第9章 肩もみ
藤堂はずっと頭痛が続いていた。例の肩こりのせいである。まだ、21歳なのだが、なんせその巨乳のせいで、肩がカチカチに固まっているような感じである。実家から通っており、兄と姉がいるが、なかなか親、兄弟に肩もみをお願いするのも気がひけるうえ、病院に行ったところで、保険がきくかどうかさえわからなかった。そんなある日、その日も朝から強烈に肩こりによる頭痛がしていた。
昼休みになり、同期の何人かと昼食をとったあと、自分の職場に戻ろうとした。ちょうどその時、目の前に祐希がひとりで通り過ぎるのが見えた。
藤堂「あ、祐希くん。」
祐希「あ、藤堂さん。こないだは、どうも。」
藤堂「あれから、北見さんは、どう。」
祐希「だいぶ、落ち着きましたよ。もう、普通に何事もなかったかのように会社に来てますよ。」
藤堂「あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど。」
祐希「はい、なんですか、お願いって。」
藤堂「実はね、朝から肩こりで頭まで痛くなってきてさ。ほんと、悪いんだけど、ちょっとだけ肩もんでくれない。」
祐希「いや、いいですけど、さすがにちょっと人が見ているところでは、まずいでしょ。」
藤堂「じゃあさ、あの共用会議室あるじゃない。あそこは、昼休みは誰も来ないから、あそこに来て。」
祐希「共用会議室の何番ですか。」
藤堂「一番奥の、3番会議室。」
そう言い終えると、藤堂は先に会議室に行ってしまった。たしかに、一緒に会議室に入るところを見られたら、さすがにまずいと思ったのだろう。藤堂が行ってから、数分経過してから、祐希も会議室に向かった。会議室のドアを開け、中に入ると、藤堂が一人椅子に座っていた。
藤堂「お願いしていい。」
祐希「わかりました。俺、子供のころから、お袋の肩もみしていたんで、結構上手いほうだと思いますよ。
藤堂「もう、ガッチガチだから、強めでお願いします。」
祐希は、親指で肩の周りと肩甲骨周りをまずは軽く押してみた。確かに、カチカチに凝り固まっていた。これは、かなりほぐすのにも力を込める必要がある。親指を肩甲骨周りに押し付け、力いっぱい押し付けた。とにかく固かった。
祐希「これは、相当固いですね。よく、こんな状態で我慢できますね。」
藤堂「そうなのよ。しかも、この年で、肩もみなんて誰にもお願いできないし。」
祐希「家族とかは、頼めないんですか。」
藤堂「私、末っ子だし。なかなか、お兄ちゃんとかお姉ちゃんに頼めないしね。」
祐希「これは、親指でちょこちょこ押しても、あまり効果ないですよ。肘で押していいですか。」
藤堂「もう、祐希君にお任せするわ。」
祐希は、右腕の肘を使って、まずは藤堂の右側の肩甲骨周りを少しづつ場所をかけて、強く押していった。とにかく、カチカチなのである。
祐希「藤堂さんって、右利きですか。」
藤堂「そう、右利き。あっ、めっちゃほぐれる。」
藤堂は、祐希が力を込めて、肘を押し付けるたびに、少し抑揚したような声でうなっていた。右利きのせいか、やはり右側のほうが凝っていたが、いずれにせよかなりの肩こりだった。
祐希「ちょっと、揉みにくいので、こっちの大テーブルにうつ伏せに寝てください。」
藤堂は靴を脱ぎ、会議用の大テーブルの上に、うつ伏せになった。そこに、祐希が登り、藤堂の腰の両側に膝をつき、藤堂の両肩に向かって、力一杯指圧をした。その後、右手と左手の肘を使って、順番に左右の肩甲骨周りをほぐしていった。
藤堂「あっ、あーーーーーっ。気持ちいいっ。なんか、一気に血流が良くなってきたような感じ。あっ、そこそこ、もっと強く。」
だんだんと、藤堂の声が大きくなっていくのがわかった。彼女は、もはや会社の会議室にいることさえ忘れているようだった。藤堂は目を閉じて、快感にふけっているようにも見えた。
藤堂「祐希君、もっと強く押して。そこそこそこー。もう、ちょっとだけ下のところ。」
祐希「ここですか。」
藤堂「そう、そこそこ。いやーん。セックスよりも気持ちいいー。あーーっ。」
