだろうか??





その日、この事件現場で一部始終を見ていた人々によって秋穂が古賀祐一と結婚したという話は瞬く間に会社中に広まり、真偽を確かめようとする女性たち(なぜか男性も混じっていたが)により、仕事どころではなくなってしまったため、社長(ちち)からしばらく休暇を取るように二人とも命じられた。

そして、会社中に知れ渡ってしまったがために、義父や義母、古賀によって結婚式の準備がなされてしまったのは言うまでもない。

そんな確信犯のような古賀の笑顔に秋穂も最終的には頷かざるをえなかったのはまた、別の話。






古賀氏、鬼畜丸出し。

怖い怖い。

魔王様もはだしで逃げ出してしまう笑顔っていったい・・・



このあと、古賀氏は会社に乗り込んできたお嬢様のお家に報復をしました。

それはもう、えげつないほどに・・・

けれど、秋穂ちゃんには知らせなかったとか。

(・・・)

どうなのよ、もう、古賀氏・・・


そして、確信犯のように休暇をもぎ取った古賀氏は嬉々として秋穂ちゃんを連れて家に帰ったとか・・・


ご馳走様です・・・


では、また次話で~~~



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