第七話 ウールガンド城
ーーーウールガンド城。それはどこからどう見ても洋風建築だった。まわりの建物が和風というのもあり、一際…いや、かなり目立つ建物だ。
「少し、待ってくれ。」
門の手前まで行くと、ラーチスがそう言ってくる。門の横を見ると、門番らしき者が左右一人ずつ立っている。おそらく「獣人族」なのだろうが、鎧を着ているためその姿は確認できない。
「よし、来てくれ。」
おそらく、中に入るための許可を取っていたのだろう。中にはこの『セカイ』を代表する長がいるのだから厳重にしているのは当たり前か。
俺たちはラーチスの言葉を聞き、門の中に入っていく。
門と城の入口までの間には小さめの庭園が存在してた。特に言うこともなく、城の中に入っていく。
そして、長い廊下を歩き、奥にある扉の前までやってきた。そして、俺たちはその扉を開け、中へと進んでいく。
「ーーー待っておった。」
部屋の中にはさらに奥の壁際に、大きな玉座のような椅子があり、そこに一人座っている。おそらくあれがジャイ二…いや、ここの長を呼び捨てにするのはよくないな。あれがジャイ二さんだろう。
ジャイ二さんは、ウノさんをさらに超えるほどの長い毛で目と口がほとんど隠されている。体も人一倍大きく、威厳があるほうだな。
そのジャイ二さんの両隣に、入口の門番のような鎧を着た者が一人ずついる。
そして、さらに手前、入ってすぐ右側の辺りにラーチスの「討伐隊」の仲間、パウロとライニが立っていた。
「ラクト様よ。この度はここ『レッドセカイ』を救っていただき、本当にありがとう。」
ジャイ二さんが俺たちを見てそう言い出してくる。
「いえ、あれは俺だけの力じゃありません。そこまで礼をされるほどではないですよ。」
「そんなことはない。いやはや、本来であればこの前の時に礼をするべきだったのだろうが…生憎と会うことができず、すまなかったな。」
「いえいえ、そんなに気にしないでください。」
昔来たときは対話はしたが、実際に会うことはなかった。俺の事については、おそらく住人たちから報告を受けていただろうが。
「さて、今回の件、ラクト様の意見を聞かせていただきたい。」
「はい。…」
俺はそう言われ、昨日の件について、俺の口から意見を述べた。
暫くして、
「ふむ。やはりラクト様から見ても、その星ノ使徒を名乗るやつはかなりの強敵なのか。」
「ええ。かなりの力を感じました。」
星ノ使徒…ユノはかなり強い。
「そやつは…『純潔』継承者を名乗ったのか?」
「え、えぇ。確かそのようなことを言っていました。」
確か、『純潔を司る女神・ヘラ』の継承者…とか言ってたな。
ヘラ…か。これはかなり、
「厄介な敵かと思います。」
「ほお?やつを知っておるのか?」
「いえ、知らないですが…継承した神のことについてはそこそこ知っています。」
「ふむ。」
俺たち「人族」はほかの「種族」に比べて弱い。力では他に勝てない。なら、どうするか?
それは、知識を持つことだ。
知識はときとして、力にも勝ることがある。俺たちは弱いなりに知識を磨き上げてきている。だから、『十二星神』と聞いて、もしかしたら?と思ったこともある。まだ、確証はないからこのことはまだ誰にも言わないつもりではいるが…
「やはり、秘石を渡すわけにはいかぬな。仕方ない…最後の手段をとるしかないだろう。」
「最後の、手段?」
「ーーーやつらと戦うのだ。」
「「なっ!!?」」
その言葉を放った瞬間、周りから…特に隣の鎧を着た者たちが驚いて声を上げていた。
「正気ですか、ジャイ二様!?」
「もちろんだ。話によれば、人質もいるとのこと。敵の話を鵜呑みにしていては、人質の命にも関わる。」
「し、しかし…」
鎧を着た一人がジャイ二さんと口論をしていると、
「ーーー待ってください!おじ様!!!」
一人の少女が俺たちが入ってきた方からやって来る。
「えっと、この子は?」
俺は疑問を誰に問うでもなく、自然と発していた。
「フランちゃん!?今は、重要な時だから来ちゃダメだよ!」
その疑問に答えた訳では無いが、カナデがほぼ答えのようなことを発しながら、少女…フラン…と、呼ばれる子に近づいていく。
「あ、カナデさん、こんちには♪…と、その前にちょっと良いですか?」
「えっ!?あ、うん…」
カナデにあいさつを返し終えると、すぐさまジャイ二さんの元へ向かっていく。
