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轟け姉弟の合わせ技!森林拳・中年童貞砲弾!!

 ──ゴブリン!!

 緑色の、うごめくスポンジ状球体の次元生命体。

 そのサイズ、高さ約2キロメートル、横幅にして6キロメートル!でかい、でかすぎる!

 地球上生命に例えるなら、パースの狂ったウニかサボテン…冒涜的ロホホラといった佇まいだ!


 ゴブリンは円柱状の突起から霧状のマイクロゴブリンを噴霧する。1立法センチメートルあたり5000。マイクロゴブリンに犯された生命体は、内部から侵食され…やがてゴブリンと化してしまう!

 ファンタジー系フィクションに登場するゴブリンとは、この巨大生物の描写をシンボル化ないしは簡略化したものである。



 ゴブリンが突如奥多摩の山合いに顕現した。ここ奥多摩の地が人口0人の秘境でなければ、大惨事になっていたことだろう!

 3人のエルフは、現場から遠い森からゴブリンを見据えていた。地球の重力によって、楕円状にひしゃげている。


「こ、これが…ゴブリン?」

 ノリヒロは天に届く壁のようにそびえ立つゴブリンに、ひどく正気(サニティ)を揺さぶられた。師匠から譲り受けたふんどしを身につけていなければ、失禁さえしていただろう。


「うむ。最近の連中は何か違う名前で呼んどったが……何じゃったかのう、忘れた。まあゴブリンじゃ」

 師は平然としている。やはりゴブリンなのだ!たとえそれが異形の宇宙生命体であろうとも…師がゴブリンと言えば、それはゴブリンなのだ!


「おひいさま、人型には見えません!小さくも見えません!」

 パンティを身につけているポンティは、失禁しながら言った。


「大体同じじゃろ。それに、この手合いの中では小さい」


「…どこがゴブリンペニスにあたる部分ですか!?」

 ポンティの正気(サニティ)は元よりかなり危うい!


「あのガスを浴びるとゴブリンになるから…霧状ペニスなのかのう?わからん」


「おそらく、菌類のような生態なのでしょう。ガスに胞子のような成分が含まれているのでしょうか…」


「うむ、たぶんそれじゃ!さすがは大卒じゃのう、ノリヒロ」



「…さて、お前たちにも"見える"ようにしてやったのじゃ。まだ寝ぼけとるが、ほっとけばこの国ごと滅ぶじゃろう。これを、お前たちだけでやってみろ」





 前方の山合いにそびえ立つゴブリンに、二人は呆然と立ち尽くす。


「どうやって戦えばいいのだ…」


 どうやって戦えばいいのか。

 ゴブリンブレス!ゴブゴブ!

 ゴブリンの近くを飛んだ鳥がブレスを浴びてゴブリン化!ゴブリンの周囲に瘴気の雲が立ち込める。近付くことさえ危険だ!


 ポンティはおもむろに一本の倒木を抱え、投擲!その乳がぶるんと大きく揺れる。

 摩擦熱で炎の杭と化した樹齢二十年のヒノキが、ミサイルのように飛んで行く。森林拳・ファイアボルトだ!


 ポンティのファイアボルトはまっすぐに飛び…着弾と共に爆発!紫色の体液が吹き出す!が、すぐに途絶える。そのあまりに巨大な体積を前に、小手先の技は無意味!ゴブゴブ!


「ああ〜、こんなもんに手間取っているようでは先が思いやられるの〜」


 師のぼやきを聞いて、ノリヒロは腹を括った。

「ポンティ、次は私を投げろ」


「は?おひいさまに良いとこ見せようとして、玉砕するつもり?童貞のくせに」


「童貞は関係ないだろう。いや…しかし私は、世界最強の童貞にならねばならんのだ!」



 姉弟子と弟弟子の合体技だ。お互いの森林呼吸を合わせれば、単純計算でも二乗の力を生み出す!

「ぶっ殺すつもりで投げるわよ、ノリヒロ。くたばれ…ノリヒロ…くたばれ…」


「私は死ぬつもりはないぞ!」


 水中飛び込み選手の格好で微動だにしないノリヒロを、ポンティが棒投げの姿勢でぎりりと構える。

「ハアアアアア…………()ッッ!!」


 森林拳・中年童貞砲弾!


