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第十話 ツンデレ系小悪魔とナルシスト&ナンパ吸血鬼

 召喚したばっかりの八咫烏(やたがらす)……、命名 クロに乗って村まで着いた。

 時速80kmくらいの速さで四十分くらいかかった。

 まあその間、存分にもふっていたから別に退屈ではなかったけれど。

 最初はカラスということもあって、衛生面的に気にしていたのだが、精霊で、しかも神鳥(しんちょう)だからとても綺麗。


「おぉ」

 さすがは妖精の宝箱。確かにめちゃくちゃ空気が澄んでいる。しかも、畑とかに向いてそうな土もある。

 微生物がたくさん生息しているほど、豊かな土地って中三で習ったような気がする。確か…ツルグレン装置で調べられるんだっけ。ああ、でも、顕微鏡持ってない。

 それにしても大きい土地だなぁ。村レベルじゃないと思うんだけど。

 ボケーっとそんなことを考えていると、背の高い黒ずくめの男と背の小さい翼のある女の子がこちらに向かって歩いてくる。


「君は太陽のように美しい……ふっ!」

「私はあんたなんて認めないから!」


 は?

 会った瞬間ナンパと、威嚇(いかく)、意味わからん。

 よく見ると、男の方は吸血鬼(ヴァンパイア)が完全防備していただけだった。けれど、ギリ判別できるくらいで、ほぼわからない。女の子の方は蝙蝠(こうもり)のような(つの)と翼。そして尻尾。紫色のツインテールにピンクの目。おそらく小悪魔(インプ)


「あの……、お二人が派遣されたっていう……」


 女の子の方から自身満々に名乗り始める。


「そうよ! この私こそが魔王様から派遣された上級悪魔のシャーロットよ!」

「僕は、吸血鬼のマテオ。美しい名前だろう?」

「あ…、どうも。サチと言います。よろしくお願いします」


 元気っ娘巨乳メイド、ロリハーフフェアリーの次はあれですか。

 ツンデレ系小悪魔(インプ)に、ナルシスト&ナンパ吸血鬼(ヴァンパイア)ですか。


「あんた、見るからに弱そうね! そんな奴が魔王様からこんな大事なお仕事をもらうなんて許せないんだからっ!」

「いや、そんなこと言われても……」

「魔力オーラが全然ないもの! 大方、魔力がなくて勇者ができないからって、ここに飛ばされたんだわ!」

 

 魔力オーラねぇ。前に子飲神(クロノス)を使っている時に、カレンから海色のオーラが見えたことがあったけど。もしや、もうすでに、そういうスキルを持っているのだろうか。使えたら楽かもしれない。

【スキル 魔力認識】

 おぉ。見えるようになった。小悪魔(インプ)の方には、紫色の少量のオーラ。吸血鬼(ヴァンパイア)の方には、くすんだ赤いオーラが見える。


「あんたが私に(かしず)くというのなら! 友達にな……」


 なんか、さっきからごちゃごちゃうるさいなぁ。

 ん?

 そういえば、前にステータスを見た時、使用中スキル欄に、魔力隠伏(まりょくいんぷく)があったような気がする。

 それを解除すればいいのだろうか?

 (【スキル 魔力隠伏】を解除)


 自分に大量の魔力がオーラとして宿ったのがわかった。言うなれば、パンパンに気体が入っていた箱を開けたような感じ。

 朱と金、そして黒の魔力がぐるぐると体の周りを回っているような見た目だ。

 やばい。これは絶対周りに見せない方がいい。しまおう。早くしまおう。

(【スキル 魔力隠伏】)


「ひゅっ……」


 時はすでに遅し。シャーロットが倒れていた。目を回している。

 そして吸血鬼(ヴァンパイア)の方が、恐ろしそうにこっちを見てくる。

 おそらく、魔王たちもオーラ隠してるんだろうな。なんとなく理解した。


「ちょ、ちょっと手伝ってくれるかい?」


 この吸血鬼(ヴァンパイア)、どうやらひ弱らしい。百四十センチくらいの女の子すら持ち上げられないとは。

 前の世界にいた時の私でも持てるよ。このくらい。

 というわけで二人で持ち上げてそこにあった木造の小屋へ。


 中はマフィンの匂いが漂っていた。お茶の準備もしてある。


「そこの椅子で大丈夫だと思うよ。ありがとう、バラのようなお嬢さん」


 ウィンクしながらそういうと、マテオは、完全防御服を脱ぎ始めた。

 あらわになるのは、金髪、八重歯、伏し目のthe 吸血鬼(ヴァンパイア)

 おぉ、異世界ものっぽい。地味に異世界っぽさでは負けてる魔王が可哀想。


「このマフィンの(かぐわ)しい匂い、びっくりしただろう?」

「え、あ、はい。今日のおやつか何かですか?」


 マテオは、にやっと笑うと、気絶したままのシャーロットを撫ぜながら言う。


「これ、シャーロット嬢が焼いたんだ。君がくるという知らせを聞いてから、急いで、ね」

「……」

「とても楽しそうにしていたんだよ。仲良くしてあげるんだとか言って張り切って」


 どうやら、ツンデレ通り越して、天邪鬼(あまのじゃく)だったらしい。いまだ気絶してるけど。


「上級悪魔っていうのも嘘だよ。彼女は見栄を張る癖があるんだ。小悪魔(インプ)なんだけど、小悪魔(インプ)らしい仕事が向いていなくてね。なぜか機械類の発明や製造が得意だったものだから、そっち方面に就職したら一族からははぐれ者。それである日とうとう感情が爆発しちゃって騒ぎを起こして追い出されたところに、魔王様が仕事を持ってきたんだ」

