手紙での呼び出し
「なるほどなるほど。妹と仲良しなお姉ちゃん二人に選ばれたぬいぐるみだったんだねよかったね〜」
「あ、はい」
僕は万実音先輩にうなずきながら思った。
二つ欲しい理由はわかった。
僕のぬいぐるみを選んでくれたのも嬉しかった。
だけど……
「どうして、二人とも始めから、二つ買わなかったんでしょうね」
二人とも、妹のことをよく知るお姉ちゃん感が出ていた。
だから、お揃いじゃないとやだとか言うのだって予想できたような気もするし、だから、二つ買ってくれてもいいような気がしていた。
しかし、僕の疑問を聞くと、万実音先輩は、えりか先輩と顔を見合わせて笑った。
何がおかしいんだろう?
「ねえ、これって、私たちが教えてあげないと、永遠に先に進まないかもしれないね」
「そうかも、でももう少し待とう、えりか」
「うん」
会話が抽象的すぎて意味がわからん。
ぬいぐるみは永遠に進まないよ。そんな動くぬいぐるみ作ってたらぬいぐるみ部破産するけど。
けど、そういうことでもないんだろうな。わからん。
結局その日は、普通通りのぬいぐるみ部の活動をして、下校した。
しかしそれから日が明けて。
僕は下駄箱を開けたら小さな手紙があることに気づいた。
「丸野くんへ。放課後、ビーチバレーコートの横に来てくれますか?」
差出人の名前がなかった。けど、三回目の呼び出しだ。
しかも場所がビーチバレーコート横。
僕は今日の曜日を確認する。
今日は、ビーチバレー同好会の活動がない日だ。
つまり、今日のビーチバレーコート付近は、人がいないと予想される。
低めの屋上への呼び出しとは、また違った呼び出しである可能性を、僕は感じた。
そして放課後。
僕はちゃんと早めからビーチバレーコート横に立っていた。
そしたら、一人の女の子がやってきた。
クラスでもあまり目立たない子。たしか、文芸部か何かに入っていたはず。名前は……紅谷みゆきだったはず。
イメージとしては、駒原や春岬がいるクラスの中心を太陽として、その太陽を挟んで僕と反対側にいるイメージだ。
だからあまり喋ったことがない。
けど、僕はずっと紅谷を見ていた。
周りから見たら地味とかクラスの中心人物であるかとかはどうでもよくて。
僕は今の紅谷が、すごく美少女だと思った。