「話は聞かせてもらいました!もしかして…おじ様も戦いに行くのではないですよね!?」
少女…フランがジャイ二さんにそう問い詰める。
「遠くから、わざわざラクト様たちが来てくれておる。さらには、また、この『セカイ』を救うために協力してくれておるのだ。今度こそ…私が戦いの場に向かわなくては代表者として失格じゃ。」
「そ、そんなこと言いましても…もう、おじ様は戦いに行けるような体じゃ…」
確かに。見るからにもう戦うことはできないだろう。
「…忘れるな、フランよ。私の『異能』は、このような事態で活躍するものじゃ。」
「うっ…」
『異能』の話をされ、フランも押し黙ってしまう。
「ジャイ二さんの『異能』って…」
「あぁ。そういえばラクト様は知らぬか。私の『異能』は「活性化」じゃよ。」
「活性化…?」
「簡単に言えば、己の肉体を活性化させることで、一時的に全盛期の力を常に出し続けられる…とわいうものじゃ。」
なるほど、強化系統ということか。
「それにな、フラン。」
俺に説明を終えたあと、またフランを見つめながら、
「ラクト様もいる。お前ももう大きいのだ。だから、何も心配はおらん。」
「…!!」
その言葉を聞いて、今度こそフランの口は閉じきった。
「なぁ、フランってのは…」
小声で、カナデに説明を促す。
「ーーーフラン・ウールガンド。ジャイ二様の孫娘だよ。フランちゃんにとって、ジャイ二様は唯一の肉親なんだよ…」
「唯一の…肉親…」
それを聞いて、俺はある程度事情を知ってしまう。
つまるところ、フランにとっての家族は、ジャイ二さんだけなのだろう。おそらく、父母は何らかの理由でいなくなってしまったのだろう。
ーーーカナデと似た境遇なのかもな。
それに、ジャイ二さんの子供がフランしかいないとなると、
「次期の長候補は、フランなのか。」
「そうだよ。」
「そういえば、ジャイ二さんって名前に「レッド」って入っていたよな?」
少し、話からずれた質問を投げかける。ジャイ二さんのフルネームは、ジャイ二・レッド・ウールガンドだったはず。
「…あ、あぁ〜「レッド」ってのは役所名みたいなものだよ?長になった人物に付けられるやつ。」
「なるほど。」
急に話が変わり、カナデも困惑したが、すぐにその意味に気づき、いつもと変わらない雰囲気でそう答えた。
「さぁ。向こうは10日も待つと言っているが、信用ならん。今すぐ向かうぞ!」
「「!!?」」
流石に俺もびっくりした。今すぐって、もしかしてこのメンツでいくのか?いや、弱いと言っている訳では無い。だが、人数が少ないような気もするが…
「他の人を呼ぶことはしないんですか?」
俺が聞くと、
「他の戦力は、万が一のために、ここ周辺と役場周辺に残って民の護衛を任せるつもりじゃ。」
なるほど、確かに悪くないが、俺たちだけで勝てるのか?
「ボクたちしかいないんだよ。」
「ーーーっ!!」
エルがそう俺に囁いてくる。ーーーそうだ。ここで迷っていれば、また、『大切なもの』を失ってしまうことになるかもしれない。
「七香…悪いが、協力してもらえないか?」
「…何言ってるのよ。私は、そのためにここまで来たんだから!」
七香もやる気充分といった感じだ。
「フラン…私のことを信じて、待っていてもらえるか?」
ジャイ二さんがそうフランに聞く。
「…ほんとは…嫌よ、おじ様はいつも言うことを聞かずにどこかに行っちゃうし…」
フランが、そう悲しい目で訴えてくる。ジャイ二さんも少し困り顔をしている。
「だけど…だけど、おじ様はいつも約束は破ったりしないから。だから、大丈夫!おじ様のこと、信じて待ってるよ!」
そう、フランが目に涙を浮かべつつも、笑顔でジャイ二さんを送り出したのだ。
ジャイ二さん、「討伐隊」、俺ことラクト、カナデ、七香、エル、メイの30人で早速向かうことに…
「いやいや、だから待てって!!」
「「ん??」」
俺の声に、周りが一斉に首を傾げる。
「メイも戦うのか!?」
だから、さりげなく混ざるなよ。
「もちろんだよ?あんまり舐めないでよね!」
そうメイが堂々と胸を張って言い放つ。
「そ、そうか。なら良いんだが…」
改めて、俺たち30人は、星ノ使徒・ユノの元へと向かうのだった。
こんちには、生贄さんです。今回の新登場は一人だけですね。
フラン・ウールガンド
14歳。誕生日は12月26日。血液型はAB型。『異能』は不明。14歳でありながら、次期の長である。




