09_山葵騒動1 佳澄・ジーン 8歳
ジーンと佳澄は寝るとお互い切り替わります。
「生山葵について知りたい?」
朝食の場で佳澄からの問いに両親は首を傾げた。
「うん、昔は育てていたらしいんだけど大災害でそこら辺の知識が燃えちゃって残ってないんだって。」
「生えていた場所は残っているの?」
「あるって、でも山葵は見当たらないって。」
「そう」
そう言って二人は考え込む。
「向こうで蕎麦とお刺身やお寿司を復活させたいんだけど山葵が無いと締まらないから教えて欲しいって。」
暫く考え込んだ両親は、顔を上げた。
「日帰りできるところに山葵農園があったからそこに週末行ってみよう。」
その言葉にやったと声を上げる佳澄。
昨年山葵デビューをして刺身に寿司に蕎麦にと山葵を入れて楽しんでいる。
寛も山葵有派、それに対し甘党で辛いものが苦手な悟はえーと顔を顰めた。
「そうじゃないものもあるから大丈夫だよ。」
そう言って両親は悟は宥めている。
「そう言えば・・・ジーンって山葵苦手じゃなかった?」
夢での反応を思い出した寛に佳澄は悪い顔をする。
「後で悟と一緒に甘い物食べるから大丈夫でしょ。」
「やっと着いた。」
ジーンはガイと一緒に装甲車でトライオッドにやってきた。
車から出て体を延ばす。
同行しているムードやレノンも屈伸して体を解している。
「便利だけど狭い・・・」
ガイが装甲車を収納に仕舞い、やってきたレイや祖父母と挨拶を交わしている。
「お久しぶりです。こいつが昨年引き取ったジーン。」
そう言って3人の前にジーンを引き合わせた。
トライオッドは元々城壁が無い街だったが復興後の今は簡易な塀で囲われている。
正門の横には門番が居て入場者の身元を確認していた。
正門を抜けると大きな石碑が出迎える。
「これって・・・」
「ああ、街の崩壊時の被災者リストだ。」
手前には崩壊の原因となったマーデ貴族の暴挙が記されている。
「この街の崩壊って人災だったんだ。」
「ああ、街を破壊し、火災を齎したのは魔王でもモンスターでもない。
人命救助など何だのと言って勝手にやってきたマーデ貴族が森に入ってモンスター達を怒らせた。
それらに追われて街に逃げ込み、そいつらの攻撃が街を破壊し、市民を殺した。」
「で、最終的にはモンスター達に殺された?」
「いや、自滅だよ。自分達の攻撃で破壊された建物の下敷きになって死んだ。」
ガイの祖父母はその様子を実際に見ている。
「モンスター達は街にも市民にも手を出していない。
破壊したのはマーデの連中なのに損害賠償も払わないし逆にこちらを非難してきたのでな。
それで謝罪と賠償が終わるまでマーデ市民の入場は認めない。」
やってきた連中の態度は相当悪かったらしい。
美食の街として再興しつつある街にマーデ出身の巡礼者は入れないことで不満が出ているが石碑を見せて黙らせているとのこと。
ヤーレでもマーデ市民の入場にはかなり厳しい条件が付いている。
ジーン達はレイの案内で入った食堂で名物を箸で食べる。
「珍しい。箸はここ以外では殆ど使われていない筈だが。」
シル・ヤーレでも食事はフォークとスプーンだ。
出てきたのは川魚の塩焼きに出し巻き卵、山菜の佃煮にご飯とみそ汁、漬物の和定食だ。
器用に箸を使うジーンにレイが目を細める。
4人はレイの家に泊まる予定だ。
玄関で靴を脱ぐのはトライオッドでは一般的でシル・ヤーレも同じ。
畳の部屋があるのもトライオッドだけで流石にシル・ヤーレにはない。
家の作りにジーンが驚かないことに。
「彼の夢見は信用できそうだね。」
と笑った。
案内された部屋で畳の上に布団を引く。
「今夜、向こうでは山葵農園に行くんだ。」
「そうか・・・お前大丈夫か?」
「何が?」
「山葵って辛いんだろ。苦手じゃなかったか?」
「・・・多分・・・」
そう言ってジーンは布団に潜り込んだ。
閲覧、有難うございます。
この時期のジーンは甘党。
日常甘味を食べる機会が少ないので甘いものに飢えてます。
対する佳澄は辛党、寛もどっちかというと辛いものが好き。
悟は甘党で旧作(第7部予定)の頃も甘党です。
※ジーンはその頃には佳澄と同じく辛党というか酒のつまみ系(乾きもの)が好き。
ジーンは自分が食べることが出来ない甘味を佳澄が食べないのが不満でした。
それを察した佳澄は仕方なく悟と一緒に甘いものを少し食べるようにしています。




