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サメ殺し同好会頂上決戦!刮目せよ、ふんどし幼女の師の拳!

 日本人中年男性幼エルフ・ノリヒロ対、金髪セクシーダイナマイトグレーターエルフ・グロウリィホール!!

 グロウリィホールの一撃でノリヒロの肋骨は全てバラバラに砕け、内臓も損傷している。そう、つまり…勝負は始まったばかりだ!


「本当にまだやるつもりか?おひいさまが見込んだだけはあるよ。あんた」


「ハアー…ハアー…スウウウウ…ゲホオッ…ハアアア」


 森呼吸。

 ノリヒロは体細胞の隅々にまでマイナスイオンを循環させ、擬似的森林浴のヒーリング効果を得ている。

 それはエルフとしても、ゾンビめいた異常な回復力である。師より死ぬなと言われて以来、徹底的にセルフヒーリング術を鍛えた成果だ!

 何とか動けるまで回復したノリヒロは尻に力を込め、ふんどしを挟み込む。そして両腕を重ね、前方へ向けた掌を花のように開かせる!


 森林拳・リンドウの型!

 リンドウ!疫病草(やえみぐさ)とも呼ばれる多年草!生薬として利用され、紫色の可愛らしい花を咲かせる!

 その花言葉は…"悲しんでいるあなたを愛する"!!



「じゃあ今度は…本気でやるぞ!!」

 グロウリィホールの超音速タックル!先のものよりさらに速く重い!!

 エルブン・コンテンポラリー・レスリングの有段者たちが、為すすべもなくマットに沈んだタックルだ!二歳に満たぬエルブン年齢の、中年男性ノリヒロに防げるのか!?


 ノリヒロは相対的高速思考の中で、分厚いソニックブームの壁とともに迫るグロウリィホールの顔面を鷲掴み…吹き飛ばない!!

 足を地に付けたまま、遥か後方へ砂埃を上げながら押し出され、受け止めた!?見切りというレベルの話ではない!


 ノリヒロの体から、一酸化炭素の黒い煙が吹き出ている。

 それは空気や地面との摩擦熱によるものではない。燃えているのはノリヒロの体内、体内森林を…燃やしているのだ!森林を燃料にして、燃焼エネルギーを糧に、爆発的な力を得ている!そしてそれは森を守護するエルフにとって、禁忌を糞小便と一緒にこねて、固めて投げつけるがごとき背徳行為!



「見よ、ものども。あれがエルフじゃ」

 悪魔的に燃え盛る血濡れのふんどし地球人中年童貞男性幼エルフを指して、師は言った。

 静観するグレーターエルフたちにも、師の言わんとすることはわかる…わかるが、なかなかに納得し難い!


「やれー!ノリヒロ!!そやつの弱点はちょっとややこしいから、この場では再現できん!とにかくデストロイじゃ!!!」


「ちょっと!!!おひいさま!?絶対言わないでよ!?」

 グロウリィホールの隙を付き、ノリヒロのエルブンリバーブロウ!分厚い大樹を打つ感触!効いてはいるが、まだ足りない!

 グロウリィホールのラリアート!ノリヒロはリンドウの型で受け止め、エルブンローキックを返す!激しく打ち合う両者!しかし徐々に押されるノリヒロ!森林燃焼ブースト効果を持ってしても、熟練のグレーターエルフにはまだ届かない!

 一瞬、ノリヒロの気が逸れる。

「ちょっと待て。あれは一体何だ……?」


「え?」

 グロウリィホールはノリヒロが指差した方を振り向く。


(フン)ッ!!!」

 エルブンニーキックがグロウリィホールの脇腹に刺さる!

 不意打ち!どう考えても汚い!三下の悪役が使う手!手段を選ばない、これが真のエルフの戦いだ!!

「ぐっ…なるほどな!はははは」

 笑うグロウリィホール!


「はしたない…」

 グレーターエルフのひとり、眼帯を付けた武将系エルフ、ディープスロートが呟いた。しかし同時に、彼女は自らの言葉に違和感を覚える。


 宇宙の秩序を陰ながら守るもの、あるいは公に原住民を保護するもの、君臨を良しとするもの、神として崇められるもの…グレーターエルフたちが重んじる、美と様式とはかけ離れた、あまりにもおぞましい姿。ノリヒロの戦いはあまりに無秩序で、(みにく)く、はしたない!

 しかし…しかし、彼女たちも血のたぎりと(たかぶ)りを感じる。長寿にかまけ、平和と仕事に忘れられた、エルフの、森の、木と草花の本質……そう、セックス・アンド・デストロイ!

 はしたない!?その見繕った物言いこそが惰弱!

 今、彼女らの心にあるのは最も原始的な感情のひとつ、怒りだ!!そう!セックス!アンド・デストロイなのだ!!



