表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/61

第24章 過去生占い

 このところ、長野市ではよく当たると言われている占い師がよく話題にあがっていた。聞くところによると、その占い師はその人の過去世を占い、今世へのアドバイスをするというものだった。祐希のような男から見たら、なんか胡散臭い感じがするのだが、なぜか女性という生き物は占いとかそういうものが好きらしい。


 その日も、いつも通り昼休みは大食堂で、相変わらず絶好調にまずい昼の定食を食べながら、山下と円山と話をしていた。


 円山「なんか、長野市内に過去世を占ってくれる占い師がいて、かなり当たるんだって。」


 祐希「俺、そんなの全然信じねえよ。めっちゃ、胡散臭そうじゃんか。」


 山下「誰か行った人いるのか。」


 円山「佐野ちゃんと遠藤さんが行ってきたらしい。」


 祐希「で、どうだったの、占い結果は。」


 円山「いや、その占いそのものについては口外しないでくださいって言われたらしくて、あまり具体的なことは聞けなかった。」


 山下「ほら、もうその時点で胡散臭いじゃんか。」


 祐希「でも、占い結果については何か聞けたのか。」


 円山「なんか、当たってるとは言っていたけど、そこもあんまり詳しく教えてくれないんだよね。」


 山下「まあ、要するに誰にでも当てはまるようなこと適当に言ってるんだろ。」


 祐希「あ、そうだ。ところで、山下、こないだの土曜日に城山公園にいなかったか。」


 山下「え、おまえいたの。」


 山下は少し驚いたような様子だった。


 円山「え、城山公園がどうしたの。」


 祐希「もういいじゃんか、山下、言えよ。」


 山下「いやね、ちょっと野口さんとお食事とお花見に行ってた。」


 円山「まじで、山下、すげえじゃんか。」


 山下は少し照れ臭そうだった。


 山下「いや、まだ交際しているところまではいってないけどな。」


 祐希「おう、頑張れよ。円があそこまで頑張ってくれたんだからよ。」


 円山「そうだよ、山下。あの後も、俺はおまえのこと必死にフォローしたんだぜ。」


 山下「ありがとう。もうね、野口さんも気にしていないからって言ってくれてさ。」


 祐希「千波も野口さんのこと、きれな人だねって言っていたぜ。」


 山下「そっか、沢田さんにも見られていたのか。まあ、あんなところにお前が一人で行くわけないもんな。」


 どうやら、山下と野口の距離は少しずつであるが縮まってきているようである。祐希と円山としては、かなり苦労してあの食事会をセッティングしたため、なんか少し苦労が報われたような気がした。


 円山「いや、でもさ。これって、雨降って地固まるってやつだよな。」


 祐希「いや、なんか少し違うような気がするけど。」


 円山「いや、どっちにしろ、いい方向に行っているってことだろ。山下、おまえ頑張れよ。」


 ---------------------------------------


 水曜日の定時退社日に久しぶりに、男3人で飲みに出かけた。先日、鶏唐揚げ食べ放題チャレンジをやった店に行ってみた。すでに、食べ放題チャレンジは終わっており、店のアルバイトの女の子の話だと、それをクリアできたのは、結局4人だけだったらしい。そのうち、3人があの女子3人グループだったそうである。


