表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

第2話 獣人との出会い

 ウルナ族。それがリュナの種族、狼の獣人達の種族名らしい。


「それならアタシの村に来なよっ!!」

 行き場がないことを話すと、彼女はそう言った。ありがたくお世話になることにする。


 リュナに世界のことを教えてもらいながら歩く。やはり、さっきの弓矢は彼女が放ったものだった。彼女は村で猟師として生活しているらしい。こんな女の子が狩猟とは...改めて異世界を感じる。

 ちなみにさっきのバケモノはブラッド・グリズというらしい。元々熊だったものが魔力に侵されたのだとかなんとか。その辺はまだイメージ湧かないなぁ。


 そんなこんなで彼女の村に着いた。ずいぶん年季の入った柵に囲まれた村だ。入口には男が立っている。門番だろう。

「リュナ、そのニンゲンはなんだ?」

「森にいたの!」

「怪しいな。貴様、何者だ」

「ユウマはいい人だよ!」

 そんなに真っ直ぐいい人と言われるとちょっと照れるな。

「…族長を連れてくる。少し待っていてくれ」



「まずはようこそ。ウルナ族の族長を務めております、リーブックと申すものです」

「わざわざすみません。天野悠馬と申します」

「ユウマ殿…ですか。お気になさらず。して、森の中にいたと伺いましたが、どうしてこのような辺境に?」

 …かなり疑われてるようだ。笑顔を崩さず、口調は丁寧。しかし、その目は笑っていない。

「色々ありまして、遭難していたところをリュナさんに助けていただいたのです。」

「ふむ、そうですか。リュナ、本当かい?」

「うん!ブラッド・グリズに襲われてたの!」

「ふむ…」

 族長は考えを巡らせている。うん、これは無理かもしれない。森の脱出方法考えるしかないかなぁ。


「…なるほど、それは大変でしたな。では、貴殿を我が家の客人として招待しましょう。今宵は私の家でお休みください。」

「え、いいんですか??」

 しまった、驚きで気の抜けた返事をしてしまった。族長はにっこりと笑う。

「ええ、娘の人を見る目は確かなのでね。…ワシに似て。」

 え?ええっ!?リュナの親父さんってこと?全然似てないじゃないか。めちゃびっくりなんだけど!



 リュナが村を案内してくれることになった。うむ。門を見た時から予感はあったが、この村にはまともな建築技術がないらしい。小屋とも呼べるような小さな家が並んでいる。

 それにしても周りからの視線が痛い。そんなに人間が珍しいのか?


 日が暮れ始めた。リュナの家にかえ、いや、ちょっと生々しいから言い換えておく。族長の家に帰ると綺麗なお母様が料理を作ってくれていた。

「っ!?美味しいです!!」

 ものすごく美味しい。おふくろの味を思い出す。が、量が少し物足りないな。族長って言ってもあまり裕福ではないのかな。


 部屋も一室貸してくれた。時間も時間だし、寝ようと思ったが、考え事をしてしまい、眠れない。少し散歩でもしようか。


「気持ちのいい風だ。」

 やはり散歩はいい。心が落ち着く。しかし今日は色々あったな。明日起きたら全部夢ってこと...はないだろうな。めっちゃ痛覚あるからなぁ。


 とか考えていると、


「おい、ニンゲン。テメェ、どのツラ下げて族長の世話になってやがる!!」

 いきなり絡まれた。突然のことに言葉が出ない。すると男は胸ぐらを掴んできた。

「知らねぇなら教えてやる。族長の息子さんはなぁ、テメェらニンゲンに...」

「やめて!!!」

 リュナの声だ。男は慌てて去っていく。



「ユウマ、帰ろっ!」

「あぁ、そうだな」

 部屋に帰って大人しく寝よう。明日だ。明日、族長に話を聞こう。



 翌朝、リュナが狩りに出かけた隙に族長に話を聞く。

「伺いたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」

「はい、構いませんよ」

「...族長の息子さんのことについて、教えていただけませんか。」

 村長は驚いた様子だ。

「...どこでそれを?」

「昨日小耳に挟みまして。」

「そうですか...」

 少し間を空けて、村長は話を始めた。


「ロイノ。ワシらの息子、リュナの兄に当たります。本当に出来の良い子だった。心優しくおおらかで、狩猟の才もある。まさしくウルナの人気者でありました。


 この村は、昔からある王国の庇護下にあります。そしてその対価として税を払っておるのです。はじめは税も軽く、幸せな生活だった。…しかし、国王が変わってから税がどんどん重くなっていきました。私たちは生活を削り、凌ぎました。しかし、ついに払いきれない額になってしまったのです。

 ロイノは村の代表として、王国まで交渉に行くと言いだしました。…ワシらも“ロイノならば”という期待もあり、送りだしてしまったのです。思えばあれが間違いだった。」


「...交渉決裂で?」


「...いいえ、交渉すらさせてもらえなかった。...城門に近づいた途端に殺されたとのことです。」



 …。昨夜のこともあり、人間に殺された、という気はしていた。だが、想像をはるかに上回る。あまりにも酷い内容だ。


「リュナも兄を相当慕っておりました。狩猟に行くのもきっと兄を意識してのことでしょう。本人は言いませんがね。」


 本当に強い娘だと思う。兄を殺した"人間"という種族に恨みを持っても何もおかしくはない。だが、彼女はそれをしなかった。それどころか、人間である俺の命を助けたのだ。


「…王国の名は、"グランディウム"で間違いありませんか?」

「その通りです。」

 うん。全てが繋がった。俺たちを召喚した王は、オルディ=グランディウムと名乗った。つまり、あの国こそ、リュナの兄貴の命を奪った国なのだ。

「12日後...」

 王の、ある言葉を思い出した。

 <「早速12日後に一般兵達が出兵する事になっておる。相手は獣人だ。最近、税の納めが悪くてな。まあ他種族への見せしめになるだろう」>


 怒りを通り越して逆に冷静にな自分がいる。人間、ブチギレるとこうなるんだなぁ。


「村長、お話があります...」


 異世界に来てまだ丸一日も経っていない。わからないことだらけだ。

 …ただ、一つだけ言えることがある。あんな国、追放されてよかった!!!



お読み頂き本当にありがとうございます


ぜひブックマーク・ご評価のほうをお願いします!




初心者ゆえに至らぬところも多いかと思います。


読者様のご評価、ご感想は今後、しっかりと参考にさせていただきます。




叱咤激励、御賛辞、お待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