 ノリヒロが口から吹きかける血の目潰し!たたらを踏むグロウリィホール!

 追い打ちにかかるノリヒロ!しかし足の踏ん張りが効かない!


 その刹那、グロウリィホールの頭部に突き刺さるエルブン閃光魔術!!放ったのは…ポンティ!?

「誰が一体一と決めた!よもや卑怯などとは言わないでしょうね!?」

 卑怯である!

 ちなみにエルブン閃光魔術とは、顔面を狙った膝蹴りだ。


「…ふざけんじゃねえぞこのクソビッチ!!」

 今まで一言も発していない謎に包まれた目隠しグレーターエルフ、アスホールがついにキレた!

 エルブン・コンテンポラリー・レスリングにおいても、5カウント以内の乱入は許されている!しかしポンティは明らかにカウントをオーバーしても戦い続けている!ノリヒロが羽交い締めにしたグロウリィホールを、滅多打ちにするポンティ!!


「やめろ!帰れ!」「ビイイイッチ!」「腐れま○こ!」

 ヤジを飛ばすグレーターエルフたち!!


 ポンティは羽交い締めにするノリヒロもろともグロウリィホールを宙に打ち上げ…姉弟ツープラトンのエルブン飯綱落とし!!

 2000年前に作られた大神鳥像に激突し、グロウリィホールの頭蓋粉砕!


「……面白いなあ!あったまってきたぞぉ!!」

 地に深くめり込み、頭蓋が割れたはずのグロウリィホールが立ち上がる!肝が据わっているのは森林拳の使い手だけではない!!


「もう我慢できない!あいつらぶっ殺してやる!!」

 しびれを切らしたグレーターエルフたちが乱入せんとする…まさにその時!天から光の檻が降り注ぎ、ノリヒロらを拘束!エルブン・ボウの応用、循環性荷電粒子で練られたフォースの檻だ!

 放ったのは、天から見下ろすサメ殺し同好会会長、ドゥームビッチ!


「そこまでだ!!もういい!!」



 デュエルスペースが一転、静まり返る。

「……これがエルフの戦いだと?」


 上空からドゥームビッチは問いかける。

 傷ついたノリヒロ、怯むグレーターエルフらの代わりに、彼らの元へ後からゆっくりと歩いて来た師が答えた。

「そうじゃ。これがエルフの戦いじゃ。澄ました顔で遠くから、格下を薙ぎ払うやり方ではなくな」


「命を燃やし、すり減らすようなやり方を…何千何万年と続けるのですか、おひいさま。お戯れはほどほどにしてください」


「戯れか、確かにその通りじゃな。

では一体何が本当の戦いじゃ?原住民たちを見下しながら、あれやこれやいらん首を突っ込むことか?この会の名前を言ってみよ。ドゥームビッチよ」


「天の川銀河エルフ連盟、ウルトラビジターです」


「それが戯れじゃと言っとる。ワシらの敵はサメじゃ。この会は、サメ殺し同好会じゃ!」


 師が天高く跳躍!これから始まる頂上決戦に、ノリヒロらを巻き込まないためである!

 揉めた場合は暴力で解決!太古より伝わる、エルフの基本原則だ!!




「ファーストターンはくれてやる!お前たちの土俵じゃ!しのごの言わずに撃ってこい、ドゥームビッチ!!」

 師は本気だ!ノリヒロが初めて目の当たりにする、師の本気である!


「おひいさま………お覚悟!!」

 構えるドゥームビッチ!


 銀髪褐色肌のグレーターエルフ、ドゥームビッチ、26424歳。天の川銀河エルフ連盟、通称ウルトラビジターの長。ノリヒロたちは知らないが、銀河連邦にも名を連ねる、宙道士の位を持つ星海の重鎮である。

 そのドゥームビッチの全力のエルブン・ボウは、宇宙史上でも数名しか知られていない上位存在、アークエルフの域に達していた。エルブン仮想粒子をひとかたまりにして撃ち出す、惑星を砕く破壊力を備えた反物質弾、ESD(エルブン・スター・デストロイ)



 しかしノリヒロにとって、ドゥームビッチの挙動は眼中にない。


 森だ。いや、森ではなく師だ。しかしその森は…今まで見てきた森がまるで作り物の書き割りであるかと感じられるような……ずば抜けて圧倒的な森。

 ふんどし幼女の古エルフである(もり)が、呼吸をしているのだ。

 空中にいるはずの師が深く腰を落とし、身構えたとしても…そこが森であるのなら、根付く大地もあって当然である。


 森林拳・森林正拳突き。


 師が後手で放った森林拳の基本技は、空間を切り裂き、反物質のエネルギー放射を消し飛ばし、ついでにドゥームビッチの衣類を蒸発させた。

お読みいただきありがとうございます。

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