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元お飾り王妃は悩む


**


「やっぱり、どうすれば……」


 翌日。私は王立ヴェッセル魔法学園の中庭にて、一人考え込んでおりました。王立ヴェッセル魔法学園とは、貴族の子息子女もしくは優秀な平民が通う魔法学園です。通っている生徒の年齢は一部例外と大学生を除き十二歳から十五歳ぐらいまで。何故、一部を例外するのかといえばこのヴェッセル魔法学園はここら辺の国では一番の魔法の教育機関。近隣の国から留学生がよくやってくるのです。そして、その留学生の方々は大体母国の教育課程を終えた後にやってくるので、二十歳前後になるのです。


 精神年齢が二十五歳のままの私としては、この制服姿もなんだか恥ずかしい。でも、今の私はただの十五歳。そんなことを気にしていては、ダメ。そう思いながらも、私はやはり考え込んでしまいます。内容は……どうやって、イーノク様に婚約の解消をしていただくかということ。


「婚約を破棄していただくためには、私に何か問題があるというのが一番だわ。だけれど、どうすれば……」


 成績を下げて、王妃は務まらないとアピールをしてみる? ううん、それだとお父様が心配してしまうし、お兄様に余計に疎まれてしまうわ。仮病を使ってみる? ……それ、すぐにばれてしまうわよね。さてさて、どうしたものでしょうか。やはり、あれを――。


「ほかの異性と仲良くして、私に王妃は務まらないアピールを、する……」


 王妃といえば、国王である夫を支える存在。浮気をするような方には務まらない役職。つまり、私が浮気のようなことをして、あちらから婚約を破棄していただく。この場合、次の婚約にも支障が出そうですが、幸運なことにも私はこの国一の貴族、ディールス公爵家の娘。次の婚約も比較的すぐに決まるでしょう。それに、ちょっと浮気をすることぐらい、この年頃ならばよくあることですし。貴族の子息子女もこの学園でよく浮気をしますし。……ただ、王妃となる女性だけ浮気をしてはいけないのです。今思えば、次期王妃って堅苦しいわね。よくよく私が我慢できたものだわ。


 しかし、お父様ならば浮気のことも「一時期の気の迷い」とおっしゃって許してくださるでしょうが、お兄様はどうでしょうか? やはり、私のことを軽蔑されるでしょうか? ……そうですよね。間違いなく、軽蔑するでしょう。出来れば、お兄様との関係も良好にしておきたいのですけれど……。だって、逃げ場がないのは辛いのだもの。


「じゃあ、やっぱりこの作戦もダメ……か」


 あぁ、せっかく名案が思い付いたと思ったのに。そう思い、私は項垂れてしまう。それに、浮気をするのならば王国の王太子と同じような身分の方ではないと、務まらないわ。それ以外の方々だと、私のお誘いに乗ってくださらないでしょうから。


「そんな人、この学園にいらっしゃるわけがないわ」


 私は、そう思ってしまいました。


 このヴェッセル王国で王家の次に権力を持つのは公爵家。しかし、その公爵家はヴェッセル王国に六つしかありません。しかも、私の実家を除くと五つ。その五つの家にご子息様はいらっしゃいますが、生憎と言っていいのか皆様に婚約者がいらっしゃるのよね……。そんな婚約者がいらっしゃるお方に、私が手を出せるわけがありません。やっぱり、この作戦もダメだわ。もっと、いい作戦を考えなくては。


(あーあ、何処かに魔法使いでも現れて、この婚約を破棄する方法を教えてくださらないかしら? そう、例えば――今、目の前に光が降ってきて、そこから魔法使いが現れて――)


 さらに言えば、この時の私はもうすでに現実逃避を始めておりました。魔法使いが現れて、絵本のようにちちんぷいぷいと魔法を唱えて、婚約の破棄をしてくだされば簡単なのに。そう、私は思っておりました。だから――。


「いってぇ!」

「っつ!」


 近くの木から、誰かが落ちてくるのに、気が付けなかった。あと一歩、ずれていたら私はそのお方の下敷きになっていたでしょう。……危ない、危ない。ですが、木から落ちてくるなんていったい何者? まさか、本当に魔法使い? ……そんなわけ、ないのに。


「あ、お前……」

「……」


 さらに言えば、そのお方のお顔を見たとき、私は確かに見覚えがありました。そう、このお方は――。


「……ブラッド・ルーベンス、様」


 近隣の武力国家である大国、フロイデン王国からやってこられている留学生。身分は公爵令息。名前はブラッド・ルーベンス様。そのお方だったからです――……。

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