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火星にニンジャが舞い降りたとき  作者: 大和モモタロー
第5章 イーガVSコーガ
14/25

2 クウガ、登場

 2


 八時にいったん官舎アパートに戻り、サクラを置いてきてから保安局のオフィスへ向かった。

 ディグベアの強さはおれの想像をはるかに超えていた。動きの速さ、力の強さでも勝り、さらにおれの攻撃のすべてを見切る目も持っていた。

だいたいディグベアとは何なのだろう。マルコの話では、街で見かけた唐子と同じ類いのものらしいが……。ディグベアには生身の体があり、意思の疎通さえ可能だ。幽霊などではけっしてない。

 なぜディグベアが忍術の心得があるのかはわからないが、おれはこれから毎朝早起きして、巻物に目を通して学んだことを、ディグベアにぶつけてみようと思った。

 ――思い出せ。おまえのDNAに刻まれた記憶を。

 ディグベアが最後に放った言葉が頭に浮かぶ。伊賀の血のことを言っているのだろう。おれの先祖には偉大な忍者たちがおり、おれにも同じ血が流れている。

 なぜそのことをディグベアが知っているのだろう? 

 オフィスへ顔を出すと、サザエ・チャンがつかつかとやってきて、首を後ろに倒すと、おれの顔をしげしげと見つめた。

「また今朝もシュギョウしてきたのか?」

「修行というのは毎日するものですから」

「さすがニンジャだな。わたしなんか一三〇アレスもする室内ランニングマシーンを買ったというのに三日も持たなかったよ。だいたいあれは飼育されているハムスターになった気分になっていけない。人間としての尊厳が滲み出す汗と一緒になって流れていくような気がするんだ。目の前の景色がぜんぜん変わらないというのも退屈でダメだな」

「なら、外に出てジョギングをしたらいいのでは?」

 直球の正論を受けて、チャンの目が煙たいものを見るように細まった。

 そばで聞いていたマルコがたしなめるように言う。

「悠蔵さん、それを言っちゃお終いよってやつっすよ」

「そうだ。お終いだ。外に出てジョギングができる人間は室内用のランニングマシーンなんてものはそもそも買わないんだ。そして、ランニングマシーンの上で毎日ランニングできるような殊勝な人間は外に出てジョギングだってできるんだ。ということはだ、外にひょいと出てランニングすればいいんだよ。知ってるわ、そんなことは! でも、できないのだ。できないのだよ」

