08_茸栽培
「宅急便です。」
その日、深山家に届いた段ボール箱には茸の絵が一杯描かれている。
寛、佳澄、悟の3人は箱を居間に運び、取り囲んだ。
「茸、可愛いね。」
悟の言葉にそうだねと頷く佳澄に寛は伝票を読み上げる。
「椎茸の栽培キット?」
届け先の名前は母。
「母さん、また変なことを・・・」
少し前に自家製味噌のキットが届いたばかりである。
佳澄は発行中の味噌がある方に視線を向けた。
開ける?という視線で問い掛ける悟に寛は首を横に振った。
「受取人は母さんだし、帰ってくるのを待とう。」
夜、箱を開け菌床を洗い、居間の一角に栽培キットを置いた。
「夏休みだったら自由研究に使えたのに。」
今は9月の終わり、ぼやく佳澄に父は言う。
「茸は暑さに弱いんだ。美味しいものを食べたいだろう。」
その言葉に素直に頷く佳澄。
美味しいは正義である。
「早く椎茸が出来ると良いね。」
嬉しそうにキットを眺める悟の手には段ボール箱。
早速お絵描き帳と化している。
「来年の自由研究に使えるよう観察日記でも付けるか。」
「そうだね。」
翌日の放課後、佳澄は寛と一緒に図書室に行った。
深山家のパソコンは両親の物、父母のどちらかが傍にいない時には使うことはできない。
寛が中学生になったらパソコンを買ってもらえることになっている。
それまでは調べ物はもっぱら図書館か図書室だった。
二人の通う小学校は近くに農家もあるので農業関係の本も多く置いてある。
毎年、5月になると3年生が校庭の一角でサツマイモを植え、先日掘り出して給食にサツマイモが出てきた。
来年は佳澄の番で楽しみにしている。
自由研究用の本がまとまっているコーナーに行ってゴソゴソと探すと幾つか見つかった。
「あ、これだ。」
ふむふむと読む。
農場で使うのは届いたおかくずを固めたものの他に丸太に穴を開けて菌を埋めこむ方法がある。
このやり方の方が野生に近いのだろう。
暑さ・寒さに弱いので風通し良いところに屋根で日差しを遮って育てるか、洞窟の中で育てる。
「今度、丸太の方も頼んでみようか?」
そう言って二人は図書室を後にした。
その後、シル・ヤーレでキノコ栽培が始まったのは言うまでもない。
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