ごめんね
そういえば私には、もう一つだけ他人と違ったことがありました。
私たちのようにロット人から労働を強いられている島の人間は、ロット人に目ん玉が痛くなる装置をつけられています。
ロット人が気に入らないことがあると、すぐに私たちにこの機械を使用してストレスを発散してくるのです。
その際、普通の人たちは両目を抑えるのですが、私は片目だけを抑えるのです。
なぜなら片目にしか痛みが来ないから。どうしてだろうと疑問に思うことはありますが、聞ける相手もいないので私はこの疑問を胸の中にしまったまま生きてきました。
まあそんなわけで、私は普通の人と違って左目だけ視界がぼやけるのです。それも当然のことで、こんな強い痛みを神経に流されたら当然目だって悪くなります。
そのせいで島の人たちは大体目が悪いです。でも眼鏡なんてものが支給されるはずもなく、みんな目を細めて物を見ようとするのです。
実際私のおばあちゃんはそのせいで視覚障害に陥り、目が見えなくなりました。目が見えなくなった島の人間は、労働力として使い物になりません。
その場合どうなるのか、聞いたこともないし聞きたくもないので知りません。ただ私は、おばあちゃんの目が見えなくなってから一度も、おばあちゃんと会っていません。
まあそんなこんなで目の玉を人質に取られた私たちは、逆らうこともできずに奴隷のように光る石を掘り続けているのですが、この石はどうやら相当硬いらしいです。
島の人たちは、この光る石をピッケルで何度も何度も叩いてようやく一欠片手に入れます。
でも私にとってはクッキーと変わらず、つま先で少し強く蹴るだけでボロボロその石は崩れるのです。
でも私はそんなことをしません。あの日以来、自分の力を下手に使うことを恐れている私は、常人のようにピッケルで何度も石を叩きます。
でも妹のサキナは足でその石をボロボロと砕いて、ロット軍の人たちに他の人たちよりも多く、その石を渡しました。
そんなサキナを不審に思ったロット軍の人は、ある日サキナに。
「どうしてお前は他の人間よりもこんなに多くのインフィニティを持ってこれるんだ?」と質問しました。
だからサキナは、軍人の人たちの前でいつもやっている方法を見せびらかしました。
つま先で小突いただけでボロボロと崩れ落ちるそれをみて、ロット軍の人たちは感嘆の声をあげ「こんなところに居させるのはもったいない」と、サキナを島から連れ出してしまいました。
お母さんはそれを必死に止めようとしていましたが、案の定ロット軍の人たちから機械を使われ、両目を押さえつけてその場に倒れこみました。
その時私は、サキナと自分の立場を置き換えて今の状況を想像してみました。
そして想像した結果、お母さんは喜んでいました。
何でサキナばっかりと、私はまたも醜い嫉妬の感情を抱きます。
それから数日後のことでした。私がいつも通り寝床から目覚め、石を掘りに行こうとした時のことでした。
台所でお母さんが、プラーンとぶら下がっていたのです。
首を吊って。
それでも私は、特にこれといった感情が湧き出てくることはなく、いつも通り作業場に向かおうとしました。
けれどもその時、机の上に一枚の紙切れを見つけました。
手紙にはお母さんの文字で、こう書かれていたのです。
「マキナへ。
いつも酷いことばっかしてごめんね。
優しいお母さんじゃなくてごめんね。
こんなことを今更言うのはあれだけど、元気に育ってください」
そんな手紙を見た私の瞳からは、なぜだか涙が出てきました。
もう誰もいない孤独。これからの不安。今更遅いよと言う憤り。
それでも今まで育ててもらったことに変わりはないので、私は何とかお母さんの遺体を床に下ろすと、私は海辺に行き島の外へ流しました。
お母さんが死んでしまったことを近所に住んでるクリフおじさんに伝えると、おじさんはその場で屈みこんで、みっともなく泣き喚き出しました。