「マテオさんは……」

「僕は、優秀な経理士なんだ。シャーロット嬢のケアと経理士としての腕が一流なのもあって、魔王様に頼まれた。僕も昔、魔王様に助けてもらった身でね。即答してきたのさ!」


 話し終わったところで、マテオが、せっかくだからお茶とマフィンを持ってこようと言って、お茶を飲むことに。素朴な味つけのマフィンおいしい。

 ちょうど、半分くらい食べ終わったところで、シャーロットが起きる。


「うぅ……」

「気がついた? 気分はどうだい、お嬢様」

「悪くはないけど……、強力なオーラに当てられて……、わぁ!!!」


 私を見て青い顔をするシャーロット。会ったばっかりの時はめっちゃ喋ってきた割に。

 突然、ズザザァーと後ろに下がる。

 私、なにもしてない。なにも言ってない。


「おっ、おっ、怒ってないの? ……私のこと」

「別に。むしろマフィンありがとう。めちゃくちゃおいしい」


 正直あんまり聞いてなかったし。見下してきたのは覚えてるけど。

 それにしてもマフィンおいしい。機械類の製造が得意とか言ってたし、手先が器用なのだろうか。

 

「本当……?」

「嘘ついて何になるの? えーと……、シャーロットさんに、私は別に怒ってないし、怒る理由もないんだけど」

「シャーロットでいいわ! ()()()()に、そう呼ばせてあげる!」

「じゃあ、シャーロットって呼ばせてもらう……」

「そうして頂戴!」


 にこにこ満面の笑みで、腰に手を当てているシャーロット。

 シャーロットを見てると、同じ見た目ロリだけど、リーナは本当に大人だったんだなと思う。


「それで! 今日は何しに来たの?」

「村長になる前にちょっと来てみたかったっていう感じで。どんな土地かも自分の目で見たかったし」

「なるほど…、確かにそれは大事だね」


 マテオ、いちいちかっこつけポーズするのやめろ。なんか、頭痛くなってくるから。

 そんな話をしていると、突然、大きな地響きが鳴り響いた。

 慌てて窓の方を見ると、外には大きなクマのような魔物が。全長十メートルはある。


「やっ、やばいわ! この家を壊されたら大変!」

「ちょっと、待ってくれ。今、着替え……」

「それじゃ間に合わないわよ!」


 シャーロットが外に出る。オーラから比較しても、敵いっこないのに。

 マテオがめちゃくちゃ焦りながら、着替えている。こういう時に日光浴びられないって大変だな。

 というわけでシャーロットを追って、私も外に出る。いざとなったら、守るくらいはできるだろう。一応勇者として召喚させられたわけだし。


「実際に見ると、本当に大きいわね……」

「ここら辺はよくこういうことがあるの?」

「いいえ! めったにないわ! もともとは精霊の宝箱だもの! ……もう魔物が湧き始めるなんて、思わなかったわ」


 魔物と魔族の何が違うのだろう。普通に倒そうとしているけれど、いいの? 大きなくくりでみたら、同じだよね?

 クマが殴ろうとしてくるのを避けながら、そんなことを考える。


「ふふっ! これでもくらいなさい!」


 シャーロットが左手の親指を小さなナイフで切って、出た血ごと小さなキューブに押し付ける。

 そこから出るのは、シャーロット本来の量より十倍くらい多いオーラ。

 くらったクマは吹っ飛ばされた。


「これこそ! 私が開発した魔力波増幅装置の威力! 私にかかれば、こんなのどうってことないんだから!」

「おぉ~~」


 感心していたのもつかの間。

 あまり効いていなかったようで、クマは普通にまた仕掛けてくる。


「う、嘘!」

「もともとオーラの量がシャーロットの十倍くらいだったから、普通の攻撃程度なんじゃない?」

「あ!」


 マテオはまだ着替えているみたいだし。どうすればいいのか……と考えていた時だった。

 そういえば私が【参謀(アテネ)】っていうスキルを持っていたことを思い出した。


最強スレイスキル 参謀(アテネ)


参謀アテネ 戦略の作成が完了。オートモードに入ります】


 前と同様に、体が勝手に動く。

 ジャンプして、クマの首を蹴る。未だに実感はわかないけれど、異世界に来てから身体能力が上がって、スキルも151個あって、まあまあ強くなったんだった。

 のんきにそんなことを考えていても、体は動く。楽だ。

 蹴りによって倒れそうになっているクマの腹に、波動が起きるほどのパンチを一撃。

 クマは完全に気絶。スキルを使うほどでもなかったらしい。

 【参謀アテネ】も終了した。


「あ、あっあんた、最強スレイスキル所持者(ホルダー)なの!?」


 やばい。

 つい口に出してスキルを使っていたらしい。

 能天気に使ってたけど、やっぱりヤバいスキルなのか。 

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