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シル・ストア~第0部 風の生まれるところ  作者:
第1章 始まり

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18/24

18_暗号化 ジーン、佳澄8歳

「最近、情報が洩れている?」

『ああ、ギルド本部や支部周辺でうろちょろしている奴が多くてな。』

カミラは画面の向こうでため息をついた。

使っているのはハーレン製の無線機。

レナ・カサル製ではないので取り締まる根拠がない。

やっていることはギルド内の食堂で朝から晩までいるだけ。

一応何かしら定期的に頼んでいるので断り辛い。

漏れてきた情報を拾ってマーデに送るだけだ。

食堂が混んでくると言われる前に食堂の外に出る。

そして空いてくるとまた食堂に居座るようになる。


『ギルド側もマーデの周辺や通信塔周辺で同じことをしているので文句を言いづらいしな。』

横方向に情報を飛ばすレナ・カサルに対し、ハーレンは通信衛星を使って縦方向にやりとりをする。

その為、秘匿性が高かったが流石に同じ建物内では微かに情報が洩れる。

まあ漏れるだけで改竄はされていないだけマシであったが。

マーデ側の通信網に割込みを掛けてジャミングしたり改竄したりということを偶にしているギルド側としてはそこを突かれると弱いのだ。

『なんか良い方法はないか?』

ガイは近くにいるジーンを見る。

「向こうに聞いてみます。」


深山家では朝食は基本家族揃って食べる。

その席で佳澄は情報漏洩対策にいい方法は無いかと聞いた。

「周波数とかを変えるというのは試しているのよね。」

佳澄は頷く。

「あと暗号化のパターンを変えると言うのもやっているんだけど少しすると解読されているみたい。」

何故分かるのか?

・・・それはギルド側もマーデ側の情報のやりとりを解析しているから・・・

音声や画像データは即時性が要求されるからともかくやり取りする文書やデータは何とか保護したいとのこと。

「前提条件として暗号化・複合化する仕組みはあるということで良いのかな。」

父の言葉に佳澄は頷いた。

「なら共通鍵暗号または公開鍵暗号が良いかもな。」

共通鍵暗号は情報を送る側受ける側が同じ鍵情報を使って暗号してやり取りする方法である。

公開鍵方式は暗号化するキーは公開し、復号するキーは秘匿するやり方だ。

「キーをランダムに大量に用意して都度変える様にすれば相当期間解析出来ないと思うぞ。」

「なるほど・・・」

その日の夜、父は入門書を買ってきて佳澄に渡した。

まずは読んでみろと渡された本を佳澄はその日の内に何とか全ページ目を通して布団に潜る。

内容は半分位しか理解できていない。

もう何度か繰り返し読む必要があるなとあくびを漏らした。


翌朝、ジーンは機械の上に手を置いた。

装置の向こう側でガイが合図をしてくるので、夢の内容を思い浮かべる。

一通り思い出すと手を離してガイの方に移動した。

パネルに表示された本の内容を確認するジーン。

「掠れや欠落は無さそうです。」

良しと頷いてはガイやゼンは内容の解読を始めた。

既に何度となくやっていることなのでシル・ストアの面々は日本語も英語も問題なく読める。

今回は入門書ということで図解付きなので分かりやすいと言える。

「これはミオに手伝わせた方が良いな。」

通信で送ると漏れる可能性が高いので媒体に保存して手渡しだ。

収納を使えるものにとって急ぎでないものはこれが一番確実である。

ガイは早速人選を始めた。


翌日の放課後、食卓で佳澄は貰った本をもう一度読み直していた。

それを眺めて寛が言う。

「僕も読みたいから読み終わったら回してね。」

「了解。」

暫くして佳澄は本を閉じ、寛に渡した。

軽く入門書のページをめくり、寛は佳澄に顔を向ける。

「向こうの人達、よく日本語が読めるね。

日本語ってこっちでも習得するのが難解な言語なのに。」

「ゼンさんの両親がトライオッドの人だからかなあ。

聞いた話では崩壊前の街には看板やメニューで日本語があちこちに書かれていたって話だから。」

「なるほどね。」


こうして準備された暗号化方式は半年後、何でも屋ギルド各支部に展開され運用が開始された。

1年後には他のギルドにも展開される。

こうしてハーレン側は情報闘争を優位に進めることが出来るようになった。

マーデ側も暗号化するようになったのでそちらからデータを取るのは難しくなったのは仕方のないことであったが・・・

閲覧、有難うございます。


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