 店に入ると、佐藤と田丸が二人で飲んでいた。佐藤は祐希を見つけると、すぐに声をかけてきた。


 佐藤「祐ちゃん、こっちこっち。」


 祐希「あれ、佐藤じゃん。」


 佐藤「こないだの食べ放題の時、彼女さんいたでしょ。声かけづらくてさ。」


 山下「あ、佐藤さん、以前会いましたよね。あっと、どこだっけかな。」


 佐藤「山下さんですよね。祐ちゃんと同棲している。」


 田丸「橘君、山下さん、どうもご無沙汰ですね。」


 山下は以前、祐希と一緒に佐藤と田丸と飲んだことがるため、面識があったが、円山と会うのは初めてだった。祐希は、二人に円山を紹介した。


 円山「どうせだから、5人で飲みませんか。」


 佐藤「うちらは全然オッケーです。大勢のほうが楽しいですし。」


 佐藤と田丸は席を移って、祐希たちのテーブルに移動してきた。その後、3人分の飲み物を頼んで、5人で乾杯した。


 祐希「でさ、田丸って小林と続いてるの。」


 田丸「まあ、すこぶる順調ってわけじゃないけど、一応ね。」


 祐希「あいつら、地元の連れとばっかりつるんでるからさ、あんまり飲みにいったりしないんだよね。」


 佐藤「まあ、どうしてもそうなっちゃうわよね。私たちも結構そうなっちゃうしね。」


 山下「そっか、田丸さんは小林の彼女さんなんだ。」


 円山「なんか、みんな彼女いるし。俺だけ一人って感じだよな。」


 佐藤「私も一人ですよ。彼氏が欲しいんですけど、なかなか祐ちゃんがフリーになってくれなくて。」


 山下「佐藤さん、それは諦めたほうがいいですよ。」


 佐藤「冗談ですって、もう、山ちゃん。」


 そのうち、いつものようにジョッキのビールが運ばれてきたので、全員で乾杯をした。


 祐希「そういえばさ、長野市にすっげー当たる占い師がいるって本当なの。」


 祐希は、佐藤と田丸に聞いてみた。女性はそういう話題が好きなのだろうと思ったからだった。


 佐藤「あのね、今度見てもらいに行くのよ。」


 田丸「一応、今度の日曜日に一人分だけ予約が取れたの。」


 円山「そうなんですか。すごい、予約とるのが難しいって聞きましたけど。」


 佐藤「そうなんですよ。でも、なんとか知人の知人の知人のツテみたいな感じで、ようやく一人だけ。」


 田丸「でも、その占いの先生って結構難しい人で。」


 山下「難しいって、どういうことですか。」


 佐藤「その当日行くじゃないですか、その時に占う人の性別を決めるらしいんです。」


 祐希「え、どういうこと。よくわからないな。」


 田丸「もし、私たちが当日行くじゃないですか、そこでその占い師がこの時間は男性しか占えないってなると、私たちは占ってもらえないんですよ。」


 山下「それは、男性しか占えない時間には、女性は占えないってことですか。」


 佐藤「そうそう、そういうこと、山ちゃん、頭いい。」


 もうすっかり、佐藤は山下のことを、山ちゃんと呼ぶようになっていた。佐藤は、基本的に男性を呼ぶときは、〇〇ちゃんになってしまうのである。


 円山「じゃあ、カップルで行けばいいってことだよね。そしたら、どちらかが占ってもらえる。」


 田丸「そうなんですよ。だから、あそこはカップルで行く人が多くて。」


 祐希「小林連れて行けばいいじゃないですか。」


 田丸「彼、今週から1か月間くらい大阪に出張みたいなんで。」


 佐藤「祐ちゃん来てよ。」


 祐希「え、俺が。俺は占いとか興味ないし。」


 円山「いや、俺も興味ねえな。」


 祐希「じゃあ、山下、行ってやれば。」


 ということで、話の流れ上、山下が佐藤と田丸の占いに付き合うことになった。しかも、山下はそれほど佐藤と田丸と深い付き合いでもないということで、祐希まで巻き込まれることになった。


