03_お使い 佳澄・ジーン6歳
幼稚園の帰り道、佳澄は母と一緒に歩いて通り道のスーパーではなく少し離れた商店街に行く。
この商店街はスーパー程品揃えは良くないが色々とお得な商品が多い。
中には外れもあるが偶に大当たりも紛れている。
「佳澄、これどうかしら?」
母は肉屋の特売豚の小間切れを指す。
それに対して佳澄は首を横に振り、
「今日の一番のお得はこっちの合挽。」
とその斜め下の商品を指した。
「あらこっちなの?」
「うん、こっちの方が割引率が高い。」
バレたかと店主は笑っている。
「そう、じゃ今夜はハンバーグにしようかしら。」
そう言って量を指定して買い物を済ませた。
佳澄は何度も通ったこの商店街の大半の商品の定価を覚えている。
なので売値と定価の割引率を瞬時に計算してお得な商品を探すのが佳澄の楽しみだった。
商店街の店主達もそれを知っていて佳澄が一番のお得商品を見つけ出せるかどうかの勝負をしている。
先程の合挽は特売の小間切れより単価は少し高い。
なのでそこまで気にしていない客は特売の小間切れを買っていた。
値段を考えればそっちの方が良いのだろう。
育ち盛りの子供が3人いる深山家は食費は押さえたいが安いだけのものは買いたくない。
なので少々高くてもお得な商品で美味しいものを食べさせることに注力していた。
最後に通り道のスーパーで特価のチーズを買い、今日の夕飯はチーズ入りのハンバーグとなった。
好物がメインになって佳澄は鼻歌を歌いながら家路についた。
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通りかかった小さな村の雑貨屋でジーンは香辛料の類を買っていた。
「ほい、お釣りだよ。」
商品とお釣りを渡されたジーンは小銭を数枚、店主に戻そうとする。
「多いよ。お返しするね。」
「おやそうかい?」
そう言って店主はジーンの買った品を確認した。
「確かにそうだね。それはお駄賃だ。」
そう言って向かいの屋台を指す。
「あそこのお芋は美味しいぞ。お父さんお母さんには内緒だよ。」
気のいい店主はちょっと悪い顔でジーンに返されたお釣りを戻す。
そうやって出ていたジーンの後ろ姿を見ながら店主は呟いた。
「あの年でここまで計算できるなんてしっかりした子だね。」
佳澄が算盤を覚えたことでジーンは立ち寄った村でお使いに出る頻度が増えた。
両親は交渉の必要のない買い物はジーンに任せ、交渉や情報収集に専念している。
「ふーん、前と塩の値段が上がっているね。」
「やはり内陸だからかな。」
「それよりも乾燥ハーブの種類が多いから塩を使う量が少ないのかもしれない。」
父親は手に入れたハーブを肉に塗して焚火に翳していた。
横で母がスープを煮込んでいる。
今日のメインは先程仕留めた兎だ。
焚火を囲んで夕飯が始まる。
「そう言えば昨日は何を食べたんだい。」
父が夢の話を聞いてきた。
「チーズ入りハンバーグ。デミグラスソースというのが掛かっていて美味しかった。」
「そう、昔トライオッドで食べたことがあったな。」
今はもうない美食の都、トライオッド。
少し前から復興が始まっているがまだまだ美食の街とは言い難い。
「その内食べられるようになるかな。」
「そうだね。今ならアレストリアなら食べられるかな。」
現在、ハーレン大陸で美食の街というと海辺の町、アレストリアになる。
トライオッドの料理人の大半は、アレストリアに行ったのでかってのトライオッドの名物をアレストリアでは結構食べることが出来る。
「今度、アレストリアに行ってみようか。」
父の言葉に家族は頷いた。
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