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第32章 福田と北見

 福田と北見の壮絶な闘いが終わり、祐希の周りはつかの間の平和を享受していた。もう、しばらくは週末にあのようなアホなイベントに付き合わされることもないだろうと高をくくっていた。たしかに、その後、北見もしくは福田から、再戦の声はあがらなかった。それは、祐希のみならず、滝田にとっても慶賀すべきことであった。そして、あの闘いから数日が過ぎたある日、祐希はまたもや北見から声をかけられた。それは、普通の平和な平日の、少し眠くなるような午後のオフィスでの出来事だった。


 北見「おい、祐希。」


 北見は小声で祐希に話しかけてきた。


 祐希「どうしました、北見さん。」


 北見「あのさ実はさ、すっごい気になっていることがあるんだよ。」


 祐希は再び、嫌な予感がした。どうせ、北見はその気になっていることを、祐希に確認してこいと言うつもりなのだろうと思えた。いつものことである。


 祐希「嫌ですよ。どうせまた、しょうもないことに俺を付き合わせようとしているでしょ。」


 祐希は、露骨に嫌な顔をしてみせた。


 北見「いや、多分、俺の話を聞いたら、お前も興味を持つはずだぜ。どうだ、知りたいか。」


 祐希「いや、全然知りたくないです。」


 北見「まあ、一回俺の話を聞けよ。今度はおまえに無茶ぶりすることはねえからよ。」


 祐希は、話を聞くと、またろくでもないことに巻き込まれそうだと思い、彼の話は聞きたくなかった。


 祐希「北見さん、仕事中ですよ。また、課長にどやされますよ。」


 祐希はちらりと富永のほうを見た。富永は怪訝そうな顔をして、こちらを見ていた。その後、祐希は資料を届けるために、別の部署へ行くため、一旦会話はそこで終わった。


 その日の仕事が終わり、祐希は午後8時ごろには帰宅の準備をしだした。ちょうど北見も寮に戻るところだった。北見は、祐希に一杯飲みに行こうと誘った。


 祐希「一杯だけですよ。」


 北見「まあ、いいじゃねえか。」


 北見の行きつけの、小澤さんの店に行った。平日だというのに、店は結構混んでおり、二人はカウンター席に座った。


 北見「とりあえず、ビールふたつだよな。」


 祐希「ええ、ビールでいいです。」


 北見は生ビールの大ジョッキを二つ頼んだ。その後、メニューを見ながら、適当に何品かのつまみを頼んでいた。


 北見「まあ、だいたいお前の食うものって決まっているもんな。」


 祐希「まあ、確かにそうですね。」


 そのうちビールが運ばれてきて、二人は乾杯をした。


 北見「やっぱよー、この一口目のビールはたまんねえよな。」


 祐希は、北見が何を話し出すのかを早く知りたかった。


 祐希「で、昼の話の続きなんじゃないですか。」


 北見「そうそう、あのさ、俺、先日福田さんを長野市内で見かけたんだよ。」


 祐希「買い物でも行ってたんでしょう。福田さんだって、普通に生活しているわけだし。」


 北見「でさ、初めて福田さんのジーンズ姿を見たわけよ。」


 祐希には北見が何を言いたいのか、さっぱりわからなかった。その後、北見は祐希の耳元で小声で、その時見たものを説明した。


 祐希「え、それ本当ですか。」


 北見「いや、間違いないって。いや、あれはびっくりだったぜ。」


 祐希「いや、まさかそんなことが。」


 祐希はあまりの驚きに絶句してしまった。


 北見「でさ、俺的には、もう一度この目で確認したいわけよ。わかる。」


 祐希「確かに、それは俺も見てみたいですね。いやー、それは驚きですよ。」


 北見「そうだろ。いやー、俺も自分の目を疑ったよ。」


 祐希「でも、それは休日しか見られないじゃないですか。しかも、福田さんが外出した時しかチャンスはないですよ。」


 どうやら、祐希は北見の提案に乗るようだった。


 祐希「山下と、円山も誘っていいですか。いや、多分、それだったら滝田さんも来るんじゃないですか。」


 北見「俺さ、もし撮れたら、写真撮りたいんだよね。」


