低めの屋上(1回目)
昼休み。僕は低めの屋上に向かっていた。
低めの屋上について説明すると、三階建ての一号館と三号館に挟まれた、二階建ての二号館の屋上である。
文字通り低めの屋上である。
昼休みは、人が多く、いちゃいちゃしている人から一人で寝ている人まで様々だ。
そう。こんなにたくさんの人がいるところに呼び出したということは、告白ではない。
まあ僕が告白されるわけないんで、それは当たり前か。
しかし、それなら何故僕を呼び出したのか。
あのカピバラのぬいぐるみを作ったのが僕だという話は、基本的に広まってないはずだ。
万実音先輩とえりか先輩しか知らないはずだ。
なので現時点での駒原が僕を呼び出した理由の予想。
誰がカピバラのぬいぐるみを作ったか、知りたいから。
僕がぬいぐるみ部員だということは知られていてもおかしくないので、僕に聞こうというのも自然ではあると思う。
なかなか自信はある。というかそれ以外考えられない。
だけど問題はどう答えるかである。
僕が作ったと答えたが最後。
『え……あんたが作ったの、キモ』
と目の前でカピバラを投げ捨てられたら、ショックで倒れて運ばれる自信がある。
「丸野くん」
低めの屋上の少し手前で、僕は声をかけられた。
僕より少し背の高い、駒原さんがいた。
「お願いしたいことはほんとにに一つだけ」
「はい」
面接している気分になっている僕に、駒原さんは続けた。
「このぬいぐるみを、もう一つ、作るのをお願いしたくて」
「もう一つ……? まあいいけど」
「え?」
「え?」
待った、駒原さんのお願いは、僕に対するお願いではなくて、「ぬいぐるみ部」に対するお願いなはずだ。
それなのに、僕が「まあいいけど……」と答えてしまった。
つまり、これは僕が自らカピバラのぬいぐるみを作ったのは僕ですよって言ったもので……。
「このぬいぐるみ、作ったの、丸野くんなの?」
「あ、まあ、そうなんだよね」
ここにきて嘘をつく必要はないかなと思ったので、僕はそう認めた。
「え? え? まじ? え、すご。てっきりあの可愛い売り子先輩さんたちが作ったのかと思った」
「まあ、そう思うよな……」
「じゃあ、なおさらもう一個作って。ほんとお願い!」
そんなに欲しいのか……。いや嬉しいけど。
でも、駒原がどんどん僕に顔を近づけて迫ってお願いしてくるので、緊張してやばいんですが……。あの、当たりそうですね胸のあたりが。
「わかった。なるべく早く作るよ」
「やったありがと!」
すごい喜ばれた。いや、ほんとになんで?
お読みいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価してくださった方、ありがとうございます。テンポよく更新できるよう頑張ります。