 ---------------------------------------


 その週の週末の日曜日に、祐希は山下を車に乗せて、長野市中心街に向かった。街中の喫茶店で、佐藤と田丸と待ち合わせをしていた。


 祐希「まあ、できれば占いは、女性にして欲しいよな。」


 山下「まあ、俺らそんなことにあんまり興味ねえし。」


 佐藤「でもさ、占い師さん次第だもんね。」


 田丸「そうそう、それって行ってみないとわからないしね。」


 祐希「しかし、面倒臭いシステムだね。」


 その予約の時間に近くなってきたので、4人は店を出て、歩いて占い師のいる雑居ビルに向かった。


 祐希「で、佐藤と田丸さんのどっちを占ってもらうわけ。」


 佐藤「今日は私のほうを占ってもらって、田丸さんは次回予約を取って来ようってことにしてるの。」


 田丸「なかなか、2人分の予約は難しいみたいだもん。」


 佐藤「もし、男って言われたらどうするの。」


 祐希「そりゃ、山下だよ。俺はそんなの興味ねえし。」


 佐藤「でも、祐ちゃんの過去世とか知りたいけどね。過去世では実は私とラブラブだったとか。」


 山下「で、なんで俺なんだよ。俺も別に興味ねえし。」


 祐希「いいじゃん。だって、お前は恋愛で今大事な局面なんだぜ。なんか、アドバイスもらえそうじゃんか。」


 山下「まあ、そういうことね。」


 佐藤「え、なになに。山ちゃん、女できたの。」


 祐希「そう、それがさ、こいつには全然釣り合ってねーような、すっげーきれいな人なんだよ。」


 田丸「いや、誰だろ。そういうのって気になるよね。」


 山下「おいおい、勝手に何盛り上がっているんだよ。」


 占い師のいる雑居ビルの1室に到着し、中に入った。狭い待合室のようなところに通された。そのうち、佐藤の名前が呼ばれたので、4人でそそくさと占い師のところに行った。


 占い師は、50代の普通の見た目の女性だった。本当に、どこにでもいるような普通のおばさんで、近所の幼馴染のお母さんみたいな雰囲気を醸し出していた。最初に、彼女は占いの内容を簡単に説明してくれた。


 占い師「私の占いは、完全に占いというわけではなくて、あなたの意識をずーっと過去にさかのぼる手助けをいたします。あなたは、私がかける催眠術によって、時間をさかのぼり、生まれる前の時代に戻り、そしてさらにその前の前世の時代にまでさかのぼります。」


 祐希は聞いていても、なんだかよく意味がわからなかった。要するに、催眠術で過去の記憶を思い出すようなイメージなのだろうと思った。占い師は話を続けた。


 占い師「あなたの過去世を私にも見させていただくことにより、今世でもあなたのやるべきことを占います。私は占いをするにあたって、高次元の存在とつながり、その方からのメッセージを受け取り、あなたにお伝えします。」


 祐希にはさっぱりわからなかった。高次元ってなんだろうか。ふと、佐藤のほうを見ると、かなり真剣な顔をして話を聞いていた。田丸も、山下も真剣に聞いているようだった。


 占い師「さきほど、高次元の存在と交信をいたしましたが、本日のこの時間帯は男性の過去世のみ見ることができるとのことです。」


 佐藤は、少しがっくりときたような表情を浮かべた。佐藤はいろいろと苦労して、なんとか今日の予約までとったのに、よりによって知り合って間もない山下に占いを受けさせることになってしまったのである。


 祐希「女性は、ダメなんですか。」


 思わず、祐希が問いかけた。


 占い師「ええ、申し訳ございません。これは、私の意思ではありませんので。」


 佐藤「まあ、仕方ないよね。山ちゃんに受けてもらって、あとで感想聞こうか。」


 山下は、少し困惑したような表情をしていた。まさか、いきなり自分が催眠術を受けるなんて、想定外の出来事だったからである。なんだかんだ言いつつも、予約した女性のほうが占いを受けられると高をくくっていたのである。占い師は、その部屋に設置されていた、セミダブルくらいの大きさのベッドに横になるように、山下に指示をした。山下は、困惑しつつも、その指示にしたがった。


 占い師「それでは、ゆっくりと両目を閉じてください。私の問いかけには返答はしなくても結構です。もし、途中で気分が悪くなったら、どちらかの手をあげてください。もし、問題なければ、手をあげてください。」