 チャンは椅子に崩れ落ちるように座ると、デスクの上を力なくどんと叩いた。

「これは悪魔のジレンマなのだ。だから、わたしは悪魔のジレンマから抜け出すべく、ジョギングという行為自体を放棄した。見ろ」

チャンが指し示す先には、〝禁酒禁食〟と書かれた貼り紙が貼られていた。

「運動したいのにできない。できないとデブになってしまう。じゃ、どうしたらいいか。飲まない。食べない。これで一件落着だ。さぞかし悪魔もがっくりきていることだろう」

「チャンは悪魔に勝ったんすね」

マルコがおべっかを言う。

「まあな」

 一昨日の晩の暴飲暴食はなかったことにされているようだ。

 おれも何かチャンの機嫌が直るようなことを言おうとした。

「でも、チャンはだいたいダイエットなんてする必要ないじゃないか」

「ふふ、うれしいこと言ってくれるな。でも、あるよー、やっぱ三十五を過ぎると下っ腹の肉が取れにくくなるよねー」

「三十五過ぎ!?」

 おれは驚いてチャンを見つめ返した。この少女のような見かけをした女が、三十歳どころか三十五歳を過ぎていたとは……。

 おれの視線に気づき、チャンは眉根にしわを寄せた。

「何かね?」

「いえ、別に……。ところで、動きやすいように任務中、忍び装束つまりニンジャ服を着てもいいだろうか?」

チャンは嬉しそうに手を叩いた。

「えー、そんなのあるんだ。見せてよ、早く!」

おれはスーツを脱いで、忍び装束になった。

「いいね、いいね、様になってるねー! 映画で観たことあるニンジャなやつ、それー。OK! それでやっちゃって!」

「それじゃ、捜査に行ってきます」

 おれはマルコを連れ立ってオフィスをあとにした。


 インパラの助手席に収まるや、運転するマルコが聞いてきた。

「悠蔵さん、捜査って何するんすか?」

「七福の街を巡回する。考えてみたんだが、コブ砂丘で殺害された少年少女たちは、どこかの研究施設から逃げ出してきたんだろう。研究施設の大人たちが彼らを追ってコブ砂丘までやってきて、そこで追いついて皆殺しにしたってわけだ」

「はい、そんなストーリーだと思います」

「じゃあ、こうも考えられないか。あの場から逃げおおせた少年や少女が一人や二人いたのではないかと」

「そうっすね。それはありうるかもしれないっす」

七福のダウンタウンで路傍にインパラを駐め、おれとマルコは徒歩で巡回を開始した。七福の街は昼間っから活気づいていた。近くに養殖用の人工湖があり、活きのいい魚介類がたくさん獲れるため、七福のある一画は市場のような活況を呈している。その魚介を買って捌く料理店が軒を連ねているため、ストリートに人の往来が途切れることがない。

「今日も人出が多いっすね、七福は。地球から来た観光客が六割、地元の住民が四割ってところっす」

 おれは道行く人々の顔や服装を目で追っていた。生き残りを始末するために、研究施設の教官たちもまた七福の街を虱潰しに探し回るだろうと考えていたからだ。

 また、研究施設から逃げ出してきた少年少女はおカネを持っていないだろう。サクラがおれの官舎に忍び込んだのはそのためだ。生き残りがいるとしたら、人の家に勝手に侵入するか、あるいは、盗みを働いて生き延びるか。通常、家のセキュリティは万全なので、少年少女がストリートチルドレン化するのは目に見えている。

 そんなことを考えていると、どこからか大声が上がった。

「こらぁー、泥棒ぉー!」

 中華料理店の店先から少年が駆け出し、そのすぐ後ろからコック帽をかぶった太った男が出てきて少年に向かって怒声を上げた。食い逃げだろう。少年はサクラと同じ灰色のシャツとズボンという姿だった。

 少年は通行人にぶつかりながら、がむしゃらに駆けていく。

「マルコ」

 おれが声をかけるまでもなく、マルコも走り出していた。

おれたちは全速力で追ったが、少年の足は異常なまでに早かった。サクラが語っていたが、彼らもまた修行を行っていたのだ。

――待て、おれは味方だ! 

 おれがそう叫ぼうとしたとき、前方の脇道から霞色の忍び装束に身を包んだ女が飛び出した。女はおれたちには気づかず、少年のあとを追うように走っていく。

「何すか、あの女……」

「髪を見ろ!」

 頭のてっぺんにトンボ玉のかんざしが挿してあるのが見えた。

「かんざしっす!」

「例のくノ一、女忍者だ」

 驚いたのは、女忍者が意外にも幼く見えたことだ。十五、六といったところか。

 女忍者はみるみるうちに引き離されていった。いや、女忍者の足が遅いのかもしれない。

おれたちは七福の街の端まで来ていた。この先は西部劇で観るようなサボテンの点在する荒野が広がっている。

少年の俊足は衰えを見せない一方で、女忍者は明らかに疲れを見せ始め、やがて足がもたつくようになり、肩でぜえぜえとあえぐようになって、立ち止まった。

 少年の背中はいまでは豆粒くらいになっていた。

 おれとマルコは女忍者の後方十メートルほどで足を止めた。

「おい、くノ一!」

 おれが声をかけると、女忍者はびくりと身体を震わせ、ゆっくりと振り返った。

 マルコが小さく驚きの声を上げた。

「えっ、あれがニンジャ……? めっちゃ美人じゃないっすか。てか、あれ? アジア系じゃないっすよ。コーカソイドじゃないっすか?」

 マルコの言うとおりだった。そのくノ一は金髪碧眼で、大きな目に高い鼻、ヒアルロン酸の宝庫のようなぽっちゃりとした唇をしていた。ひと際目を引くのは、開いた襟元から覗く大ぶりな二つの胸だ。

