断章01_とある料理屋の一幕
「いらっしゃい、何にします?」
大将の声に痩せた男はカウンターの開いた席に腰掛けた。
「お任せで。」
「あいよ。何か希望はあるかい。」
「そうだね。何か温まるものを。」
「あいよ。」
来訪者の営む三匹の子豚亭が開店してから3年、常連客も増えてきた。
なんてことのない村はこの店に来るためだけの客が増え、宿屋も作られた。
彼等の望む野菜を作る畑も周囲に出来て賑わいが増している。
カウンターに座る男は同じ来訪者ということもあり、開店直後からちょくちょくアナ・ハルナから山を越えてやってくる。
頻繁にやってくるものだからついにこの村に家を建て、その家は弟子が管理している。
やってくると1週間程滞在してアナ・ハルナに戻り、一月ほどするとまたやってくる。
そんな暮らしを続けていた。
「はいよ、御通しは鳥と大根の煮付けだ。」
そう言って煮物の入った小鉢と熱燗を置く。
「ほい、湯豆腐に温野菜のサラダだよ。」
車に積んであった玄米や大豆、その他野菜などから種を生み出し、収穫できるようにしたのはカウンターに座る男だ。
お陰で大将の故郷の料理が少しずつこちらでも食べられるようになっていた。
カウンターの男は器用に箸を使い料理を口に運びおちょこで酒を飲む。
「これは・・・」
湯豆腐をたれに付けて口に運んだ男が驚きの声を上げる。
「わかります?やっと複製じゃない醤油が出来たんですよ。」
今までは大将達の持つ複製スキルを使って何とか再現していた調味料の類を目の前の男の弟子が製造に成功したのた。
嬉しそうな大将の声に店に向かう時の弟子の顔を思い浮かべ、カウンターの男の顔をが綻んだ。
「帰ったら褒めないとな。」
「ええ、褒めてやってください。」
一通り料理を食べ、いつものつまみを肴におちょこを傾ける。
「これも再現できるようになるのは何時かな。」
米はやっと収穫できるようになった。
日本酒の再現は始まったばかりである。
とはいえ米や他の調味料が再現できてきたのでここで働く料理人達は自分の店を持つ算段を始めた。
既に二人程、近くで料理屋を開いている。
麺類と丼の店だ。
そちらの店も少しずつ客が増えている。
この二人は日々腕を磨き、お互いに競争しているのでそちらを目当てにする客も少なくない。
やがてこの村が街になる頃、名物の店に因み、3匹の子豚と名乗るようになる。
ハーレン大陸一の美食の街の始まりだった。
閲覧、有難うございます。
ワイズマンシステムを生み出したダリとトライオッドの3人組はほぼ同じ時期にやってきました。