 山下は、小さく右手を挙げた。


 占い師「結構です。手をおろしてください。まずは、今現在のあなたの生活を頭のなかに浮かべてください。」


 山下はぴくりとも動かず、ベッドのうえで横になっていた。


 占い師「それでは、10年前のあなたの普段の生活の様子を思い浮かべてください。」


 占い師は、5年刻みでさらに過去に戻って、その当時を思い出すように指示をした。そして、いよいよ0歳の時の記憶を呼び起こすように指示をした。祐希は、0歳の時の記憶なんかあるわけないじゃないかと思った。


 占い師「それじゃあ、あなたが生まれたその瞬間のことを思い出しましょう。明るーい部屋から、すぽっとお母さんの温かいお腹の中に戻って行きます。ほーら、だんだん暗くなってきました。でもお腹の中には温かい水があって、あなたはその中に浮かんでいます。」


 佐藤と田丸はその様子を真剣に見つめていた。祐希は、いま山下の頭のなかはどんな感じなのだろうかと思ったが、全く理解が追いつかなかった。いったい、このへんな儀式はなんなんだと思った。


 占い師「はい、それではお母さんのお腹の中に入る前の記憶にまでさかのぼりますよ。」


 占い師はそういうと、しばらく時間をおいて、山下の様子を見ていた。山下は両目を閉じたまま、じっとしていた。ただ、かすかに彼の呼吸の音だけが静かに響いていた。


 占い師「はい、暗ーい場所から、ほら一気に明るい場所に出ましたね。今のあなたには、何が見えますか。」


 占い師は、山下に問いかけた。しばらくすると、山下はゆっくりとその問いに答えようとしていた。


 山下「地球が見えます。」


 占い師「え、地球ですか。」


 しばらく間をおいて、占い師が再び問いかけた。


 占い師「どんなふうに地球が見えますか。」


 山下「えっと、宇宙から地球を見ています。丸くて、青い星です。地球です。」


 山下の返答がどうやら占い師の予想していた答えとかなり違っていたようだった。明らかに、占い師は動揺しているようだった。本当なら、中世の欧州の城が見えますとか、日本の江戸時代の長屋の様子が見えますというような答えを期待していたのかもしれない。


 占い師「あなたが生きている年は西暦で何年ですか。」


 山下「いや、西暦とかはわかりません。」


 占い師「あなたはどこの国の人ですか。」


 山下「私は宇宙人です。」


 明らかに、山下の発言は占い師の想定外だったようで、占い師が狼狽しているのは明らかだった。答えが宇宙人で、今世へのアドバイスといっても、なかなか難しいだろうと思った。祐希は、この占いがどこに着地するんだろうかと思い、成り行きを見守った。


 占い師「あなたの名前を教えてください。」


 山下「私の名前は、ウンコ・ブリブリーノ=オマンコスキー4世です。」


 占い師「・・・・・。」


 祐希は、ベッドに横になって、両目を閉じながら淡々と過去世の本名を語る山下を見て、涙ぐみそうになった。ウンコ・ブリブリーノって誰や、オマンコスキーって誰や、って心の中で思った。そんな名前、聞いたことないわって思った。占い師は明らかに混乱しているようだった。


 占い師「えっと、それじゃあ、元のお母さんのお腹に戻ってください。」


 占い師は山下に元の世界に戻るように促した。佐藤と田丸も必死に笑いをこらえているようだった。そして、占い師の合図で、山下は催眠が解かれたようだった。


 結局、今世の占いについては、高次元からのメッセージが下りてこなかったということで、特に占い結果についての話はなかった。見る限り、山下は自分が言ったことを何も覚えていないようで、なんか清々しい顔をしていた。


 山下が料金を払い、次回の佐藤のための予約を入れたが、3か月後とのことだった。とりあえず、4人で雑居ビルを出た。


 祐希「山下、お前さ、自分が話した内容覚えてる。」


 山下「いや、全然覚えてねえよ。で、俺の過去世ってどこの国の人だったの。それで、どんな人だったの。」


 佐藤「宇宙人。」


 田丸「そそ、宇宙人だって。」


 山下「え、俺って宇宙人だったの。」


 祐希「うん、それで名前がね、ウンコ・ブリブリーノ=オマンコスキー4世だってさ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