「……誰ですかぁ?」

 緊張感のない間延びした声が返ってきた。

「保安局の取締官だ。おまえに聞きたいことがある。まず、何者だ?」

 くノ一はよくぞ聞いてくれたというように口元をにやりと歪めた。右手を腰に当て、胸を前に突き出すようにしてポーズを取った。

「わが名は、セーラ・コーガ・イシグロ。コーガ流ニンジュツの継承者! です!」

「甲賀流忍術だと?」

おれは耳を疑い、狼狽した。火星に忍者がいるだけでもありえないのに、そいつは甲賀流だと抜かしている。甲賀は伊賀とは因縁の忍者集団だ。

「おれの名は悠蔵。服部悠蔵。伊賀流忍術の後継者だ」

「すごいっす! イーガ対コーガニンジャの戦いっす!」

 マルコはすっかり興奮した様子で、ヘプタゴンでセーラを撮影し始めた。もちろん、趣味のためではなく証拠のためだろう、たぶん。

「武器を捨てろ。おまえには少年少女を殺害した容疑がかかっている。保安局まで同行願う」

「イヤです。聞きたいことがあるなら力尽くで聞いてみるがいいです」

 金髪のくノ一は左の腰に帯びた刀を抜いた。女忍者がよくやるように逆手に柄を握る。

 セーラと名乗るくノ一の構え方を見て、おれは少し動揺した。足は内股だし、腰が高い位置にあり、重心が安定していない。

 何だ、こいつ……。

 おれもまた抜刀した。身体の中心で刀を構え、切っ先を相手の喉元へ向ける。正眼の構えだ。

「無駄なことはするな。おまえではおれに勝てん」

「何を言うです!?」

「聞きたいことがある。昨日の朝、コブ砂丘で身元不明の少年少女らの遺体が見つかった。子供たちを殺したのはおまえか? いや、おまえには仲間がいるはずだ」

 この女忍者には武器を持った少年少女たちを殺るだけの技量はない。もっと腕の立つ仲間がいるはずだ。

「そ、そんなの知らないやい!」

 嘘だ。

セーラは「やーっ!」という勇ましさとはほど遠い鬨の声を上げると、刀の切っ先を前に向けて突進してきた。おれは左足を引き、半身でかわすと、セーラの右手首をひょいとつかみ、軽くひねり上げてやった。セーラは苦痛のうめき声を上げ、刀を地面に落とした。

「おおおーっ!」

 マルコは相変わらずヘプタゴンでの撮影に夢中になっている。

 おれはセーラの手を背中のほうにひねり上げ、動けないように固定した。セーラは怒りで顔を赤くして激しくもがいた。あんまりじたばたするものだから、胸元が大きくはだけ、片方の胸が外にぽろんと飛び出してしまった。くノ一は伝統を重んじ、下着を身につけていなかった。

「あ」

 おれは見てはいけないものを見てしまった。気まずさを感じて、おれは思わずセーラを放してしまった。

 セーラは出てしまった胸を「よいしょ」と装束の中に押し込め、前身頃を整えると、何事もなかったかのような顔をして、再び刀を構えた。

「……サラシを巻くといいぞ」

「サラーシィ?」

「サラシだ。日本のサラシ。それより、無駄な抵抗はよせ。神妙にしろ!」

セーラはようやく腕の違いを思い知ったようで、悔しそうに歯を食いしばった。

 と、虚空の彼方が光ったかと思うや、こちらに向かって何かが高速で飛んできた。

 おれは反射的に後ろに飛び退いた。数枚の手裏剣が目の前の地面に突き刺さった。

「何やつ!?」

 手裏剣が飛んできた方角を見やると、荒野の向こう、太陽を背にして、黒い影が立っていた。頭巾を結んで余った布が風にはためいている。

 黒い影はこちらに向かって走ってきた。と、同時に手裏剣が左右から弧を描いて飛んできた。

 おれは左右から襲い来る手裏剣を後ろにバク転することでなんとか避けた。

 背中を冷たい汗が伝い落ちた。

相手は相当の手練れだ。でなければ、手裏剣をあの距離から的確に放つことはできない。しかも、変化球のように弧を描くとは、おれの巻物にもそんな投げ方は記載されていない。標的に向かって食らいついてくる様はまるでまむしのようだ。