 空気抵抗を最大まで下げた姿勢で、音速で飛ぶノリヒロ!指先に体内森林エネルギーを集中させ、ソニックブームによる崩壊を防いでいる!


 そびえ立つゴブリンの壁に、ミサイルと化した中年童貞が迫る!

 3…2…1…着弾の刹那!エルブン双掌打を繰り出すノリヒロ!同時に蓄積したソニックブームのエネルギーを解放!


 ズボー!!!


 そびえ立つゴブリンの壁にクレーター発生!

 噴出するゴブリンの紫体液!

 しかしそのあまりに巨大な体積を前に、クレーター程度の破壊は無意味!


 そしてゴブリンブレス!

「グワアアアアア!!!」

 ゴブリンと化すノリヒロ!ゴブゴブ!



 その様をエルブンアイで見通し、ポンティは呟いた。

「さようなら、ノリヒロ」


「ふーむ、やはりまだまだじゃのう。どれ、手本を見せてやる」

 師はゴム鉄砲の要領で人差し指を立て、ゴブリンに向けた。


 師を取り巻くマイナスイオンが視認できるほどに高まり、発光!そして指先から極太ビームを発射!!


 エルブン・ボウ!


 エルフの指先から放たれる、体内森林のマイナスイオンを利用した荷電粒子砲だ!エルフの得意とする"弓矢"とは、まさに体内の森林操作によるエルブン擬似的加速器から放たれる、このビームを刺している!

 師が放った矢はゴブリンを蒸発し、そのまま埼玉県の方角へ飛んで行った。もし人がそれを見れば、天を覆う巨大な光でメンタルクライシスに陥ったことだろう。埼玉県が人口0人の秘境で本当に良かった!



「このワシに結婚を申し込んでおきながら、無責任なやつじゃ」


 師はゴブリン化したノリヒロに森林注入!ゴブリン分飛散!ノリヒロは息を吹き返した。


「こら!お前なあ、昨日今日とでもう2回死んどるぞ。勝手に死ぬな!」


「も…申し訳ありませんゴブ…」




 数日後、ポンティは乳からエルブン・ボウを放つことに成功した。研鑽を積めばやがてゴブリンも焼き払えるだろう。今はまだ、乳首を淡く光らせる程度でしかない。

 一方ノリヒロは体内森林の蓄積不足のため、エルブン・ボウは打てなかった。基礎修行として、奥多摩に生息する野草の型をヘビーローテーションしている。


 ある日の夕食後に、師が言った。

「エルフにとって最大の敵とはなんじゃ」


 師の問いに対し、ポンティが答える。

「サメです」


「その通りじゃ」


 …そうなのか?ノリヒロには初耳であった。


「古来よりエルフは…森を守るためにサメどもと激しい戦いを繰り広げておった。森林という"地の利"を生かし、やつらと戦うために編み出されたのが森林拳じゃ。

昔はワシもサメ殺し同好会の会員じゃったが…同期はみなどこかへ行ってしまった。たぶん死んでしまったんじゃろうな…」


 ところどころそれらしい言葉は出ているが、話の全体像がわからない。サメとは何なのだ!差し出がましくもノリヒロは尋ねた。

「サ…サメとは何ですか?」


 ポンティは驚いた顔で言った。

「あなた大卒でしょう?宇宙の端がどうなっているか、大学で習わなかったの?」


 宇宙の端?サメと関係があるのだろうか?

「諸説あるが…いずれにせよ人類が到達できる場所ではないと」


「よいよい。サメの話はまた今度ゆっくりしてやる。

お前たちもいずれ、サメ殺し同好会に推薦してやろうと言いたかったのじゃ。今も存続していればの話じゃがな」


「お、おひいさま…なんて光栄な……」


 ポンティは涙を流した。古エルフ神話に疎いノリヒロには、ただただその涙が不気味に思えるだけであった。

お読みいただきありがとうございます。

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