 祐希「いやいや、それは悪趣味でしょ。」


 北見「いや、でもこんなのこの先、一生見られねえぞ。」


 祐希「確かにそうかもですね。でも、その写真って、魔除けとかに使えるんじゃないですか。」


 北見「そうだよな。その写真があれば、悪霊も退散かもな。」


 そう言うと、北見は嬉しそうに笑った。そして、その週末の日曜日に、福田を朝から張り込むことになった。祐希は寮に戻り、山下と円山にそのことを話してみた。


 山下「おまえ、それは悪趣味だけど。いや、でも俺も見てみたい気はするな。行こうかな。」


 円山「そんなのありえねえよ。北見さんは話が大袈裟なんだよ。でも、それが事実だとしたら、ちょっと見逃せねえな。俺も、行こうかな。」


 祐希「それじゃ、日曜日は朝から福田邸に張り込むぞ。」


 あっという間に、週末がやってきた。土曜日はいつものように千波と過ごしたが、日曜日は北見に付き合って、福田のアパートに張り込みをすることになった。山下と円山が参加したが、滝田は東京に帰省してしまい、不参加だった。なぜか、全員が身元がばれないようにサングラスを着用していた。


 北見「おい見ろ、福田さんが出てきたぞ。」


 福田は普通に下はジーンズ、上は半袖のアロハシャツでアパートから出てきた。


 北見「あのシャツで見えねえな。」


 祐希「でも、ちゃんとジーンズ履いてますから、チャンスはありますよ。」


 山下「どこ行くんですかね。」


 福田は通りに出ると、徒歩でどこかに行こうとしていた。どうやら、方向から推測するに、近くのコンビニに行くようであった。4人は福田にばれないように、後をつけた。


 北見「コンビニに行くみたいだな。」


 円山「全然、バレている感じがしないですね。しかし、福田さんほど警戒感の無い人も珍しいですよ。」


 山下「やっぱり、コンビニに入りましたよ。」


 祐希「なんか、雑誌コーナーで立ち読みしてますよ。」


 北見「あの位置からして、間違いなく大人の雑誌コーナーだな。しばらく様子を見よう。」


 外から遠巻きに見る福田は、コンビニの雑誌コーナーで、エロ雑誌の品定めをしているようだった。相変わらず、好き者である。おおよそ、10分程度コンビニに居座ったあと福田が動いた。


 山下「容疑者が動きました。」


 いつの間にか、福田は容疑者呼ばわりされていた。


 北見「お前ら絶対に目を離すな。俺はカメラに集中する。」


 そう言うと、北見は物陰に隠れて、コンビニの出入り口に向けてカメラを構えた。どこから持ってきたのか、望遠レンズを備えた一眼レフだった。そして、福田が何も知らずに、コンビニの外に出てきた。その時だった、ちょっと強めの風が吹いた。そして、福田のアロハシャツの裾の部分が風で上にめくれ上がった。それと同時に、全員の目線が福田の股間に注がれた。祐希は、そこで初めて北見が言っていたことが本当のことだと理解した。北見は、この瞬間を逃さずに福田の股間を目掛けてシャッターを切った。


 祐希「北見さん、本当だったんですね。」


 北見「だから、言っただろう。」


 福田はジーンズを履いていたが、その股間の部分が、左横チ〇の形そのままの形で、擦り切れて、色落ちしていた。しかも、頭の部分もクッキリとその形のままで色落ちしていた。頭の一番太い箇所の生地なんか、少し擦り切れて、糸のほつれが見られたくらいである。


 山下「いや、本当だわ。左横チ〇の形でくっきりと色落ちしてる。しかも、太てえなぁー、このブツ。」


 円山「見事なキノコ形の色落ちじゃねえか。いやしかし、このブツでけえな、おっさん、まじで。」


 北見は見事撮影に成功したようだった。生ける伝説を写真に収めた瞬間だった。それでも、福田はまったく気が付かず、そのまま歩き去った。ジーンズの前の部分がはちきれんばかりの盛り上がりだったが、それは左横にいびつに偏っていた。


 山下「いや、あれは膝よりも擦り切れて色落ちしていたぜ。」


 円山「あかん、俺まじで寒気してきたわ。」


 祐希「いや、あれは魔除けにもなるって。」


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