「何者だ!?」

 黒い影に光が差した。男だ。男は濃紺の忍び装束を纏っていた。長身でありながら、均整の取れた体つきをしている。風になびく空色の長い髪に、静かな怒りを秘めた紫の双眸。プライドの高そうな整った鼻梁に、虚無を感じさせる引き締まった口元をしている。恐ろしく美形の東洋系と思われる顔立ちだ。

 男は立ち止まった。鋭い目が射るようにおれを見た。

立ち居姿だけで、おれはすっかり怖じ気づいてしまった。この男はおれのような昨日今日忍術の修行を始めた者ではない。長い年月、雨の日も風の日もあらゆるものを犠牲にして、おのれの研鑽に時間を費やしてきた者特有の気迫を持っていた。

「われは甲賀流忍術の継承者、クウガ・イシグロ!」

 マルコが怪訝な顔つきになった。

「イシグロ……、え、兄妹っすか?」

「お、おれは服部悠蔵。伊賀流忍術の後継者だ……!」

「ほう。伊賀者か。伊賀も落ちたものだな」

「何ぃ……」

 クウガ・イシグロは小馬鹿にしたように鼻で笑った。

どうしたらいいか? いまのおれではこいつには勝てない……。

 そう直感が告げていた。マルコと二人がかりでも歯が立ちそうにない。応援を要請する隙もなさそうだ。となれば、逃げる以外に道はない。少年はどこかへ逃げてしまっているし、おれたちにできることはもうないだろう。

「逃げるぞ、マルコ」

 マルコが動かない。振り向くと、マルコがご自慢の44マグナムを両手で構えていた。

「悠蔵さん、おれずっと思ってたんすけど、確かに、ニンジャってかっこいいし、すごいと思うんすけど、こう言っちゃお終いですが、撃っちゃえば一発っすよね。すいません、夢壊して……」

