第六幕:創作の中の森の幻視
ファウスト、再び幕開け! 第五幕の希望の灯火が消えた後、OWDの影が新たな少年を狙う。VRの森で、神話の獣と悪魔の微笑みが待つ――創作の夢は、幻視の罠か?
影はいつも残る。君の物語も、ここから。さあ、霧の奥へ。
やあ、君。
物語はまだ終わらない。
新しい幕が上がるたびに、登場人物は変わり、舞台も変わる。
だが――影だけはいつも残る。
ある少年がいた。
彼は、ただ夢を見たかった。
夜ごと、眠る前にノートPCをひらき、物語作成AIを起動する。
「素敵な小説を……夢のような物語を」
そうつぶやいて、文字を打ち込む。
物語作成AIのOWDによって、一時期騒がれていた。
彼を構築した設計者は、女流作家と失踪し街から去った。
親の年ほど離れた愛は、どうなるかわからない。
OWDはテキストから画像、動画からバーチャルへと表現の幅を変えた。
提供されるものが増えたんだ。
人々は好きな時、好きな分だけ、
知ることができるようになった。
まるで、夢のようだ。
でも、夢ほど質の変わりやすいものはない。ほんわかしたら、後ろからグサリッなんて良くある話。
少年の被ったVRグラスがサメの目のように虚空を見つめた。
画面の奥から、森がひろがる。
深い緑。濃い霧。
歩みを進めるほどに、森は彼を飲み込む。
豹が現れる。
瞳は鋭く、獲物を狙う。
獅子が吼える。
その声は、大地を揺らす。
狼が群れをなして迫る。
牙を剥き、少年を試すかのように。
彼は逃げようとするが、足は動かない。
言葉で作った森に、言葉で絡めとられる。
そのとき――
霧の奥から一人の紳士が現れる。
タキシードを纏い、金褐色の髪を撫でつけ、端正な顔を微笑ませている。
彼の笑みは優雅で、どこか救いのようでもあり、同時に奈落のようでもあった。
「ようこそ、少年。君の物語は、ここからだ」
その声を聞いた瞬間、森のすべてが哄笑に変わった。
豹も、獅子も、狼も、
木々も、風も、影までも。
少年の耳に響くその笑いが、救いなのか、破滅なのか。
答えは与えられない。
――ただ、幕は閉じる。
(第六幕・了)
第六幕、いかがでしたか? 少年の純粋な夢が、VRの森で三獣とメフィストの哄笑に飲み込まれる瞬間――僕も、霧に絡めとられそうになりました。ファウストたちの失踪が、OWDの進化を呼ぶなんて、影の永遠性が怖い……。
救いか破滅か? この幻視、君の答えは? 次のシリーズで、少年の物語が動き出すかも。感想や「次はこうなる!」予想、コメントで聞かせて! お気に入り登録継続で、作者の糧に。影の連載、止まらないぜ!