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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第4章 『悲劇の戦場』
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第一話 途絶えぬ問題事

「…あら?神の『セカイ』には行かなかったの?」

ここは山奥にある1つの小屋のような家。廃れてはいるが、しっかりと機能はしている。そんな小屋のような家に2人の人物が居座っている。

「行ったわよ?だけどすでに倒されていたし。…それに、まさか『あの子』が生きているとも思わなかったし、予定が狂ったわ。」

私はそんな軽い調子で説明する。


「ふーん。まあわたしには関係ないけどねぇ。」

なんとも思っていないのか、それきり興味をなくしたみたいだった。

「…悪いけど出かけるわよ。あなたも。」

「…えっ?どこへ行くって言うの?もおしばらくの間は戦いはこりごりよ?」

「…悪いけどそうも行かないのよ、ミリヤ。これから人族の『セカイ』へ向かうわ。」

私はそれだけを言って準備をするため奥の部屋へと向かって言った。


「ちょ、ちょっと!?まだ行くって言ってないんだけどぉ。ちょっと、セレス!?」


背後に聞こえる喚き声を無視して淡々と準備を進める。



「ーーーまたあの人間と会えるのね。…でも、今度は容赦できないわね。」






〜〜〜〜〜






「…夢か。」

俺は目の前の人物を見つめる。やはり身に覚えのない人物だ。そして名前。


「…影史。あの『剣神』カゲフミか?」

「…いやぁ、懐かしい呼び名だな。ここでもそう呼ばれているのか。…その通りだ、と言ったら?」

その男は淡々と話している。本当なのか嘘なのか判断がしづらい。

「…信用できないな。」

「信用してもらわなきゃ困るんだけどな。…何言えば信じてくれる?」


「…まずはその殺気を止めて欲しい。」

俺は常に笑みを浮かべている目の前の影史にそう言う。

「いやいや、殺気を出してるのはそっちも同じだろ?特に後ろの妹さん。そっちが止めりゃこっちも止めるさ。」

「……。」

俺は妹に落ち着くように説得する。そして俺たちが殺気を止めると、影史も殺気を放つのを止める。


「…これでやっと話せるな。まだそっちは状況が掴めていないようだな。」

「…何のことだ?この状況についてか?」

「…どちらが覚えているかは知らねえがな、『天子』を覚えているだろ?」

「…っ!」

影史の口から、不意にでてきたその言葉に来菜は驚く。それに対して俺は疑問を抱えた。


「…なんだそれ。」

「………お兄、この男は信用できるよ。」

「…本当か?」

「…うん。」

信じ難いが来菜が言うのであれば大丈夫だろう。


「…なるほど。お前が覚えているか。」

「何が言いたいんだ?俺たちをさっさと戻して欲しいんだが。」

「ちゃんと戻すさ。てか、この体は一応お前の父親だぞ?興味なしか?」

「ないな。見たこともないからな。」

「そうか、まあいいや。用件は1つだ。俺を知ってるなら当然アランの生存も知ってるはずだ。」


「…もちろんだ。アランとは一度擬似的にだが接触してるしな。」

「そりゃそうだろうな。『日向の末裔』なのだからな。」

「…なんだそれ?」

初めて聞く言葉に再び疑問を抱える。

「細かいことは気にしないでいい。俺を仲間にしてくれ。アランを倒す目的のためにな。」

「なっ…」

まさかこの男からそのような用件が飛んでくるとは。確かにアランを倒すために『剣神』と呼ばれた存在が仲間なら心強い。


だが、引っかかることがある。

「…お前に仲間が必要なのか?」

「そう思うだろうな。…なんで俺がアランにトドメが刺せなかったと思う?」

「…単純にお前が弱かったんじゃないか?」

「はッ!俺を知らないだけでかなりの言い様だな、おもしれえよ。だが、それは惜しいな。答えは俺の嫁だ。」

「…嫁?」

「そう。嫁を人質に取られた。だからトドメが刺せなかった…そして、これからもトドメを刺せない。」


「これからも?どういう事だ?」

違和感のある言い方に俺は質問をする。


「…アランの正体は、俺の嫁だ。」






「…は?」

それはかなりの衝撃な発言だった。

「正確に言えば、俺の嫁がアランに取り込まれている。生きたままな。そのせいでアランを殺せば嫁も殺すことになる。…だから嫁を救出するのに手伝ってもらう仲間が必要なんだ。」

