第5話 戦争
戦争の準備が始まり、6日が経った。そう、今日こそが戦いの日である。できるだけのことはやった。58人が進化に挑戦し、成功したのは23人。つまりリュナと合わせて24人が進化状態にある。そのうち、15人が牙狼、9人が魔狼である。黒毛の牙狼は物理的な攻撃、白毛の魔狼は魔法を用いた攻撃をそれぞれ得意とするようだ。進化先はもともとの素質によって変わるっぽいが、詳しいことはわからない。
「ハァ…」
やれることはやったが、相手の兵力が分からない以上、不安はぬぐえない。その時、
カンカンカンカンッ
この音は…
「敵襲、敵襲っ!!!」
即席の見張り台から声が聞こえる。やはり来たか。
「相手の数は?」
「300人ほどだと思われますッ」
「よし、…出陣準備!!」
族長の一言で全員が配置につく。
作戦としては、牙狼が先頭となり出陣、魔狼はその後方から援護。一般のウルナ達は後方支援で、場合によっては出陣。ということになっている。人間は森での戦闘に慣れていないだろうという意見から、籠城ではなく、打って出ることになった。
「出陣だァ!!!」
族長の叫び声とともに、村人たちが雄叫びを上げ、走り出す。
(なんとか勝ってくれ!!)
戦争が始まってしまえば俺にできることは祈ることだけだ。が、存外、勝負はあっという間だった。牙狼、魔狼の活躍(特にリュナはすさまじかったらしい)により、王国兵は1時間もしないうちに壊滅状態。敵将一人が捕虜として投降したことで決着がついた。こちらの被害としては、軽傷を負ったものが3人いたくらいだ。
投降した敵将は尋問を受けることになった。まず兜をはぎ取る。と、美しい娘が現れた。
「なるほど、力を手に入れたために謀反を企てたというわけか。外道どもめ。これまで王国の庇護下にありながら、裏切るなど、恥ずかしくないのか」
…?おいおい、何を言っているんだこいつは?
「先に攻め込んできたのは、お前たちの方だろ…」
思わず口を出してしまった。もう引き下がれないな、これ。
「お前たちが、謀反の企てていたことはわかっている。先に裏切ったのはお前たちだ!」
本当に何を言っているんだ?族長も困り顔である。
「いや、ちょっと待て。謀反など言うが、誰からの情報なんだそれは?」
「国王様だ。国王様直属の偵察部隊が情報を得たのだ」
…なるほど。あの国王、攻め入る大義名分のためにウルナを謀反人に仕立てあげたのか。本当やってくれるな。
「お前の言う国王様とやらは嘘をついている。重税に苦しんでいたのは本当だが、ウルナ族に謀反の計画などなかった。」
「重税…だと?」
あの野郎、重税をかけていたことは秘密にしてやがったのか。マジ許せねぇ。
「だいたい、ウルナが力を得て謀反を企てたというが、それも間違いだ。ウルナ族が今の力を手に入れたのはここ数日の話。12日も前からウルナ攻略を計画していた国王のことを考えると時系列が合わない。」
「ちょっと待て、何故貴様が国王様の計画を知っている?まずお前人間だろ?なぜ獣人の見方をするのだ?」
ふむ。名乗っておいた方がいいな。このままじゃこっちの話に聞く耳を持たない。
「ちょっと前に勇者達が召喚されただろ。実は俺もその時一緒に召喚された異世界人なんだ。まぁ、ハズレジョブってことで追放されたけど。」
「…!?貴様が…」
「国王の計画を知っているのは、召喚されたときに説明されたからだ。それから、ウルナ族が強くなったのは、…はっきり言って俺のジョブの効果だ。だから謀反を企ててただのなんだのは国王のウソなの!」
「そんな馬鹿な…」
だめだ、放心状態っぽい。まあ自分の主が嘘つきだって事実ぶつけられたからねぇ。この娘、正義感強そうだし、かなり心に来てるな。
族長の提案でとりあえずは牢に入ってもらうことになった。まぁ彼女も一度頭を冷やしたいだろうしな。
「乾杯ッ」
「乾杯ッ!!!」
その日の夜は大宴会だった。進化により狩猟の成果も超向上したらしく、ごちそうが並ぶ。
村長が近づいてきた。
「ユウマ殿。こうして皆で酒を飲めるのも貴方のおかげだ。本当にありがとう。」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ。」
実際、みんなの努力がなければ短時間でここまで兵力を上げることはできなかっただろう。俺のジョブのことも勉強できたし、こちらとしてもありがたかった。
「ユウマ殿…。あなたは本当に…。ふむ。ひとつ決めました。では、また後程…」
何か意味深なことを言っていたが、まあいいか。
『個体名:天野悠馬
種族名〔状態〕:人族〔人間〕
ジョブ:導ク者
《スキル》
・導ク者(導きの数:24人)
・身体強化(小)(×24)(↑)
[進化条件]
… 』
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