第8章 おホモ達ですけど
2台の車に分乗して、いつもの定食屋に行った。ちょうど、ボーリング場から寮の途中にあるため、都合が良かった。外はかなり冷え込み、なんだかまた雪が降ってきそうな感じだったが、なんとか持ち応えているような様子だった。駐車場に車を入れ、4人が車外に出た。
山下「混んでるかもな。車も多いし。」
円山「大丈夫っしょ。とりあえず、寒いし、中に入ろう。」
千波「初めて来たよ、この店。男子寮の人は、こういう店に来るんだ。」
祐希「そう、安くて、美味くて、量が多い店だな。うちらには、助かるよ。」
4人で店の中に入った。千波の眼鏡が一瞬にして曇ってしまった。千波はかなり近眼なので、普段は眼鏡をかけたり、コンタクトレンズを装着したりしている。今日は、眼鏡をかけて来ていた。
千波「うあ、何この熱気。眼鏡が曇って、見えないんだけど。」
祐希「レンズ真っ白じゃんか。」
千波は、ポケットからハンカチを出して、眼鏡のレンズを拭いていた。
千波「よし、これで見えるぞ。」
幸い、4人掛けのテーブルがタイミング良く空き、ほとんど待たずにテーブルに案内された。
円山「豚汁定食。」
山下「またか。お前、いつもそれしか食わねえじゃん。」
千波「えっと、どれどれ、ここは何が美味しいのじゃ。」
祐希「お前は、黄門さまかい。」
千波「つうか、まじで何がお勧めなの。」
円山「いや、基本何でもおいしいよ。」
祐希「嘘つけ。お前、豚汁定食しか食ったことねえだろ。」
山下「そうそう、こいつ豚汁定食以外食ってるところ見たことねえし。」
千波「いや、なんか、おっさんの晩メシって感じだね。その豚汁定食。」
円山「いや、ここの豚汁定食は、ガチで美味いから。」
千波「なんか、量が多そうだよね。」
祐希「俺、ミックス・フライ定食。」
山下「また、揚げ物かい。昼もカツカレー食ってたじゃんか。」
祐希「揚げ物好きなんよ。ここさー、から揚げ定食も美味いんだよな。」
千波「私、何を頼んでも、食べきれないよ。」
祐希「心配すんな。男3人がついてるから。」
千波「まあね。私が残しても、あっという間に食べちゃうもんね、君たちは。」
円山「山下は何食うの。」
山下「俺ね。エビフライ定食。」
祐希「お前こそ、昼もエビフライ・カレー食ってたじゃんか。どんだけ、エビ好きなんだよ。」
千波「男の人って、揚げ物好きだよね。」
円山「俺は揚げ物よりも、豚汁のほうが好きだな。」
千波「私、何食べようかな。つうか、そうだ、私運転しないから、飲んでもいい。」
祐希「うわ、まじか。俺も飲みてえのに。」
山下「じゃあ、俺も飲んじゃお。」
円山「お前、まじか。信じられねえよ。」
祐希「うわ、これだよ。こいつら、ほんと信じられん。」
千波「山ちゃん、ビールでいく。」
山下「生の大ジョッキいきますか。」
千波「おお、いいねー、若者は。よし、生の大2ついくか。」
祐希「まじで、信じられん。」
千波「だめよー、飲酒運転は。お巡りさんにつかまっちゃいますよー。」
円山「うわ、沢田さん、性格わるっ。」
千波「なんとでも言えば。私はビールが飲みたいの。飲みたいの。飲みたいのーっ。」
祐希「うわ、始まった。千波のいつものやつだ。」
千波は、言い出すとまったく聞く耳を持たないところがあり、そんな彼女の性格がはっきりと出てしまっていた。祐希としては、まあいつものことなので、特に何とも思わなかった。千波のビール好きはいつものことだったし、一緒に車で食事に行って彼女だけお酒を飲むということは、これまでもたびたびあったことだった。
結局、千波はビールと、ビールのつまみになるようなものを頼むことにしたようだった。
千波「すいませーん。生の大2つ。それとね、枝豆でしょ。焼き鳥5種盛り合わせ、それと、あ、これ美味しそう。この、ぶり大根お願いします。」
全員、それぞれ食事を頼んだ。山下は普通にエビフライ定食を頼んでいたし、円山は豚汁定食を当たり前のように頼んでいた。まずは、生ビールの大ジョッキ2つと枝豆が運ばれてきた。千波と山下は、祐希と円山の目の前で、勢いよく乾杯をしていた。
円山「まったくよー。俺だって飲みてえよ。」
山下「おまえ、酒弱いじゃんか。この中では、俺と沢田さんが一番酒強いから、これは順当なんだよ。」
祐希「いやいや、それってどういう理屈だよ。」
千波「ところでさ、祐希と山ちゃんってさ、同じ部屋に住んでるんでしょ。」
祐希「そうだよ。なんで。」
千波「いや、仲いいよね。ケンカとかしないの。」
山下「ケンカはしたことないな。」
祐希「だってさ、俺たち、愛し合っているから。」
千波「なにー、それー。気持ち悪いんだけど。」
山下「そうそう、俺たち、激しく愛し合っているから。そんな、ケンカなんかしねえし。」
円山「それでかー、毎晩おまえらの部屋から、怪しいうなり声が聞こえてくんだよな。」
祐希「そうそう、毎晩、激しいんだよ。」
千波「いやー、もー、本当に気持ち悪いんだけど。」
祐希「もう、毎晩、後ろから羽交い絞めされてさ。バッコン、バッコンだぜ。」
山下「そうそう、毎晩、プレーしてるもん。」
千波「いやー、想像しただけで、おぞましい。もう、山ちゃん、私の彼氏になんてことを。」
祐希「円山も仲間に入るか。今度、三人で、トリプル・プレーとか、どう。」
山下「円山、ウェルカム・トゥー・ザ・クラブ。」
千波「プレーって言うな、アホー。しかも、なんのクラブじゃ。」
山下「だって、僕たち、おホモ達ですから。おホモ達クラブです。」
祐希「もはや、俺なんか、ガバガバだし。」
山下「だって、祐希なんか遊びすぎで、乳首真っ黒だもん。」
千波「もー、いやー、もー、最悪じゃん。」
円山「もはや、俺たちはサラリーマンじゃなくて、ホモリーマンか。」
祐希「そうそう、ホモリーマン。しかも、エリート・ホモリーマン。」
山下「まあ、ホモ・サピエンスの、ホモとはそういうことなんだよ。」
円山「深いねー、山下は。」
千波「もう、まじでやめて。せっかくのビールがまずくなる。もう、このメンバー最悪なんだけど。」
その後、千波は生ビールの大ジョッキを連続で7杯も飲んだ。山下も、それに付き合って、7杯飲んだ。しかも、この二人は飲めない祐希と円山に何の遠慮もなく、グビグビと美味そうにビールを飲んでいた。祐希だったら、せいぜい飲めても2杯が限界だろうと思った。それにしても、千波のビール好きはすさまじい。あの小さな体のどこにビールがおさまるのか、不思議である。竹内の日本酒1升もすごいが、千波の大ジョッキ連続飲みもすさまじかった。その後、来た時と同じで、車2台で寮に戻ることにした。千波は実家に帰ろうと思っていたらしいが、そのまま一緒に寮に戻ることにした。帰りの車の助手席で、千波はすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。祐希は、千波の寝顔を見て、本当にかわいいと思った。ほのかに赤くなった千波の顔がたまらなくかわいく思えた。千波の体に、祐希の上着をそっとかけてやった。千波は、いったい、どんな夢を見ているのだろうか。