祐希「ここは、どうっすか。」
藤堂「もう、ダメ。うんぅーーん。もっと強く。」
祐希はその言葉に戸惑ってしまった。なんという、この生々しい声。つうか、藤堂さんは、彼氏がいたのかと思った。祐希はだんだんと要領がわかってきたため、右、左と場所を変えながら、藤堂の肩をほぐしていった。そのころ、会議室の外には、偶然通りかかった、山下と円山がいた。二人は、ヒソヒソ声で会話していた。
山下「おい、円、なんだよ、この色っぽい声。」
円山「この声って、藤堂さんじゃねえか。」
山下「ああ、あの巨乳の人か。そう言われれば、そうだな。」
円山「なんか、祐希って聞こえねえか。」
山下「ああ、聞こえた。あいつ、まさかこんな所で。」
円山「おい、なんかセックスよりも気持ちいいとか言ってないか。」
山下と円山は、ほとんど会議室のドア近くにまで移動して、聞き耳をたてていた。そこに、なぜか竹内がたまたま通りかかった。竹内があの野太い声で、二人に話しかけた。
竹内「そんなとこで、何してんの。」
山下「うわ、竹内。静かにしろ。」
竹内「どうしたの、円山もいるじゃん。」
相変わらず会議室からは、藤堂さんの悩ましい声が聞こえてきていた。竹内もようやく事態を察知したらしく、小声でふたりにささやいてきた。
竹内「なによ、これ。社内不倫。これ、祐希の声じゃない。」
円山「あかん、俺だんだん興奮してきた。ちょっと、この声録音してえくらいだ。」
山下「俺も、やばいわ、この声。声だけで抜けるわ。」
竹内「あんたたち、バカじゃないの。」
相変わらず、会議室内から、ごそごそと音がしたり、藤堂の色っぽい声、そしてときどき祐希の落ち着いた声が聞こえてきていた。声は聞こえるのだが、会話の内容までは正確には聞き取れなかったが、明らかにのっぴきならない状況になっているのはわかった。
藤堂「ちょっと、そこそこ、そこもう少し責めて。」
山下「おい、今、責めてーって言ってなかったか。」
円山「おい、どこをどう責めるんだよ。」
祐希「この辺ですか。ちょっと強めに行きますね。」
藤堂「いやっ、そこっ、あ、あ、あ、・・・・。」
山下「あかん、俺、先走り汁でてきたわ。」
竹内「おまえら変態じゃないの。ちょっと、中に入って、私が確かめてくるわ。」
円山「おい、竹内やめろ。せっかくのお楽しみなのに。」
竹内はしゃがんでいたのだが、すくっと立ち上がり、会議室のドアの前まで行って、一気にドアを開けた。
中には、会議テーブル上にうつ伏せになっている藤堂と、藤堂のうえに乗って、肩をもんでいる祐希がいた。
竹内「何してるん。」
祐希「え、肩もみ。」
藤堂「肩こりがひどくて、祐希君に揉んでもらっていたの。すっごい上手なの。」
山下と円山も会議室に入ってきた。
祐希「うわ、お前らもいたの。」
山下「いや、あの、今、たまたま通りかかっただけ。となりの会議室に資料忘れたから、取りに行っていた。」
祐希「その割には、ふたりとも股間がパンパンやんか。」
藤堂「いやー、祐希君、ありがとう。すっごい肩が軽くなったわ。また、お願いしていい。」
祐希「あ、いいっすよ。」
藤堂「今度、ご飯行こうね。ご馳走してあげるから。」
そう言い終わると、藤堂は何事もなかったかのように、その場を立ち去った。山下と円山は、少し涙目になっていた。
山下「こ、この、行き場を失った、俺の欲望をどこに持って行けばいいんだよ。」
竹内「気持ちわりいな、お前ら。そんなに巨乳すきなんか。」
山下「うるせえな。」
円山「いや、次回は俺が肩もみして差し上げます。」
竹内「おまえら、まじで病気だな。」
山下「貧乳のお前には、藤堂さんの苦しみがわからないんだよ。」
竹内「おまえ、殺すぞ。誰が貧乳じゃ。見たことあるんか。」
円山「竹内、心配するな。世の中には、わずかだけど貧乳マニアって人たちがいるから。」
竹内「なんの、なぐさめにもならんし。そもそも、私は貧乳じゃありませーん。脱いだら、すっごいのよ。」
そう言った竹内は、今日も酒臭かった。




