空耳の力
単純なメロディが言葉をもたらす。
そんな空耳もあると思う。
空耳とは、特に海外のアーティストの歌うその歌詞が日本語に聞こえてしまう現象を指します。
それは、本来の歌詞やその意味とは全く異なる物であり、その多くは意味をなしません。
これは他にも外国映画でのセリフやスポーツ実況でも起こりうるもので、空耳はその前後の文脈やセリフ、映像などと繋がりを持たず意味をなさないという部分にナンセンスを感じ、それを笑いに変える一種の娯楽になっています。
これまでに空耳はテレビやラジオ番組で取り上げられ、そのナンセンスさ、または別の理由で人々に笑いをもたらして来ました。
だいたい空耳は外国の人の口から発せられる言葉自体が、その対象となるのがほとんどなのですが、稀に別のモノが空耳の対象になる場合があります。
それは音楽の持つ、その純粋なるメロディだったりするのです。
「ボギー大佐」あるいは「クワイ河マーチ」これらの言葉からそのメロディを引き出す事は、よっぽど音楽に精通していなければなかなかに難しいモノです。
ところが「サル ゴリラ チンパンジー の歌」と言えば多くの人がその曲を思い浮かべることが出来るでしょう。
逆にその曲を聴くと「サル ゴリラ チンパンジー」にしか聞こえなくなります。
その曲の作曲家がどのような意図で、どのような気持ちで作成したかは分からないですが、少なくとも「サル ゴリラ チンパンジー」ではなかったはずだと思います。
実は、これと似たようなことが、私の身の回りで起こりました。
私の息子はよく「マリオカート」で遊んでいるのですが、それに流れる曲がある言葉を連想させてしまうのです。
そしてそれが耳について離れません。
より正確にいうと曲というより、本当に単純なメロディだったりするのですが、なぜそう聞こえるのかも分かりません。
ゲームをしない方には申し訳ないのですが、それはアイテムボックスを取った時のメロディになります。
バナナ 緑甲羅 赤甲羅 無敵 サンダー ゲッソー キノコ キラー テレサ etc……
それらのアイテムがルーレット抽選で行われるときに流れるメロディを、私の耳はこともあろうに「えなり かずき」と聞きとってしまったのです。
そうなると、もうそのようにしか聞こえない。
三文字×三文字の計六文字だったら何でも良かったはずなのになぜこの言葉が浮かんだのでしょうか……
息子がゲームの中でアイテムボックスを取るたびに「えなり かずき♪」「えなり かずき♪」と聞こえてしまうのです。
私はドラマを見ることは昔からほとんど無いです。
「えなり かずき」の姿格好とあの顔を思い浮かべることは出来るのですが、正直言ってよくは知りません。
泉ピン子に振り回されていたとかは、ちょろっと聞いたことはありますがその程度です。
いかん……
泉ピン子にぐるぐる振り回される「えなり かずき」を思い浮かべてしまった。
あのメロディを聴くたびに、私はそれを思い浮かべることになりそう。
恐るべし、空耳の力……
あらすじと前書きだけ見ると、ロマンチックな印象を受けるかもね。