女の子から撫でられた
そうして、紅谷にぬいぐるみ作りを教える日々が始まった。
場所は、学校近くの、図書館である。
紅谷はどんどんとぬいぐるみ作りのコツを覚えていった。
しかし、それと同時に……
「あ、やっほのほ〜。丸野くん」
どんどんフレンドリーになっているのだ。
駒原や春岬の時と同じく、何もラブコメは始まらないはずだった。
というか始まってないんだけど。
こう、フレンドリーな紅谷に、変にリズムをつかまれてしまうのだ。
紅谷の記念すべき一作目は、八割型完成していた。
基本的なぬいぐるみ作りの進め方は、紅谷はマスターしたはず。だから僕は、紅谷の隣で、自分のぬいぐるみ作りを進めていた。
今作っているのは、ハシビロコウのぬいぐるみだ。
動物園で売っている様々なハシビロコウのぬいぐるみを見た上で、自分なりのオリジナリティを発揮して差別化を図っている作品……のつもりではある。
「え、すごい可愛いよ。丸野くんのぬいぐるみ」
「あ、ありがと……」
本気で言ってるのが、なんかすごく伝わるから、照れる。
「ほんと、可愛いぬいぐるみ。あ、よくみると丸野くんも可愛いなあ。なでなで」
「いや僕はかわいくないよな」
僕がそう当たり前のことを述べると、紅谷ははっとして、
「あっ、なんか、なでちゃった……ごめん。なんで私、思わず……」
すごい焦っていた。
「いや気にしなくていいよ」
実は女の子から撫でられるの初めてで嬉しかったし。
「ほんとごめん……私、なんか思ったこととか、慌てると行動にすぐうつしちゃうの」
「まああるな。そういうこと。え、でもじゃあ……ほんとに僕のこと可愛いと思ったの?」
「……」
紅谷は、恥ずかしそうに俯いて、すごいスピードで針を動かしていた。
え、普通に早くない?
才能の塊ですか?
是非ともぬいぐるみ部に入部して欲しいんですが。
僕は心の中でそう突っ込んで、だけど、集中している紅谷を邪魔したらいけないと思ったので、自分の作業に戻った。