14_灰色の大地
時期的にはジーンが引き取られた後の出来事です。
つい先日、父親であるゼンの引退に伴い、シル・ストアの代表となったガイは飛行船を乗り継いでゼ・ドナにやってきた。
「ここがギルド本部か・・・」
周囲に比べて一際大きく目立つ建物をガイは見上げた。
城塞を持たないゼ・ドナでは建物の上には青空が広がっている。
城塞や森に覆われたヤーレでは見られない光景だ。
ヤーレでこの様な青空を見ようと思ったら飛行船乗り場の展望台に行くしかない。
建物の周囲を見回すと街路樹が植わり花壇には花が咲いている。
この街の周辺は穏やかな緑に包まれている。
「ここがレナ・カサル。」
ここに来るまでの飛行船から見た光景を思い出し、ガイはため息をついた。
ヤーレから直通でゼ・ドナに行く飛行船は無いのでレナ・カサルの西端、デ・カサルに向かった。
ここまでの光景はハーレンで暮らすガイには見慣れた緑に覆われた大地である。
開けたところには畑や村があり、時々廃墟となった城塞都市が見える。
ハーレン大陸内の廃墟は人が住まなくなるとあっと言う間に緑に飲まれてしまう。
上空から見て廃墟と分かるのはところどころ建物の姿が見えるからだ。
デ・カサルで妻の実家に顔を出し、近況を交換する。
都市間の通信や手紙で話を聴いていたが実際に顔を合わせるのは久しぶりだ。
デ・カサルでも町中でキューブブロックを見掛けることは無くなった。
義父と二人で、外周区で食事をすることにして散策する。
食事時なのでレストランや屋台は美味そうな匂いを周囲に漂わせている。
港町なので海老や貝をコンロで焼いたり、近隣の野菜と魚介類を煮込んだ一品が多い。
「なかなか賑わってますね。」
「ええ、往時のトライオッドには負けるでしょうが。」
「あちらは肉がメインなので違うでしょう。」
内陸のトライオッドでは屋台の魚というと川魚の塩焼きとなる。
「近い内にトライオッドでも発着所が出来る予定です。」
「それは楽しみだ。」
南のアレストリアや海洋国と北のデ・カサルでは獲れる魚の種類が異なる。
義父の頭には新鮮な魚介類の出荷計画が練られているに違いない。
そんなデ・カサルの周辺はハーレン程ではないが林や森が広がる大地だった。
それが魔王襲撃で滅亡した廃都に近付くと状況が一変する。
草も木もない荒れ果てた灰色の大地が広がっている。
遠くに見えるデ・カサルの緑とは対照的だ。
廃都上空は安定しないということで航路は相当距離を取って運航している。
そんな飛行船の窓から遠くに廃墟の城壁が見えた。
廃都を過ぎると少しずつ緑が戻ってくる。
灰色の大地にところどころ低い灌木が植わっているのが見える。
かっては農村があったのではないかと思われる村の跡地を眺め、暫くすると畑らしきものが見えてくる。
人が住んでいるであろう村には緑が少なく乾いた印象を受ける。
少し離れたところに城塞都市が見えた。
城塞周辺に緑はなく、相当距離を置いて林が見える。
やがてマーデの城壁が見えてくる。
東西南北4つの都市の丸いドームとそれを囲う背の高い城壁、その中心にある巨大なドームはレア・マーデか?
そこだけは周囲から浮き上がって見えた。
遠くに飛行船とは異なるフォルムの物体が飛んでいる。
「あれが飛行艇か。」
飛行船より航行速度が速いとレナ・カサル自慢の機体。
だが、年々飛べるエリアが減っているらしい。
ヘルバードの襲撃で飛行艇によるデ・カサルとマーデの航路が無くなったのは10年以上前の話だ。
マーデが見えるようになると進路が南にずれる。
ここまで来ると下には森が広がるようになる。
見える畑も野菜が育ち人の気配が戻ってきた。
少ししてデ・カサルの発着所に着いた。
地上には数機の飛行船が見え、貨物が運び込まれている。
これもヤーレでは見られない光景だ。
ハーレンでは貨物は商人達が自身の収納に格納しているので飛行船には貨物室が殆どない。
その為、レナ・カサルの商人達は船でアレストリアを目指す。
入場手続きを済ませ、ゼ・ドナに入る。
ゼ・ドナでもトラムが走っているが急ぐ旅でもないのでのんびり歩く。
ギルド本部までは飛行船の発着所から一本道、迷う余地もない。
周囲を見ると鞄や荷物を持つ人が多い。
手ぶらで歩くガイは逆に目立っていた。
「手土産でも買うか。」
ギルドの近くには友人のクランの拠点がある。
用を済ませたらそちらを訪ねることにしようと近くの店に入った。
閲覧、有難うございます。
今まで描写していなかったレナ・カサルの様子
今回ガイが利用した航路は旧版第二章でジーンや佳澄が使ってます。
緑あふれるハーレンに対し、灰色のレナ・カサル
イメージとしてはスペインでマドリッドからバルセロナに列車で向かった時に見た光景。
※廃都周辺は除く。
ゼ・ドナでガイが会話しているのはケンやマーサの父親
この後、実権を息子のケンに譲っています。
結構な年ですが旧版の時でも元気の筈。