「はははは。撃ってみろ!」

 クウガの声は挑発の色を帯びていた。口元が残忍に大きく歪んでいる。

「さあ、撃ってみろ。どうした、撃ってみろよ」

「え、いいんすか?」

「馬鹿、挑発に乗るな」

 おれはたしなめるが、マルコはすっかりわれを失っていた。

「馬鹿って言ったら自分が馬鹿っす」

「小学生か! いいから、絶対に撃つな!」

「何でですか? おれの腕なかなかっすよ。殺しませんよ。この距離でもちゃんと急所を外せるっす」

 クウガが高笑いした。

「おいおい、急所を外してどうする? 撃てよ。心臓を狙って」

 クウガは右手の人差し指でご丁寧にも自分の左胸のあたりを指差した。

 マルコの頭に血が上るのが傍目にもわかるのだった。

「マルコ!」

「おれをなめるなっす!」

 マルコの指が引き金を引いた。

 銃声――。

 金属音が響き、射出された弾丸が二つの鉛片になって地面にぱらぱらと落下した。

クウガの右腕が目にも留まらぬ速さで動き、鞘から抜いたその剣筋で弾丸を斬り捨てたのだ。

おれは自分の目が信じられなかった。おれではそんな芸当はとてもできない。クウガの動体視力および剣の腕におれは舌を巻いた。

 愚かにもマルコは再び撃った。

 銃声とほぼ同時に金属音がして、弾丸は二片の金属屑になった。

「おかしいっす、おかしいっす!」

 マルコが狂ったように連射したが、すべて同じ結果だった。

「やめろ!」

 おれはマルコの腕をつかんだ。そこで、ようやくマルコが正気に戻った。

「あいつ……、人間じゃないっす……」

 クウガは荒野の彼方を見やった。少年が逃げていった方角だ。

「おっと、おまえらの相手をしている暇はない。おまえら、生かして帰してやる。いつもならこうはいかない。ラッキーだったな。さあ、行くぞ、セーラ」

 おれがほっとしたのも束の間、セーラは駆け出すと、クウガの後ろについた。そして、おれたちのほうを振り向くと、怒りをたぎらせた目でおれを指差した。

「兄ジャ、あいつ、わたしを辱めた!」

「何ぃ!?」

 クウガが足を止め、振り返った。

 まずい……。おれはあわてて口を開いた。

「いや、〝辱めた〟というのは語弊があるんじゃないか。きみをちょっと押さえつけたときに、ぽろっと大事なものがちょっと飛び出しただけだろう?」

 おれがそんな言い訳をすると、クウガの目がくわっと見開かれた。

「セーラ、大事なものを見られたのか?」

「うん、乳を見られた」

「斬る!」

 クウガが疾風のごとく向かってきた。その目は赤紫色に帯び、怒りで燃えるようだった。

「あいつ、あれっす。シスコンってやつっす。しかも、兄貴は東洋人で、妹はブロンドじゃないっすか。絶対血ぃつながってないっす!」

 マルコがこのタイミングでは絶対言ってはいけないことを叫んだ。

 クウガの顔が歪んだ。まるで悲しみと苦しみに耐えているかのように。

「斬る、斬る、斬る、絶対に斬る!」

 そのとき、遠方から複数の銃声が鳴り響いた。

 取締第三課のチャーリー、トム・T、デボラ、ビビアン、タナカたちが応援にやってきたのだ。

チャーリーがクウガに向かって声を張り上げた。

「無駄な抵抗はやめろ。すぐに他課の取締官たちも駆け付ける。ニンジャだろうが、一〇〇人を相手にはできないだろう」

 銃弾の雨霰がクウガの頭上に降り注いだ。

「引くぞ!」

 形勢不利と見たか、クウガがセーラの腕を取り、抱き抱えたところで、爆発音が鳴り響き、大きな砂煙が巻き上がった。

「撃ち方止め!」

 チャーリーが大声で叫んだ。タナカが最後まで狂ったようにサブマシンガンを掃射していたが、デボラに頭を引っぱたかれ、ようやく引き金から指を外した。

吹く風と重力が砂煙を消し去ったときには、二人の姿は完全に消えていた。

「ワッザヘル! どうなってるんだ!?」

 チャーリーはクウガたちがいた場所へ走り寄った。

 おれも二人がいた場所を探った。

「悠蔵、どうなってるんだ?」

「わからない……」

 マルコが両手のひらを組み合わせて、人差し指を突き出すしぐさをする。

「悠蔵さん、これってニンポウってやつじゃないっすか? これ、ニンポウっすよ! おれ調べたんす。ニンポウ〝雲隠れ〟っす!」

 忍法は魔術ではない。種も仕掛けもあるものだ。二人の人間が荒野に消えるなんてことがあるんだろうか。少なくともおれの受け継いだ伊賀流忍術の巻物には記されていない。

 と、おれは砂の中に不思議な形状のものを見つけた。小首をかしげ、まじまじと見入る。筒状のものに導線がついており、いままさに赤い火が筒へと達しようとしていた。

「危ない!」

 おれはマルコとチャーリーの肩をつかむと、力尽くで引っ張ってその場から遠ざかってから、砂の上へと突っ伏した。

 背後で馬鹿でかい爆発音が響き、爆風と熱風がおれの背中の上をすさまじい速さで駆け抜けていった。

「あちっ、あちっ!」

 マルコが砂の上をごろごろとのたうちまわった。

「何すか、いまの!?」

「火薬だ」

 マルコは半泣きになった。

「おれ、ニンジャ怖いっす! 恐ろしいっす!」

 おれは右手を見つめた。ふるふると震えていた。


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