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お飾り王妃の最期


 それは、本当に突然のこと。


 何の前触れもなく起こってしまった必然の出来事。


「フライア様!」


 そんな声が、どこか遠くから聞こえてきた。でも、私の足はその場に立つこともままならなくなって。でも、あれ? おかしいなぁ……? この声は、私が実家の公爵家にいたころの専属の従者の声じゃない? 今、ここにいるわけがない人の声じゃない? ……一体、どうなっているのかしら?


「おい! 早く医者を呼べ!」

「だから私はもっと早くにフライア様を助けに行くべきだと……!」

「分かっている! しかし、今はそんなことを口論している場合ではないだろう!」

「フライア様、フライア様!」


 辺りが、騒がしい。それに、よくよく聞けばこの声の主たちはみな、私が実家にいたころの侍従たちの声なのだ。本当に、おかしいわ。私、夢でも見ているのかしら? だって彼らとは……もう、五年近く会っていないはずなんだもの。


「フライア様! 大丈夫、大丈夫ですからね」


 ……遠くから、そんな声が聞こえてくる。


 それから、そんな偽りの励ましの言葉なんて必要ないわ。分かっているのよ。私が、もうここで死んじゃうんだって言うことぐらいね。分かっているつもりなのよ。……後悔は、あるんだけれど。


 あぁ、泣かないでよ。せっかくの綺麗な顔が台無しよ。あと、せっかくの再会も台無しだわ。もっと感動的に再会できないの? 貴方は、――は本当に不器用な人。


「……バカ、みたいよ、ね。愛されないのに、働いて、働いて……。過労死って、響きが、嫌だわ……」


 愛されない王妃。お飾りの王妃。


 そんな風に私が貴族たちの間で囁かれていることぐらい、私だって知っていた。それでも、私は王妃としての仕事が好きだったし、誇りを持っていた。何よりも、必要とされるのならば。そう思って、どんなにひどい仕打ちにも耐えてきた。なのに、こんなことになるなんてね。もしも、次があるのだとすれば……私は『あの男』の為ではなく、もっと別の人のために、自らのために生きたいわ。


「……ありが、とう。最後に、貴方たちに合えて……嬉しかった、わ」


 私はそれだけを侍従に伝えると、ゆっくりと瞳を閉じた。


 ……なぜだろうか。私はここで命尽きるのだと、死ぬのだという変な確信があった。


 フライア・ヴェッセル。一度目の人生を、二十五歳で終えました――……。

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