第2話 獣人との出会い
ウルナ族。それがリュナの種族、狼の獣人達の種族名らしい。
「それならアタシの村に来なよっ!!」
行き場がないことを話すと、彼女はそう言った。ありがたくお世話になることにする。
リュナに世界のことを教えてもらいながら歩く。やはり、さっきの弓矢は彼女が放ったものだった。彼女は村で猟師として生活しているらしい。こんな女の子が狩猟とは...改めて異世界を感じる。
ちなみにさっきのバケモノはブラッド・グリズというらしい。元々熊だったものが魔力に侵されたのだとかなんとか。その辺はまだイメージ湧かないなぁ。
そんなこんなで彼女の村に着いた。ずいぶん年季の入った柵に囲まれた村だ。入口には男が立っている。門番だろう。
「リュナ、そのニンゲンはなんだ?」
「森にいたの!」
「怪しいな。貴様、何者だ」
「ユウマはいい人だよ!」
そんなに真っ直ぐいい人と言われるとちょっと照れるな。
「…族長を連れてくる。少し待っていてくれ」
「まずはようこそ。ウルナ族の族長を務めております、リーブックと申すものです」
「わざわざすみません。天野悠馬と申します」
「ユウマ殿…ですか。お気になさらず。して、森の中にいたと伺いましたが、どうしてこのような辺境に?」
…かなり疑われてるようだ。笑顔を崩さず、口調は丁寧。しかし、その目は笑っていない。
「色々ありまして、遭難していたところをリュナさんに助けていただいたのです。」
「ふむ、そうですか。リュナ、本当かい?」
「うん!ブラッド・グリズに襲われてたの!」
「ふむ…」
族長は考えを巡らせている。うん、これは無理かもしれない。森の脱出方法考えるしかないかなぁ。
「…なるほど、それは大変でしたな。では、貴殿を我が家の客人として招待しましょう。今宵は私の家でお休みください。」
「え、いいんですか??」
しまった、驚きで気の抜けた返事をしてしまった。族長はにっこりと笑う。
「ええ、娘の人を見る目は確かなのでね。…ワシに似て。」
え?ええっ!?リュナの親父さんってこと?全然似てないじゃないか。めちゃびっくりなんだけど!
リュナが村を案内してくれることになった。うむ。門を見た時から予感はあったが、この村にはまともな建築技術がないらしい。小屋とも呼べるような小さな家が並んでいる。
それにしても周りからの視線が痛い。そんなに人間が珍しいのか?
日が暮れ始めた。リュナの家にかえ、いや、ちょっと生々しいから言い換えておく。族長の家に帰ると綺麗なお母様が料理を作ってくれていた。
「っ!?美味しいです!!」
ものすごく美味しい。おふくろの味を思い出す。が、量が少し物足りないな。族長って言ってもあまり裕福ではないのかな。
部屋も一室貸してくれた。時間も時間だし、寝ようと思ったが、考え事をしてしまい、眠れない。少し散歩でもしようか。
「気持ちのいい風だ。」
やはり散歩はいい。心が落ち着く。しかし今日は色々あったな。明日起きたら全部夢ってこと...はないだろうな。めっちゃ痛覚あるからなぁ。
とか考えていると、
「おい、ニンゲン。テメェ、どのツラ下げて族長の世話になってやがる!!」
いきなり絡まれた。突然のことに言葉が出ない。すると男は胸ぐらを掴んできた。
「知らねぇなら教えてやる。族長の息子さんはなぁ、テメェらニンゲンに...」
「やめて!!!」
リュナの声だ。男は慌てて去っていく。
「ユウマ、帰ろっ!」
「あぁ、そうだな」
部屋に帰って大人しく寝よう。明日だ。明日、族長に話を聞こう。
翌朝、リュナが狩りに出かけた隙に族長に話を聞く。
「伺いたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」
「はい、構いませんよ」
「...族長の息子さんのことについて、教えていただけませんか。」
村長は驚いた様子だ。
「...どこでそれを?」
「昨日小耳に挟みまして。」
「そうですか...」
少し間を空けて、村長は話を始めた。
「ロイノ。ワシらの息子、リュナの兄に当たります。本当に出来の良い子だった。心優しくおおらかで、狩猟の才もある。まさしくウルナの人気者でありました。
この村は、昔からある王国の庇護下にあります。そしてその対価として税を払っておるのです。はじめは税も軽く、幸せな生活だった。…しかし、国王が変わってから税がどんどん重くなっていきました。私たちは生活を削り、凌ぎました。しかし、ついに払いきれない額になってしまったのです。
ロイノは村の代表として、王国まで交渉に行くと言いだしました。…ワシらも“ロイノならば”という期待もあり、送りだしてしまったのです。思えばあれが間違いだった。」
「...交渉決裂で?」
「...いいえ、交渉すらさせてもらえなかった。...城門に近づいた途端に殺されたとのことです。」
…。昨夜のこともあり、人間に殺された、という気はしていた。だが、想像をはるかに上回る。あまりにも酷い内容だ。
「リュナも兄を相当慕っておりました。狩猟に行くのもきっと兄を意識してのことでしょう。本人は言いませんがね。」
本当に強い娘だと思う。兄を殺した"人間"という種族に恨みを持っても何もおかしくはない。だが、彼女はそれをしなかった。それどころか、人間である俺の命を助けたのだ。
「…王国の名は、"グランディウム"で間違いありませんか?」
「その通りです。」
うん。全てが繋がった。俺たちを召喚した王は、オルディ=グランディウムと名乗った。つまり、あの国こそ、リュナの兄貴の命を奪った国なのだ。
「12日後...」
王の、ある言葉を思い出した。
<「早速12日後に一般兵達が出兵する事になっておる。相手は獣人だ。最近、税の納めが悪くてな。まあ他種族への見せしめになるだろう」>
怒りを通り越して逆に冷静にな自分がいる。人間、ブチギレるとこうなるんだなぁ。
「村長、お話があります...」
異世界に来てまだ丸一日も経っていない。わからないことだらけだ。
…ただ、一つだけ言えることがある。あんな国、追放されてよかった!!!
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