影史は真剣にその話を聞かせてくる。


「…俺は最強なんかじゃない。嫁1人を人質にされるだけで最弱になっちまうのさ。」


その言葉は少なからず俺にも当てはまるような気がしてくる。


「…手伝えばアランを倒すのも手伝うのか?」

「もちろんだ。ついでにこっから戻してやる。」

「…分かった。手伝おう。…影史はどこに住んでるんだ?」

いつもいるような居場所が分からなければ助けを求めようとも呼ぶことが出来ない。


「『ヒュームセカイ』に住んでるさ。Rine交換しようぜ。詳しくはそこで伝えてやるよ。」

「……。」

昔の人間と言いつつ、現代の機器には強いのだな。




「…よし。そうだそうだ、ここに来るついでに弱った男がいたけどよ、知ってるか?」

そう言いながら影史は後ろの茂みの中から倒れている男を掴んで起こす。

「…そいつってもしかして…」

俺はその男を見たことは無いが特徴が似ている人物を知っている。


「…フレイヤさんのお兄さん?フレイ…さんか?」

そんな事を思っていると、その男の目が覚めた。

「…ん。ここは…あ、あなたは助けてくれた…カゲフミさん!」

フレイさんと思わしき人物は影史を見るなりそう言う。


「…助けたのか。」

「こいつは悪そうに見えなかったからな。それに、丁度良かったんじゃないか?」

そう言い影史はフレイさんらしき人物から手を離し、俺たちのことを指さす。

「あいつがお前を拐った神を倒したやつさ。」

それを聞きフレイさんらしき人物は驚きを隠せない。


「本当ですか!?ありがとうございます!」

そのまま俺に近づき手を握って縦に振り回してくる。

「…あ、ああ。えっと、あなたは確か…」

「あ、自己紹介がまだでしたね。私はフレイと言います。」

「俺は日向絡斗です。」

「ラクトさんですか。私、実はこう見えて「妖精王」だったんですよね。」

そう言いながら苦笑する。


「…いえ、今も妖精王ですよ。妹さん…フレイヤさんが待ってます。一緒に戻りましょう。」

「…本当ですか!?…良かった。本当にありがとうございます。」

「と、言うことだ。何かあったら連絡寄越すんだろ?俺たちを戻してくれ。」

俺は影史の正体を知ってもなおタメ口で話す。影史もそれを了承しているみたいで何も言ってこないでいた。


「おう。絡斗だっけか?お前も何かあれば頼ってくれていいぜ。そんじゃ3人まとまっとけよ。」

影史は魔法を発動させる。


「…俺、お前に名前言ったか?」

「……。細かいこと気にするんだな。さっきフレイに言ってたのが聞こえたのさ。」

そんなくだらない会話を終え、目の前が真っ白に包み込まれる。

そしてーーー、


「…ぁ。」

誰かの声が…息が漏れたかのようなか細い音が聞こえた。それは俺たち3人の声ではない。


「…ただいま。」

俺はその音の正体…たくさんの人が集まってる中目の前にいた、七香に対してそう言ったのだ。







懐かしいと思えるほど、久々のように感じる館に戻ってきた。

いつの間にか日も出てきて明るくなっていた。

「…もう、心配したんだからっ!」

「ぐふっ!」

唐突に七香に顔面を殴られた。

「わ、悪かった…。」


ーーーそれからは俺たちの出来事について皆と共有するために色々と説明をした。軽く2時間ほどかかっただろう。


「…七香ちゃん、覚えているかな?」

ふと、来菜が七香に向かって声をかける。

「…私も絡斗と同じで忘れていたの。今はなんでか知らないけど突然思い出して…ごめんね。」

そう言い七香は強く来菜を抱きしめる。


「良かったじゃないか。」

「…エルも他人事じゃないと思うんだけどなぁ。」

「…ふふっ。それもそうだね。」

そんな他愛のない話をしていると、扉を勢い良く開けて俺たちの前に姿を現した人物がいる。フレイヤさんだ。


「…お兄様!」

するとフレイがすぐに反応をし、目にはすでに涙を浮かべている。

「おお!フレイヤよ!本当に良かった!!」


2人はそのまま勢いよく再会のハグをしたのだ。

「お兄様ぁ!!」


「…良かったわね。本当に。」

そんな微笑ましい光景を見て、竜那と竜佳が近づいてくる。

「2人もありがとな。」

「問題ないわ。」


ーーーそんなこんなでこの微笑ましい空間は更に1時間ほど続いたのだ。






「…ありがとうございます、ラクトさん。無事、同盟も組むことが出来ました。」

フレイヤさんとフレイさんと一時期の別れの挨拶をする。

「2人はこれからこの『セカイ』の平和を取り戻したことを皆に伝えないといけないですからね。大変ですね。」

「それが私たちの仕事のようなものですから。妹もだいぶ世話になった。感謝してます。」

「何かあれば連絡を寄越してください。」


「分かりました。…皆さんお元気で。」


そんな『アルフセカイ』で仲良くなった妖精族の人々に見送られながら、俺たち魔法科Aクラスとその他俺の仲間たちは人族の『セカイ』へと帰って行った。



「皆、無事で良かった。…1人学校を辞めることになったのは残念だが、このクラスに1人新しく編入することになった。後で詳しく紹介する。今日はこれで解散してくれ。明日と明後日は振替休日ということで休んでくれ。」

幸崎先生からの説明があり、俺たちは校庭での解散となった。


「…麗はこの学校入らないのか?」

幸崎先生は1人と言っていた。その1人は来菜のことだ。

「…そんな仲がいい人がいっぱいいるわけじゃないし。それに話によればあなたの家、たまり場なんでしょ?暇な時に居座るから平気よ。」

「俺が平気じゃないんだが…。」

なんとも気楽なやつだ。

「まぁ、何かあれば連絡するわ。私はメイ師匠の元に戻らなくちゃ。じゃあね。」

「ああ、またな。」

そう言い、麗は学校を後にしたのだ。


「…やっと落ち着けるね。」

七香がそんなことを言ってくる。

「…いや、これからが問題だ。」

「え?」

七香だけでなく竜那や雄二たちも首を傾げている。



…そう、この後にはもっと重要な出来事が待っているのだ。

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